いつか陽の当たる場所で笑えるなら・3
旅の準備は思っていたよりも早く終わった、流石に身一つで出て行くことはできないから、財布と着替えと傷薬などの衛生品と野営に使う道具一式と小生はギター、コルさんはスケッチブックと大量の鉛筆を、そして忘れてはいけない旅に出ると声をかけてついて来てくれる、お互いのポケモンたちを連れて駆け出すように町を出た。
「ハッさん、本当にこんなことしていいのか?」
「いいんです、小生もしばらく身を隠したいところだったので」
どういう意味だと無言で問いかけてくる相手に、いえ実家のほうから連れ戻そうとする手合いがちょっと、学校で接触しようとしたので辟易してまして。
「正直ちょっと鬱陶しかったので、行き先不明でしばらく姿をくらませてやろうかと」
学校に来てないと気づいてから探し始めるんです、行く宛てがわからない旅のほうが都合がいい、絶対に顔を合わせてやるものかと心に決めていますからと言えば、そういう思い切りのよさに驚かされるよと、力なく笑う。
「ところで、モトトカゲは二人乗りしていいのか?」
「基本的にはダメでしょうね」
みつかったら問題でしょうけれど、移動手段を持たずに移動するにはパルデアの大地は広大すぎるでしょう、まあみつからなければ瑣末な問題です。
「瑣末なって」
仮にも教員を目指す者の言葉じゃないぞとお叱りの言葉を受けるが、そんなのは今更でしょうと自分の前に乗せた相手に告げる。
「確かに、無断欠席に逃亡ではあるが」
「あっ学校には休学届けを出してます、ちゃんと受理されましたよ」
なので無断とは少し違うのですが、でも誘拐と言われたら否定しきれませんねと返す。
「なぜそうなる」
「断れないことを見越して人を連れ去っているわけですんで、見ようによってはそうでしょう」
同意はしているとムッとして言うので、ならば駆け落ちと言いましょうかと気楽に答えると、変なことは口にしないでくれと少し赤くなった顔でつぶやく。
「まあなんでも結構、逃避行には違いありませんし」
さてどこへ行きましょうかと相手にたずねると、別にどこへ行こうと構わないと投げやりに返されるので、せっかくの二人旅なのでなにか目標があったほうがいいですよねと、勝手に話を進めさせてもらう。
「そうだ、パルデア十景ってあるじゃないですか、実はほとんど見たことがありませんで」
一度は制覇しておきたいんですよと話すと、そんな楽しいものでもないぞと苦い口調でつぶやく。
「行ったことあるんですか?」
「二箇所くらいはな」
気楽に行ける場所ならば行ったことはある、しかしさほど感動するようなものではなかったと言うので、それも行ってみなければわからないじゃないですか、残りの八つの中には素晴らしい景色があるかもしれませんですよと言えば、あなたが行くと言うのなら止めはしないとつぶやく。
「では決まりで」
ここから一番近い場所はオリーブ大農園なので、方向を確認してモトトカゲくんに指示を出して走って行く、久方ぶりの遠出で気をよくしているのかそこそこのスピードで、地肌があらわになった道を走っていく。
交通を考えて広い道を整備するべきだという声と、ポケモンの生息域を守るべきであるという声がぶつかり合い、鉄道の計画が持ちあがっては消えていく地域である、遠くに見えてきた農村部を傍目になにもない場所だぞと、溜息混じりに言う。
「おや行ったことがある場所でしたか?」
「いやワタシの実家がここと似ている、畑か山か裾野の森しかないと言っただろう」
都会から来た者なら別としても、そんな田舎から来た者が畑に感動することもあるまい、と至極真っ当な評価を突きつけられてしまう。
「そういえばオリーブ祭なんてものもあるんですよね」
残念ながら現在は開催時期ではないので町は静かなものだったが、それでもオリーブ畑を見に来たのだろう人はちらほらといた、人混みと言えるほど混雑しているわけでもないので、コルさんも少しだけなら歩こうと町の入口でモトトカゲくんを休ませて、二人で少しだけ散歩をした。
走って視界に流れていく景色と違って、ゆっくり歩いてみると風景は緩やかに移っていく、自分がここにいるのだとはっきり自覚させてくれる。乾いた風が木々の間を抜けてくる合間に、草木の香りを連れて運んでくる。いい空気ですよと言うと、田舎の香りだなと辛辣な乾燥が戻ってきた。
「のどかでいいと思いますけどね」
「暮らしてみると、それほどでもないさ」
刺激はないし退屈なだけだ、作物も草も自然なままに生えるのではなくて徹底的に管理されている、人々が優しいと言う者もいるようだけど、とんでもない、対面ばかりを気にして意固地になっている者のなんと多いことか。
「まあ古い家というのは、なにかと面倒事がついて回るものですね」
「いやまあハッさんの家ほど、大変ではないかもしれないが」
悪いことを思い出させてしまったと考えたのか、黙りこんでしまったコルさんにでもすごいですよ、あちらの端まで全てオリーブ畑なのでしょう、ここまで広大な畑は小生初めて見ましたと努めて元気に返す。
「オリーブは乾燥地帯に適した木だからな、ここらの気候によく合っていたんだろう」
「あんまり田舎を好いてるわけではないのに、コルさんは植物についてはお詳しい」
矛盾していると思うかと怪訝そうな顔で問いかけるので、そこまでは思っていませんよと苦笑して返す、ただ不思議だなとは思うけれど。
「ワタシが愛しているのは自然のあるがままの姿だ、飼い慣らされて切り落とされた姿ではない」
「それはわかりますよ、でもこれもまた人と調和した植物の形なのでは?」
確かにこの規模は自然発声で生まれる森とは違うでしょう、区画を整理して人の手で生活のために実を捧げる木々たちが本来あるべき姿ではないことくらい、誰の目にも明らかではありますが、だからこそ感謝のために祭が開かれている、彼等と共にあるために人が選んだ道ではないのか。
「それは」
「コルさんの考えを否定したいわけではないのです、ただ自然のあるべき姿ばかりでは、他の何者かが生き辛いのではないかと」
黙りこんでしまったコルさんに、せっかくですから名物くらい食べて行きませんかと声をかけてみる、確かに食事は美味いだろうがいいのかと気にかけている彼に、旅の資金ならたぶんどうにかできるかと思いますと胸を張って返す。
「なんの根拠があって」
「こういう旅には、往々にしてポケモンバトルがつきものです」
まさか賞金で旅を続ける気か、勝ち続けるほどの自信があるのかと驚いた顔をされるので、小生も相棒たちもそれなりに技を磨いてきたもので、その点についてはよほどの手練れでない限りは大丈夫だと思いますと返す。
「いやでも」
「お兄さん、バトル自信があるのかい?」
それなら息抜きに相手してくれよと、声をかけてきた農場で仕事をしているらしい男性に、いいですよと笑顔で答えて開けた広場へ移る。まだ少し心配そうなコルさんを前に、これでも竜使いの端くれではありますから、勝負事においては全力で立ち向かいますともと強く言い切る。
いざと向き合ってお互いに投げ合ったボールから飛び出したのは、いつも先陣を任せているオンバーンだ、相手の草タイプのポケモンに対しては有利を取れるものの、搦め手も考えて戦略を立て指示を出していく。
さほど手こずることもなく、難なく勝利を納めいやあお兄さん強いねと笑顔で握手を求められる、食事処を探してるんならと近くのいい店を教えてもらって、行きましょうか待たせていた相手に声をかけると、呆然としていたらしいコルさんがあっと小さく声をあげる。
「どうしました?」
「いや、その、ハッさんが思っていた以上に、強かったもので」
正直とても驚いたと顔を伏せてつぶやくので、だから言ったじゃないですかこれでも多少は修行を積んだ身なので、実力に自信はあると。
「そうだな、考えてみれば当たり前のことだった」
あれだけの数のドラゴンタイプを手持ちに入れて、誰もがあなたの指示に従うのだ、ただ長年暮らしてきたという信頼だけでは説明がつかないことだったと、深い溜息と共に吐き出すと、自分はあまりバトルの方面はからっきしだったからと恥ずかしいようにつぶやく。
「そういえばコルさんが戦うところ、見たことなかったですね」
「制作にばかり時間を使っているからな、それに草タイプのポケモンたちは、あまりバトルするのは好まないように思えて」
「先ほどのかたも草タイプを使ってましたが、ポケモンくんはやる気に満ちてましたよ」
意外だったとつぶやくコルさんに、せっかくの旅なんですからバトルしてみますかと声をかける。
「いやワタシごときでは、ハッさんの練習相手にもならないだろう」
「小生でなくとも、出会ったトレーナー相手でもいいし、野生の子たちに出会うこともありますし」
仮に負けてしまったとしても近くにポケモンセンターはあるんです、何事も経験ですよと言えば、その前に彼等の意志を確認してもいいだろうかと小さな声で問われる。
「はい、小生とて無理にとは言いません」
戦いを望まない者同士の争いは互いに不幸でしょうから、とはいえ答えはなんとなくわかりきっているのですが、彼が連れて来ていたミニーブくんとチュリネくんを呼び出すのを、黙って見守ることにした。
「ポケモンバトルをしてみないかと聞かれたんだが、ワタシはあまりきみたちを戦わせてこなかった」
急にバトルをと言われていやじゃないかとたずねるコルさんに向けて、むしろやる気を滲ませている二体を前に、困っているのか及び腰になっているので、いざとなったら小生がアドバイスしますのでと声をかける。それならばと覚悟を決めたのか、近くに飛び出してきたホシガリスくん相手にバトルを挑む。
腰が引けてはいたものの意外と彼の指示は的確だった、二対一であることを差し引いても充分な力を発揮して勝利を収めた。
「勝った」
「はい、素晴らしい勝利でした」
ミニーブくんもよく頑張りましたねと声をかけると、そうだ傷ついたのではと心配そうに声をかけるものの、この程度は平気だと言わんばかりに元気な声で応じてくれる。
「ポケモンセンターに行って、お昼にしましょうか」
傷ついて疲れたポケモンたちを回復して、昼食のサンドイッチをテイクアウトして、みんなで食べられるように外のテーブルに移動する。
「コルさんバトルの筋いいですよ」
「そうは思わないが」
いえ草タイプの特性を理解して技を選択されていた、攻撃技だけの力押しだけではない戦略のセンスを感じましたですよ。
「そもそもバトルセンスは座学だけ身につくものではありません、実践を通して磨かれていくものです、相棒たちとあなたとの間で作られる信頼の証です」
失敗しても負けてもいいじゃないですか、彼等もやる気を見せているようですし、気分が向いたときに挑戦してみては、もちろん無理には言いませんけれども。
「ミニーブくんたちもやる気を見せてくれていますし」
「身を削るのに、どうして」
「経験を積むことで彼等には進化が待っていますから」
より強くたくましい者が生き残る、強者の意見だと一蹴するならそれまでですが、彼等は基本的には成長を求める生き物なのだ、それも個体によるところではあるものだが、コルさんの手元にいる子たちは強くなりたい子たちであるらしい。
「今まで一緒に過ごしてきた割に、ワタシは彼等のことを理解していなかったのか」
ダメな主で申しわけないとつぶやくコルさんに、でも気づくことができましたよ、彼等の更なる成長のために少しだけ手を貸してみるのはいかがでしょう、と提案すれば自分にそんなことができるだろうかと難しい顔をするので、気負いすぎずに小生がサポートしますからと声をかける。
「花を咲かせて実をつけたい、そう願うのは当たり前のことか」
今までしたことはないが、彼等がそれを望むのならばと前向きに考えてくださるので、それならば次の目的地に行くより前に、少し遠回りしましょうかと提案する。
「パルデア十景を巡る道中には、レベルの高いポケモンも多く出ますから」
特にオージャの湖やナッペ山へ向かう道中は手強いですよ、かつて自分も修行として送り出された場所でもあるので、現地のポケモンたちの強さは身に染みている。
「それなら滝くらいは見たんじゃないか?」
「見ていたんでしょうけど、景色を楽しめるほど当時は余裕がなかったのですよ」
確かに水辺で休むことはありましたけど、自分を鍛えるためと放り出されたようなものだったので、あまりいい思い出とは言い難い、来る日も来る日もただバトルに明け暮れた、許しが出るまで帰ることもできなかった。そのおかげで手持ちのポケモンたちとは確かな絆で結ばれた、だが幼い心に残った暗い思い出である、故に光を受けてゆっくりと歩いてみたいというのが本心。
「そんなトラウマがありそうな場所に、わざわざ行きたいのか?」
「改めて訪ねると新たな発見があったりするものですよ」
あと普通に名所と呼ばれる場所を記憶にないのは、なんだか癪に触るのでちゃんと記憶に留めておきたいのですよ、そう返せばハッさんは変なところで肝が太いなとつぶやく。
「しかしいいのか、ワタシにつき合っていては目的の達成まで、かなり時間がかかるが」
「それで結構ですよ、小生としてはあなたの時間をいただけるなら、それで充分です」
このまま北上するか、ベイクタウンへ向かうつもりだったのだが、一転して方向を変えて地図を南下し、南4番エリアからコサジタウンに向けての道へ切り替えることにした。流石にずっと二人乗りというわけにはいかず引き返す道のりは歩きを提案すると、それはそうだろうなと呆れた顔で受け入れられた。コルさんのほうが小柄で足も遅いのでゆっくりした行程になってしまうものの、自分にとってはそのほうが都合がいい。
衝動のままに飛び出したものの、なにか算段があって連れ出したわけではない。どうすれば彼の病が安らぐのかもわからず、ただあそこに置き去りにすることもできず、命を投げ出そうとする彼を繋ぎ止めるために取った行動である。正直に言えば行き当たりばったりもいいところなのだ。
地図上で目標になる目的地を設定できたのはよかった、思いつきとはいえ行き先がわかっていると道筋は立てられる、あとは時間が解決してくれることを祈るばかり。
南4番エリアで野営のためにテントを張っていると、修行時代もこうして過ごしましたねと手伝ってくれるポケモンたちに声をかける、古株の子たちからすれば少し懐かしかったのか、いくつも楽しげな声が返ってきた。
「ドラゴン使いの修行とは、どんなものだったんだ?」
端で夕飯の準備をしてくれていたコルさんからの疑問に、面白いものではなかったですねと答える。修行なのだから普通は辛く厳しいものではという疑問に対して、自分の望む道であるならばどれほど険しく苦しい道でも、本人はそれに耐えられるものです。
でも竜使いの修行は自分にとっては、そのようなやりがいのある道ではなかった。
「この話、あんまり楽しい話ではないんですか、聞きますか?」
「教えてくれるなら」
あんまりにも旅慣れているから、どんな経験だったのか知りたいと言う彼に、それならば夕飯を取りながらにしましょうと、組み立ての終えたテントから離れて食事の用意を手伝う。
昼にバトルをしたかたが分けてくれた野菜を入れた、簡単なスープとパンの夕食を焚き火を囲みながら食べると、ますます孤独に戦ったあの日々を思い出してしまう。
「竜使いの修行というのは、昼に少し話しましたがただバトルをするだけなんです、来る日も来る日もずっと」
ドラゴンポケモンは他のタイプと比べて成長が遅い、手懐けるにしても気性が荒くトレーナーの技量が問われるものだから、そんな彼等を従わせ独り立ちさせるためにと、ただひたすらに戦い己を鍛えるという名目で修行に出るのが、小生の家の決まりだった。
「野生のポケモンでも、トレーナーでも規定の回数の勝ちを取るまでは終われなくて、一敗するとその負けを勝ち数から抜かれるので、どう足掻いても勝つしか道がなかった」
「それをオージャの湖や、ナッペ山で行っているのか?」
「はい、力こそが全てですから」
強い者になるようにと指導されてきた、生まれたときから特に疑問に思うことのない風習だったものの、いざ自分で体験するとあまりにも苦しくて辛くて。
戦いを挑む者がいなければ自分は勝利を重ねられない、でも同じところに留まり続ければ周りの野生に暮らすポケモンたちは、やがて自分に近寄ることはしなくなる。恐れるように草むらへ逃げこんでいく彼等を見送り、強くなったのだという実感と共に、なにかが間違っているのではないかという思いもまた生まれた。
バトルそのものがいやだったわけでないんです、ただ勝ちという結果ばかりを優先するその方針は、本当に正しいのだろうかと疑問が生じたのも事実で。
「小生とバトルをして敗れたトレーナーの中には、悔しい顔をするかたもたくさんいました、でも負けても笑顔でいるかたも数多くいました。勝者を讃えることは教えられていましたが、ある人があまりにも手放しで褒めてくれたもので」
気になって聞いたのだ、あなたはバトルで負けてはいけないとは思わないのかと、挑む以上は勝たなければいけないのではないのかと。
「負けた相手に聞くのは酷な質問だったと思うんですが、そのかたは非常に優しい人だったんですね、子供だったのもありまして答えてくださいましたよ」
一度の勝敗にそれほどの価値は見出していない、ただ負けても誰かのためになる、自分のためになることだってあるし、ポケモンのためになることだってある。確かに勝ちたいという気持ちがないわけではない、でも経験することがまず大事なのだと。
「大切な教えでした、強さと勝利だけを追い求めない、経験という過程をまず大事にすること、そんなこと言われたことがなかったもので」
気楽な人でした、ギターを片手にパルデアを旅してメジャーデビューをしたいのだと、自分の音楽を聴いてもらうためだけに旅を続けるという、彼に興味が出て昼食を勧めるとお礼にと少しだけ曲を聴かせてくれた。
「その人のギターを聴いていると、思わず泣いてしまいましてね」
あまりにも優しい音だった、勝利に取り憑かれてささくれた心に染み入るような、柔らかで美しい音だった。強さではないものを追い求めていたその人は、自分の見えていなかった世界を教えてくれて、それでも自分に感謝してくれたのだ。
「どうして?」
「使っているピックはドラゴンの鱗で出来たものだったけれど、本物のドラゴン使いに会ったのは初めてだったと」
こんなに強く逞しいポケモンたちから、あんなに優しい音が生まれるなんて驚いたと、この楽器を選んだのに間違いはなかったと自信が持てたと言われまして。別れ際に一つ荷物を託された。
「小さな携帯ラジオでした、太陽光で充電できるから昼に外に出しておけば、夜の時間に好きな音楽を聞けると、チャンネルまで教えてくれて」
時折自分の曲も流れるからよければ聴いてくれると嬉しいと、辛い日常の助けにはならないかもしれないが、少しでも忘れる時間ができればいいと。
「ハッさんが音楽の道へ向かったのは」
「はい、完全にその人の影響ですね」
それでよかったのです、自分の道はただ一つだと思いこんでいた、このまま辛く険しい山の頂に立つことが正しいと大人は言いました。でもたった一つの出会いで、世界は小生の世界は確かに変わった、竜は翼のある生き物、そうであるならばどこにでも飛び立っていいのだと知った。
自分ではまだまだ誰かの人生を変えるほどの素晴らしい演奏も、夢中にさせるような曲も生み出せていないのですが、弾いているだけでも自分の心は癒えるもので、そんな不思議な力に引き寄せられてしまったのだ。
「ハッさんのギターも、優しい音がするぞ」
「ありがとうございます」
憧れのまま隠れて練習した甲斐があったというものです、とはいえ自分はあの人のようにデビューの芽すら掴めていないんですけれども。
「パルデア十景を見るのなら、隈なくこの国を歩くことになるんだろう」
「そうですね」
「なら、ハッさんも同じように演奏を続けてみればいい」
少なくとも自分は観客として同行することになるが、それでもいいのならと続けられるので、それは嬉しい話ですねと返した。
コサジタウンと呼ばれるエリアは、さほど開発の手が入っておらず森の中にぽつりと民家が並ぶ姿が、ちらほらと見えるような場所だった。
「なんだか落ち着く」
「そうですか」
海に面しているので鳥ポケモンが潮風に乗って飛んでくる、その風が木々を揺らす音が体に染み入るようで心地いいと言う。人気も少なくて誰かの声に悩まされる心配もない、キャモメの鳴き声はあんまり好ましくはないが、それくらいしか心をざわつかせるものがないのは珍しいと。
コルさんの手持ちのミニーブくんもチュリネくんも、バトルに向かって勝って負けてを繰り返しつつも、少しずつ経験を積んで成長していることがわかったものの、どうにもタイプ相性に苦しむ場面は多々みられる。
「飛行タイプや虫タイプには、どうしても遅れを取ってしまいますね」
「弱点とはそう簡単に克服できるものではないな」
傷ついた彼等の手当をしながら苦い顔をするコルさんに、勝てないと決めつけるのはまだ早いですよと返す。
「有利な相性で戦うことも大事です、しかしそれと同時に彼等にも可能性はあるでしょう」
「もしかして進化のことか?」
その通りです、草ポケモン以外のタイプが追加されたり、そうでなくとも覚えることのできる技が増えて攻撃の範囲が変わったり、彼等はまだまだ可能性を秘めた存在なのですよ。
「そういうものか」
「はい」
ミニーブくんはそろそろ進化してもおかしくないですよと続けると、そうなのかと驚きつつも相手を持ちあげてたずねる。
「元から経験は積んでいたので、最近のバトルでかなり進化が近くなったのではないかと」
「そうか、やたらと前に出たがる理由はそれもあったのか」
新たな姿とはどういったものか、楽しみだなと声をかけるコルさんに対して、ますますやる気を見せてくれているので、もう一戦挑戦してみますかと声をかけてみる。
「そうだな、やるだけやってみようか」
そろそろ行こうかと声をあげた我々の頭上でキャモメの鳴き声が響く、縄張り争いでもしているのかと思った矢先、木の枝が揺らされて上からなにかが落っこちてきた。
目の前に落ちてきた林檎のように見えたカジッチュは、落とされた事実と人にみつかった驚きからか、コルさんに向かって飛び出そうとしたので、慌てたように間にミニーブくんが立ちはだかりそれを阻止する。
こんな急なバトルがあるのかと狼狽してる相手に、木の上で暮らすものに取っては普通のことですよと、隣に立ち落ち着くように声をかける。
「ミニーブくんはやる気のようです、まずは指示をしてあげてください」
「わ、わかった」
邂逅の驚きはあったものの、流石にしばらくバトルを続けてきただけはある、動揺は見られたものの指示は的確だった、場数を踏んで慣れてきたのだろうと想像できる。
「コルさん、あの子を捕まえてみる気はありますか?」
「急にどうした」
ボールならいくつか持っているので、よければお使いくださいと差し出す。あんまり乗り気ではなさそうだったものの、カジッチュと出会うのは珍しいので是非にと勧めると、わかったとモンスターボールを弱っていた相手に向かって投げた。
「一投で入るとは、運がいいですね」
「そうか」
なんだか一気に疲れたとつぶやくので、ハプニングと言って差し支えない出来事でしたから仕方ないですよと、背中を撫でてぐらぐらになった体を支えるも、それ以上はうまく動けないらしいので、もう今日はここで休みましょうと提案する。
「いいのか」
「ええ、無理はしてはいけませんよ」
それにコルさんも落ち着くと言っていたでしょう、近くで休めそうな場所を探してきますから、しばしここでお待ちくださいねと声をかけて周囲を探すと、近くに住む人から旅の人が休めるようにと空き家を貸していると話を聞けた。
これは助かったと元の場所まで戻ると、置いてきたはずのコルさんの姿がなかった。
目を離すべきではなかったと後悔も立たず彼の名前を叫び走り出してしばらく後、ハッさんと小さく声が返ってきた、なぜか頭上から。
「コルさん、一体なにを」
「すまない」
ミニーブを入れたボールを取られたので、どうしても追いかけなければいけなかったと、木の上で固まっている相手とその先にいるタマンチュラを見つめ、ずいぶんと悪戯好きな子と出会ったようだと溜息を吐く。
「小生が取り返しますので、そこから動かないでください」
あんまり穏やかな森に出したくなかったのだが、オンバーンを出してボールを素早く取り戻し、相手を返り討ちにする。修行を積んだ身の上であれば造作もないことではあるが、トレーナーとしての経験が浅い彼にとっては、このようなハプニングは処理しきれない出来事だったのだろう、木の上で身構えている相手を降ろしてやってほしいと追加でお願いすれば、心得たとばかりに飛びあがり抱きかかえて戻って来てくれた。
「あの、すまない世話をかけて」
「心臓が、止まるかと思いました」
でも追いかけないわけにはいかないだろうと主張する相手に、そうであっても恐ろしいものですよと返す。
「あと、ポケモン相手に生身で向かわないでください、コルさんにはミニーブくんの他にも仲間がいるのですし」
ハッさんなしに急に戦いを挑む勇気がなかったのだ、許してくれと小さな本当にささやくような声でつぶやくので、無事だったから今回はもう不問にしますともと返すしかない。
「とりあえず、今日は休めそうな場所がみつかったので移動しましょうか」
もういなくならないでくださいよと強く言って手を差し出せば、黙ったまま大人しく繋いでくれるので、ゆっくりと目的地に向けて歩き出す。
貸し出しているという建物は、少し古びていたものの雨風はしっかり凌げるし、ベッドもしっかり用意されていたのでありがたく好意に甘えることにした。食糧は手持ちのものがあるし、キッチンもなんとか使えるようだ。
「シャワーも使えるようです、よかったら先に使いますか?」
「いや、ハッさんが先に入ってくれ」
木に登ったりして流石に汚れているのではと指摘すると、そんな気にするほどのものではないと首を横に振るので、じゃあ一緒に入りますかと冗談めかして聞いてみれば、いいぞという返事が戻ってきた。
「えっ、いいんですか?」
あまり広いものではないですし、男二人ですよと念を押して聞けば入れないわけじゃないんだろう、自分は小柄だしなんとかなると言う。
「コルさんがそれで構わないのであれば」
行きましょうかと着替えとタオルを用意して二人して服を脱いでいくと、病的なほどに白く映る相手の肌に目眩を起こしそうになるのを耐える、二人で暮らし始めてからも着替えなどは何度か目にした、風呂に入った相手を気にかけていたことも一度ではないのだけど、こうも惜しげもなく晒されているとやはり心配になる。
「入らないのか?」
「いえ、入ります」
先にどうぞと彼を入らせて自分も続くと、後ろでドアを閉めて狭い浴室内で彼と向き合う。シャワーノズルを掴んで水を出せば、身を冷やすような冷たさだったのでしばし水を貯めて湯に変わるのを待つ。
「あの」
「どうしました?」
そろそろ触れてると心地いい温度に変わったかなというくらいで、声をかけてきた相手に向き合えば、言うべきか迷っているようだったので、狭いならやっぱり一人で入りますかと聞けば、そうじゃないと首を横に振られる。なにか言い難いことでもあるが声に出せないでいるらしい相手に、早いところ温まりましょうかと湯に変わったシャワーを浴びて、自分の体を洗って汚れを落としてしまう、髪を濡らせば指に絡むそれが砂埃で汚れていたことに気づき、やはり風呂を優先してよかったと思う。
「ハッさん」
湯に当たって血色のよくなったコルさんに、どうしましたと優しくたずねると、また間が空いたものの決心を固めたのか、短く息を吸いみこちらを真っ直ぐに見返す。
「ワタシになにか、してほしいことはないか?」
「えっと、それはどういう意味で」
問いかける小生の手を取り自分の胸へと持ってきた、しっとりした体温と早く動く心臓の音をしっかりと掌を通して伝えてくる。
「ワタシのことを、愛していると言った」
「そうですね」
「嘘じゃないのか?」
ただ自分を繋ぎ止めるためだけに口から出た言葉ではないのか、もしそうだとしたら正直に教えてくれないか、ああするしか止める術がなかったのはわかっている、嘘つきとも卑怯者だとも思わないから、だからと今にも泣きそうな声で告げられ、決して嘘ではありませんよと努めて穏やかな口調で返す。
「あれから何度か考えてみたんだ、ワタシはあなたのような人に愛されるような、そんな素晴らしい人間には思えない」
「そんなことはありませんよ」
「いつも迷惑をかけてばかりで」
「コルさん、そういう話は」
「ワタシが役に立てるというのなら、好きにしていいが」
どうすると問いかける視線に、緊張と恐怖の色が混じっているのを感じ取り、深く息を吐く。決して怒っているとは思われたくはない、ただここで茶化すわけにも、間違っても誘いに乗るようなこともしたくはなかった。
「小生はあなたを愛していますが、無理に手に入れたいわけでは」
「でも、こんなことくらいしか、ワタシに返せるものは」
「そういう自己犠牲で怯えるあなたを手にかけても、小生は嬉しくないのです」
あなたが同じ想いだと言うならば考えを改めますが、少なくとも今は違うでしょう、ならばそんなふうに自分を粗末に扱うことは許しません、こちらの気持ちを確認したいのならばそう言っていただければ済んだ話。
「見返りを求めての行動ではないのです、そもそもあなたは今もずっと小生の我儘につき合っている」
なにも強制された記憶はないと否定されるも、そんなわけがないとこちらも首を横に振る。小生はあなたに生きることを強いています、死にたいと望まないように願わないように、自分の全てをかけて繋ぎ止めているにすぎない。
胸に押し当てられた手を滑らせ彼の体をなぞると、ビクッと小さく震えるので、そもそもこんなにも怯えていらしては、事の最中にきっと罪悪感で自分のことを責めてしまうと言う。
「いいのですか、あなたの前でみっともなく泣きますよ」
「それは、言い過ぎでは?」
いえ自信を持ってそうだと断言できる、そこまで胸を張って言われても困ると視線を逸らしてつぶやくので、コルさんが真に愛してくれるまで時間をかけて待ちますので、それまでは己の気持ちに正直で結構なのです。
「それでいいのか?」
「はい」
本当におかしな人だと力が抜けたようにつぶやく相手に、よく言われますよと笑顔で返せば、大きなため息をつき視線を下に落とす。
「意気地なし」
ぽつりと落とされた責めるような声を、聞こえないふりしてやり過ごすこともできただろうに、自分の中に満ちていた優しさの水がひっくり返された。
自分よりも少し低い位置にある彼の顔を片手で掴み、視線が絡むように上へ向き合わせると、薄く開かれた唇へ噛みつくようにキスをする。
「ふっ、んぁ!」
見開かれた緑の瞳から驚きが伝わる、逃げようともがく体を掴んで引き寄せると、息を奪うように相手の中へ舌を差し入れて、中を蹂躙するように上顎を舐めあげ、溢れてくる唾液か流れ続けるシャワーの水かもわからない温いもので、口元がどんどん汚れていく。このままずっと貪ってやろうかと、縮こまった舌に自分のものを重ねて奥へと飲み干す気負いでいたら、限界そうに小刻みに震えているのに気づき解放する。
「あんまり煽ると、おそらく骨抜きどころか、骨すら残さず食い尽くしますが、耐えられます?」
「はぁ、あっ……」
耳まで真っ赤に染まり、必死に息を整えているコルさんに向けてそう告げると、ひっと小さく喉から悲鳴があがるものの、黙って何度か頷くので、わかってくださったならそれでいいですと頭を撫でる。
「少し頭を冷やしてから出ますので、先にあがってくれますか?」
わかったと絞り出すような小さな声でつぶやくと、脇を抜けて外へ出てくれたので、その場で力なくしゃがみこむ。
なにをしているのだという内側からくる理性も叱責に、やってしまったという後悔と、とはいえ自分のせいではないという言い訳と、思ったよりも細くしなやかだった肌の感触と、揺れる潤んだ緑の瞳を思い返して、本当になにをしてるんだと二回目の怒りの声に叩かれる。
「小生もなんだかんだ大人気ない」
それは最初からそうですけども、でもこんな簡単に崩されるとは、心の動きも感情の管理も整理もつかないものだな、なんて思いいやになる。しかし告白の真意に関しては、これで嘘ではないと正に身をもってわかってくれたでしょう、前向きに考えようと思い直し、溜めてあった冷えた水で顔を洗ってから風呂から出れば、タオルに包まった状態でヘタリこむコルさんの姿があった。
「どうしました?」
「あっいや、その……」
湯冷めするし早く着替えたほうがいいですよと言うも、その場から身動きの取れないらしいコルさんに、そんなにショックでしたかとおそるおそるたずねると、小さく首を振ってから、しばし後に腰が抜けたと虫の羽音くらいの声で言う。
「そんなに、ですか」
挨拶では済まないキスではあったものの、そこまで砕けるほどだったろうかと疑問に思うものの、まあ精神的にガタガタだったところに、トドメを刺したようなものかと考え直して、とりあえずそのままだと風邪を引くのでと声をかけるも、本当に身動きが取れないらしく、これはダメそうですねとタオルに包まった相手をかかえあげ、そのまま寝室のベッドへ連れていく。
「休んででくださって結構ですからね」
もうなにもしませんよと震える頭を撫でると、小さな声ですまなかったとつぶやく。
「小生が本気であると伝わってくれたなら、それでいいのです」
「それはわかったが、そうじゃなくて」
初めてだったもので、上手くできなくてすまないと言う、その言葉の意味するところを一拍置いてから脳が理解し、今度はこちらの頭が沸騰しかける。
「コルさん、あなたファーストキスだったんですか!」
「そんな驚かなくても」
驚きますよ、なんでそんな、大事なこと先に言わないんですか、もっとあなた怒っていいじゃないですか、あんな自分勝手に乱暴に奪ったようなものを。
「ごめんなさいですよ」
「いやワタシは怒ってはいないが、ハッさん?」
ごめんなさいとボロボロと溢れ出した涙を見て、ギョッとしたように固まると、だから怒っていないと言っているだろうと、さっきとは反対に震える手で小生の頭を撫でてくれる。その優しさに甘んじてはいけないと思いつつも、不器用ながらも滑っていく指の感触が心地よく、落ち着くまで待ってくれていた。
「罪悪感で泣くというのは、あながち間違いではないか」
「そうでしょう、小生には到底無理です」
羞恥も罪悪感も全て時間と涙で流れ落ち、感情も落ち着いてから、遅くなってしまったけれども二人で食事の用意をし、みんなで席に着く。新しく仲間に加わったカジッチュくんだけは、少し居心地が悪そうではあったものの、新入りに興味深々らしい皆を見ていると、打ち解けるのは時間の問題だろうと思った。
「ワタシはどうなってもいいのだが」
「ヤケを起こして後悔するのはよくないですよ」
あなたを傷つけたとあれば小生も傷つくので、お互いにとってよくないでしょう、欲に溺れる行為は避けていきたい。
「なので、今後はそういう変な気を回さないでください」
理性が切れてしまったら次こそなにをするかわかりませんので、と言えば肝に銘じておこうと続く。
それ以降は会話が続くでもなく静かに夕飯を終えて、構ってほしそうに集まって来たポケモンたちの相手をしていると、そうだと思い出したように声をかけられた。
「今日捕まえたカジッチュを少し調べたんだが、ドラゴンタイプなのか?」
「そうなんですよ、草とドラゴンを併せ持つ珍しい子で」
育成すると力強い味方となってくださると思いますよと続けると、手の中に抱いたカジッチュを見返して、ワタシにはあまり自信がないと首を横に振る。
「なのでハッさんが貰ってくれないか」
「小生が、ですか?」
「手持ちに空きがあるなら」
別にそれは構いませんが、いいのですかと改めて聞けば、確かに戦力としては申し分ないのだろうけれど、自分で扱えるとも思えないと改めて告げられる。
「あとせっかくだから、ハッさんも一から誰か育ててみないか」
皆強くて頼りになるものの、彼等を見ているとあまりにも高みにいるようで、成長の比較がわからないのだと言う、それは確かに指摘されてみればその通り。
「ではこの子は小生が責任を持って育てます」
「そうしてくれると助かる」
よろしくお願いしますと声をかけると、心得たとばかりに一声鳴き声を返してくれるので、これもまた一つ責任の伴う仕事だなと襟を正す。
ゆっくり体を休めて翌日、初めてコルさんとバトルをした。
流石にトレーナー同士の戦いはまだ恐ろしいと言うが、彼等の成長のためにも何事も経験ですからと、お互いに一体のみ、昨日託されたカジッチュくんと彼についてくるミニーブくんとの一騎討ちで、なんとか承諾を得られた。
「ではいきますよ」
「あ、ああ」
向かい合ってボールを投げる、この世界ではバトルも一つの対話である。どれほどお互いを信じているのか、仲間たちにかけた時間と期待、そして経験が声に現れる。
自分が傷つくことには無頓着である彼は、手持ちの仲間が傷つくことには臆病になる、優しさにも取れるもののそれだけではいけないのだ。こちらの虫技によって傷つくミニーブくんに、顔を青くするものの気をしっかり持ちなさいと声をかける。
「大丈夫ですから」
「わかった」
次の攻撃の指示を出す声に迷いはない、狙ったのかそれとも偶然なのか急所に当たって倒れるカジッチュくんに、よく頑張りましたと声をかける。
「勝った?」
「はい、見事な勝利ですとも」
よかったと緊張が切れてその場に座りこむコルさんの前で、嬉しそうに跳ねるミニーブくんの体から、急に光がこぼれ出す。やはりもう一戦というところでしたかと思うと同時に、びっくりしているコルさんのそばに向かうと、進化を果たしたオリーニョくんが一声大きく空へ向けて鳴く。
「これが進化」
「はい、素晴らしい成長ですね」
いざ自分の仲間に起きると驚くものだとつぶやくものの、その顔はどこか誇らしく薄らと笑みが浮かんでいるのが見て取れる。
「その姿、とてもいいな」
是非モデルになってくれるかと声をかけると、誇らしそうに胸を張ってくれるので、早速準備しなければと荷物からスケッチブックと鉛筆を取り出し、早速とばかりに絵にしていく。
「本当に、素晴らしい情熱ですよコルさん」
芸術に偏った生活してたコルサさんにバトルを教えたのが、家の習わしでガチガチに修行をしたハッサク先生だったら、なんかええなって思ったんです。
ところでパルデア十景、残り九ヶ所あるんですよね。
今回で二箇所は終わらせる予定だったし、アマカジも手持ちに入れたかったんですけど長すぎたので分断しました、続きは次回で。
2022-12-06 Twitterより再掲