どうして僕は彼に協力するなんて、言ってしまったんでしょうか。
いえ別に自分から言い出したわけではないんですけれど。
しかし、恋愛相談とか知らないんですよ、むしろどうでもいいんですよ。
という事で僕は彼と彼のライバルと、二人の標的である人物について様々な人間から証言を集める事にしました。
もしもこの事件が、後世の役に立てるのならば……とちょっとした奉仕の気分も含めて。
まあ、こんな事でもしなければ……精神的にやられそうだったからっていうのもあるんですけれど。

ロールキャベツ男子・緑間さんとアスパラベーコン男子・青峰君

桐皇学園:桃井さつき氏の証言

私、大ちゃんの事ならなんでも知ってるつもりだったんだ。
小さい頃からずっと一緒だと、相手の事だって何でも分かったつもりになっちゃうものじゃない。元々、人の感情の変化には敏感な方だと自分でも思ってるし。リサーチ能力が売りの一つでもあるから、余計に人の事分かったつもりになっちゃって。
それに、大ちゃんってこう言っちゃなんだけど、やっぱり単純なところあるし?
だからこんなの予想外で……ううん、予想外って程でもなかったんだ、きっとあの子に対してそれなりの好意を持ってるんだろうな、ってなんとなくでも分かってたから。
でもね……大ちゃんにこんな一面がまだ残ってたなんて事が、本当に予想外で……。

「どうしましょう、桃井さん」
「うん、どうしようかテツ君」

大好きなテツ君から「相談があるんですが」なんて電話を貰って、本当に嬉しくなって。待ち合わせ場所のマジバに、隣に住んでる幼馴染みを引き連れて行ったら。その相談内容はこの可愛げのない私の幼馴染みで、しかもその相談がまたこの男には全く似合わない可愛い内容で。
「どういう事なの大ちゃん!好きな子にアピールできないって!」
「声がデケェよさつき!」
さっきまで顔真っ赤にして机に突っ伏してたから、そんな怖い顔して睨んできたって全然怖くなんてないんだからね!っていうか、今もちょっと涙目だし!何、そんなに恥ずかしいの?
「本当、小学生が近所のお姉さんに初恋したみたいな反応」
「何だと!」
「ああ、確かにそうかもしれませんね。初恋の女子中学生とか、中学生に失礼でしたね」
「ウルセーぞテツ!」
ああもう、そんなに大声で叫んだら周りの迷惑になるでしょ。なんて注意したら、凄く嫌そうな顔されて、それからテツ君に向かって「何でコイツに言ったんだよ……」なんて情けない声で尋ねるんだもん。
それでよくよく聞いてみたら、大ちゃんってば私じゃなくってテツ君にまず相談して、協力して欲しいって言っちゃったんだって。でもテツ君からしたらそんな話は凄く迷惑だし、それ以前に協力って言っても何したらいいのか分からないから、って事で大ちゃんをよく知ってて尚且つ女の子の私に相談してきたみたいなの。
本当、恋の相談ならまず私にしてくれればいいのにね。

「ところで桃井さんは青峰君の感情には気が付いてたんですか?」
「うーん。言い訳になっちゃうけど、やっぱり男の子同士だから、すっごく好きなんだろうけど恋愛感情に似た友情みたいな?そういうものだって思ってた」
最近、やけにかがみんと一緒にバスケさそってるなあ、とか。かがみんの話、よくしてるなあとか思ってたけど、まさか、こんなおっぱい大きな女の子が大好き、なんていう子供っぽい思考の男子高校生が自分と同じ体格の男の人を好きになるなんて、誰が予想すると思う?
この時ばっかりは、もっと大人にならないと理解できない感情とか、分かってあげられない事とかもあるのかな……なんて思ったけど。
でもね、ふとそこでよく考えてみたんだ。

だって大ちゃんが好きな相手はあのかがみんでしょ?
あの子、大ちゃんとすっごく似てるタイプだけど、でも何だかんだ言って素直で良い子だし。あの年で一人暮らしでしょ?苦労してる面がある分、大人だし面倒見だっていいし、料理もすっごい上手だって聞いてるし。
何より、二人共バスケが好きでしょ?自分の好きな事を邪魔してこないどころか、二人で一緒に高め合っていける、そんな関係になれそうだし。大ちゃんが好きそうな、グラビアに出てるような変な女の子よりも、ずっとかがみんの方がイイ子の気がするんだよね。
野生の勘って、こういうところにも働くのかな?
なんか、大ちゃんにとって一番求めるべき存在だと思うの、かがみんって。

「大ちゃん、私も大ちゃんとかがみんの事、応援するから!」
「さつき……」
「絶対に二人ってお似合いだと思うの、だから頑張ろう!」
両手を取ってそう言ったら、大ちゃんってば照れたみたいで私から顔を背けて「悪いな」なんて言ったんだ。多分、ありがとうって言いたかったんだな……なんて思ったら、素直じゃないけど、まあ子供っぽい可愛さもあるんじゃないかななんて思ったんだけど。

「まず、かがみんとは今どれくらい仲がいいの?」
「どれくらいって、週末にテツとバスケしに行くくらい?」
「ふーん、じゃあメールとか電話とかどれくらいの頻度でしてる?」
そう尋ねると、大ちゃんは目を逸らして、テツ君は呆れたように溜息吐いたの。あれ、何か変な事聞いたかな?もしかして何か地雷踏んだ?とか思った直後。
「青峰君は、火神君の連絡先を知りません」
「えっ、ええええ!」
衝撃の事実、って本当この事だよね。

私はてっきり、男同士だからアピールするの怖いのかな、だから奥手になってメールとかも簡素なのかな?って思ったんだけど、違ったんだよね。
大ちゃん、素で自分で連絡先聞けないくらい奥手で、テツ君いないと二人でどんな話すればいいか分からないとか、そんな風に思ってるくらい、とにかく消極的で……。
好きな子はイジメたくなっちゃうような天邪鬼な子供どころか、何話していいか分からなくて、できるだけ長く会話しないように気を配ってるみたいで?もう、なんていうか。

ビックリするぐらい、意気地なしだったんだなって。

「分かったわ大ちゃん、まだまだこれからやれば大丈夫だから。まずは今度、かがみんとデートしよ?」
「デートって、何すりゃいいんだよ?」
「何って、例えば買い物に行ったりとか、映画見に行ったりとか、一緒にご飯食べに行ったりとか」
まあ、今言った事を全部デートプランに盛り込んでもいいんだよ?なんて言ったら、大ちゃんは完全に顔を伏せて自分の膝の方見つめて。
「二人で、か?」
なんて力なく言うのよ?
これくらい普通に友達同士でもするでしょ?だから、自然なかんじで緊張せずに楽しんできたらいいんだよ、って言ったけど駄目なの。「何話したらいいか分かんねえ」「つーか、何て誘ったらいいんだよ?」とか。もう本当に、小学生の初恋みたいなウジウジ具合でもう、逆に可愛くなってきたっていうか。
「大ちゃんしっかりしてよ!そんな消極的でどうするの、かがみんが他の人とお付き合いしてもいいの?」
「それは……まあ、嫌だけど」
「じゃあ、ちゃんとアピールしなきゃ!失敗を怖がってちゃ、何も手に入らないんだよ?」
もう本気出して、応援しなきゃって思ったんだよね。

「だから、テツ君も一緒に頑張ろう」
「…………えっ?」
「大ちゃんの恋の応援隊、私が全面バックアップするから!」
だから一緒に頑張ろうね、って言ったらテツ君ちょっと微妙な顔して「分かりました」って言ってた。
ごめんねテツ君。
大ちゃんの応援は勿論したいよ、でもね、私だってそれなりの見返りが欲しいな……なんちゃって思ってたり?
それに……。

「早くしないと、みどりんに先越されちゃうしね」
「えっ?」
「はい?」
「……っえ?」

海常高校:黄瀬涼太氏の証言

皆でストバスに行った日の事だったんスけど。

その日は朝から都内で撮影で、それ終わったら買い物にでも行こうかな……なんて思ってたんだけど。黒子っちから「週末、皆でバスケするんですけれど、良かったら君も来ませんか?」なんてお誘いがあって、俺嬉しくってすぐに「行く!」って返信したんス。
皆は朝から始めるみたいだけど、俺は仕事だから後で合流するって事になって。昼過ぎに撮影が終わってから、そのまま約束してたストバス場に行ったんだけど。

きっとその日の俺は、おは朝占い最下位だったに違いないッス。

「黒子っち!会いたかったッス!」
皆を見つけて走って近づいて来たら、ハグしようとした相手に思いっきり避けられて、勢い余って火神っちに思いっきりぶつかちゃったんス。
「よう黄瀬、久しぶり」
「うん、久しぶりッス火神っち」
求めてた相手とは違うけど、男らしくどーんと受け止めてくれたのは嬉しいかな……なんて思ってたら、後ろから「ああ、ようやく来ましたか」なんてちゃっかり避けてくれちゃってる相手に言われて、軽く傷つきそうになったッス。
でも不幸はまだそこから始まったんだよね。

抱き着いた火神っちから離れようとしたら、なんか背中に強い視線を感じたんッスよ。それで、何か嫌な予感がして振り返ったら、俺を射殺すんじゃないのかってくらいの勢いで睨みつけてたんッスよね。
青峰っちが。
それで、アレ?って思って、でもまあ気のせいかな、そうだといいなと思ってたら別の誰かが近づいて来て俺の肩を掴んだんだ。
「次は俺と火神で組む話をしていたんだが、丁度いいから、お前は青峰と組んでやるか?」
「でもよ緑間、来て早々なんて黄瀬も疲れてるんじゃないか?」
「全然そんな事ないッスよ!大丈夫ッス」
そう答えると、じゃあそうするかなんて嬉しそうに言う火神っちは、本当にいつもと変わらないんッスけど、他のメンバーがなんか違う気がする?
っていうか、青峰っちの顔が怖い。いや、中学時代から比べて大分スレて人相悪くなってたけど、最近ちょっとマシになってきてたのに、それがどういうわけか今日はいつもよりも大分気合入って怖い。どういう事なんだろう?
でもとりあえず、これから俺とペア組むわけだし挨拶はしておこうかな……と思って近づいてみたんだけど。
「青峰っち、俺と組んで欲しいんッスけど」
「…………」
まさかの、まさかのしかとッスよ!いくらなんでも酷くね?そう思って、もうこれは当たって砕けろだ!と覚悟決めて。
「ねえ青峰っち、聞いてるッスか?」
両肩掴んで揺さぶってみたら、ようやく俺の方を見て……見たというか、完全に睨みつけてきたんッスけど、一人や二人くらい人間殺してそうな顔してたんッスけど、俺何かしたの?
「黄瀬ェ……お前、火神の事どう思ってるんだよ?」
「はあ?」
いや、どう思ってるも何も普通に良きライバルだし、良い友達だと思ってるんだけど?えっ、何違うの?なにかそこで地雷踏んだの?
「青峰君、黄瀬君に八つ当たりしたところで何も現状は変わりませんよ」
なんて黒子っちに言われて、ようやく眉間にバリバリ付いてた皺がちょっと緩んだんスけど、何なのコレ。っていうか俺ってやっぱり八つ当たりされてたんだ。本当、迷惑もほどほどにしてほしいんだけど。
とか思ったよね……うん。
「すみません黄瀬君、青峰君は今朝からご機嫌ななめなんです」
「まあ、そうだと思ったッス」

何で機嫌が悪いのか、この時尋ねなかったのを俺は後でめっちゃ悔いたッス。

「緑間!」
「任せるのだよ」
緑間っちの3Pが綺麗にゴールを決めて、嬉しそうにハイタッチをしている二人を見る傍ら、俺の相棒であるハズの青峰っちはそっちを恨めしそうに睨みつけてて、なんというかもう声をかけるのも躊躇われるわけなんッスけど。何なの、この人どうしちゃったの?
おろおろする俺は隣のベンチで休憩してる黒子っちやさつきっちの方に、ヘルプを頼もうかと視線を送ってみたけれど、それは完全にスルーされちゃって……もう何なの?
でも、来た当初からずっと様子が変な青峰っちや、それを知っていながらもヘルプを無視する黒子っち達の隠してた理由に気付ければ俺は巻き込まれなくて済んだのかもしれないッス。
……いや、むしろ気が付かなかった方が巻き込まれたりはしなかったのか。まあ今更何言っても仕方ないんだけど。

「なあ黄瀬」
「何スか?」
この時の青峰っちは俺じゃなくて、コートの向こうで汗を拭きながら、何緑間っちと高尾君と何か楽しそうに話をしてる火神っちを真っ直ぐ見つめてた。
「火神と緑間、どう思う?」
「えっ?」
いや、いきなり何を聞くんスかこの人は、って思ったよ。
っていうかさっきから話の流れが見えてこないんッスけど、とか思ったんだけどやけに真剣な顔してるからさ、でも、まあここは正直に答えた方がいいかな?って考えて。
「なーんか性格とか合わないっぽいけど、でも何だかんだで仲良いッスよね。プレイとか互いの欠点補ってるっぽいかんじだし、見た感じ悪くないコンビだとおも……」
言い切る前に言葉止まったッスよ。隣で蹲る青峰っちの顔がね……本当もう見てらんなかった。
なんていうかこの世が終わったっていうの?完全に両肩落しちゃって、ショボーンとしてるというか、本気でorzしてる人とか初めて見たし。
「だよな……あの二人、絶対に気が合わないとか思ってたんだけど、何気に仲良いんだよな。つーか緑間の野郎、いつの間に火神の連絡先交換してんだよ」
ブツブツと小声でそう言う青峰っちからは、さっきまでの殺気にも似た禍々しいオーラが消えて、なんというか情けないというか、めちゃくちゃ弱気なウジウジしたオーラが出てたんスよ。もう、これがあの青峰大輝なのかって疑うくらいで。
申し訳ないけど。この時ばかりは俺、この人に憧れるのやめて良かった……って本気で思ったッスよ。
でも、そこに至ってようやく気が付いたんッス。
ああ、もしかして青峰っちは。

「青峰っち、火神っちの事好きなんスか?」

そう言った途端、俺の両肩ポンと誰かの手が置かれて。
「黄瀬君」
「きーちゃん」
両方から別々の俺を呼ぶ声が聞こえたんスよ。

振り返れなかったッスよ。

だって、良いカモ見つけた……みたいな雰囲気がバシバシと背中から伝わってくるんだもん。恐怖ッスよ、知ってるはずの二人なのにまるでこれから食い物にされるみたいな感じがしたんッスよ? 「あの……黒子っち、さつきっち?」
「協力してくれますよね?」
「きーちゃんは、大ちゃんの味方だよね?だから私達の応援してくれるよね?」
必死にそう訴えかけてくる二人に、とりあえず何があったのか聞いてみたらこういう事だったんッス。

今日のバスケ、緑間っちが火神っちを誘って行く予定だったらしいんだけど、どうせやるなら人数が多い方がいいって事で、黒子っちや高尾君が呼ばれたみたいで……そして黒子っちは俺や青峰っちを誘ったわけなんッスけど。
「実は青峰君は火神君の事が好きです」
「でもね、みどりんもかがみんの事が好きなの」
「へっ、へえ……」

ハッキリ言うけど、知りたくなかったよそんな三角関係。だって男しかいないじゃないッスか
!しかも全員、俺よりも体格良いし。青峰っちも火神っちもワイルド系だし、緑間っちはギリギリ美人系ッスけど、それでも身長はこの二人より高いわけでしょ?何なの、この世にはいつからかホモしかいなくなったの?
これでも雑誌モデルですから!スタイリストさんとか、メイクさんとか、そういう人にそっち系の方が居る事くらいは知ってますよ!でも、まさか自分の仲間がそうだとは思わないじゃないですか!

「安心して下さい黄瀬君、生涯に一人までであれば同性恋愛はノーマルな性癖と認められています」
「そうだとしても、誰も巻き込まれたくなんてないッスよ!」
っていうか、それなら二人で充分だろうって言ったら二人はふっとどこか遠い目をしてから、まず黒子っちが青峰っちの方を指差して……。
「この見かけ倒し肉食が、今日一日の間に火神君に声をかけようとそわそわと機会をうかがい続けている様を見て、君は僕達だけでどうにかなると思っているんですか?」
それはもう呆れたような顔で言って。
次にさつきっちが緑間っち達の方を指さして。
「みどりん、見かけは草食系だけど中身はめちゃくちゃ肉食なのよね」
それに……と、疲れていながらも暗い目の奥から静かな闘志を感じて、ハッキリ言うとビビったッス。
「みどりんには高尾君が付いてるわ。見て!あのコミュニケーション能力の高さ!みどりんとかがみんの意見が割れた時に、さっと間に入って上手く取りまとめていく。HSK(ハイ・スペック・和成)の名は伊達じゃないわ」
いや、高尾君の肩書とか初めて知ったし、つーかハイスペックとか呼ばれえてたんだ!まあ確かに、あの緑間っちに付き合っていられるだけでかなり大物だとは思ってたし、あの二人の仲を取り持つとか、かなりのコミュ力ッスよね……。これからはちゃんと「高尾っち」って呼ぼうって、この時心に決めたッス。
「という事でねきーちゃん、大ちゃんには後方支援が必要なの。優秀な後押し要員が必要なの」
「モデルで女の子にモッテモテな黄瀬君は、さぞかし恋愛の経験も豊富ですよね?」
いやいや、俺の経験は対女の子ですよ?身長190の男子高校生の落し方なんて全くもって許容範囲外ッスよ?
「協力してくれますよね?」
「協力してくれるよね?」
なんて危機迫る表情で詰め寄らる二人に言われたら、嫌だなんて言えるわけなくて……。
「…………はい」

という事でこの瞬間に、俺は青峰っちの恋を応援しようの会に協力する事になったんス。

秀徳高校:高尾和成氏の証言

「やっぱり、アイツ等って仲良いな」
四人でぎゃーぎゃー騒いでる青峰達を見つめ、火神はちょっと寂しそうにそう言った。
「アイツ等は昔からなのだよ」
「なーに火神、相棒取られて嫉妬しちゃってる?」
「やっ、別にそういうわけじゃ……」
「恥ずかしがるなって!俺だって火神に真ちゃん取られて嫉妬そまくってたのよ?って事でさ、向こうも嫉妬しちゃうくらいコッチも仲良くしちゃおうよ」
つーか、四人で集まって何してるのか……何て大体は想像ついてたんだけどね。

向こうは向こうで、対真ちゃんの作戦会議してるんだろうなって。

一日一緒だったら分かるって!青峰が火神に惚れてる事くらい。
つーか多分、黒子とかあの桃井さんが後押し始めたせいで、ぎこちなさが出てバレバレだったわけなんだけどさ。
でも、真ちゃんが火神のこと好きって言うよりは青峰の方が意外ではないかな……なんか、気が合いそうじゃんこの二人。
まあ、予想してたよりも向こうが奥手っぽいって事にビックリしたけど。
コッチ側からしたらチャンスだけどね!

「そういえば火神。この間、映画を見に行きたいと言っていたな」
「ああ、うん。丁度、見てたシリーズの最新作が公開されるから」
「映画のペアチケットを貰ったのだが、良かったら一緒に行かないか?」
「えっ……いいのか?俺と行って」
そう言う火神がチラッと俺の方を見たんだ。多分、真ちゃんとなら俺とでかけた方が楽しいんじゃねえの?って気を使ったんだろうね。
本当、そういうところ人が良いんだから。
「別に構わん、たまには違う奴と出かけるのも良い気分転換になるのだよ。それに、高尾と映画に行くと横が騒がしくてかなわん」
「ちょっ!真ちゃん酷くね!」
別に俺、館内では普通に静かよ?多少、笑い声上げる程度よ?
「公開は来週からだっただろう?土日は空いているか?」
「ああ、別に何も予定はないけど」
じゃあの何時に待ち合わせるか……なんてサラッとデート取り付けてるあたり、真ちゃんってば抜かりないよね。

ちなみにこの映画の鑑賞券は、前に買い出しに行った時に商店街の福引で当てたやつなんだよね。
もうさ、通りかかった時に足止めされて「使えるな」とか呟いたかと思ったら、サクッと目当てのもん引き当ててくるんだもん、ビックリするよね。
「おは朝占いでは、今日は必要なものは自然と手に入ると出ていたのだよ」とか平然と言って退けてたしね。
なら一等の温泉旅行当てろよ!って言ったらさ、真ちゃんってば「ただの友達と旅行など、まだ早いだろう」なんて真面目な返答してくれちゃって。
でも「アイツの事だ、俺が当てて困ってると言ったところでそれなら両親にプレゼントしろ、と言うのがオチだ。ならば、困らない程のもので確実に出かけられるものの方がいいだろう」なんて、きっちり理由を付けられたら返答も出来なかったっていうか……。

ウチのエース様、何気に計画性高くね?

正直、俺が相談役としている意味あんのかな?って心配になっちゃうんだよね。
でもまあ、油断はしてらんないかな?あっちはあっちで本気そうだし、とりあえず!

来週はこっそり真ちゃんの後つけて、二人が何するか見に行こうと!

あとがき
最後に、緑間さんと青峰君でエンジェル火神君を取り合う話のはずなのに、今回もほとんど火神君の出番なくてマジですみません。
2013年2月26日 pixivより再掲
close
横書き 縦書き