あっ、どうも。黄瀬涼太です!
何で俺かって言うとね。前回、俺が桃っちのこと「さつきっち」って呼んでたの、代理で謝ってくれとか天の声が言ってたんスよ。
天の声いわく「普段、黄瀬君をあんまり話に絡めたりしないんで……コイツ、桃井ちゃん何て呼んでたっけ?って迷って、なんか個人的に「桃井っち」て語呂悪いなとか感じただけです、すみません。自分、原作派なんですけど人から借りて読んでるから手元にはなくて、たまにこういうミスしてしまうんですよ……」らしいッス。
「おかげで現在まだ21巻読んでないんですよ、本屋行くたびに手が伸びるんですけど、寸での所で押し留まってます」って、ならいっそ自分で揃えればいいんじゃないスか?
って事で、あのバカがまた何かやらかしたら指摘してやって下さいって言ってたッス。
それより聞いて欲しいッス!
俺達の敵は、マジでヤバいかもしんないッス!
ロールキャベツ男子・緑間さんと相棒は、やっぱりハイスペック
海常高校:黄瀬涼太氏の証言
黒子っちから、今度の休みに火神っちが緑間っちとデートに行くらしい……ってメールがきて、とにかく敵情視察が必要だって思って、後を付けようって提案したッス。
青峰っちはかなり嫌がってたけど、これも必要な事だって言いくるめた。
とにかく、今の青峰っちは奥手過ぎなんスよ。もっと危機感を持てば、きっと対応も変わるし積極的になれるんじゃないかって、勇気出るんじゃないかって思ったんス。
だってほら青峰っち、好きなものには一生懸命になれるッスから。
だから俺と青峰っちで、その日は一緒にでかけたッス。
場所は事前に黒子っちが聞き出してくれたッス。桃っちも一緒に行くって言ってくれて、俺達は二手に別れて二人を追いかけたッス。
黒子っちと桃っちが一緒だったのは、仮に二人に見つかった時に言い逃れできるように。
やっぱり、好意寄せてる相手と会った時に女の子連れなのは格好がつかないでしょ?いくら幼馴染だって言っても、印象はよくないッス。
って事で二人とは別の場所で待ち合わせして、別々に二人を追いかけてたんスけど。
緑間っち対策として確認してきた今日のおは朝占いでは「今日の三位はかに座の貴方、恋愛運が絶好調!相手の意見を受け入れる柔軟さを持てば、好きなあの子と進展があるかも?ラッキーアイテムはスニーカー」とか言われてたッス。
まさかスニーカー持って現れるのかと思ってたけど、流石に靴は履いてたッス。
「今日はラッキーアイテム持ってないのか?」
「今日のラッキーアイテムはスニーカーなのだよ」
「へえ、変なのじゃなくて良かったな」
「変なのとは何なのだよ」
「だってアイテムとか持ってたら、映画見る時、邪魔になるだろ?」
そう話す火神っちを連れて、緑間っちは歩き出したッス。
映画の時間は確認してるんだろうけど、とりあえず先に席だけ取っておいてしばらく周辺でも見て回ろうかって事みたいッス。って事でチケット取った二人が映画館から一度出て、周辺を歩いているのを追っかけたんスけど、なんつーか……。
「なあ黄瀬、緑間ってあんな奴だっけ?」
隣に居る青峰っちが、物凄く低いトーンでそう尋ねて、俺は何て答えようか迷ったッス。
だって緑間っち、エスコート完璧なんスよ?
車道側は常に緑間っちが歩いてるし、火神っちがちょっとでも何かに興味示したら立ち止まって付き合ってあげるし、そりゃたしなめる事だってあるッスよ、でも普段の刺々しい言い方じゃなくて、なんというか優しい感じ?
おは朝占い通りに「相手の意見を受け入れる柔軟さ」を実行しているんだ、としてもここまで人って変わるものなんスかね?本当、緑間っちの皮被った別人見てるんじゃないのかって本気で思ったッス。
そして……。
「なあ黄瀬、アイツ等、付き合ってるんじゃないんだよな?」
「それは……違うんじゃないッスか?」
「でもよ、付き合ってるようにしか見えねえよな?」
質問の答えがYESしかない時って、結構辛いッスよね。
だって相手は火神っちの事好きなわけだし、ここでそうだねって同意したら完全に青峰っちの自信が喪失されちゃうかんじでしょ。
でも、申し訳ないけど……本気で緑間っちと火神っち付き合ってるようにしか見えなかった。
もうさ、横の青峰っちがどんどん落ち込んでいくんスよ。そんな自身無くしてそうするんスか?火神っち取られたくないなら、アンタはアレと勝負するしかないんだよ?俺に勝てるのは俺だけだ(ドヤァ)って言い放っちゃうイケ峰さん(笑)はどこに行ったんスか?
マジで今のアンタ、ピュア通り越してヘタレじゃないッスか。応援してるコッチの身にもなってくれよ、意欲とかやる気とか気力とか、もうガツガツ削がれてくんですけど。
「落ち込むのは早いッスよ青峰っち、やっぱり趣味とか合う人の方が仲良くなり易いでしょ?緑間っちと火神っちはその辺、正反対ッスから!」
「でも火神の奴、楽しそうだよな」
「きっとちゃんと話せば、火神っちだって青峰っちと会うの楽しいって思ってくれるって!」
「……何、話したらいいんだよ?」
泣きそうな消え入りそうな声でそう言う青峰っちを見て、この間の会合で決まった事を思い出したッス。
「いい大ちゃん、かがみんと話をする時にグラビアアイドルとザリガニ・蝉の話は絶対にしちゃ駄目よ!」
開口一番、桃っちは青峰っちの最大の武器の封印指令を出した。
いやだって、どんなに青峰っちに惚れてる女の子でもこんな話をされたら引くでしょ?ドン引きっしょ?
男同士だとしても、小学生の男の子ならいざ知らず高校生が目をキラキラさせながら話してたら引くでしょ?俺は引くッス、黒子っちはドン引きだって言ってたし。
だから絶対に火神っちの前で、こんな話しちゃ駄目だよって、きつく言われたんス。
「何の話すればいいんだよ?」
「何でもいいんスよそんなの。着てる服とかアクセサリーの話でもいいし、好きな食べ物の話でも、好きな音楽でもいいし、映画の話でもいいんス」
服やアクセサリーの話が発展したら、買い物にでも行かないか?って誘えるかもしれないし。食べ物だったらご飯食べに行こうとか言える。音楽だったらCDの貸し借りしてみたり、ライブに誘ってみるのもありッス。緑間っちはきっとそういうところから、今日みたいに映画に誘ったに違いないッス。
なんて話を力説してみても、青峰っちはなんかピンと来てないみたいで。
「上手く話しを続けられる気がしねえ」
「そんなのやってみなきゃ分かんないじゃないッスか。もし自分が知らない事だったとしても、興味持って聞いてみればいいんス、自分が好きなものに興味持ってくれたら嬉しいでしょ?」
自信持って話ができそうなもの、何か無いのかって聞いたら青峰っちしばらく迷って「バスケ?」って言ったんスよ。
「もう、それじゃ今までと変わらないじゃないッスか!バスケだけしてくれる相手だったら、火神っちの周りに掃いて捨てる程いるッス!それに緑間っちとだってバスケの話なんていくらでもできるッス!もっと青峰っちにしかできない、特別そうな話とかないんスか?」
「……だったらザリガニ」
「は、絶対に駄目ッス!」
何て話してる目の前で、火神っちと緑間っちは仲良く食べ歩きとかしてるんスよ?
っていうか緑間っちって、何であんな風に人と喋れる人なんだっけ?今日なんて高尾っちいないけど、何であんな風に人と喋れるんスか?コミュ症も電波もどこに置いてきたんスか?恋したら人は変わるとか言うけど、変わり過ぎだろうがアンタ!
ここまでは良かったんスけどね……。
いや、よくはないんスよ。時間が過ぎれば過ぎる程に青峰っち落ち込んで、ただでさえ凶悪な顔してるのにどんどん負のオーラ背負ってくるし。何なのこの子、本当に何なのとか思ってたんだけど。
そしたらその後、俺のファンの女の子に見つかっちゃって。身動き取れないくらい取り囲まれちゃって、どうしようもなくなっちゃって。
流石にさ、ファンの子は無碍に扱えないでしょ?
そうしている間に、緑間っちと火神っちは見失っちゃうし。放置されている間に青峰っちの機嫌は急降下していくし。
解放される頃には、青峰っち巻き込まれないように非難してた隅っこから動かなくなってるし、なんとか説得して追跡続行させようとしたけど「もう見たくねえ」の一点張りだし。
まあ、黒子っちと桃っちが二人の事をまだ追っかけててくれたから、後で何とか合流できたけど。それまでの出来ごと見てて、青峰っちは大分自信を無くして何も話さないし。
「俺は……もう駄目かもしれない」
それはコッチの台詞ッス!
「敵は、手強いわ」
「そうみたいですね」
合流した後、これからについて話す二人を見つめて、もっと手強い相手が居ると思ったッス。
「やっぱ、アイツの方がお似合いなんじゃねえの?」
本当に手強いのは、このヘタレッス。
……でも、帽子とサングラスで変装してたのに……何でバレたんだろ?
秀徳高校:宮地清志氏の証言
この間の休みに、大坪と一緒にCD買いに行ったんだけど、そしたら出先で高尾と会ったんだよ。
向こうも俺達に気が付いたみたいでよ、つーか目が合った瞬間、あの野郎ヤバいもん見たみたいな反応で急いで逸らしやがったから、ちょっとカチンってきて、何してんのか知らねえけど突撃してやったんだ。
「おいテメェ!先輩様と目合っといて挨拶も無しとはどういう了見だ、轢くぞ!」
「フハッ!すみません先輩、つーかあのちょっと声小さくしてもらっていいですか?」
おいおい、人にもの頼む態度じゃねえだろとか思ったんだけど、そこで大坪の奴が「まあ落ち着け宮地」って高尾の奴から俺を引き剥がしたから、しょうがなく事情を聞いてやったんんだよ。
そしたらあの野郎、何て言ったと思う?
「すみません今ちょっと俺、尾行中なんですよ」
「はあ?」
何ストーカーしてんだぶん殴るぞとか思ったんだけど、高尾が指差した先に居た奴を見て俺はかなりビックリした。
「緑間と、誠凛の火神?」
「そうなんんですよ!二人が今日デートだっていうんで、上手くいくかどうかちょーっとスト―キングしちゃおっかな?なんて思って」
とか笑って言う高尾は、確かにキャスケット帽を深めに被ってた。俺達が見つけられたのは丁度、帽子をかぶり直してる瞬間を目撃したからで、そうでなければパッと見で気が付かなかったかもしれないな。
まあんな事はどうでもよくてだ。
「何で緑間が誠凛の火神とデートなんかしてんだよ?」
「なんか、最近かなり仲良くなったみたいなんですよ。そういう先輩は大坪先輩とデートですか?」
「気持ちワリー事言ってんじゃねえ、轢くぞ」
ちょっと一発ほど頭小突いて、それで許してやったぞ。褒めろ。
「しかし、緑間が火神となあ……あまり気が合うようなタイプには見えないんだが」
大坪と同じ事を俺も思ってたよ。
「だから、俺だって心配して見に来たんじゃないですか」
なんていい笑顔で言ってよ。まあ、コイツの事だから何か面白がって付いて来たんだろうな、とは思ったんだけど。
とりあえず、行き先の方向も一緒だったし。まさかとは思うけど、他校の奴に迷惑もかけられねえから。しばらく一緒に後を追ってみたんだよ。
まず意外だったのは緑間だ。
ハッキリ言う、アイツの性格は面倒くせえ。
おは朝信者だとか、特徴的な喋り方だとかそういう目立った特徴を抜きにしても、アイツは人を苛々させるタイプだ。
細かい事までこだわって、自分が正しいと思った事は貫き通す。別にそれが間違ってるわけじゃねえし、正論ではあるんだ。けどな、いくら正論だからって誰でも簡単に受け入れられないようなもんってあるだろう?
アイツはそういう事に対する許容範囲が人よりも狭いんだよな。
めちゃくちゃ潔癖な奴の、清潔さにこだわり過ぎるから起こる不健康さみたいなかんじ?それと似たような感じしねえ、アイツって。
しかも緑間ってかなり頭良いだろ、んで喋り方もそれに合わせてつーか、典型的に頭良い奴の話し方するじゃねえか。
面倒な上に癪に障るような言い方されて、カチンってくる奴は多いだろ?俺とかそういうタイプだけどよ。
……俺だって自覚くらいはあるぞ、悪いか?
まあそんな奴だから、誠凛の火神なんて見るからの野性児を相手にすんのは、かなり気疲れするんじゃないのかって思ったんだよ。
それが……。
「おい火神、買い食いは止めろ」
「ええ、いいじゃねえか別に。つかちょっと小腹減っただけだし」
「お前の小腹は、常人の一食分なのだよ」
そう言って緑間の奴がたしなめているのには理由があるらしい。
高尾から聞いて初めて知ったけど、火神ってかなり大食いらしいな?なんかお好み焼屋で誠凛バスケ部全員分の注文なんじゃないかって量を一人で平らげた、とか言ってたからかなりの量じゃん。燃費悪いにも程があるだろうが、力士じゃねえんだぞ。
「でも映画始まるまで、まだ時間あるだろ」
一個くらい、いいじゃねえかって火神が拗ねて言ったわけだ。
ちなみに火神が一個くらいって言ってたの、何だと思う?
クレープだぞ。
まあ確かに食べ歩きに向く物ではあるよな、だけどよ……男子高校生が食う物か?
いや食べないわけじゃねえけどよ、抵抗あるだろうが、店の客とか女の子ばっかりだぞ、そんな中に身長190の男が並べるのか?
「まったく、一つだけにしておくのだよ」
「おう」
並べるんだな、アイツ等は。
緑間とか嫌がって買って来るの離れて待ってるのかと思ったけど、そうじゃないんだな、一緒に並びやがったんだよ。
めっちゃくちゃ目立ってたな、身長190越えの男二人がクレープ屋に並んでるの。
「まったく、そんな甘ったるい物をよくも平気で食べられるな」
とか言ってるけどお前もちゃっかり買ってんじゃねえか。高尾いわく「宇治抹茶風味の白玉あずき生クリーム」らしい。ああうん、アイツおしるこ好きだもんな。
知るかよ!何でそんな丁寧にクレープの種類まで観察してんだよ!お前、本当にストーカー向いてるんじゃねえの?
「緑間だって食ってるじゃん、っていうかあずきにクリームの方が甘いんじゃねえの?」
そう言う火神は「ミックスベリーカスタード」らしい。
どっちにしろ胸やけしそうなくらい甘い物に変わりはねえだろうが!つーかお前らのチョイスは何なんだ、女子か!
「抹茶で甘さが抑えられているのだよ、気になるのなら一口食べるか?」
「えっ、いいのか?」
これには流石に俺も大坪もビックリした。
緑間の野郎、何て言った?聞き間違いかと思ったけど、確かに言ったよな「一口やる」って。
別にアイツ潔癖ってわけじゃねえけどよ、そういうの嫌がりそうじゃねえか。ジュースの回し飲みとか躊躇いそうな感じするじゃねえか、そんなアイツが食べ物とかシェアするのか、しかも小分けの物じゃなくてクレープだぞ?
気でも狂ったのか、それとも聞き間違いか?
少なくとも男子高校生二人でする行動としては、躊躇いあるだろうが。
「あっ、美味い」
躊躇いなくやってたよ!
しかも相手に渡してじゃなくて、自分の手で持ったまま火神に食べさせてんだよ……何だよこれ、お前らみたいな図体デカイ男同士でしちゃいけない行動だぞ。お前達は周りなんか全然気にしてねえけど、他はそうじゃねえから。めちゃくちゃ目立ってたから。視線を釘づけにしてたから。
「俺のも良かったら一口いるか?」
いやいや火神、これはケーキ食ってる女子の「一口交換会」じゃねえんだよ、何を男同士でクレープ食べさせ合いなんかすんだよ?緑間の奴の気まぐれに合わせなくていいから、んな事したら言い合いになるの目に見えてるだろ。お前バカなのかバカだろバカに違いねえ。つーか否定してた緑間がそれ食うと思うか。
「いいのか?」
「別にいいぞ」
食ったよ、火神の手に持ってるクレープ、直接食ったよアイツ!
「やはり甘いな」
「そりゃクレープだから甘いだろ」
「そうだな、まあ嫌いではないのだよ」
この時「そっか」なんて笑う火神の口元にクリームが付いてたんだよ。
これはしょうがねえよ、クレープってクリームの量凄いし、食べ方次第では口の周りとか付くよな。
それを見た緑間は呆れたように溜息吐いて「クリームが付いているのだよ」って言った。
まあこの反応はまだギリギリ正しい、アイツの事だから「そんな子供っぽい食べ方して恥ずかしくないのか?」みたいな事言いそうじゃねえか。それが……。
「全く、気をつけるのだよ」
口元に付いてたクリーム、指で拭って付いてるそれを舐めたんだよ、緑間が。
あの緑間が、んな事すんのかよ!俺は頭がおかしくなったのかと思ったぞ!
「ああ悪いな」
しかも火神は火神で、別に嫌がるでもなくちゃっかり受け入れてるしよ!何なんだよアイツ等、マジで何なんだよ!
ハッキリ言う、俺はこの瞬間あの二人に殴りこみにいきかけた。
これは駄目だ男同士でやっていい光景じゃない、地球環境と日本の未来と俺の精神衛生のために今すぐ抹殺すべき光景だと思った。
「宮地、宮地落ち着け」
「離せ大坪!俺はあのバカ共を軽トラで轢いた上にパイナップルで頭かち割らねえと気が済まねえ!」
まあそんな俺達を眺めて、横で爆笑して過呼吸一歩手前なんじゃないかってくらいになってる高尾を一発どついて、その場は治めてやったよ。
「だから、真ちゃんと火神でデートしてるって言ったじゃないですか!」
殴られた頭を擦りながら、笑いの発作から立ち直りかけて来ていた高尾は、ちょっと涙目のままそう言ってた。
いや、最初の言動とコイツの性格から何かの冗談かと思ったよ。
コイツのノリで、人を楽しませるためにそういう面白おかしい話にしてんのかと思ったんだよ、それがマジだった時の衝撃は測り知れねえぞ。
「アイツ等、付き合ってんのか……」
「いや、まだ付き合ってないんですよ。とりあえず、真ちゃんがアタックしてる段階で」
もう疲れきってた俺からしたら、そんな事実もまあ受け入れられそうだった……これが悟りか、とか思ったくらいだ。
だが驚いたのは、それだけじゃねえんだよ。
「ん?あっ……ちゃあ、ヤバい相手に見つかったかな」
急に何言ってんだコイツ、とか思ったら。高尾の視線の先に見た事ある金髪とガングロが居たんだよ。
ああ、海常の黄瀬と桐皇の青峰だよ。
何がヤバい相手なのか知らねえけど、高尾曰く「真ちゃんと火神の邪魔しに来たんだろうな」とか言ってた。
まあ、男同士のデートだし冷やかしに来たんだろうな。それならお前も俺達も同罪だろうがってなったが、それは置いといて。仲良くクレープ食ってる緑間と火神を追いかけつつ高尾の奴、急に携帯を弄り出しやがった。
「何してんだよ?」
「ん?真ちゃんの邪魔されないように、ちょーっと助け舟出してあげようかなって思って」
んで何したと思う?
アイツ、同級生の女子に連絡しやがった。
黄瀬つったら人気モデルだろ?
高尾の奴なんかは同じ学年でしかもバスケ部だし、どっかで会った事ないか?なんて質問をよく受けるらしい。
緑間の野郎は直の知り合いだけど、アイツにんな話題は振ったりしねえよな。
だから高尾は「黄瀬涼太」に会ってみたい女子に、心当たりがいくつもあったわけだ。
でも、いくら休みの日で遊びに出てる奴が多いからっていって、そんな簡単に集まるわけねえだろうがって思ったよ。
「へへへ、真ちゃんに習って俺も今日は人事を尽くしてるんで、大丈夫ですって」
いや、意味分かんねえよ。
そう言えば、今日は緑間の奴は変なラッキーアイテム持ってねえなとか思ったら高尾が「今日のかに座のラッキーアイテムは、スニーカーなんですよ」って疑問を声に出してもないのに答えやがった。エスパーかと思った。
「ちなみに、気になるあの子と進展がありそうかも……って言われてたんで、真ちゃんかなり気合入ってると思いますよ。でね、今日の一位って俺なんですよ」
へへへと笑う高尾の顔を見て、なんか知らねえけど俺は恐怖を感じた。
「今日の一位はさそり座の貴方、何でも思い通りに上手くいく日、お友達のピンチも助けられるかも。ラッキーアイテムは……携帯電話、ってね?」
まあ見てて下さいよ、とか言って高尾がラッキーアイテムの操作が終って三分くらいで返事が返ってきた。
緑間の事があるから大分バカにできなくなってたのは確かだけど。本当、おは朝占いって何なんだろうな。
こういう偶然があるのか知らねえけど、その女子たちが揃いも揃って一緒にでかけてて、合流できちゃうんだもんな。
高尾の奴からは「先輩と出かけてて偶然みかけた、って事にするんで。辻褄合わせといて下さい」とか言われたけどよ、別に辻褄合わせるまでもなく、アイツが手振ってちょっと話したら女子は黄瀬の方に流れたな。
芸能人って、こういうプライベート削られるのマジで大変だなとか思ったよ、助ける気は無かったけど。
いや助けられるわけねえだろうが、女子の勢い凄いしさ。相手の事知ってるとはいえ、俺達はあんまり黄瀬の奴と面識ねえし。それに……女子に囲まれて仕事モード入ったらしい黄瀬見てると、なんか苛々してきたから困ってても放置する事にした。まあ青峰には悪い事したけど、中学からの付き合いなら、アイツも慣れてるだろ。
だけど、流石に騒ぎを見て緑間も何か気が付いたみたいで、周囲見回して俺達と目が合った時はめちゃくちゃ顔しかめやがったな。隣りで高尾は笑って親指立ててたけどよ。グッドラックじゃねえよ、人様に迷惑かけてんじゃねえってもう一回どついてやった。
そしたら緑間の奴、溜息吐いたかと思ったら火神連れてさっさと離れて行きやがった。
映画行くとか言ってたしな、時間も丁度良かったのかもしれねえ。
この後の事は知らない。ハッキリ言うと、俺はもうおこれ以上コイツ等に関わりたくなかったから、ここで高尾と離れた。
まあなんつーか、思ったよ。
俺はあの一年二人を、下手に敵に回さねえ方がいいんじゃねえかな……って。
特に、高尾の方がな。
桐皇学園:桃井さつき氏の証言
きーちゃんがファンの子に取り囲まれてるのを遠目に見て、私もテツ君も溜息を吐いた。
「やっぱり高尾君はあなどれません」
「そうね、みどりんだけでも手強い相手なのに、あの子の死角を突く方法をなんとか探さないと」
なんて話す私とテツ君は、きーちゃんよりも変装に手が凝ってる。
演劇部の子からウィッグを借りてテツ君にかぶせて、私は長い髪を結って帽子の中に入れて伊達眼鏡をかけてる。
みどりんがデートするって事は、もしかしたら高尾君が来てるかもしれないって思って。流石に人混みの中だと見つからないかな、って思ったけど一応、変装も頑張ってみたの。
きーちゃんはファンの子から隠れるためにいつも通りの変装だったけど、大ちゃんはそういうの気にして無かったから、それで二人は見つかっちゃったんだろうな。
うーん、ホークアイ恐るべし。
「それにしても、緑間君もやりますね」
「そうね、デートのエスコート完璧。女の子だったらときめいちゃうかも」
「まあ火神君は男の子ですし、そういう感覚が鈍いので、おそらく意識はあまりされてないと思いますけれど」
確かにそういうときめきは無いかもしれない、けどね。
やっぱり気遣いされてるのは、気付くものでしょ?
「でもアレが大ちゃんにできると思う?」
「絶対にできませんね」
そう、気遣いできない子と比較したら一目瞭然なの。自分が大事にされてるって事が!
そして大ちゃんにそういう気遣いやエスコートなんて行動が、望み薄なのは考えるまでもない事。
趣味の話をしたらいいってアドバイスに、グラドルとかザリガニとかを平気で出す子だもん、無理に決まってる。
ああもう、中学時代にみどりんの爪の垢でも煎じて飲ませとけば良かった!
「どうしよう、大ちゃんなんて連絡先すらまともに聞けてないのに……」
このままやられてばかりじゃ本当にダメになっちゃう、何とかして大ちゃんを意識させる方法、探さなくっちゃ。
「かがみんが苦手なものって、何?」
「そうですね、まず犬が苦手です。あと、おばけや怖い話も苦手みたいですけど」
「そっか、遊園地のお化け屋敷で恋のつり橋効果でも狙ってみる?」
あっ、でも大ちゃんもあんまり怖い話とか得意じゃないんだよね。
二人して震えてたら意味ないし、大ちゃんも格好が付かないし。そもそも話すらまともにできない大ちゃんが、いきなり二人で遊園地なんてハードル高すぎるか、ここはやっぱりグループ交際から始めるべきかな。
「何か、かがみんにコアな趣味とかあったりしたらいいんだけどなあ」
できればみどりんがまだ把握してない趣味。
それがみつかれば大ちゃんも攻めるキッカケになるんだけど。
「テツ君、何か心当たりない?」
「いえすみません、これといっては……」
そっか、そうだよね。
まずコアな趣味って、人に話さないようなものも多いし。
「心当たりがないか、聞き込みしてみましょうか?」
「お願いしてもいい?」
でもとりあえず、まず最初に変えるべきなのは大ちゃんの立ち向かう力だわ。
もっと自信付けさせないと!
「やるわよみどりん、全面戦争してあげるんだから!」
今回の目標は、まず宮地さんを登場させる。
そして、クレープを食べる緑火が見たかった、以上です。
あと、エンジェルかがみんの守護陣営はまだですか?という質問が来ていたので、次回はかがみんサイドの人達に証言を貰ってこようかと思います。
2013年3月1日 pixivより再掲