僕は火神君の傍に居て、彼について色々と分かっているつもりでした。
でも、そうは言ってもやっぱり知らない事ってあるものなんですね。
とりあえず、青峰君……。
君が勝てない人は、案外この世に沢山いるかもしれませんよ?
誠凛のエースは予想以上の愛され体質
誠凛高校:土田聡史氏の証言
練習終りの火神と、コンビニに行った時の話なんだけど。
お前達も知っての通り、火神は食べる量が人の倍以上あるだろ?だから間食なんかで食べる量も、人の一食分くらいあるじゃないか。
その時は丁度、そこのコンビニでキャンペーンしてたんだよ。
ほらパンとか弁当を買ったら、点数シールっていうの?付いてる時あるだろ、集めたらキャラクターのマグカップとか貰えるキャンペーン。丁度その時もやってたんだよ。
ほら、あのちょっとダラけたクマのキャラクターいるだろ?そうそうリラ●クマだ。シールを集めたらそいつのマグカップが貰えたんだよ。
それでだ、火神ってよくパンを食べてるけどそういうの集めるイメージ無いだろ?だから、ちょっとお願いしてみたんだ。
「なあ火神、もしそのシールいらないなら貰ってもいいか?」
「えっ……」
別に俺が欲しかったわけじゃないんだ、ただ……まあ彼女が好きなんだよ、あのクマをな。
それで、もしいらないなら欲しいなって思ったんだが。なんというか、アイツ申し訳なさそうというか、かなり恥ずかしそうに顔赤く染めて俯いて「すんません」って言ったんだ。
「なんだ火神、集めてるのか?」
「ああ……その……集めてる、です」
確かにアイツっていつも購買でパン買うのに、最近はコンビニの食ってたりするなとは思ってた。けど、まさかその理由がマグカップ欲しいからだとは思わないだろ?
「そっか、別にどうしてもってわけじゃないから、気にするな」
「はい……あの、すんません」
よっぽど恥ずかしかったのか、でっかい体凄く小さくさせて肩プルプルさせてたから、思わず噴き出しそうになって。
「いや別にいいから、もうそれでいいのか?」
「ああ、はい」
それで二人でお会計をしてたんだけど、そしたらキャンペーンってそれだけじゃなくて。なんか、対象の商品を買ったらクリアファイルくれるらしくて。偶然、俺が買ったのがそれだったらしくて貰ったんだけど。
まさか、二枚もくれて……。
別に困るものではないんだけどな、一枚は彼女にあげてもいいけど、二枚も同じのいらないだろ?
それでどうしようか困ってな、傍に居た火神に。
「良かったらいるか?」
って聞いてみたんだ。
いや、マグカップ欲しいならこういうのも欲しいかなと思って。
それで深い意味は無かったんだけど、火神はかなり嬉しそうに顔輝かせて。
「えっ、い……いいのか!です」
なんて言ったんだよな。
「別に二枚もいらないからな、貰ってくれるか?」
「はい!ありがとうです!」
さっきまで恥ずかしそうに俯いてたのに、俺がファイルあげただけであんなにいい笑顔見せてくれるなんてな。
ゲンキンな奴だとは思わなかったぞ、正直で可愛いなとは思ったけど。
いや、俺だって火神相手に「可愛い」はおかしいと、ちょっとだけ思ったぞ。
でもなんというか、火神はたまにとても可愛がりたくなるような、構ってやりたくなるようなそういう雰囲気を持ってるなと思う時はないか?
子供っぽいというわけではないんだろうけど、見た目とのギャップが上手く働いて余計にそう見えるのかもしれないな。
マグカップだって、別に堂々としてれば変ではないんだろうけど。なんというか、火神自身が恥ずかしがって赤くなったりしてるから、なんか可愛いなって余計に感じたのかもしれない。
ああ、マグカップはちゃんと貰えたらしいぞ?
次にコンビニに行った時に聞いてみたら「貰ったです」って言ってたからな。ただ、自分で交換しに来るの恥ずかしいからしばらくいい、とは言ってたけど。
……って、いうのが俺が火神にあげたもので印象に残ってる物の話なんだが。
こんなの本当に参考になるのか?
誠凛高校:小金井慎二氏と水戸部凛之助氏の証言
前に、俺と水戸部と火神で一緒にでかけた事があるんだ。
火神がね、水戸部に料理教えてほしいって言って、材料とか買いに行くのに付き合ってそれから火神の家に行ったんだ。
相変わらず火神の家、凄く綺麗だったよね?水戸部。
まあ、それはいいとして。
丁度その時はさ、ペットボトルの紅茶にストラップのオマケが付いてたんだよね。
そうそうお菓子のやつ、マカロンとかシュークリームとかになってるのね。なんか女子がよく付けてたりするよね。
買い物の途中で通りかかった時に火神が気付いたみたいで、そこで立ち止まったんだ。
「うん?紅茶買うの?」
「えっ……あ、いや。別に飲み物なら家にあるんで」
「んー?」
なんか凄く恥ずかしそうに顔赤くして言うからさ、なんか変だなって思って。
「ストラップ欲しいんじゃないの?」
そう聞いたらね、火神ってば首まで真っ赤に染めて目逸らしてさ。
「べっ、別にああいうの付けないんで」
とか普段とは考えられないくらい、小さい声で言ってさ。
なんか、アレ?ってなったよね?俺もそうだし、水戸部もおかしいなって思ったって。
「これ凄いよね、なんか毎年どんどんリアルになっていくし。ねえねえ、折角だしさ三人でお揃いの付けない?」
そう言ったら火神、なんかビックリしてたんだ。
「なんか、男が付けてると変じゃねえです?」
「そっかな?別に普通だと思うけど、ねえ水戸部?」
水戸部も別に変だな、なんて思ってなかったっぽい。だから三人で紅茶の売り場で悩んで、結局みんなマカロン買ったよ。
うん、コレコレ!可愛いよね。
それで、一緒に携帯にぶら下げてたんだよ。
なんか火神はこういうの恥ずかしいって言ってたけどさ、別に変じゃないでしょ?
「へへへお揃いだね!」
俺がそう言ったら水戸部も笑ってくれてさ、火神もなんかちょっと恥ずかしそうだけど、照れてるだけなんだろうなって思ったよ。そんな火神を見て、水戸部はちょっと笑って頭撫でてあげてたよね?
そう、なんか火神って可愛いじゃん。
俺が言うのも変なのかもしれないけどさ、なんかバスケしてる時とか、ここに入学した始めの頃は虎とか大型の肉食動物みたいな近づきがたいイメージあったけど、実際はさ凄く良い奴だし。
なんか気が付いたら頭撫でたくなるって水戸部も言ってる。
俺は頭撫でたりとかできないけどさ、たまにハグしたりしてるよ。最近だと火神も慣れたみたいでさ「何すか先輩」ってめっちゃ笑顔で受け止めてくれるし。
……あれ、何の話だっけ?
ああ、火神にプレゼントあげたいって子にアドバイスだっけ?
バスケ関連じゃなかったら、やっぱり食べ物関係なのかもしれないけどね。でも火神自身がめちゃくちゃ料理上手だから、あんまり手作りとか喜ばれないかもね。
最近はさ、桐皇学園の桜井君とキャラ弁の話で盛り上がってるみたいだよ。この間、水戸部も一緒に皆で集まってキャラ弁作ってみたんだって。
妹ちゃんのお弁当にしてあげたら喜ばれたんでしょ?
何作ったんだっけ?
ああ、キ●ィちゃんだったね。火神が猫好きだから、皆で作ったんだっけ?
いいなあ、俺も今度作ってほしいなあ。
誠凛高校:伊月俊氏の証言
あれはまだ、夏休みに入る前だったと思うけど。
妹と一緒に買い物に行った時に、火神と偶然会ったんだよな。
俺もそうだけど、火神もかなりビックリしてたな。
なんていうかそこ、キャラクターグッズの専門店だったからさ。ほらあの有名なアメリカ生まれのネズミ、そうその夢の国の住人な?
その夢の国の専門店って可愛い物が多いわけで、お客さんもやっぱり女の子とか子供が多くて、火神くらい体格良い奴が一人でいるとかなり目立ってて、一目で知り合いだって分かったんだ。
「よう火神、一人か?」
「うお!伊月さん、何して」
「妹の買い物に付き添い、火神はどうした?」
「あー……その、俺は」
火神の話だと、近所に住んでてよく気にかけてくれる家族の娘さんが誕生日らしくて、できればプレゼントあげたいなと思って買いに来たらしいんだけど。
「女の子って、何貰ったら嬉しいのか分かんなくて」
「そっか、それなら俺の妹に聞いてみるか?」
「うぅ……すんません」
うん、それは嘘じゃなかったよ。
小学生の女の子って、何貰って喜ぶのか分かんないって本当に困ってるみたいだったし。
だから一緒に選ぶの手伝ってやったんだ。
何にするかって議論になったけど、その子がお姫様のキャラクターが好きだって話だから、そのキャラクターのステーショナリーセットを買ったよ。
結局は、使える物の方が喜ばれるんじゃないかって結論に落ち着いたんだよな。まあ妹の「女の子はお手紙書くの好きだから」って言葉に後押しされたのもあるけど。
で、そこで思い出したんだよ。
「そういえば火神も、もうすぐ誕生日だったな」
「えっ、覚えててくれたんすか?」
「そりゃあ、大事なエースの誕生日だしな」
そう言ったらアイツ恥ずかしそうに顔赤くして、ありがとうございます、とか言ってた。
「何か欲しい物、あるか?」
「……えっ?」
「誕生日だろ、ちょっと早いけど俺からプレゼントな?」
そう言ったら火神の奴慌てて、さっきよりも更に顔真っ赤にしてさ「別に、そんなの気にしなくっていいぞ、です」って言ってた。
多分だけど、こういうキャラクターもの好きだってバレるの恥ずかしかったんだろうな。
何で好きかって分かったのかって、そりゃ分かるよ。火神って考えが顔に出やすいだろ?プレゼント選んでる時の顔が、やけにキラキラしてたからな、ああ火神自身も好きなんだろうなって思ったんだ。
別におかしいとは思わなかったぞ、あのアニメ映画のファンはいっぱいいるわけだし。アメリカなんて本場だしさ、よく見て育ったんじゃないかなって思って。
「火神」
「なんだ、ですか?」
「別に笑わないから、好きなら好きだって言っていいんだぞ?」
そう言ったら恥ずかしそうにうつむいて「すんません」とか謝ってた。別に謝るところじゃないんだけどな。
でもそういうところ、可愛いなって思ったぞ?
ああ見えて、控えめなところあるだろ?
「俺なんて、図体デカいだけなんで」とか苦笑いしながら女の子へのプレゼント選んでたんだけど、そういう事してあげたいっていう気持ちが大事なんだぞ、って言ったら「ありがとう!です!」って照れたようにはにかんで言ったんだ。
なんか、純粋に可愛がってあげたいというか……優しくしてやりたいなって、思っちゃうんだよな。
プレゼント?ああ、くまの●ーさんに出てくる虎のキャラクターいるだろ、あれのマスコットチェーンをあげたよ。
「ティ●ー好きなのか?」
「俺の下の名前がタイガで音が似てるから、向こうの友達とかニックネームにされてた、です」
だから何か他人に思えなくて、とか照れて笑ってたな。
確かに火神と虎って似合うよな、意味も似てるわけだし俺は良いと思うけど。
「あの先輩、Thanksです大事にするです!」
何て嬉しそうに言われて。大した値段じゃなかったんだけど、喜んでもらえて良かったなって思ったよ。
っていうのが、火神の意外だなって思った話かな。
こんなのでその女の子、参考になるのかな?
ハッ!三校の参考資料、キタコレ!
誠凛高校:相田リコ氏の証言
火神君にプレゼント?しかもバスケ関係じゃないもので?
そんなの突然聞かれてもねえ、その子だって自分で考えればいいのに……っていうか変な子じゃないでしょうね?やめてよ、彼のプレイに支障をきたすような相手とか。
……大丈夫なのね?その言葉、信じるわよ。
この間、火神君に荷物持ちをお願いして一緒に買い出しに行ったのよ。
バッシュの問題なんておこしてくれちゃってるからね、ちゃんと体に合ったもの使ってほしいし。備品の買い出しのついでに、練習メニューの相談も一緒にしようと思って。
結構買い込んだんだけど流石に火神君は力があるわね、全部持ってくれたわ。
相談があったとはいえ、休みの日に突き合わせちゃったわけだし何かお礼でもしようかなって思って。
「ねえ火神君は甘い物とか好き?」
「はあ、好きだけど……どうしたんだ、ですか?」
なんか顔引きつってたのは気のせいだと思う事にして。丁度その近くにケーキの食べ放題のお店が出来たのね、それで割引券配ってるのもらったから一緒にどう?って聞いたんだけど。
「それ、俺と一緒でいいのか?」
「何で?火神君いっぱい食べるから食べ放題とかもってこいでしょ?」
そう言ったらね、なんか恥ずかしそうに目を伏せてね。
「いや、女の子ばっかりのお店でこんなデカい奴がケーキ沢山食べてんの目の前で見て、監督は恥ずかしくねえのか、です?」
なんて言ってくれちゃってね、顔赤くして。
「もう!そんなの気にするわけないでしょ、ほら行きましょ」
という事で、火神君と一緒にスイーツ食べ放題に行ってきたわけ。
私達のテーブルに、周囲の視線が集まってたのは間違いないわ。
でも、火神君の食べっぷりって見てると気持ち良いくらいじゃない、しかも美味しそうに食べてくれるし……まあ美味しくない物に対しての反応は、かなり正直だけど。
「ねえ、それ美味しい?」
「あっ美味いですよ、上の部分キャラメルになってるんです」
ちょっといるか?ですって、なんて差し出してくれるから、味見させてもらったりしてね……うん、あんなに色んな種類のケーキ味見できたのは初めてだったわ。
……ああ彼、同じケーキを全部一つずつ取って来て、後で美味しかったのだけおかわりしに行くのよ。だから二週目に入ったのは大抵、美味しかった物なのよね。それで二週目に入ったばかりのをいくつか味見させてもらったの。
ジャンクフードばっかり食べてるイメージだけど、彼って意外と舌が肥えてるから、美味しいって言ったものは本当に美味しかったわ。
好みとしてはそうね……果物使ったケーキとか多かったかな。ミルフィーユとか桃のタルトとか、結構可愛いもの食べてたのは印象に残ってるわ。
「ねえ、こういうの食べてて自分で作れるなって思う物とか、あったりするの?」
「ん?マフィンとかアップルパイはアメリカ居た時に友達のお母さんが作ってくれたりして、それ手伝ったから作れたりするけど……こういうショートケーキとか、本格的なのはあんまり自信ないです」
まず、マフィンやアップルパイを作れる時点でかなり凄いと思うんだけどね。
だからね、少なくとも火神君に手料理の類はあげない方がいいわ。
本当に……何か、女としてのプライドが音を立てて崩壊していく気がするから。
でもね火神君は最近、休みの日にお菓子作ったりする事が多いらしいから、上手くお誘いをかけられれば教えてとか一緒に作ろうって言えるかもね。
意外と女の子が好きそうな可愛いお菓子とかお洒落なお菓子とか、得意みたいだしね。
「ああ、でもフォンダンショコラとか、結構簡単に家で作れるです」
目の前で本物食べながらそう言ってたけど、どう見てもそれも本格的なケーキの部類に私の中では入るんだけど……。
「ねえ火神君、お願いがあるんだけど」
「ん?なんだですか?」
「バレンタインデーまでに、それの作り方マスターさせて」
承諾してくれたわよ、今はレシピ通りに作って練習中。
本当、意外と簡単に作れるものなのね……ウチだと問題だから、火神君の家で作ってるの見せてもらったのよ。ああ、桃井さんも一緒だったわ。
だから、今年のバレンタインは期待してていいわよ!気合入れて作ってあげるから!
……って、ちょっとどこ行くの!
誠凛高校:木吉鉄平氏の証言
火神にプレゼントかあ、何あげてもきっと喜んでくれると思うぞ。
アイツはイイ子だからな!
でもそうだな……俺が前にあげた物の話していいか?
夏合宿の時に、俺が「まっくろくろすけが出そうだ」って話しただろ?その時に、火神の奴あとでそれなんだ?って聞いてきてな。
アメリカに居たから、あんまり日本のアニメ映画とか見てないらしいんだ火神の奴。
外で遊ぶのが好きなタイプだったっていうのもあるけどな、火神の親御さんがディ●ニーのファンらしくて、小さい頃はそればっかり見て育ったらしいんだ。
「も●のけ姫とか千と●尋の神隠しとかは、アメリカでも英語版がしてただろ?」
「確かにしてたけど……なんかほら、その……monsterとかが出てくるだろ、あれ」
それ聞いて、そう言えば火神は怖い話駄目だったなって思い出したんだけどな。でも日本に居るのにあのアニメ見てないのは、なんか駄目だろ?
「宮●駿さんの作品はホラーじゃないぞ、心温まるファンタジーだ!」
「はあ、そうすか」
「良かったら今度一緒に見るか?ウチにDVDあるんだけど」
って事で、俺と火神でスタジオジ●リの作品鑑賞会したんだ。
俺の家だと迷惑かけるかもって火神が言うから、火神の家にお邪魔して二人で一日ずっと映画見てたんだよ。
えっと……まず「となりの●トロ」だろ?それから、「天空の城●ピュタ」、「魔女の宅●便」、あと「風の谷の●ウシカ」と「千と●尋の神隠し」、それから「も●のけ姫」だな!
ああ、確かに一日がかりでやったからな、途中でストバスしに行ったり買い物に行ったりしたから、結局もの●け姫見終わる頃には日付変わってたしな。
ん?ああいや、火神の好意で最初から泊まりに行ってたんだ。
最初はDVD貸すからゆっくり見ろよって言ったんだけどな「一人で見るのが怖い」なんて言うもんだから、だから一緒に見るかって事になったんだ。
火神か?凄く気に入ってくれてたぞ。
千と●尋とかナ●シカとか、最後感動して泣いてたぞ。
「火神、大丈夫か?」
ラストで涙止まってない火神の頭を撫でてそう言ったら、火神は潤んだ目で俺の方を向いてな。
「先輩、涙すごいけど大丈夫かです?」
「ああ……うん、らいじょうぶだ」
いやぁ宮崎アニメを見る時はティッシュが手放せないな!
それで、火神の家に泊まったんだけど夜寝るときにやっぱ怖くなったみたいでな。火神がすっごく恥ずかしそうに顔赤くしながら「先輩、一緒に寝てもらっていいか、です」ってお願いしてきたんだよな。
俺もまずかったなと思ったんだ、最後にもの●け姫見ちゃっただろ?やっぱり、ホラーじゃないにしてもあの映画はちょっと大人向けだからなぁ……ところどころ怖いシーンあるし、火神の奴なんか山犬もかなり怖がってて。
「こんなデカい犬に話しかけられたら、俺、絶対に気絶する!」って叫んでたなあ。
犬苦手だもんな。
「別にいいぞ、一緒に寝るくらい」
というか俺もちょっと怖かったからな!怖くないか?あの祟り神のシーンとか、かなりくるだろ。
それでその日は火神と一緒に寝たんだ。
えっ?同じ布団だったぞ。
いやあ火神の奴、俺にぎゅって抱き着いてきて凄い可愛かったなあ。
えっ?ああ、それで何あげたかだったな。
ト●ロのぬいぐるみだぞ!前に日向がUFOキャッチャーで取ってくれたんだけど。別に俺が欲しかったわけじゃなくてな、日向が取ったの押し付けられたんだ。だからちょっと困ってたっていうのもあるんだけど、写真見せたら火神が「いいなあ」って言うもんだから、火神にあげたんだ。
ああ、凄く喜んでくれたぞ。
お礼にってくれたクッキーもとても美味しかったぞ。
誠凛高校:日向順平氏の証言
これはちょっと前の話なんだけどな。
休みの日に木吉と二人ででかけたんだよ。
別に好きで一緒にでかけたわけじゃねえぞ、アイツがどうしてもって言うから仕方なくだ、仕方なく。
その時に偶然、ゲーセンで火神に会ったんだよな。
「あれ火神じゃないか」
「ああ、先輩どうもっす」
声かけたらビックリしたみたいだけど、そりゃ俺等も一緒だっつーの。
その時の火神は一人だったな、聞いたら服とか見に来たついでにブラブラ歩いてたんだってよ。
それで、折角だから一緒に遊んで行くかって木吉が言ったんだけどよ、アイツ別にいいですって言うんだよな。
何でかってアイツ、なんかゲーム弱いらしいんだよ。
じゃあ何でこんな所来たんだって聞いたら、昼に入った店でそこのゲーセンで使える、UFOキャッチャーのタダ券貰ったらしくて、とりあえず貰った物は使ってみようかとか思って来てみたらしいんだな。
「ふーん、でやってみたのかよ?」
「いや、やっぱ無理そうだしどうすっかなって思ってたんだ、です」
なんて相変わらず下手な敬語で話す火神を前にして、唐突に木吉のアホが。
「UFOキャッチャーだったら日向が上手いぞ」
とか言い出したんだよな。
「そうなのか?」
意外だって言う火神に大して、木吉の奴は笑って。
「日向のコレクションしてる武将のフィギアとか、よくUFOキャッチャーで取ってるよな?」
「欲しいもんがあった時だけだぞ、別にいつでもじゃねえし」
まあなんつーか、昔取った杵柄ってやつだ。黒歴史だから触れんじゃねえぞ?
それはいいとして、俺の意思とか関係なく何か取ってもらったらどうだ、なんて言い出すんだぞ勝手に。
それ聞いて火神もなんつーの、尊敬の眼差しっつーの?とにかくキラキラした目で俺を見るもんだから、なんていうか後に引けなくなっちまって。
「……何が欲しいんだ?」
しょうがねえから、代打で俺がやる事になったんだよ。
木吉の野郎が孫に向けるような目で俺達の事見てたけど、それは完全に無視る事にした。
「あの、先輩……マジでいいんすか?」
「別に遠慮すんなよ、んでお目当ては何だったんだ?」
出来ないって分かってて、こんな所で立ち尽くしてたって事は何か欲しいもんがあったからなんだろうな、って勝手に思ったわけなんだけど。
てっきりコイツの事だから、大袋の菓子でも欲しいのかって思ってたんだけど、違ったんだよな。
「あの先輩、笑わないすか?」
なんつーか恥ずかしそうに声ちっさくして、ちょっと顔赤くして言う火神を見て、誰が笑うと思う?
「はあ?別に笑わねえよ」
ほーら先輩に言ってごらん、って良い笑顔で言ったら火神はしばらく何か考え込んで。
「俺、あれ欲しい、です」
そう言って指さしたのは何だと思う?
某国民的モンスターアニメの、人気キャラクターのでっかいぬいぐるみが入ってる台だ。
信じられるかよ。
年下の癖に俺よりも図体デカい男が欲しいって指さす物にしては、可愛すぎるだろうが。
ああ、もう凶悪的に可愛いと思ったよ。
その場に居合わせなかったら分かんねえと思うけど、あれはあざといにも程があるレベルだったぞ。恥ずかしそうに顔真っ赤にして、でも欲しいのか目キラキラしてて、俺の服の裾引っ張って言ったんだぞ?
「……お前、ポ●モン好きなのか?」
「うぅ……アメリカに居た頃、皆面白いつって見てたからつい」
ああ、ああそうだよな。あの電気ネズミの売り上げは世界クラスだもんな。
「お前……可愛いな」
「ああ、イー●イ可愛いよな、です!」
いやちゃんと聞けよ、俺が可愛いって言ったもんはあの派生進化しまくるモンスターじゃねえよ、お前だよ。
多分、ちょっと呆れられたけど、でも同意されたとか勘違いしてたんだろうな、その時もうつむきがちに言ってたし。
だからまあ、んな恥ずかしがるなって感じで、ドーンと言ってやったんだよ。
「よっしゃ任せろ、んで狙いはどいつだ?」
「あっ、その……ブー●ターがいい」
そっか火神は、ほのおタイプ派か。
「俺はリー●ィアのが可愛いと思うぞ」
「ああ、可愛いな。です」
なんて後ろでブイズの押しメン語りをしてる奴等を放っておいて、俺はさっさと店員を呼んでゲームを開始した。ちなみに、俺的にはエー●ィが一番だと思うが、それは黙っておいた。
「すいません、コイツ移動してもらってもいいですか?」
店員にお願いして、奥まった所に引っ掛かってた狙いの奴の位置を正してもらって、開始したわけなんだけど。
まあ楽勝だったぞ、五回くらいで取れたしな。
「すみません、一回で無理だったら止めてもらっても良かったのに」
嬉しい反面、申し訳なさそうに言う火神だけどよ。どこで何食ったのか知らねえけど、お前タダ券三枚も持ってたから払った金額とか微々たるもんだし、だから別に気にするなって言って超過分なんて受け取らなかったら、余計に申し訳ない顔して何度もありがとうって言うもんだからよ。
なんつーか、思わず頭撫でたくなった。
「ははは、良かったな火神」
っていうのに、何で俺じゃなくてお前が火神の頭撫でてるんだよ?取ったの俺だっつの、気にしなくてもいいんだぞ……とか何勝手に言ってるんだよ?
あと火神!お前、嬉しかったのはよく分かったからブー●ターは袋の中に入れとけ、何で胸の前でぎゅって抱きかかえてるんだよ?可愛いだろ、可愛いだろ!
「先輩、マジでThanksです!」
「おう気にすんなそれくらい」
なんて気楽に言ってたんだけど、後日「あの時のお礼です」とか言って、わざわざ手作りでクッキーくれたんだよな。
またこれがかなり美味くて、本気で感動したつーの。
何でか何もしてない木吉も貰ってて、それは解せなかったけどな。
……で、何の話だったっけ?
ああ、火神にアピールかけたいって女子の話しだったな。
なんていうか、ああ見えて火神が可愛い物が好きらしいって話は俺達の間では有名だったからな。自分が好きだって思う物をあげていいんじゃないか?
ただ、火神の方が下手したら女子力とかが飛び抜けて高いかもしれないから、プライドへし折られないように覚悟はしといた方がいいかもな。
……もし相手が男だったらどうするのかって?
そうだな……まずはウチの体育倉庫に呼び出しだな。
俺達が相手と、じっくり話し合いするから。
俺達って誰かって?
お前の先輩様達だよ。
誠凛高校:黒子テツヤ氏の証言
青峰君、とりあえず対緑間君の作戦を考えるより先に……逃げて下さい。
「はあ?」
逃げて下さい。
色んな意味で、今の君では彼等に対抗する術がありません。
あと、すみません……土田さんのキャラが分かりません。
誠凛バスケ部唯一のリア充くらいしかイメージがないとかそんな……本当にごめんなさい。
でも彼にはちょっとしたシンパシー感じてます。
初めてだったんです、漫画のキャラクターと誕生日が一緒なの。
2013年3月1日2013年3月8日