改めて聞かれると困る

「マンドリカルド王に、どんな無茶振りをしたんです?」
「いや、無理に頼んだとかじゃないんだけど」
 難しい顔で縫製室へ向かったと伺いましたがと指摘してくるので、見てみたい格好について正直に答えただけなんだがな、と天を仰いで返す。
「改めて聞かれると困るんだよ」
「そういうものでしょうか」
「下手なこと言って、自尊心を傷つけたくないだろ」
 ああいうお人柄ですし返答によりけりでしょうけど、まあ多少は傷つくことはあるかもしれない、とはいえあなたは既に困らせているわけでしょう。
「別にどんな姿でも彼は彼だろう」
「それはそれ、これはこれです」
 おそらくはちょっとだけ恋人に褒めてほしかっただけでしょうに、なんでこんなに骨を折っているのか、とても頭を悩ませておいでかと。
「そんな難しいことは言ってないぞ」
「でもミニスカートが好きとか、そんな話でもなかったんでしょう?」
「嘘はつけないだろ」
「当たり前です」
 だったら可もなく不可もない返答でよかったのではと言われても、本気で考えてしまって、それが余計に足枷となっているのではないかと指摘される。
「下手に本気だから、手を抜く場所がないといいますか」
「そういうものか?」
 真剣に答えられてしまったから、実際に引っ込みがつかなくなってるじゃないですか、きっとお困りなんですよ。
「そんなに悩むものか」
「では聞きますけど、ローランはマンドリカルド王にカッコいいって言われたくないんですか?」
「それは、言われたいけどさ」
 誰に言われたって嬉しい言葉ではあるものの、恋人からの褒め言葉となると別格だ。それと同じことだと思いますけど、違うんですかと首を傾げられる。
「いやさ、ほら最初に聞かれたのが好みだったから」
 好み、趣味趣向、そういうので満点を取ろうと自分を変えにいくのは、やっぱり違うんじゃないかって思うんだ。
「ありのままが一番素敵だろ」
「いいことを言ってるし、嘘でもないんでしょうけど」

「だから面倒なんすよね」
「そう言いながらも、ボクところに来てるじゃないか」
 つまりは惚れてるって証だろう、いいことだと思うけどなあと笑うハベトロットに対して、そういうもんですかねと溜息混じりに返す。
 本当ならミスクレーンに相談するところだったんだけど、生憎と今は手が離せないらしい。そりゃ今は繁忙期だろう、考えが及ばなかった自分はダメだなと改めて思う。
「そう卑下するものじゃないさ、どっちにしろ今回はボクの仕事さ」
「仮装なんで、花嫁じゃねえっすよ」
 まあまあ固いことは言いっこなしさ、それにどっちしろ力は貸してほしいんだろうと言う相手に、お代はしっかりしますのでお願いしますと頭をさげる。
「どーんとボクに任せとけ!」

あとがき
これだったよなと記憶で書いたので、1と2でタイトルが間違ってたことに後になって気づいた馬鹿者です。
先にハロウィン礼装を見てれば、中華衣装のマンドリカルドくんを書いてました。
2022-10-17 Twitterより再掲

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