改めて聞かれると困る

「ローランの好み?」
 気にしなくてもいいんじゃないとあっけからんと言う相手に、そうかもしれないけど気にはなるだろと返す。
「僕みたいなのが好みなのかって?」
「もしそうなら、視力検査を受けろって言うとこなんすけど」
 明らかに見た目から全然違うし、容姿だけが全てじゃないでしょとアストルフォは笑って返す。
「本人にぶつけたほうが早いんじゃない?」
「いや聞きはしたんですけど、思ってた返答じゃなかったっつうか」
 純真さをぶつけられただけだったというか、結果的になにも得るものはなかったわけだけど。
「魅力的だっていうのは、本心だと思うけど」
「嘘だとは思ってねえっすけど、なんだろう、それとこれは別問題っしょ?」
 そりゃそうだと同意してくれるけど、下手に突っつき回すのも怖いなって思ってるんでしょと、核心を突いてこられるので苦笑いで返す。
「いいよね、青春ってかんじで」
「そうか?」
 頭溶けてるって言われても仕方ないんじゃないかっていえば、恋ってそういうもんじゃないと笑われる。そうかもしれないけど、イベントの空気と合わせて、二重の意味で浮かれていると言われたって仕方ないわけだし、物事には限度ってもんがあるわけで。
「それがお祭りのいいとこじゃん」
 気分あげて仲も深まれば万々歳ってね、もうなにか用意してるのと聞かれて、ドン引きされねえように好みを聞いたんで、まだなにもと答えればいっそのことデンジャラスなビーストにでもなったら、と想像するに恐ろしいことを提案されてしまった。
「ダメでしょ」
「意外と好きなんじゃない」
「変に性癖を歪めて、あんたらの王さまに怒られたくねえし」
 大丈夫だって一度理性が溶けてアッパラパーになった男だよ、シャルルマーニュだってもう一回くらい狂っても、たぶん許してくれると思うと言うけど、明らかにマスターへ迷惑がかかるんでダメでしょ。
「でも不純な動機で聞いたんでしょ?」
「そこまで攻めたことしたいわけじゃねえっす」
 まあローランに魅了が入ったらお楽しみできないしねと言われて、いくらあいつでもスキルにない相手から魅了なんて入るわけがないだろ。
「というか、そもそも女装するとは言ってねえっす」
「違うの?」
 しなくて済むならそうする、その格好が似合うくらい容姿が可愛ければよかったけど、自分はそこ関係ないんで、見苦しくならない程度に。
「そうやって控えめに抑えるのが、一番微妙なことになるんだよ」
 なんだろう根拠はないのに、なぜか納得できる。
「あっ、話をすればじゃん」
 えっと振り返ると、なんか邪魔したかと気軽に声をかけてくるローランに、別に大した用事じゃないけど、どうしたと聞けばいや昨日の話でと切り出される。
「ローランの好みについて?」
「そうだけど、なんで知ってるんだよ」
 ちょうどその話してたからさと、隣に座るように勧めてくるアストルフォに、なんで正直に言っちゃうんだよとちょっと責めたくなるものの、まあしょうがない。
「すまん、イベントごとに関してだとは知らなくて」
 意図を汲み取れなかったごめんと正面切って謝られても困る、ともかくぶつかって来た以上は、受け止めるしかねえ。
「別に怒ってねえっすよ」
「本当に?」
 その程度で腹を立てたりはしないぞ、というか説明しなかった自分も悪いのはそうだし、イベント事に浮かれてるって思われたくなかったのはあるけどさ。
「それでさ、実際のところローランってどんなのが好みなの?」
「えっ?」
 正直に言っちゃえよと背中を叩かれて、いやそんな急に言われてもなと頬を染めてつぶやく。
「なんだよ言えよ、今ならもれなくマンドリカルドが着てくれるって」
「いや、絶対にやるとは言ってねえ」
 大丈夫だってノリでいけると言うけど、それ許されるのは美形サーヴァントだけっす、自分みたいなのが着たらドン引きっすから。
「想像してみろよ、恋人が一番キレイな姿を」
 そんな名曲みたいな言い回しで、思い浮かべる姿は下心満載だろ、やめろ怒られるってなんかその筋の人から。
「そ、それじゃあ」

あとがき
今年の新ハロウィンイベントとか、ローランは参加しないですかね。 礼装だけでも出てくれたら、嬉しいんですけど。
2022-10-06 Twitterより再掲

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