welt


ゆらり、と目の前を行く明かりが揺れた。
暗闇の中その光が消えればこの体も闇に喰われてしまう。
「しかし、ほんまにええんか慎治?兄ちゃん絶対に心配するで」

カンテラを下げた少年が振り返らずにそう言った、相変わらずに前を行く歩調は緩めない。

「いいんだ、話したら止められるだけだから」
「まったく、お前の兄ちゃんはブラコンが堂に入ってるからな・・・その後に詰問される人間のこと、考えてくれや」
詰問される人間、それはこの幼馴染も含まれている。

暗闇の中で友人の金髪が揺れた。

「今は、それどころじゃないんだよ・・・世界がね」
「そうやな・・・」

世界の危機なんて何度も何度も叫ばれてきた、だけど今僕達が行動するべき時がきたのだ。
僕がそこに向かうのは、たったそれだけの理由。

「まったく、お前まで遂に向こうに行く事になるとはな・・・椿さんは、そんなに梃子摺ってるんか?」
「相手は見つかってるよ、でも勧誘するのに梃子摺ってるんだ」
「ふうん、また何で」
「相手はコッチの世界の事を知らない、ただの一般人だからね、いきなりそんな話しをしても信じてはくれないだろう」
「まあそうやなあ・・・俺だってそうやわ。それはいいとして、お前大丈夫なのか?」
「何が?」
「いや・・・そりゃあさ、お前の事信用してないわけじゃないけど、流石になあ・・・心配するわ」

今度は振り返って立ち止まった。
親友の心配そうな顔が、自分に向けられる。

「過保護なのは兄さんだけで充分だよ、それに・・・アイツもいるからね」
「そうやね・・・まあ相棒が放ってかれるのは、我慢したるわ」
にっこりと笑って少年はまた歩き出した。

「着いたで」
目の前に聳え立つ大きな扉。
地面にカンテラを置き、ポケットから鍵束を取り出し、大量に付けられた鍵の中から扉の鍵を探す友人。
その鍵の数は、存在する世界の数だ。
そして、その内の一つに僕達が生きている。

「ほな、開錠するで」
探していた鍵が見つかったようで、掛けられた大きな南京錠に鍵を差して外す。
ガチャンという、大きな金属音。
軋んだ大きな音を立て、扉は開いた。
その先には、果てしない闇が広がっている。

「ほな、頑張れや。何かあったら連絡して来い」
ニイっと歯を見せて笑って、親友は別れを言った。
「ありがとう、じゃあ」
「いってらっしゃーい」
大きく手を振る友人の人懐っこい笑顔に、見送られ、僕は歩き出した。

世界の境界線の、先へ。


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後書き

昨年高校の友人と書き始めたリレー小説(?)です。
設定だけ共有、後は各個人が別々で書く・・・ってこれリレーじゃないですね。
今回サイトに掲載するにあたり、お二人の許可は得てますが・・・内容変わってます。
まあ、楽しく書きます。
2008/12/10


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