地上に日の光が差している。
全ての人間に力を与える光だ、ほとんどの生命体にはこの光は無害なものであり、むしろ有用に働く。
しかし、それは全てに祝福を与えるものではない。
例えば視力障害者、日光を直接見ることのできない病がある。
例えば砂漠地帯の住民、彼等は日光で肌を焼けば皮膚病に陥る。
それは、決して人だけではない。

例えば彼。
俺の主は、日の光に当たれない。

光の者でありながら、昼を支配する光の下では生きられない。
自分の属する月が支配する、夜の支配下でなければ生きられない。
病・・・いや、呪い・・・。
または、宿命か・・・。

〜咎と金属〜・3



褐色の肌に色素のない長い髪。
元々人型で行動する事はなかったが、主に従うようになった時から必要に応じてこの姿も使うようになった。
俺の主・・・つまり、冬川レンという名の天使。
俺に吹雪という名前を与えた者だ。

「鼻がおかしくなりそうだ・・・」
人間界の人混みの中を歩きながら、小さくそう漏らす。
人の世には強い臭いが溢れかえっている。
獣は鼻が利く、特に自分は嗅覚の強い動物だからな・・・まあその能力は役に立っている。
特に、人探しという面では。
俺が探すのは、人じゃないが・・・。

戸賀崎蟷螂の人間と悪魔の混ざった独特の臭い、そして、彼に付き添っていた女。
あれは人型をしていたが、間違いなく妖怪の類だ。

化けるのが得意な妖怪、狐の臭いがした。

一体何の為に付き添っているのか?それは分からないが、そんな事はいい。
臭いの方向は分かる、しかしまだ遠い。
人混みの中を臭いの方向を辿って進んで行く、臭いで逃げる事はできない。
しかし、俺の主の事が気に掛かる。
自分の体の事は一番よく知ってるはずなんだが、どうにもレンは無理や無茶をよくする。
それ程に、レンは必要とされている。
しかし・・・それは良い事ではない、と俺は思う。
罪人の排除なんて、良い仕事じゃないだろう。
全く・・・さっさと終わらせて帰りたいな、時間があれば俺の手で片付けてしまおう。

ふっと見上げると、白い鳥が飛んできた。
誰かからの伝令か・・・。

「誰だ?」
手の甲に乗せてやりそう尋ねる、小鳥自身は首を傾げたが、すぐに返答が返ってきた。
『上代です』
ハンターの雇い主か・・・。
「何か?」
『悪魔喰いの討伐令が出ましたが、コチラも手をお貸ししましょうか?』
「援軍を送ってくれると?」
『ええ、コチラとしても異分子は早く排除したいものですから、それに・・・
貴方のご主人は昼間活動できないでしょう?』
「・・・・・・」
『余計なお世話、でしたか?』
「いや、頼む」
『分かりました、既に向かっておりますので、すぐ落ち合えるでしょう』
「ハンターの特徴は?」
『彼女は、一目見れば分かりますよ』
どういう意味だろうか?
それを尋ねる前に、その小鳥は行ってしまった。

見れば分かると言うが・・・見た目も知らずにどうやって気付けと言うんだ?

「ねえ、ちょっと君ぃ」
「・・・はい?」
雑踏のど真ん中、いきなり背後から声を掛けられた、振り返った瞬間に鼻に突く作られたイチゴの匂い。
「あは、やっぱり君人間じゃないね、でも中々イケメン」
そう話すのは黒とピンクを貴重にしたゴテゴテとした飾り立てた服。
西洋人形のような女だ。
「お前は何だ?」
「何って言われてもね・・・」
「名乗れ、そして用件は何だ?」
ただの人間が俺達、人に化けたモノを見破れるわけがない、なら何だ?
「ふうん、高圧的だね・・・という事は、肉食獣系かな?ワシとかライオンとか、狼とかね」

正解だが、しかし高圧的っていうだけで判断されるのはどうにも心外だ。

「私の名前はソレイユ、三木本ソレイユ、一応魔女なんだけどね」
「魔女・・・」
成る程、ソッチの業界の関係者か・・・。
「それで、魔女が俺に何の用だ?」
「うん?上代さんから連絡来たんじゃないの?君の応援に来たんだけど」

という事は・・・彼女が援軍のハンターか。

「・・・足手まといにはなるなよ」
「ちょっと!それが相棒に言う台詞!!」
「誰が相棒だ」
「私が」
「引っ付いて歩くな!人目を引くだろうが!!」
俺の腕に回されかけた腕を払う。
それを見て剥れた顔で俺を見返す彼女。
「まったくもぅ・・・大体さぁ、追ってる相手もスッゴイ目立つ二人組みなんでしょ?」

相手、戸賀崎蟷螂とそれに付き添ってる狐の少女。
黒い革ジャンにダメージジーンズ、厳ついデザインのシルバーアクセサリーを着けた長身の男。
緑の髪にツインテールの十代半ばに見える少女。
確かに、あの二人は目立つが・・・。

「だからと言ってなぁ、コッチまで目立つ必要はないだろうが」
「そんな事言っても無理だって、私は既にこの格好だし、君もさかなりイケメンだしねぇ」
「俺の顔は関係ないだろう」
「関係あるって!大体褐色の肌に碧眼で銀髪でロングでしょ?かなり日本人離れした顔立ちだし。
これで目立たない方がおかしいって」
「・・・・・・もういいから騒ぐな」
道行く人間の視線が痛い。
とりあえず、彼女自身には心配があるが、とにかく仕事を遂行しなければいけない。
先行きが不安になってきたが・・・なんとかするしかないだろう。


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後書き

よく分からない展開が続いてます。
そして、新しい役職現る。
今度別のハンターが主人公の話を書くつもりだったんですが、ソレイユの方を先に出してしまった・・・。
まあいいか。
では、まだ続きそうですが見捨てんといて下さい。
2008/12/20


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