その闇は暗く、深く…だが、とても優しく、私達を包み込む


雨月草紙

〜五月闇〜



雨音が周囲に大きく響く。
遠くは霞んで見えない雨、だがその水は彼を余計に引き立たせる。

蝋燭の心もとない僅かな光の中、そっと抱き合う二つの影が揺れる。

倉庫の中にあったソファに座り、私の膝の上にフリオニールを座らせる。
赤く染まった彼の頬にキスを贈り、シャツを剥ぎ取ると、結っていた髪を解く。
解かれた彼の髪は湿気を帯び、褐色の彼の肌に張り付き、なんとも扇情的なコントラストを生む。

「綺麗だな」
彼の耳元でそう囁き、肌をゆっくりと撫でていく。
首筋に吸い付いて赤い痕を残すと、敏感な彼の肌は、触れるだけでも感じてしまうらしい。

そっと彼の胸の飾りを摘み上げると、ビクッと震える彼の体。
「っ……」
しっかりと唇を噛み締め、声を漏らすまいとする恋人に、苦笑い。
「我慢しなくとも、ここには誰も居ない」
「でも……」
潤んだ瞳で私を見つめる彼の耳元に唇を寄せる。
「私達二人しかいないんだ、遠慮はするな」

存分に、鳴けばいい。

赤くなった彼に微笑み、今度は胸の飾りに吸い付く。

「ひぁっ!」
舌先で転がして、時々歯を立ててやると口から漏れる甘い声に、気分が高揚してくる。
もっと、鳴かせてやりたい。
そう思って下半身へと手を伸ばせば、それに気付いて彼の目が不安げに揺れる。

初めてじゃないのに、何時までも反応が初々しいのは彼の持つ純粋さの所為か。
そこが、可愛いんだが。

「あっ!イヤだっ…ウォーリア」
「嫌じゃないだろうフリオニール?」
彼の熱い欲望と、トロトロと溶けるような彼の内部を同時に愛撫してやると、熱い吐息に混じってさっきよりも甘い声が漏れる。
「凄く気持ちいい、感じてるんだろう?」
それを証拠に、彼の先走りによって私の手は汚れ、愛撫する度に淫らな水音が周囲に反響する。
「はぁ…ぅあ、う…ちが」
「違わない」
「っぁあ!!」
彼の一番感じる所に触れれば、一層高い声で彼は鳴く。
そろそろ限界が近いのか、私の肩に置かれた彼の腕に力がこもる。

「イキたい?」
縋りつく彼にそう問いかける。
答えは聞かずとも分かっているんだが…それでも、彼の口から聞きたい。
「ん…っあ、ウォーリア……俺」
困ったように視線を泳がせる彼に、再度私は問いかける。
「イキたいんだろう?」
そう言いながらも、愛撫する手を止める。

「欲しくないのか?フリオニール」
君が答えてくれるまで、絶対にイカせはしない。
そんな私の意図を読み取ったのか、それともただ我慢ができなかったのか、彼の欲に揺らぐ目が私を見つめる。
「駄目…だよ、ウォーリア…このままだと、汚しちゃうから…」
だが、彼から返ってきたのは私の予想とは違う答え。

汚しちゃう…という言葉に、何を?と問い返そうとした所でようやく思い至った。
私の手によって、彼の服はすっかり脱がしてしまったんだが、当の自分はまだ脱いでなかったのだ。

「気にしなくてもいいものを」
彼の蕾をほぐしていた指を抜き、膝の上に座らせていたフリオニールをそっと隣に下ろし、額に優しくキスを贈ると、さっさっと自分の服を脱ぐ。

「これで、文句はないだろう?」
全裸になって彼の前に立つと、段々と濃くなっていく暗闇の先に私を見つめる瞳があった。
深くなっていく夜闇。
今夜はまだ雨が降り続くらしい、建物の屋根に当たる雨音が決して建物の中を静かにさせない。
月明かりもない暗闇の中、恋人の体温を求めてそっとその手を伸ばす。

「君はまだイキたくはないみたいだが、そろそろ私は君が欲しい」
「……っぇ、あの…ウォーリア」
彼だってずっと感じていたはずだ、自分の下で育つ、私の欲の熱さと、固さを。
「君だって、欲しいだろう?」
再び彼を私の膝の上へと誘う。
私の両肩に手を置き、私の欲望を下に感じながら、彼の視線は左右に揺れる。

欲に流されるべきか否か、迷っている目だ。
羞恥で赤く染まった頬とは逆に、その目の奥には、快楽を求める彼の欲が見え隠れしている。

だが、残念ながら、君の決断を待っていられるほど、私の余裕もない。

「君は、好きにしていいと、そう言っただろう?」
「えっ…」
「だから、好きにさせてもらうぞ」
目の前にある彼の両手でしっかりと捕らえると、私の欲望の上にグッと引き寄せて、落とす。

「ひぃ!!あっ!あああああ!!」

いきなりの挿入に耐え切れず、彼の口から悲鳴に近い声が上がる。
いきなり、とはいえしっかりと慣らしていたので、彼の内はすんなりと私を受け入れた。

「ウォー、リア……いきなり、何す…」
「すまない、だが…そんなにイイ所に当たったのか?」
薄っすらと涙を浮かべる彼に、ちょっと笑ってそう言ってやると、彼は怒ったように眉を寄せる。
「笑い事、じゃない」
目に涙を溜めて睨んでも、こんな状況では誘っているようにしか見えない。
それに、彼の口が何を言っても、彼の内は熱く私を包み込んでいる。
この先の快楽を求めるように、熱く。

「とりあえず、君が凄く感じているのは分かった」
「ひっ!ん、ちょっ…ウォーリア、まだ!」
無理だ、と言いかける彼の口を己のそれで塞ぐ。
舌を差し込み絡めれば、二人の間で熱い吐息が漏れる。
思考回路はドロドロに溶けてしまった、今この中に残っているのは、ただ彼が欲しいというそんな欲望だけ。

「ふぁ、っあ!ああ……ウォーリア、っあ!」
「愛してる、フリオニール」
激しい律動に耐え切れず、私へ必死に縋り付くフリオニールに、最上の愛情を感じながらも…私の中でも快楽が高められていく。

君が…君が愛しい。

「っぁ!もう、もうイッちゃ…」
「ああ、いいぞ…イけ」
「っひぃぁあ!!っあ、あああああ!!」
最奥を突き上げると、綺麗な高い声を上げてフリオニールは達した。

「っく…」
彼の締め付けに耐え切れず、彼の中でまた、私も達する。

「ふ、ぇ……熱い…」
クタリと力が抜け、私の上に寄りかかってくる恋人の頭をそっと撫でる。
「あっ……ウォーリア、熱い」
熱い熱い、と繰り返す彼の中で私の欲が再び熱を持つのが感じられた。

「……あの、ウォーリア?」
「フリオニール、もう一回…」
「っへ?……っえ!!ちょっと、ウォーリアっ!」

彼が静止をかけるよりも先に、再び律動を開始する。

雨音と水音と、恋人の可愛い鳴き声だけが、深まる世闇の中に響き渡っていく……。




五月晴れ へ


後書き
第2話、できました……頑張った、頑張ったんです…。
終わってみて感じたのは、何故WOLがちょっと意地悪なのかという事。
アレです、好きな子は虐めたくなるタイプなんです、いいじゃないですか、フリオも喜んでるんですから(意味違う)。
次回で終わりですが、実際は先にもう3話が出来ているという……。
エロを書く力が欲しいです。
2009/6/21


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