宇宙へと進出を果たし、科学技術は様々な進歩を遂げた。 地球上には存在しなかった物質、エネルギー源等が数々発見された事も拍車をかけた。 その進んだ技術で、人は平和を築き上げる為にどんどん繁栄していった。 宗教も党も、そこだけで固まってしまえば問題なんて起こらない…。 そんなわけがない。 宇宙規模に拡大してしまえば、事業の相手も宇宙規模になってくる。 全てを一つにはできない。 宇宙規模に拡大してしまった人類は、数多くの党派または宗教同士で分かれた。 どこの出身なのか、宗教は、党派は…人を細かく区分するために存在する、そんな事項。 オレはこれが好きじゃない。 だって、人間を区分する方法じゃないって思うんだ、そういうのは。 だけど、実際にはそういうわけにもいかない。 存在する限り、オレ達はそのどちらかに身を置かなければいけない。 区分されなければ、その中に含まれなければ、身元が保障されないから。 生きていけなく、なってしまう。 すごく不自由に感じるけど、これが現実。 そして、区分されたらどうなるのか…。 今度は仲間を集め始める。 そして、共通の考えを持つもの同士は集まり手を取る。 逆に反対の意見を持つものとは、反発する。 そして、ここでも再び戦争が始まってしまった。 宇宙という広大なフィールドでの、巨大な戦争。 科学技術の進歩によって、巨大で破壊力のある兵器が開発され、人々を苦しめる。 今もそう。 科学は人の助けとなり、時に人に牙を向く。 全ては最先端なものを扱う人間の、古代から変わらぬ欲望のため。 力を持ちたい、自分の思い描く世界を創造したい。 そんな、お偉方の高慢な欲のために、今もどこかで誰かが命を落としているのだ。 「近年行われている連合軍と共和軍の戦争は、別名クリスタル戦争とも呼ばれている。 この二つの軍はアンドロメダ銀河のエリアB-22地区で発見された新型エネルギー、通称“クリスタル”を巡っての戦争なのだが。 ここにはもう一つ、宇宙議会の政権争いも絡んでいると言われている。 現在、宇宙議会の政権を握っているのは共和党なのだが、この共和党政権をよく思っていない国が勿論存在する。 そこで、その国々は同盟を結び、政権交代へと動き始めたわけなのだが、共和党の国々にはそれだけの指導力並びに影響力、経済力がある。 特に我々の生活に必要なエネルギー供給に関しては、共和党に属する国が現在連合軍よりも上回っている。 その中で発見されたのが、この“クリスタル”だ。 これは現在使用されているあらゆるエネルギーの中でも、郡を抜いて強いエネルギーを持っている。 もし、このクリスタルを市場に出せば、通常のエネルギーの何倍もの値段で取引されるであろう。 しかし、このクリスタルが発見されたアンドロメダ銀河のB‐22地区というのは、どの国にも属さない境界ラインにあたる。 どの国にも属さないという事は、その採掘権を持つ国こそがクリスタルを所有するべきだ、という連合軍側の一国と 。 どの国にも属さぬとはいえ、銀河の資源であるクリスタルを一国が独占するのはよくない、また、22地区は元は共和党側の領土にあったった、等という歴史的な問題を持ち出して対抗する共和党側に分かれ、争いを始めた。 そして現在、戦争にまで発展してしまったのだが…」 そんな事、一般常識ッスよ。 欠伸交じりにそう思うが、誰も前で話す男にそう言ったりはしない。 講堂内に満ちた空気には、彼の言葉を一心に耳を傾けている者が多いが、オレのようにつまらなそうに聞いている者もいる。 熱心に聴いてる奴なんて、大抵は大学を出てからどちらかの軍への入隊を希望する者だ。 だが、興味のある無しに関わらず、今はどこの大学でも、何らかの形で全生徒が戦争に関する授業を受けないといけない。 だから、一応理系であるオレまで、現代人類史なんて興味のない授業を受けさせられてる。 まあ知識がないよりは、あった方がいいんだろう。 何も、知らされないよりも。 緩い睡魔によって、再び込み上げてきた欠伸を噛み殺した時に、ふと下に置いた鞄の口から何かが光るのが見えた。 携帯に、新着メールの表示がされている。 ハッとして、急いでメールのチェックを行う。 一体、誰からなのか? ……っあ…。 やっぱりか、目的の人物からではなかった。 メールの送り主は大学の友人。 だが、どうやら何かあったらしい。 一体、何なんッスか? 疑問に思いながらも、こっそりとそのメールを開き、内容を確認する。 「嘘だろ!!」 思わず上がった俺の声に、室内がしんと静まり返る。 しまった、つい……。 「どうした?ティーダ君」 「えっ…えっとぉ……」 どう答えたらいいだろうか? 「何か、疑問でも?」 今、この教授は何て言ってた? 確か…そうそう、連合軍のに加盟している国の多くは、元々共和軍と敵対していたとか…。 「えっと…現在の連合軍は、元々は共和軍の属国だったって聞いたんッスが」 「ああ、その事についてか…実は、現在の連合軍の指揮を取っている……」 良かった…なんか誤魔化せたっぽい。 ほっと胸を撫で下ろし、もう一度メールを読み返す。 『From:オニオンナイト Sub:大変だよ!! ティーダのお兄さんって、確か連合軍の研究施設に勤めてるんだよね? 軍の方は伏せてるけど、昨日の夜、極秘裏に共和軍が連合軍の研究施設を襲撃したんだ。 君のお兄さんの居る研究施設をね。 両軍のコンピュータに侵入して調べた情報だから、ほぼ間違いないよ。 お兄さんの安否は不明だけど、死亡なんていう情報も入ってないから心配はしないで。 君のお兄さんくらいの人物は、相手も生かして捕らえるはずだからさ。 これから、もうちょっと調べてみるから。 大丈夫、お兄さんを信じなよ。』 以上が、友人の天才少年からの報告。 兄貴の話をして以降、彼はオレの為に兄貴を探してくれると、そう言ってくれた。 オレの兄貴、フリオニール。 一般にどれくらい浸透してるのかは分からないけど、オレの兄貴はその道では結構有名な技術士だ。 機械人形の技術士。 数多くの成功例を挙げている兄貴の技術が、軍の目に止まらないわけがない。 兄貴がしぶしぶ軍の施設に研究員として入ってから、しばらくは兄貴からのメールはあったんだけど…「極秘に、ある機械人形を制作する事になったんだ」というメール以降、急に兄貴からの連絡が途絶えた。 極秘の任務だと、軍は親族に対しても連絡を禁じるらしい。 情報漏洩を防ぐため、なんだそうだ。 だが、残された家族の方はどうなるんだろう? 心配するだろう。 だって、唯一の家族だしさ。 そんなオレの話を聞いて、この友人は動いてくれたのだ。 ……勿論、お礼はするって言ったんだけど。 その調査結果が、コレだ。 ……馬鹿兄貴。 心の中で悪態を付く。 もう授業の声も耳に入ってこない、テストが悪かったら兄貴のせいッス! 何で、オレに連絡してくれないんだよ…何かあったら連絡するって言ったじゃんか。 勿論、現実的に考えてそんな簡単に物事が進まない事は分かってる。 先に軍部に連絡しないといけないだろうし、もしかしたら、外部に情報を送れないような場所に居るのかもしれない。 オレの心配なんて、戦争をする上ではどうせ関係ないんだろ。 あーあ、戦争なんて早く終わっちまえばいいのに。 「はぁ…」 事実であろうとも現実味のない授業、その退屈さと、オレを取り巻く現実に思わず溜息が漏れる。 あの兄貴が、タダで死ぬわけがない。 そう思いながらも、帰ってきたら絶対に一発殴ってやる!! そう心に決めた時、授業終了の鐘がなった。 後書き SFパロ第3話終了。 ティーダが登場しました!ティーダの独白とか初めてなんで、キャラを掴み損ねた感じが否めない。 戦争とか始まっても、学校ってあるんですかね?まあ未来だし、関係ある人ない人居るわけですし、普通の生活を送ってる人達もやっぱり居ますよね? 昔から政経が苦手なのに政治とか絡めてみた、だって、大体の戦争は政治絡みですから…。 入り組んできたら、自爆するかもしれません…。 携帯電話、まだあるんですかね?ありますよね? きっと、メッチャ進化を遂げて存在してます、小型のキーボードに接続したら、パソコンとして機能するようなのが。 次回はスコールを主人公に持ってきたいな…とか目論んでます。 2009/5/3 |