共犯者・2

共犯者という言葉が頭の中で繰り返される。
生き残るためなら、敵も味方も騙すことくらいできなくちゃ。どんなに罵られようと、生き延びないと意味がないんだ。
サングラスを握り締める。少しでも身を守れるならと彼が出かける前に渡してくれた。
今この状態でも、憧れた任侠の精神を体現した自分になれるのかは、はなはだ疑問なんだけど。それでもないよりは勇気をもらえるのは確かで、人の気配を感じて追い縋るように久しぶりにかけた。
「失礼します」
部屋に入って来た二人組の兵士に黙って視線を向ける。あれが噂の捕虜か?じゃなきゃここにいないだろという声が聞こえた。
「おい、何の用だ。こんなんだが見せもんじゃねえんだ、遊びで来たならさっさと失せな」
「ひっ!あ、いえあの、ゴースト様より食事を運ぶように命令を受けてまして」
「そうか……手間かけてすまねえな」
「いえ、あの……自分たちはこれで」
失礼しますと出て行ってしばらく、ドアの外の会話に耳を傾ける。
貴銃士ってやっぱすげえんだな、一ヶ月監禁されてもあんな気丈に振る舞うとか。確かに、いつ壊されるかわからないっていうのにな。ゴースト様が手を焼いてるって話、まんざら嘘じゃないんだな。確かに一筋縄ではいかなそうな相手だ、なんていうかマフィアの幹部みたいな。
マフィアって西洋の任侠組みたいなもんだったか。そう見えるってんなら、あながち自分の精神まで腐ってるわけじゃあねえみたいだな。
サングラスを外して溜息を一つ。安心した、ちゃんとやり過ごせたみたいで良かった。
バレるわけにはいかないんだよね、彼が何もしていないって。
机に座って昼食のパンをかじる、不安に包まれていたから空腹なんてそんなに感じてないんだけど。

世界帝軍の作戦、どうなってるんだろう。ゴーストさんが出て行くってことは大がかりなんだよね、多分。彼がどんな立ち位置なのかはよく知らないけど、少なくとも俺を自室に閉じ込める許可を上から貰える程度には、信頼されてるってことだよね。
野菜がたくさん入ったスープに口を付ける、拘束された手でもスプーンを使うのに慣れてしまった。器用だって言われたけど、テーブルマナーとしてはカトラリーくんに怒られると思う。
みんな出撃してるのかな、ゴーストさんと戦闘するかもしれないんだよね。
そう思うとやりきれない。敵である彼の背中を押した自分のことが、いやになる。
敵に同情はいらないと彼は言った、怒気を含んで、マスク越しの目は睨みつけていた。
じゃあ昨日のあれは?同情の以外のなにものでもないはずなのに、彼は笑ってた、優しい顔をしてこちらを見て。優しい顔してたんだ、それがわからない。

「本隊との合流地点まであと数百メートルってところかな?」
「ええ、このまま無事に進めばですが」
できればそうあって欲しいよとぼやくシャルルさんをラップさんがたしなめた。
「戦場では常に何が起きてもおかしくはありません、想定外などという言葉はできるだけ避けます」
「わかってるよ。まあ、退路の確保はできてるしこちら側が駄目なら違う道から行こう、予定時刻まで余裕はあるわけだし」
ナポレオンさんは大丈夫だよねと言う彼に、そのご心配は無用でしょうとすっぱり切り捨てる。本隊を率いている彼の実力を考えれば、確かにそうそうやられるとも思えない。
現在地の確認を手短に済ませる彼等を横目に、周囲を警戒していたところ、狙われている視線に気づいておいと叫ぶ。
強まった殺気にまだ受け身の取れてなかった二人の前に出て、銃弾を弾き返す。
「大事ねえか!」
「すまない」
「ごめん、ありがと」
振り返ることはせず、銃弾の放たれた方向を確認する。距離が遠すぎると俺には不利だ、相手が見えなくちゃ対処もしづらい。ならばと目線を向けると意図を察してくれたのか、全員が別の方向に散る。
先陣を切って敵に向かうのはラップさん、援護にシャルルさん、二人が時間を稼いでいる間に俺が敵の背後を取る。

身を低くして建物の影を走り抜け、最初に見た位置から少し外れた場所で二人を迎撃する世界帝軍の貴銃士をみつけた。
黒のスーツに、白い髪、細身の青年がごついライフルを手に背後に迫った俺の方を振り返って見た。黒いガスマスクに覆われて顔はわからないが、体勢は崩さず構えたライフルを向けている。
射程範囲はもうしっかり捉えている、頭をめがけて一発、マスクに当ってひび割れた。
「兄さん、ようワイのこと見つけたな」
呪ったるわと気だるそうに呟く相手が、真っ直ぐ俺に照準を向ける。
「あんた一人か、なら分が悪いぜ。引いた方がいいんじゃねえか?」
「敵さんに言われることとちゃうわ、見つけた以上は捨て置けん」
とはいえ、背後にはラップさんとシャルルさんもまだ控えている、彼等二人を相手するのはいくらんでも骨が折れるはずだ、何より。
「こっちも急いでるんでな、引きな」
「そうも言ってられへんのや」
「……その怪我で、まだ俺たちを相手できると思ってんのか?」
そう指摘すると、だからどうしたと問う声に怒気が混じる。
煙に混じった血の匂いと、足元にあった血溜まりで察しはついた。ここを通った部隊との戦闘で既にかなり深手を負ってる。先を急ぎたいこちらとしては、戦闘を避けれるのはありがたい。 「何考えてるか知らんがな、敵に同情されるんは腹が立つ。古銃ごときが、馬鹿にするんやない!」
顔の横を弾丸がかすめていった、鼓膜が割れそうな轟音と共に背後の壁にぶち当たる。その音を聞いた仲間の無事かと叫ぶ声がすぐそこまで迫っている。
「同情じゃねえ、急いでるから会わなかったことにしてほしいだけだ」
「それで納得するかいな。これでも恩義に報いるために必死こいて戦ってるねん。それを許さんのなら、今すぐ壊せ」
ワイかてプライドくらいある、戦場に立つ以上は背は向けたないと気丈に振る舞うその姿に、いいじゃねえか気に入ったと相手に笑いかける。

「あんたのプライド好きだぜ。なら、這いつくばってでも生きな!」
「見逃して後悔しても、知らんで」
「はっ!その時に考えりゃあいいことだろうが」
「豪胆な兄ちゃんや」
ほんまに呪われればええのに、と言い残して彼は銃を下ろした。それを見て、大丈夫だろうと思って俺はその場を後にした。

記憶が正しければ、彼を初めて会ったのはこの時のはずだ。
印象は良くはないはず、そもそも名前すら名乗らなかったし。
でも次会った時に、彼は俺のことを覚えてた。近くで顔を見たからっていうのはあるのかもしれないけど、意外だったな。普段は目立たないから、敵に顔を覚えられてるなんてことなかったから。
「この前の、豪胆な兄ちゃんやん」
相手軍を正面から出迎える形になった際、真っ直ぐに俺を見てそう言った。マスクの関係で相変わらず顔はわからなかったけれど、ほな行くでという淡々とした声色と同様に、それほど表情も変わってなかったんじゃないのかと思う。
そんな戦闘がいくつかあった。勝敗がなかなかつかない、完全な膠着状態に陥ることもままあった。

お世辞にも治安がいいとは言えないスラム街近くの森に潜んで、進捗のよくない戦局をどうするべきか、作戦の遂行に審議を重ねるマスターやレジスタンス幹部、その場に呼ばれる貴銃士の面々を眺めて自分は一人離れて街へ向かった。
俺がそこに呼ばれたのは勿論、戦闘に参加することもあったけど、主に偵察としての役割が大きかった。マスターの護衛にはケインさんが、敵軍への諜報にカトラリーくんが駆り出されるのと同様に、俺も自分にできることをやり遂げようって思って名乗り出たのだ。
街の中の様子を少しでも確認できれば、優位に運べることも増える。そう思って歩いていたら、路地裏から男の怒声が聞こえてきた。
「小奇麗な恰好しやがって、金目のもん出せよ?今なら、助けてやらねえことはないぞ」
大柄な男に対して相手も言いかえしてるようだが、周囲の喧騒にかき消されて聞こえない。あんまり変なものに関わるのはよくないけれど、見ないふりをするというのは俺の、精神に反した。 「おいあんた、その辺にしときな」
「ああ?部外者は引っ込んでろ!」
背後から声をかけて振り返った男の顔が、次の瞬間真っ赤に染まっていた。周囲の奴等含めて俺も首を傾げる中、うるさい奴やと聞き覚えのある気だるげな声がする。
「まあ丁度ええわ。片付けが早く済む」
いつもの通りガスマスクを付けた男が、声をかけかれ振り返った隙を逃さずに男の頭を撃ち抜いていた。ぼんやりしてる暇もなく、全員が撃たれてその場に倒れ込むのを見て、あんた何してんだと声を荒げる。
「誰かと思えば、豪胆な兄ちゃんやん。助かったわ」
面倒やからさっさと片付けたかったんよと何事もなかったかのように言う相手に、怒りで頭が沸騰しそうだった。
「世界帝軍ってのは、一般市民ぶっ殺しても平気なんだな」
銃口を向けて叫ぶ。この距離なら充分、射程範囲だ。だけど相手はそんな俺を見ても淡々と、まあ落ち着きやと言う。
「そいつらが一般市民なんやったら、そこらを行く奴等は聖人君子や。後ろ、見てみ?」
そう指し示した先では女が倒れていた。赤い派手なドレスを着ているけれど、それよりも深く鮮烈な赤い血を頭から流して、完全にこと切れている。銃殺ではなかった、どう見ても撲殺だ。可哀想にあまり綺麗な状態とは言い難い。
「これは」
「ここがどんな場所かわかってんやろ?商売女から金取ろうとして、抵抗されたから殴った、ってとこや」
ようあんねん。見かけたら都度、片付けるように言われてるからそうしただけやと何事もないように言う相手に、それでいいのかと詰め寄る。
「抵抗されりゃその場で殺すんなら、やってることはそこに転がってる奴等と同じだぞ」
「だから何、いちいち捕まえて衛兵に突き出せって?軍の裁きなんてわかりきってる『一両日中に射殺せよ』や」
ならその場で殺す方が楽でええねん、ここらは人が死んで転がってても騒ぎ立てる奴はおらん。
淡々とそう説明する相手に、そうかよと吐き捨てるように返して、手にかけた本体を仕舞う。

「なんや、正義感たっぷりに説教垂れるんかと思ったけど」
「残念ながら俺に振りかざせる正義感とやらはねえよ、そういう性質じゃないんでな」
邪魔者の口封じ、汚れ仕事は常々やらされてきたからなと返すと、そうかと興味なさそうに呟く。
「ただよお、やり口は気に入らねえな」
「しゃあないやろ、そういう命令やねんから」
さっさと退いて、片付けたら帰って来いって命令やねんと言う彼に道を開ける。
「なんや、ほんまに帰らせてくれんの?」
「止める理由もねえからな」
「敵ってだけで、理由になるやろ」
そう言って彼が銃口を向けるより先に、腕を引いてその場に引き倒す。痛みに歪む相手の額へ銃口を突きつけた。
「へえ、腕っぷしいいんや」
「人よりリーチが短いんでな」
自虐を込めた言葉に、相手は鼻で笑った。
「あんたの手、嫌いじゃない。結構、好きかな」
押さえつけられた状態で彼は言う、マスク越しの目が笑ってるのに気づいた。
「兄さん、二回目やで。敵をみつけて見過ごそうとするの」
レジスタンスで怒られへんのと聞かれて、どうだろうなと返す。
「今のあんたを壊すのは容易い。けどな、あんたにだってプライドってもんがあるんだろ?俺にだってプライドはある。そういう奴とは正面からぶつかって散りたいもんだ」
暗殺や不意打ち、卑怯な手に使われてきたからこそ、そういうもんに憧れがある。正々堂々ってのは、およそ任侠らしくはねえかもしれねえが、高貴ではあるんじゃないか。
「あんたと同じで俺も恩人に報いたい。この世に呼んでくれたマスターの恩義に、な。だがらよお、そのマスターが悲しむ顔はあんまり見たくはねえ」
俺がどういう存在なのかわかってる、時に卑怯とも非情とも呼ばれるようなことに手を染めなくちゃいけないことだってあるかもしれない。
今はそれを求められていない。ならば、まだこの手を染める時じゃない。
「あんたも俺も、今はまだ自分のやるべきことやらないといけない」
違うかと聞くと相手は黙したままこちらを真っ直ぐに見つめ返した。同意は得られなくても、戦意はもう感じられなかった。
だから退いた、またどっかで会おうぜと手を振ってそれで終わりだって思ったから。

「あんた、あまちゃんやわ」
そんな声と共に後頭部を思いっきり殴られる、痛みで倒れ込んだ俺をマスク越しに相手は見下ろしていた。
「ワイは今、誰の命令とも関係なく、ものすごく欲しいもんがあるねん」
そのためやったらどんな手も使う。睨みつける相手はさして堪えているとも見えず、むしろ笑っているように思えた。

あの後、目が覚めたらここに居た。鎖に繋がれて、でも何もできないまま。何もされないまま時間だけが過ぎていく。
欲しいのは俺だって、彼は言う。その意味が理解できない。
好かれるようなことをした記憶はない、どんなに引っくり返しても、印象に残るようなことなんてない。
情けをかけたことを叱責された、それからどうして俺を気に入るっていうんだろう?
もし戦場で見つけるのが一番早いって言うのなら、それは単純に彼の特長を覚えてしまったからだけで、それ以上でも以下でもない。
彼が好きだと言うのは、一体どうして?
なにも、わからないんだ。

一人きりの部屋、深夜を越えても誰も帰ってこないベッドの上で身震いする。
寒いわけじゃない。いつも抱きこまれてた腕がないのに、なんだか違和感を覚えるだけ。
たった一ヶ月ちょっとの間に慣れ過ぎだと自分を責める。共犯者って言ったって、彼が敵なのは変わりようがない事実なのに。
俺の何がいいの?なんでそんなに構ってくれるの?あなたのことが、よくわからない。
罵ってくれた方が、バカにしてくれた方がよっぽど、腑に落ちるのに。
何度も寝返りを繰り返して溜息を吐く。頭が痛い、ぐらぐらと意識は揺れているのに、目を閉じたら最後、どこかへ急激に落下するような感じがしてすぐに目を開けてしまう。
レジスタンスに居た時もたまにこんな風に寝付けない時があったけど、そんな時は誰かが、大抵は同じ部屋のケインさんやカトラリーくんが、気が付いて声をかけてくれたりしたけど。今は誰もいない。
そういえば、一度だけマスターの所へも行ったことがある。夜も遅い時間だし、迷惑だよねと思ったけど、どうしても人恋しくて仕方がなくて、そんな俺を笑顔で受け入れてくれて、嬉しかったな。
人の手って不思議で、優しく触れられると温かくて、それだけで不安な気持ちも恐怖も消えていくみたい。手で触れて使う物だから、余計にそう感じるだけかもしれないけど。
枷のかかった手では、自分の体を抱くこともできない。自由にならないって、本当に不便だ。不安を上書きするものがないんだから。
そんな状態で空は段々と白んできて、次の朝が来た。
注意力が落ちている今、いつ誰が来てもせめて虚勢くらい張れるようにと朝からサングラスをかけて、窓を眺めていた。
泥のように黒い雲からガラスを強く打ち付ける雨が降り注ぐ。

特段、食事を運んでくる兵士が話かけてくるなんてことはなかった。施しを受けている状態なので、悪いな、ありがとうなとこちらから声はかけたけれど、それくらいだ。
以外といい人なのかと外で話している声が聞こえたものの、別に普通にしているだけだ。
食欲はないけど、少しでも食べなければ頭の中で嫌な言葉が絶えることなく溢れ出てくるようで、時間をかけて無理矢理にでも食べた。味なんてほとんどわからなかったけど。
返してもらった煙管に刻み煙草の葉を詰めてマッチで火を入れる、今は手に入りずらい日本製の煙草なだけあって不思議と舌に合った。
窓際に腰かけて、数センチほどしか開かない窓の外へ煙を吐き出す。風は冷たいけど、曇っているだけで雨は止んだ。霧散する煙の先を目で追いながら、自分はここにいるんだなと改めて思った。
今ここで、この煙管を下に放り投げれば、金属でできた本体が折れて水溜りの泥に埋まって、自分も壊れてなくなったりするんじゃないかと思った。けれど甘く痺れる煙を口の中で転がしている今、そんなことを心から望んでいるとは考えられない。
どうして、舌も噛み切る勇気すらないのに。
「あの、夕食をお持ちしました」
「ん、ああ。悪いな」
害される気配はないから、別に気にしていなかったが声をかけてきた兵士に視線を寄越すと呆然とこちらを見つめている。
「大丈夫だ、弾は入ってねえよ」
「あ、そ、そうですよね。は、はは」
では失礼しますと慌てて出ていくのを見ると、やっぱりどこにいても怪しまれるよなと溜息を吐く。
火がしっかり消えるのを待って、灰を捨てて今夜の夕飯を食べる。相変わらず味もわからないまま、噛んで飲み込むだけだけど。

三日経っても、ゴーストさんは帰って来なかった。
雨が降って行軍の道に変更があったのかもしれない、それでなくても、何か別の理由で遅れているとか。
そう言い聞かせて目の前に置かれた皿を見つめる。時間が経つにつれてどんどんと味がわからなくなる。変なの、口にしているものはわかっているのに、香りも味もどんどん感じることができなくなっていくんだ。
その中で煙の香りだけはっきりと覚えているからつい手が伸びる。その姿に慣れないらしい下級兵士は、相変わらずそそくさと部屋を出ていくけど。そんなことに構っていられなかった。

「なあ、ここの主はまだ戻らねえのか?」
「え、ゴースト様ですか?作戦終了次第、お戻りになるとは思いますが」
「おい!」
いくら捕虜でも情報を漏らすなと、片方が止めるので、盗聴器の類はねえよと一応釘を刺しておく。
「しかし、あの、どうして?」
「……あいつが壊れたら、この先どうなるのか気になっただけだ」
逃げ出せるとは思ってねえよと言って、灰がちになった煙草の葉を捨てる。
もしも本当に壊れてしまっていたら、どうなるんだろう。彼の話してたように実験に使われたり、するんだろうか。それならそれで、別に構わないんだけど。
震える指を握り締めて、恐怖を振り払おうとした。煙のように不安は消えてはくれない。

横になってもまともに眠れないから、窓辺で月を見ていた。この部屋から出られない今、自分は何も力になれない。なんの役にも立たないのに、存在している。この百年以上、当たり前だったことがどうしてこんなに虚しく感じるんだろう。
人の体を持っているから?人の体って、思い通りにいかない、こんなに重苦しいものなんだろうか。
ぐらぐら揺れる頭を窓枠に預けて、邪魔になったサングラスを外し、焼き付きそうなくらい熱い目から溢れる涙を拭く。心臓の音がやけに大きく響くのが、今は恐い。
生きているっていうのが、恐い。
ドッと強く脈打つ心音をどうにかならないかと思って、手で耳を塞ごうとしても意味はなくて。むしろ痛みで感覚がより研ぎ澄まされていくみたいだ。部屋にある時計を眺める、何度も針が回っていくのを夜が明けるまでただじっと。自分は本当にここにいるのか、よくわからなくなっていく。いてもいなくても同じ、何も変わらない。何もできない今の俺に、いる意味なんてない。
もういっそ、煙みたいに世界から消えてしまわないだろうか。真っ暗な闇だけが広がる窓を限界まで開ける。
ここから飛び降りることはできない、人の体なら。でも、自分の本体ならそれはできる。簡単だ、向こうの石の壁まで届くように力いっぱい投げ捨てればいい。
試してみようか、どうしようか。
片腕だけを窓の外に出して、夜の冴えた空気に煙で汚れた体を晒す。突き刺すような寒さが、なんだか心地いい。ぼんやりとくらむ頭を抱えて、大きく溜息を吐く。泣くのは嫌だった、なんで泣きたいのかもわからない。
生きている、存在していることへの罪悪感っていうのかな、それが重く両肩にのしかかってるような、そんな感じ。 早朝の五時を回った頃、廊下の外が騒がしくなった。慌ただしいって言った方がいいのかな。何かまくしたてる声と、小走りに近づいてくる足音がこちらへ向かってくる。なんだろう、いよいよおかしくなったのかなと思った直後、蹴破るように部屋のドアが勢いよく開いた。
「あ……」
サングラスかけるの忘れたと思ったけど、目を凝らしてよく見ると、ところどころ汚れの飛んだ黒のスーツとヒビの入ったガスマスク姿で、彼は大きく肩で息をしていた。

「あ、えっと……おかえり、なさい」
入口で茫然と立ち尽くす彼になんて声をかけたらいいのか、色々と迷って普通の挨拶しか出てこなかった。
もっと気の利いたこと言えたんじゃないかと迷っていると、雑にドアを閉めて付けていたガスマスクを放り投げると、俺の所まで小走りに近寄って来て、無言のまま抱きついた。 「あの、ゴーストさん?」
「ただいま」
煙と土埃と、微かに混じる血の匂い。ああ、この人は本当に戦場に行ってたんだな、そこから帰って一番にここまで来たのかな。もっと落ち着いてからでもいいのに、何もしてない俺のことを心配なんてしなくていいのに。
「あの、ゴーストさん、苦しいんで」
「ちゃんと寝てないやろ?目の下にクマできてる」
顔を覗きこみ、壊れ物を扱うみたいに頬を撫でられて一気に顔に熱が集まる。
「それは、人のこと言えないと、思うけど」
あなたも酷い顔してると返すと、散々やったと心底疲れた声でつぶやいた。
「ちゃんと、戻って来れたんだよね?」
「でなかったらなんや?ワイは幽霊か」
「そういう意味じゃなくて、えっと、怪我とか?」
「大丈夫」
ただありえへんくらい疲れたと目の前でこぼす彼に、なら休もうよと言う。
「一緒に寝てくれるなら」
「いいけど、その、汚れは落とした方が、いいと思うよ」
戦場の残り香を身にまとったままだと気が立って休むこともできないだろうし。だけど心底疲れたというのは本当みたいで、不服そうにしつつも、着替えてくるとシャワールームへ向かった。
残された今、顔が熱くなるのをシャツを握ってやり過ごす。いつもは後ろからなのに、目の前にあの綺麗な顔があるとすごい緊張する。
でもまた会えてすごく安心した。帰って来たんだってことに、とても。

早々にシャワーを終えて部屋着の白いシャツに腕を通しながら出てきたゴーストさんに手招きされて、何度も寝返りを打ってどうしても眠れなかったベッドに横になる。いつもみたいに後ろから腕を回されて、抱き締められるといやに落ち着いた。
不思議と居心地が悪くなかった。ただ抱き返すことはできなくて、回された腕を掌で撫でたら、更に抱きこむ力が強くなる。
「煙草の匂いがする」
「あ、ごめん。いない間に結構吸ってたから、嫌だった?」
離れようとした俺を逃さないように腕だけじゃなく、足も絡めて押し留められる。
「あの、ゴーストさん」
「逃がせへん。きみがおらな、眠れんやろ」
ずっと落ち着かんかってん、部屋に残して来て何かあったらどうしよって。戻った時におらんかったらどうしよって。
「おってくれて良かった」
無事でいてくれて良かったと言う。それ、俺の台詞だと思うんだけど、あなたもって言おうとしても上手く声が出てこない。
人の体温と、掌に包まれてる感覚が心地よくて、そのまま意識がゆっくり落ちていった。

優しく髪を撫でる手は誰のものだろうと思って目を開けると、窓から差す昼の高い日差しを受けてゴーストさんが俺のことを見下ろしていた。
「ごめんごめん、起こしてしもた?」
もうちょっと寝ててもええよと言う相手に、流石に起きるよと言って身を起こす。ちらりと目に入った時計はもう昼の二時を過ぎていたから、流石に寝過ぎだと反省する。
「ちゃんと眠れてなかったんやろ?なら、もっと寝てても構わんよ」
「本当に大丈夫だから。あの、ゴーストさん、ずっと見てたの?」
「別にずっとではないけど。自分の寝顔、幼くて可愛らしかったから」
そういうのは恥ずかしいからやめてほしいんだけど、赤くなる頬を隠すようにそっぽを向くと、そんな怒らんとってやとまた頭を撫でていく。
子供か犬猫をあやすような感じがして、少し嫌だ。

「なあ、起きたんなら何か食べようや。軽くでいいから」
「いいよ、俺は別に」
どうせ何の味もわからないからとは言わなかった、余計な心配をさせるだけだろうし。
「そんなこと言わんと、ちょっと待ってて」
「あっ」
食堂行って来るからと出て行こうとした彼の服を、無意識に引っ張って止めていた。
「どうかした?」
「ううん、えっと、ごめんなさい」
手を離してうつむく俺をどんな風に思ったのか、それは知らないけど。本当に軽くでええのとたずねた。
「軽食ってほどでもないけど、特別に冷やしたり、ほっておいて腐らんもんじゃねければ部屋に置いてるんよ」
そうでもせんと、どっかのアホに食われるからなと若干イラ立った口調で言うと、部屋に備え付けられた棚を開けて食べれそうなものを探す。
「人の食べ物、取る人がいるんだ?」
「一応な、誰のかわかるように名前書いて置いてあるんやで?それを無視して食う奴とか普通におるわ、レジスタンスはそんなことなかったん?」
「ううん、よくあったよ。プリンを食べた犯人をぎったんぎったんにしてやる、って言う子がいたり」
「気持ちはようわかるわ。とはいえどうにもできん奴もおるけどな」
どうにもできないって何がと聞くと、変な奴はどこにでもおるってことやとそれ以上教えてくれなかった。
「起き上がらんでいいよ。どうせなら、ベッドでゆっくりしようや」
机の上に広げられていく食べ物を見て、起きようとしたら制止の声が入った。とはいえベッドで物を食べるのなんて、なんかためらいがあるというか。
「それ怒られたり、しないの?」
「別に、自分の部屋まで監視されてへんし」
紅茶飲める?とたずねられて一応は大丈夫と返すと、戸棚から青色の缶から茶葉を取り出してポットに入れた。紅茶は詳しくないんだと先に謝ると、別に飲めれば問題ないと言われた。
「やっぱりグリーンティーの方が好き?」
「えっと、日本茶の方が落ち着くってだけ。紅茶を飲んでる人って、なんだか洒落てて気後れするっていうか」
「まあ古銃の中にはウルサイ奴もおるやろな、元は王室とか出身の奴等やろ」
飲み物じゃなくてそいつ等に気後れしてただけちゃうと指摘され、なんとも答え難い。無言でベッドで待っていると、こんなんでええんならとクッキーみたいな小さい焼き菓子と、飴がけしたアーモンド、切り分けた洋ナシをお皿に乗せてサイドテーブルに置く。
「ゴーストさんも結構、甘い物好きだよね」
「まあな」
だから取られるとムカつくんや、と言う相手が少しおかしくて。
「世界帝軍の人って、いつもガスマスクしてて表情がわからないから。こうやって一緒にいると、俺達と一緒な所も、あるんだね」
当たり前のことかもしれないけど、それに安心した。
「当たり前やん」
冷めん内に飲みと、紅茶を注いで渡してくれる。一応、カップも持てるようにはなった。
マナー違反になってしまう持ち方だけど、こればっかりは仕方ない。
一口飲んだ紅茶の味と香りに目を丸くする。

「どうかした?」
「え、あ、美味しくて」
「そう?気に入ってくれて良かった」
これも食べてやとクッキーをつまんで差し出される、ほらと促されてゆっくり口を開ければ中へバターの香りがする甘い味が広がる。甘くて、美味しい。
美味しいって感じてる、自分はどうしたんだろう。急に戻ってきた味覚に体の方が驚いてる、そんな俺の頭を撫でてゴーストさんもクッキーを一枚今度は自分の口へ運ぶ。
「美味しい」
「焼き菓子とか好き?せっかくやからこれも」
さっき剥いたとこと洋梨をフォークに刺して差し出される。一口食べれば、水々しくて柔らかい果肉の感触と甘い果物の味がちゃんとした。どうして、一人だと何にも感じなかったのに、彼となら味がわかるなんておかしいよ。俺、やっぱりおかしいんだよ。
隣に座って、飴がけしたアーモンドを頬張り軽やかな音を立てて食べている彼を見つめると、どうしたんと首を傾げられた。
「泣きそうな顔してる」
「あ、ううん。なんでも」
「ないことないやろ?やっぱり、ワイがおらん間に怖いことあった?」
あいつ等になんかされたと聞かれる、食事を運んでくれた兵士には特に何もされていないから首を大きく横に振る。おかしいのは俺だ、何がどうしてこんなことになってるかわからないけど。
「昨日まで、何を食べてても味がわからなくて。だけど、今はちゃんと味がする」
俺って生きてるんだって、そう思う。今ここに、いるんだって。この場所にあるんだって、ようやく自覚が戻ってくる。そんな俺の肩を抱いて引き寄せる、彼にされるがまま身を任せているとごめんなと謝られた。
「何が?」
「もっと早く帰って来たら良かった、そしたらこんなに弱らんでも良かったのに」
「違うよ、ゴーストさんは悪くない。俺が、おかしくなっちゃっただけで」
「それって全部ワイのせいやろ」
ごめんなと謝る彼の目は本当に悲しそうで、なんでそんな顔してるんだろう。俺がおかしくなっただけだよ、よくわからないまま今もここに居る。それでいいのか、悪いのかもわからない。
「もう一つ食べ」
そう言って差し出されるお菓子に口をつける。体に染み渡るような甘さに脳が痺れていくようで、彼の肩へ頭を預けて次々と差し出される物を食べる。

そうして忙しく動いている手、俺の髪を優しく梳いてくれる指先で彼は銃身を握るし、引金を引く。
なんの躊躇いもなく、撃つことができる。
「あの、ね。俺が貴銃士になるよりも前、今のマスターじゃなくて、元の持ち主の所に居た時なんだけど。その時代はね、すごく暗殺が多かったんだって」
唐突に話始めた俺の言葉に静かに耳を傾けてくれるのがわかって、そのまま続ける。
故郷のことが書いてある文献を読んでいて、当時の世相、時代について色々と書かれていたから覚えている。
今でこそ平和な時代を築いたなんて書かれてて、そう信じている人も多いって聞くけど、江戸の幕府が終わりに近くなった時期には、二日に一度の頻度で暗殺が行われていたという話もある。
自分はそれを肌で知っているからこそ驚かなかったけど、イエヤスさんやヒデタダさんは少し複雑そうだった。自分たちの主が作った国の未来が、こんな風になってたなんて。
「その当時は人斬りって、お金なんかで雇われて人を斬ることを請け負ってたような人がね、いたんだけど。その人斬りの男が言ってたんだ、最初の一人は恐怖で殺した、二人目、三人目はただがむしゃらになって殺した、でも五人を超えたら、何にも感じなくなるんだって」
「……それが、どないしたん?」
「人間は、一人殺すたびに自分の心とか魂とか、そういうものがどんどん壊死していくんだって」
殺した人間と同じ数だけ、どんどん自分が消えていく。だとしたら。
「ワイもきみも、そもそも人間じゃない」
それ以上は言うなと、声から圧力を感じた。
「そうだね」
「銃の本質は鉛玉を撃つこと、引金を引く人間側のことは知らん。でも自分等の役目は、人間様に引金を引いてもらわな果たされへん」
「その引金を引くのは、俺達だよ」
「それでも、本質は変わらん」
「じゃあ、俺達が今感じてる心って、一体なんなの?」
人と同じようにあっても、決して同じじゃない。多分、人が自分たちのために研究したものじゃ説明できない、何か。
苦しいって感じてる、この重いだけのものはなんだ。
「あなたがいない間に、会った時のこと、思い出してた。ここに連れてこられる直前のことも」
「ワイのこと嫌になった?」
「わからないんだよ。あなたが俺のことを、その、好きだって言う理由が。どこからその感情が湧いてくるのか」
マスターに褒められれば嬉しかった、ちょっとだけ誇らしいとも思ったことだってある。好きって言われたら、確かにそれは好きなんだと思う。他の貴銃士のみんな、特に俺を気にかけてくれた人やレジスタンスの仲間も、きっとそういう大きなくくりで好きって思うのは、わかる。
だって、そう思うだけの理由があるから。何かしてくれたこと、気にかけて優しくしてくれたこと、俺のこと必要だって言ってくれたこと、そういうわかりやすい好きになる理由があった。
「どんなに思い返しても、あなたが俺を好きになる理由はない、よね?」
無理矢理に拉致してきたっていうのに、大して拷問もしないで、一緒に食事をして、寝る時も一緒で。俺の身になにも起きてなかったことに、心底安心して。
なんでそんなに思ってくれるの?俺は何も、あなたにしてあげてないのに。
負傷してたのを見逃して、こうして生き延びる道を作ったから?でもそれはプライドが許さないって怒ってたじゃない、それなのになんで。
「聞きたい?」
問いかけに無言で頷くと、ちょっと体を押し返されてそのままベッドに押しつけられる。
自然を見上げる形になる彼の白く整った顔は、思うより近くにあって、心臓から熱い液体が全身に向けてどんどん押し出される。

「最初に会った時はいけ好かんと思った。敵を叩ける機会をみすみす逃して、こんな甘い奴に助けられたのか癪に触って仕方ない」
だから調べた、きみのこと。淡々と彼は言う、今までの経過観察だって口調で、でも目はすごく真剣で、逸らせないと思った。
「仕込み銃なのはすぐにわかった、銃って形とは圧倒的に違ってたからな。そこからどんな風に利用されるか考えた、諜報、暗殺、奇襲、持ち運びの利便性を取れば人がおる場所での発泡には向いてる」
世界帝軍のワイ等は、きみたちと違って顔を晒してない。ガスマスク付けてなければ、町中におっても誰とは気づかれない。それを利用して、レジスタンスの活動が特に活発な周辺を調べてた。
「勿論、怪しまれない程度に変装はしてたけど。それでな、ある日ようやくきみをみつけたんよ」
小さい町で、子供相手に手品見せてる男と一緒におったやろ?その時、集まった子に折り紙教えてあげてたの。見てた。
「サングラスかけてないきみは、それはもう綺麗に笑ってた。勝気なわけでもなく、皮肉っぽいわけでもなく、そこらにおる野蛮な奴等の下卑た笑みでもなく」
純粋に嬉しそうに、楽しそうに、子供の視線にたまに引け目を感じているようではあったけれども、どこの誰とも知らない彼等を見守るその顔にあったのは間違いなく優しさと慈愛で。
「なんでそんな顔ができるのか不思議やった。自分だって物のくせに、なんでそんな、人間みたいな顔をして、そんな風に笑えるのか、わからんかった」

恨めしい、自分のこと壊してやりたいって、衝動のまま手をかけようかって思った。
でも、できなかった。

「なんでやと思う?」
「わから、ないよ」
心臓が早鐘を打っている、震える声で返す。
そもそも質問をしたのは自分の方なんだ、その理由がわかるなら聞いていない。
「羨ましかった、きみに笑いかけてもらえる人たち、全員が」
壊すことならすぐにできる、でも壊してしまえばこの先ずっともうあの笑顔はなくなる。そう思ったら、体が動かなくなった。壊そうって気持ちより、どうにかして守りたいとか考え始めた。 顔の横に振り上げた拳が落ちる、何度も何度も、怒りとも悲しみともつかない歪んだ表情で。何度も。
「きみは、ワイを呪ったんや」
ようやく気が済んだらしい彼は俺に覆い被さるような格好で、小さな声でそう呟いた。
「俺、なにもしてないよ?」
「その意識がなかったとしても、ワイを呪ったんや。ただの物として、武器として一生懸命に働ければそれで良かったのに、きみは生きろって言いよった。物は生きるんやない、そこにあって使われるためにある。それなのに、生きろって言った」
なのに自分の傍にはいてくれない、対峙するのは命のやり取りをかけた戦場だけ。そんな場所で、きみは笑ってくれない。あんな風に優しく、慈しみを持って呼びかけに応えてなんてくれない。
このままじゃあ、いつまで経ってもきみはワイを見てくれない。笑いかけるなんて、そんなことはありえない。
「こんなことして、きみが笑ってくれるとは思ってないよ。でもな、もうそんなことはいい。自分のことを壊したいって気持ちと、ずっと傍に置いておきたいって気持ちがないまぜになって、わけがわからん」
ただただ、ただただ欲しかった。
「絶対に手に入らんってわかってるものへの憧れ。強い執着。いきすぎてるのはわかってる、きみが怯えてるのもわかってる、それでもちょっとでも、心を傾けてくれるなら、優しくしてくれたらそれでいい」
あの時に夕陽に染まったきみの笑顔は、最高に綺麗やった。何をしても忘れられないくらいに。
作ってくれたお守りが、これ以上ないくらい嬉しかった。そんな事実が、自分も相当に狂っているってことを突きつけられてるのを知らせてくる。
涙を溜めた目が歪に笑う。
彼もぐちゃぐちゃでわからないんだ、人が持ってる鉛の塊みたいな感情の怪物に振り回されてるんだ。

「キセル、きみのことが好きやで。本当に。呪い殺したくなるくらい、永久に祝福したる」

あとがき
キセルくんを病ませていくはずが、ゴーストさんの闇のが深くなってしまったような……。
キセルくんが世界帝軍堕ちしたあかつきには、ベッドの上でティータイムが二人の幸せな時間になればいいと思い始めてます。
それくらい餌付け、楽しいです。
2018年5月26日 pixivより再掲
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