竜の番人
「ハッサク先生、見てください!」
どうしましたとアオイくんに声をかけると、今日オージャの湖で捕まえて来たんですと言ってシャリタツをボールから出した。
「おやこの子はもしかして」
「色違いなんです」
初めてみつけましたと嬉しそうに報告する少女に、よかったですねとこちらも笑顔で返す。自慢げに袋の上に乗ってポーズを取ってみせる小柄なドラゴンに、色違いのポケモンと出会う確率を考えると、かなり幸運だったのでしょうねと続ける。
「この子は、そった姿の色違いですね」
「えっ、シャリタツの色違いってこの子だけじゃないんですか?」
そった姿、のびた姿、たれた姿それぞれに色違いがいますと返すと、そうだったんだと更に驚きを見せる。
「アオイくんはよくフィールドを探索しているようですし、きっと他の姿の色違いの子ともいつか巡り会えますよ」
ジニア先生も褒めていましたよ、ポケモン図鑑の開発者として、野生のデータをとってくれる頼もしい存在だと。ただ危ない場所にも飛びこんでいってしまうので、担任としては心配で仕方ないともこぼしていましたが。
「じゃあいつか、シャリタツ六匹でピクニックしてみたいです」
「それは賑やかで楽しそうですね」
またオージャの湖に行って、仲間を探すぞと決意を新たにしている少女に、きっといつか叶いますよと返す。
「そういえば、どうして小生にこの子を見せに来てくれたんですか?」
「ドラゴンと言えば、ハッサク先生のイメージで」
珍しいから見て欲しかったんですとつぶやく声が徐々に小声になっていく、はしゃぎすぎたと恥ずかしく思ったのかもしれないので、こうして珍しい子を見せてくれるなんてありがとうございますと返す。
「ジニア先生にも見せてあげてくださいね、きっと喜ばれますよ」
「はい、図鑑の報告に行くので一緒に連れて行きます」
そういえば先生はいつもバトルで使っている子たち以外に、ポケモンは育ててるんですかとたずねられて、もちろん居ますよと答える。
「まずは皆さんもよく知ってるフカマル先輩です」
あの子の親にあたるガブリアスや、他にもヌメルゴンやボーマンダも育てているので、家ではかなり大所帯なんですよと返すと、ドラゴンの住む家って格好いいですねと目を輝かせて言う。
「いやあ想像するよりも大変ですよ、シャリタツくんは小柄ですが、ドラゴンタイプの多くは大型ですからね」
ちょっとした小競り合いでも力が強いので、家の中の物が壊れる心配が常につきまとうというのに、ドラメシアが壁からすり抜けて悪戯をしてきたり、ヌメルゴンの粘液やガブリアスの砂は掃除が大変で、しかし他の子の鱗の間に詰まったりしては大変なので、気を配ることは多いのです。
「サワロ先生もヌメルゴンの粘液は掃除が大変だって、前に話してました」
「そうでしょう、いい方法を教えてもらったりしましたよ」
やはり家庭科を受け持つだけあって彼の知識は豊富で、他にも色々と教えてくれました、正直初めてお会いしたときは面食らいましたが、それも今更の話ですね。
「一体や二体ならパーティにと考える人はいますが、小生のように何匹も同時に育てる人は珍しいですからね」
生半可なトレーナーの言うことは聞き入れてくれませんし、そういうプライドの高いところがまた高潔でいいと個人的には思うのですが、初めてポケモンを育てる子供には勧められるものではない。
その点でいくと彼女はかなりのバトルセンスと、育成の知識があるのでしょう、でなければ早々にチャンピオンランクにまで昇りつめられるものでもない。
「アオイくんはドラゴンタイプが好きなんですか?」
「はい、一緒に旅をしてくれた仲間です」
彼女のパーティには確かに立派に育てられたガブリアスの姿がある、授業で見たフカマル先輩が可愛かったので、どうしても育ててみたかったのだと教えてくれた。
「ドラゴンタイプって、ちょっと恐いイメージがあったんですけど、ハッサク先生の手持ちの子たちはそんなふうに見えなくて、強くて頼りになる子たちばかりだから」
「そう思ってくださるとありがたい限りですが、彼らの扱いには重々にお気をつけくださいです、時に優しく見えたとしても、竜とは古来から恐れられるべき存在に違いありませんからね」
「はい」
じゃあ授業があるんで失礼しますと、シャリタツを抱きあげると美術室を出ていく少女を見送り、本当にわかってくれただろうかと首を傾げる。あれだけ純真で見たモノを受け入れられるからこそ、ドラゴンまでも手懐けられたということかもしれませんけれども。
まあ彼女には心配は無用でしょう、真っ直ぐ走っていける強さのある子です。
だからこそ会わせたくない者も存在するわけですけれども。
壁をすり抜けてそばに寄って来たドロンチに、また見つけてくれたんですかと声をかけると、小さく一度頷いて背を向けて進んでいく。次は空き時間にあたるので、手早く片付けましょうかと彼の後をついて行く。
学校内を素早く抜け出し、校舎裏まで音もなく案内してくれた相手の指し示す先には、制服姿ではない見かけぬ男が一人。野生ポケモンに近づくとき以上に気配を殺して、背後へ近寄り肩を叩くとひっと飛びあがって驚く。
「アカデミーに、なにがご用ですか?」
そうたずねると、新チャンピオンをどうしても一目見てみたくてと言う、そういうことであれば次回開催の校内大会で姿は拝見できると思います。
「校内はセキュリティの問題で、部外者の立ち入りはお断りしているのですが」
「あはは、いや本当に少し見たらすぐ帰りますので」
ですから立ち入りは禁止ですと続けると、本当にすぐ帰るからと慌てたようにつけ加えられるが、ドロンチが近づいていきポケットからカメラを抜き取ってくる。
「あっ、おまえなにすんだ!」
「それはこちらの台詞ですね」
中に映っている子供たちの写真を見るに、これを見て普通に帰すわけにはいきませんと言えば、なんだよ他人の趣味にケチつけられたくはないと開き直り、ボールを取り出すのでその気であればとこちらもボールを取り出す。
「言っておきますが一切の手心はありません、全力で捻り潰します」
ボールから飛び出す、六対の黒い翼と甲高くも強烈な雄叫びに相手は一瞬で顔が青ざめる、しかし最初からこちらは許す気などない。
「屠りなさいサザンドラ」
「おかえりハッさん」
出迎えてくれた相手と、その後ろからぬっと顔を出すガブリアスにただいまですよと告げる、遅かったなと荷物を受け取りながら指摘されるので、雑務に少し時間がかかってしまいましてと返せば、学園の警備はもう少し手厚くしたほうがいいと思うぞと苦言を呈される。
「校長も各所に手を打ってくれてるんですが、なにぶんアカデミーそのものが広いもので、全てを厳格に守るのは難しいですね」
「いい加減に公表してもいいんじゃないか」
警察に突き出したのは一人や二人ではないだろう、幼い生徒を狙った不審者もそうだし、近年ではチャンピオンとして顔と名前の知れ渡った者もいる、大衆に知られるということは不要な注目も集めるということでもある、とパルデアでも知名度を誇る恋人から指摘される。
「不審者の情報は校内でも注意喚起していますから、それ以上のニュースは流石に。いたずらに生徒を不安がらせるわけにもいきませんし」
「むしろ凶悪なドラゴンが守っていると知らしめたほうが、防犯の効果があるんじゃないか?」
番犬なんて生ぬるい、番をするドラゴンに手出しは無用だからなと言う相手に、それで退散してくれるのなら盗掘なんて起きなかったでしょうねと返す。
「そもそもコルさんの身の回りだって、いまだに落ち着きがないでしょう」
「昔に比べれば減ったほうだろう」
払いたくもない有名税ではあるが、これでもつきまといはマシになったほうだ、以前はハッさんに追い払ってもらっていたが、ある程度はこちらで相手できるようになったのもあるし、ジムリーダーになってからは公的な意味でセキュリティもあがったしな。
そう話す相手に、じゃあどうして小生の家に来たんですと聞き返す。いつでも来ていいですよと合鍵を渡してはいるものの、リーグとアカデミーの仕事の関係を鑑みて唐突に訪ねてくることは珍しい、本当に気まぐれでやって来ることもあるけれど、往々にして面倒な人に絡まれているからというパターンもある。
「お見通しか」
「大丈夫なんですか、変なことされていませんか?」
「出迎えてくれたガブリアスとオノノクスを見て、すぐ逃げていったな」
草タイプを専門にしているとどうも大人しいと勘違いされていけない、その点ドラゴンのいる家は防犯として完璧だと言うものの、面倒なのに絡まれているのなら相談してくださいと、いつも言っているでしょうと溜息混じりに返す。
「ちょっと脅せば撃退できそうだったからな、ハッさんの手を煩わせるほどでもない」
「まだ安心するのは早いですよ、しばらくウチに泊まって行ってはいかがです?」
それには及ばない明日には帰るよと言うので、せめてお送りしますからねと念押しする。
待っている間に家を掃除してくれていたらしい、昼に話していた砂や粘液が今日は特に床に散っていない、お手数かけたようですみませんと言えば、気晴らしになっていいものだぞ、普段は散らかしてばかりだしなと笑う。
「それに、今日は一番の問題児が家にいなかったからな」
「あの子も悪気があって、暴れるわけではないんですよ」
「わかっているとも、何度も世話になっている身だ」
久々に会わせてほしいと言うので、気をつけてくださいよと注意を促しつつもボールから呼び出すと、黒い羽を開いて三本の首で彼をいったんは睨みつけ、久しぶりだな相変わらず勇猛な姿で目を奪われるという、彼の賛辞を受け取ってから真ん中の頭だけをさげて挨拶を交わす。
「ご丁寧にありがとう、あなたの主は心配しているようだが、ワタシはあなたのことを好いているぞ」
ハッさんの手持ちの中でも珍しい色違いのドラゴンだ、その美しさが色褪せることはないなと続ける相手の言葉に満足したらしく、首を戻すと定位置の寝床へと向かって飛び去る。
「相変わらずプライドが高くて」
「いいじゃないか、ドラゴンならそれくらいで」
さっきも言ったがワタシは好きだぞ、凶暴だと毛嫌いする者も多いが、あの子を従えているハッさんは非常に絵になると言われるも、正直なところドラゴン使いとしてはあまり賞賛されない子ではありますよ、と苦い声で返す。
「悪・ドラゴンはそんなに嫌われるのか?」
「それもありますし育成も難しいですし、なにより人に心を許すことが珍しい子なので」
しかし戦うことにおいては信頼を寄せられる、特に手加減や手心、そして誰かの成長などを考えない、絶対的な勝利が必要な場合にあの子は頼りになる。
「コルさんは何度か顔を会わせているので、もうすでに覚えてくれてるかと思いますが、先ほども噛みついたりしないか心配でした」
「ワタシは怒らないが、流石に生徒やリーグ挑戦者の前では無理だな」
バトルの才能は抜きん出ているのに勿体無いと言うものの、見捨てずに育てあげたハッさんはいいトレーナーだなと笑う。
「そうだ、勝手に夕飯を作っていたがよかったか?」
「本当ですか」
突然訪ねてきた以上これくらいはなと言うので、ありがたい限りですとコートと荷物を置いて来ると、お互いのポケモンたちを呼び出すと夕飯の席に着く。そんな中でも今日の功労者は降りてこず、自分の寝床から離れない。
「相変わらず騒がしいのは苦手なんだな」
「あの子なりの考えがあってですから」
基本的にサザンドラは餌の取り合いをするほど、食べることに貪欲なんですけれども、野生と違い自分の分がなくならないとわかっているためか、そこで喧嘩をすることは少ないのはありがたい。
「しかし、ハッさんの家は相変わらずドラゴンだらけだな」
また少し増えたかと聞かれて、そうですね卵から孵ったドロンチとフカマルが増えましたと返す。
「騒がしくてすみませんですよ」
「いいじゃないか、ウチも自然と増えているときがあるしな」
どこのジムもそうだろう、我々はジムトレーナーや初めてポケモンを持つという子供に譲渡することもあるが、ハッさんは中々にそういう機会もないし大変ではないかと聞かれて、一部のバトルが得意な生徒には譲ったことがありますよと返す。
「とはいえ、本当に一部ですね」
新チャンピオンはドラゴンタイプが好きと言ってたので、声をかけてみてもいいかもしれない、彼女なら預ける身としても心配は少ないですし。
そんな話をしながら二人とたくさんのポケモンたちと夕飯を進めていく、半数以上の子が食事を終えて遊び始めた頃合いになって、寝床から身を起こしてこちらへと向かって来たサザンドラに、今用意しますねと声をかける。
コルさんの隣に降り立って彼の食べ進める姿を眺めているので、こちらからするとヒヤリとするのだが、コルさんは気にせずに味見してくれるだろうかと、肉料理を切り分けて少し分け与える。
「そうやって甘やかさないでくださいですよ」
「体に害がない程度に留めているつもりだが」
つけあがると困ってしまうのでと指摘すれば、今日は活躍したんだろう少しはご褒美があってもいい、と言われてしまうと強く否定もできない。
彼の分の皿を置くと静かに食事を始める、三対分の頭に合わせた皿が必要になるが、各頭で好みが違ったり量が足りないと喧嘩するので、育てるにあたって気を使うポイントでもありますね。
「コルさんも一体育ててみますか?」
あなたになら安心して任せられますし、門番になるというのならばよいのではと言えば、そうだなテラスタイプが草なら一考してもいいが、気性の荒さを考えるとウチでは問題だろうな。
「ミニーブやキマワリたちと仲良くできないと、流石に厳しいな」
「であれば、ヌメルゴンなどはオススメですが」
「どうだろうな、迫力には欠けるだろう」
ショックを受けた顔をするヌメルゴンに、別にキサマが悪いわけじゃないぞ、雨を好むのは植物にとっては親和性が高くて素晴らしいと言うも、涙目になっている相手の頭を撫でるとついでにハグを強制されている、確かにあの姿では番兵には向かないでしょうね。
そんな騒ぎも無視して食事を続けるサザンドラに、あなたの肝の据わりかたも流石ですねと声をかけ、空いている皿を片づけていく。
「一番いいのは、一緒に住むことだと思うのです」
「生活スタイルが合わないだろう」
ワタシはボウルタウンから離れるわけにいかないし、ハッさんはアカデミーから遠すぎると困る、制作に没頭できるアトリエは外せないし、ドラゴンたちを自由に出し入れできる広さと頑丈さも必要だ。
「この条件を全て満たすのは、難しいな」
「そうですよね」
ワタシも危なくなったら助けは求める、今日のように逃げてくることもあるかもしれないが、そのときは受け止めてくれるんだろうとそばに寄ると手を取られる。
「確かに一人で抱えこまなくなっただけ、小生は嬉しいです」
でも今日の人に関しては詳しく教えていただきます、再び現れないとも限りませんので。
「またサザンドラが吠えるのか」
「我々で対処できるのならば」
四天王お手柄というネットニュースを目かけて、誰だろうと記事を開くとハッサク先生の写真で驚く。
「アオイなに見てんの?」
「あっ、先生がニュースになってて」
ああボウルタウンのやつなら見た、すごいことなってるよねと言われて、えっそんな大事なのと聞き返す。
「ボウルタウンって彫像とか飾ってるの有名やけど、あれを盗もうとした奴がいて、先生が全員まとめて捕まえたって」
「へえ、すごい!」
うんやっぱ四天王ってすごいわ、普段の授業してる先生を見てるとそんなふうに思わんけど、実戦だとすっごい顔が変わるもんね。
「ボタンはフェアリータイプもいるし、戦えるんじゃないの?」
「いやあ意外と破壊されるんよね、有利そうに見えんのにブイブイできんの」
やっぱ四天王は強い、校内大会で最終戦までよく残る人は元からむっちゃ強い。
「でも、ボウルタウンで戦ってた先生って多分、いつもとメンバー違うと思う」
なんでと聞き返すと、いや先生の相棒ってセグレイブやん、でもこれ緑のドラゴンに焼き尽くされたって噂が流れてるから、たぶんいつものバトルの子じゃない。
「りゅうのいぶきじゃない?」
「どうかな、そもそも緑のドラゴンとかおるか? って話だし」
色違いカイリューとかと提案すると、まあ確かに緑っちゃそうかとつぶやく。
「ハッサク先生の話してる?」
急に会話に混ざってきたネモに、ビックリしたと返すもごめんごめん、でもみんな気になるよねと笑顔で返される。
「最強のドラゴンがって聞いて、どんな子なんだろうってワクワクしちゃってさ」
「出た、戦闘狂モード」
できるなら会ってみたい、可能なら一緒にバトルして欲しいと楽しそうに語るも、あんまり目立ちたくないって先生言ってたよとボタンが溜息混じりに指摘する。
「どうして、強い子とバトルできるってだけですっごい楽しくない?」
「会ってみたくはあるかも」
ええーアオイもそっち側なんと呆れ口調でつぶやくので、バトルがっていうよりは、家では他にもドラゴンタイプ育ててるって言ってたから、きっとその中の誰かなんだろうなと思うの。大変だって聞いたけどやっぱりドラゴンの住む家って、ちょっと憧れがあるな。
「わかる、お城を守る竜ってかんじで格好いいよね」
「そういうロマンは、ちょっと理解できるかも」
てなると今回はお花畑を守るドラゴンってことになるのか、急にむっちゃファンシーと笑うボタンに、でも泥棒を捕まえたんなら宝物を守る竜とも見えるんじゃない、と言われてそうかと納得したようにつぶやく。
「それで考えると、ウチの学校も実は最強のドラゴンに守られてるってこと?」
「確かに、先生のいる場所ってことはそうかも?」
あんまそんな気しないけどね、いつもは優しい先生だからさ、でもやっぱりパルデアリーグ四天王だもん、すごい人に教えてもらってるんだなって改めて気づいたかも。
そんな話をしてると廊下がざわついてきた、ハッサク先生と噂の当人の名前が聞こえたので、顔を出せばもう堪らないとばかりに最強のドラゴンってどんな子ですかと、ネモが走り寄って先生にたずねる。
「えっと、小生の手持ちにはそういう証持ちの子はいませんですよ」
「ボウルタウンで戦ったって子と、バトルしてみたいんです!」
「ああ、それですか。ちょっとあの子は問題児なので、生徒とのバトルには出さないことにしてまして」
どうしてですか、すっごい強いのならむしろワクワクします、わたし戦ってみたいですと息巻くネモに、きみのたっての願いであってもこればかりは容認できませんですと、断りを入れる。
「じゃあ卒業したら、そのときは戦ってくれますか!」
「ええっ、それは」
「生徒じゃなくなったらバトルできるってことですもんね、わたしそれまでにもっともっと強くなりますから!」
約束ですよ、それまでにもっと全力で鍛えるぞと意気込むと走っていくネモに、弱りましたねえと溜息混じりに先生はつぶやく。
「あの、わたしも先生の手持ちのドラゴン、見てみたいです」
「アオイくんもですか」
ますます弱りましたと語る先生に、やっぱり憧れがあってと返すと、そこまで仰るのならば小生のドラゴンの中から一匹、誰かを譲りましょうかと聞かれる。
「いいんですか!」
「少し増えてきてしまって、育成を任せられるかたを探していたので」
アオイくんならそこは心配なさそうですので、あなたを守れるような子をオススメしたいのですが、とりあえず誰か希望はありますかと聞かれて、しばし迷ってからモノズがいたら嬉しいですと答える。
「えっ、モノズですか?」
また非常に育成の難しい子ですがと焦る先生に、でも進化した姿がすっごい格好いいですよね、強いドラゴンだって印象が強いですと言えば、あなたはそういう風に受け取るんですねと緩やかに笑う。
「取り扱いには充分な注意が必要ですが、育成で迷ったらすぐ相談してくださるなら、考えますよ」
「本当ですか!」
先生サザンドラもいるんですね、もしかして全てのドラゴンタイプを持ってるんですかと聞けば、流石にそこまでには至りませんよと苦笑されてしまう。
「サザンドラって強いですか?」
「ええ、とても強いですよ」
全てを破壊するような印象ですがその実、大事なモノは守ってくれる、そういう子ですと話す先生の顔は、いつも通り優しいのだけれど、どこか不思議な影を見たような気がした。
サザンドラ色違い、めっちゃハッコルカラーと思っちゃったので。
そして不審者とか許されざる者を滅する先生が、どうしても見たくって。
ちなみにシャリタツ色違いはこいつが粘っている子です、まだ戦果なしです。
2023-01-18 Twitterより再掲