ビックリした
アイツがこんな事するなんて、思ってもみなかったから
ただ、こんな事させるくらいに俺がコイツの何かを震わせたのは
なんとなくでも分かった


クエイク

体に残った熱を冷ます為に風に当たって居たら、すっと現れたキングは俺を見て顔をしかめた。
どこに行ってたなんて質問にとぼけてみたって無駄で、なんでか気付かれてしまう。
匂いで気付くくらいに、コイツは俺の事を知ってるらしい。
だから苛々してる、何をしてたのかちゃんと言わなくってもバレてるに決まってる。
その原因が自分にあるって事も分かってたけど、だから何だっていうんだ。
今までだって、ずっとそうだったんだから何か問題があるように思えない。
腹が減ったから飯食って戻るって言えば、一緒に行くと言ったから、大して拒否する理由も無かったし許可しただけ。
それからお休みって言って廊下で別れて、部屋でシャワー浴びて、ダルいからもう寝るつもりだった。
「じゃあ、また明日な」
そう言ってドアを閉めようとしたら、キングの手が伸びてノブを掴んだ。
どういうつもりだって言う前に、俺の部屋に滑り込むと、後ろ手でドアを閉めて鍵まで落としやがった。
「オイ、キング?」
有無を言わせない動作で唇を塞ぎ、逃がさないとでも言う様に体をしっかり抱き締められた。抵抗しようにも相手にしっかり捕まっててどうしようもない。
捕まった時にどう逃げるのか、それも訓練させられている。俺の場合はなんでも力で解決してしまう、それ以外の細かい方法なんて考えるだけ面倒だからだ。第一、これで大抵はなんとでもなる。
だが、そうやって力任せにしてしまうのは駄目らしい。余計な場所に力がかかって、必要な場所に力が入ってないかもしれないから、らしい。
そう指摘したのはキングだ、コイツは俺が捕まった時に逃げる方法を良く知ってる。
だから、どうやって捕まえておけば振り解けないのかも知ってる。

抵抗するだけ無駄だって事だ。

そう思ったから、腕に込めた力を抜いてそっと受け入れるように背中に回してやると、そこで唇が離れた。
「抵抗、しないのか?」
「するだけ無駄だろうが、俺じゃお前は振り解けねえよ。でも、本気でヤル気がないなら今日は止めてくれよ。
流石に、二人目の相手はできねえよ」
それで諦めてくれるのかと思った、何も悪い事は言ってない。
今までだって知った上で、何も聞かないで好きにしてきたし、好きにさせてやってきた。
なんだかんだで俺の体を考えてくれてる優しい奴だから、これで解放されるって思った。
「っ、お前は……」
何だって答える前に、床に押し倒されていた。強かに打ちつけた体、文句を言ってやろうと開きかけた口には、再び相手の舌が侵入して来る。
息が苦しくて解放を求める為に相手を叩いて知らせれば、ようやく離してくれた。
何か言うよりも先に、相手の手が俺の衣服にかけられる。乱暴にマントとジャケットを外すと、今度はベルトのバックルを外しにかかる。
「んだよ!キング、何そんな切羽詰まってんだよ」
「煩い」
それだけ言うと再び口付けられた、言葉を完全に塞ぎたいのか舌をしっかり絡められる、咥内で響く水音に耳を塞ぐ訳にもいかない。

抑えつける腕の力は止まらない、キングが何を思ってこうしてるのか俺には分からない。
ただ、何か溜まってるんだろう。多分、性欲以外にも色々と。


「ふぁ……ん、っく!」
イテェって文句言ったところで絶対に何も変わりやしねえ、良く分からねえけど怒ってる事は確からしい。
「オイ、も……ちょっとくらい優しく、しやがれ!」
「黙れ!」
「っふぁ、ぁあ!」
奥を突かれて、嫌な声が上がった。
どうしたらいいんだよ、と思って相手を見ればどこか悲しそうな顔してるもんだから、もう全く意味分かんねえ。
「……キング」
呼びかけても返事もしない、だけど俺の声に眉を潜めたのは確かだ。
ちょっと頬に手をかけて引き寄せると、ちょっと口付けてやる。
そうすると、ビックリしたみたいで目を見開くと同時に動きが止まった。
「今、何して……」
「え?……キス?」
正直に答えると、そういう意味ではないと言い返された。
じゃあどういう意味なんだよ、と問い返すと小さく溜息を吐いた。
「俺は今、お前を無理やりヤッてる」
「そうだな」
「そんな俺に、何でキスするんだ?」
優しくされる理由は無い、なんて言う相手に確かにそうだなと俺も返す。
「まあ、俺が悪いんだろ?」
「何で?」
「なんとなく?怒ってるわけじゃないんだろ?」
そう聞けば、小さく頷く。
じゃあ何か悪い事したんだろう、別に気にはしいない。
ならいいじゃんか、このまま好きにすれば。それでお前の気が済むならよ。

「お前、もう少し自分を大事にしろ」
「何が?」
そう言うと、額に触れるだけのキスをした。
くすぐったくて、何だよと言い返せば「すまない」と頭を撫でて呟いた。
何なんだよお前は、意味分かんねえ。

「な、謝るより先にコレ……どうにかしやがれ」
内側に収まった相手の雄の質量は、まだ衰えてない。
すまない、とまた小さく謝ると内側からゆっくりと抜かれていった。
そういう意味じゃねえよ!
「だぁっ!ヤルなら最後までヤレって言ってんだよ、んな中途半端なまま……止めんな」
相手の腰に足を絡みつけ、離れていく体を引き止めれば。キングはどこか困った顔で俺を見下ろした。
「んだよ?」
「二人目の相手は、できないんじゃないのか?」
「場合によりけりだろうが!テメェの所為でこうなっちまったんだ、責任くらい取れやコラァ!」
「そうだな」
チクショウ、満足そうな顔しやがって。
俺とアイツの二人分の心臓で、体が震えた。




後書き
なんか気に入ってます魔法タイトル。
ナインがとりあえずビッチ……あの子は、なんか悪い子っぽいからそれもアリだと個人的に思ってます。
いや、キング一筋とかキングとにかく愛してるナインも好きですよ!
しかし、ジャックとクラサメ先生を絡めたい、できればクオンさんとも絡めたい。
と考えている内に、こんな状態ですよ……。
という訳で、まだまだ続きそうな予感です。
2012/3/2


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