必要とされれば薬で、適量以上なら毒で 本質はどっちも同じ なのにコレを毒にしてしまうのは “中毒”になってしまうから、かな? バイオ「ん……くぁ」 キュッと締めつけてくる相手の中を擦ってやれば、気持ち良さそうに息を吐いた。こちらも心地よいから、揺さぶる力も強くなる。 これは僕のセックスが上手い訳じゃなくて、相手がこういう快楽に慣れているから気持ちイイんだろうね、多分。 雄を飲み込み、グッっと弓なりに反る背中を撫でて、うなじにキスしてやるとくすぐったそうに身を捩った。 「んな、女が喜びそうなこと。俺にしても仕方ねえだろ、コラ」 「確かにそうかもしれないけどさ、まあ雰囲気ってヤツで?」 流されればいいじゃん、とか思うんだけど。気持ちヨクなること意外は彼はどうでも良いらしい。 そもそも僕自身、彼にとってはどうでもいい相手なんだから仕方ない。 触れられれば感じる、快楽には素直だし、大抵の事は拒絶もしない。 ただ、女の子みたいに触れられるとちょっと怒る。 あと、絶対に生ではさせてくれない。 ある意味けじめみたいなもんなんだろうな、とそう思ってる。 金銭的な売り買いをしてる訳ではない、ただの遊びみたいなもんだから。本気になってしまったら困るって、本人もよく自覚してるんだろう。 そういう牙城って、めちゃくちゃに壊したくなるもんなんだけどね。 ガツガツと奥を突き上げると、指がしっかりとシーツを掴み上げた。 「っ……ん、んん!」 女みたいな声が嫌だって、普段から喘ぎ声を上げないように必死で。イク瞬間だって大きな声を上げないように、唇を噛んでいる。 「そんな声、我慢しないでさ、好きなだけ鳴いてよ」 「はぁ?嫌に……決まって、んだろ」 感じてるのは確かなのに、どうしてそんなに嫌なんだか。 好きな人が、居るからなんだろうけどね……。 「ナインってさ、ぶっちゃけ僕の事好き?」 終った後、衣服も着けずベッドに横になっている相手にそう尋ねると、ムスッとした顔で手を差し出して来た。何かなっと思って、とりあえず手を握り返そうとするとはたかれた。 「それ、寄越せ」 指で示されたのは飲んでいた水のボトルで、流れる汗の量から考えると、それだけ水分が失われて乾いた状なんだろう。 黙って渡すと、大きく一口飲む。ゴクリという喉の鳴る音も、ちょっとセクシーでいいよね。 「それでさ、ナインは僕の事好き?」 「テメェ、毎回それ飽きねえのか?」 「うん」 笑顔で一言そう答えると、かなり嫌そうな顔でこちらを見返した。 「嫌いじゃねえよ、別に」 「じゃあ好き?」 「知るか」 ぶっきらぼうに答えて、また水を飲む。 唇から零れた水が首を伝っていくのを眺めつつ、自分の奥でまだ熱が燻ってるのを感じた。 もう一回シタいって言ったら怒るだろうか?彼の事だから、多分嫌そうな顔で「勝手にしろ」なんて言うんじゃないかな? それは楽しくない。 だから、いつも一回で終っちゃうわけなんだけどさ。 「どうせお前も俺の事、好きじゃねえだろ?」 「ええー!そんな事ないよ」 「ウソっぽいんだよ、つーか、好きだったらこんな事してねえ」 「ナインは好きな人とセックスしないの?」 「そういう意味じゃねえよ」 分かってるよ、好きだったら性欲処理なんて形取らないって、そういう事でしょ? そういう相手として付き合ってる僕は、所詮、彼の一番でない事は分かってる。 その一番が誰なのかも、実は分かってるんだけど……。 結局、その一番ですら彼をものにできていないんだから、意味が分からない。 相思相愛なんて折角チャンスをものにしてるのにさ、どうして、そういう関係に発展しないのか? 意味が分からないんだけどさ、反対に言うと僕にはチャンスなわけで。 「僕のこと、好きになる予定はない?」 「ねえよ」 「つれねいよねえ」 彼の腰に抱きついてそう言うと、上で彼の溜息が聞こえた。 好きだなんて言ったら、面白くなんだよね。 もし本心だって分かったら、彼は絶対にもう僕とこういう事しないだろうなって、思うから。 そうでなくても、彼の考えてる事はよく分からない。 僕みたいに肉体関係がある人間が一人じゃないのは知ってる、だけど表面化して問題にならない。 不可侵領域とも呼べる裏事情の、ギリギリのラインをそれとなく知ってるって事なんだろうなあ。それに加えて、自分の体がどうやら男に好まれるらしいっていうのも、理解してるんだろう。 だけど、所詮は男同士。恋愛なんて綺麗なもので語れるような関係を持つ必要はない、彼を抱くのに必要なのは自分とはただの処理に関わるという事を理解し、その上でそれを割りきっていられるかという事だけ。 そんな理解がなければ、彼は体を許さないだろう。 こういうこういう事に関しては聡いなんて、ちょっと狡い気がする。 そこに付け込もうとしてる僕も、大概なんだろうけどさ。 だけど、そろそろ駄目だよ。 魔導院に来てからというもの、それまで以上に彼と関わる人が増えてしまった。 それってライバル増えちゃったわけで、それまでよりも僕がイライラする相手が増えちゃったって事で。 本当に嫌になっちゃうよね。 「ねえ、ナインはさ……誰と寝るのが一番イイの?」 「ぁあ?何だよ急に」 物凄く嫌そうな顔でそう答える相手に大して、僕はとっておきの笑顔を返す。 「教えてよ、僕の事好きになってくれないって事は、僕よりも上手い人が居るって事でしょ?その人のテクがどんなもんなのか、ちょっと興味あるんだよねえ」 「ハッ、ソイツに抱かれて盗んでくるつもりか?」 「うーん、場合によっちゃ考えてみようかな」 「馬鹿らし」 そう言うと、ベッドから下りた。自分の衣服を拾いあげても着る様子がない辺り、どうやらシャワーを浴びに行くらしい。新しいタオルを渡してあげると黙って受け取った。 狭いシャワールームから水の流れる音が聞こえてくる。自分の事を早く忘れようとしているようで、なんだか怒りがこみ上げて来た。 「ねえナイン、一緒に入ってもいい?」 「はぁ?テメェさっき入ったんだろうがコラ、んな狭い所に男と入る趣味はねえよ」 狭い空間に反響する相手の声、確かに、簡易的な施設でしかないから物凄く狭いけど、入れない事はない。 面白いからドアを開けて入ってやった。 「ちょっ!この野郎、何考えてんだ……つか押すな」 「いいじゃん、一緒に入ろうよ。ついでに、ナインの中にも入りたいなあ……なんて」 「そういう悪い冗談は嫌いだぜえ」 「いいじゃない付き合ってよ、ちょっと物足りなかったんだよねえ。ナインだって満足してなさそうだし?」 シャワーを浴びる彼の手元、反り返った雄を左手で包み込む。右手は彼の割れ目に沿わして、その奥へと触れるかどうかを匂わせて止める。 「もう一回しよ?」 「…………はあ、好きにしやがれ」 お許しが出たのを喜ぶよりも、舌うちする自分が嫌になっちゃうよ。 結局、処理の名目がないと許してもらえないんだからさ。 だから今日は、少し反抗してやろう。 「ちょっ、待てってコラ……お前、生だろ?」 「いいじゃない、ここならスグ綺麗にしてあげられるし。偶にはサービスしてよ」 トロンと熱く蕩けた彼の内側を、味わってみたかったのだ。 「ひゃ……く、ん」 「ああ、もしかして生だと余計に感じちゃうかんじ?へえ、それじゃ、今度からこっちでする?」 「バカ、言ってんなぁ、あっぁあ!」 ちょっと動かしただけでビクビク感じて、可愛いなあ。 いいなあ、支配してるってかんじで。 やっぱり彼が好きなんだよねえ。 そう思う自分は、本気で毒されていると思う。 セックス中毒とは思いたくないし、多分そこまで酷くはない。だからきっと、彼自身には中毒性の何かがあるんだろう。 どうせなら、相応とも毒されてしまえばいいんだ。 そう願って彼を犯していく。 「僕の事、好きになる気ないの?」 後書き 魔法呪文、何気に続いてますが。とにかくジャックとは絡めておきたかったんですよ。 なんですかね、ジャックとナインは普段の性格とは違って、裏では賢かったりしてくれる方が好きです。つまりは、悪い子が好きなんでしょうね。 作者的にジャックは腹黒い子希望なんです、天真爛漫なジャックが好きな方、ごめんなさい。 2012/3/29 BACK |