この世には、沢山意見がある事は認めよう
昔の人はよく言った、据え膳喰わぬは男の恥だ……と
保守的になり過ぎている?…時には、流れに任せるのもいい?
そう言われても……取り返しのつかない事になったらどうするんだ


おにいちゃんは心配性


ぎゅっとフリオニールは俺に抱きついたまま、俺を見つめ返している。
俺の言葉を待っているかの様に。
涙の溜まった瞳は潤んでいて、酷く扇情的に映る。
「俺も、お前が好きだよ」
そう言うと、彼は嬉しそうに微笑んだ。
子供の様な表情ではない、艶っぽい大人びた笑顔。
彼も、もう子供ではないのだ……それは良く分かってるつもりだったのだが。こうやって目前にすると、やはりうろたえてしまう。

「フリオニール、疲れただろう?…もう、着替えて寝た方が」
彼から視線を逸らしてそう言う。
彼の熱い視線を合わせたままではいけない、見ていてはきっと俺は駄目だと思った。
「俺、眠くない…まだレオンと一緒に居る」
見つめていたら、何か取り返しのつかない事を起こしてしまいそうなのだ。

「レオンハルト……」
すっと細められる彼の瞳が、俺を誘うかのようで…。
光に誘われる虫のように、彼の赤く色づいた唇がそっと自分のモノと重ねられる。
「……ん」
縋る様に俺の体へと絡まり着いてくる、彼の腕。
確かに彼の言う通り、彼の体は熱い。
だけど、何よりも彼の唇が熱い。
チュッという軽い音と共に離れていく唇…少し、甘い味がする。
熱い吐息が、まだ触れ合うほどの位置に彼が存在している事を教えてくれている。

ああ、俺だってできるのなら…彼を、欲望のままに貪り尽くしたい。


「ふっ……ぅん…ん」
彼の唇を再び塞ぎ、彼がくれたものとは違うもっと深いキスをする。
好きだ、好きだ。
ああ、好きだ……俺は彼の事を、好きだ。
クチュリと、彼の口の中を犯していた舌を抜けば、彼と繋がる銀色の糸。


彼を抱きかかえて、自分の部屋へと向かう。
優しくベッドへ横たえさせると、彼は潤んだ瞳で俺を見上げる。
煽られているような気がして、彼の上に覆いかぶさる。
彼の浴衣の合わせ目を開き、その体を撫で上げて行けば、ビクンと大きく手の中で震える体。

「ふぁ……ん」
可愛らしい声を上げて身を捩る彼に、気を良くし。どんどんと、その動きを大胆な動きで追い詰める。
脇腹を撫で、胸元へと移動した手はその頂点にある、赤い果実を摘まみあげた。
「ひっ!んぁあ……」
ビクンビクンと彼の体が震える、感じてしまう彼の体に悦びを感じて、少し虐めたい気持ちが浮かんでそこをグリグリと執拗に捏ねまわす。
「レオン、俺…女の子じゃないよぉ」
「でも気持ちイイんだろ?」
そう尋ねれば、彼は顔を赤くして俺の真偽を問う視線から逃れようと横を向く。
もっと他の場所も触りたい。そう思って、彼のスラリと伸びた足を撫でて、内股へと手を差し入れた時。ふと、そこに感じる違和感。

「フリオニール、下着…どうしたんだ?」
「下着?……浴衣の時は着ないって、シャドウが言ってたよ」
違うの?と彼が首を傾ける彼に、俺は溜息しか出ない。


シャドウ……アイツ、何を狙ってたんだ?
いや、そんな事を真に受けてしまう程に、人を疑わないフリオニールにも問題があるのか。

……だが、俺も二人の事を言えたものではない。


腰を締めていた帯を解き、床へと落とす。
ほとんど肌蹴ていた彼の浴衣は、それによって、体の中心全てを曝け出す事になる。
見れば、彼の雄は既に熱を帯びていて。俺に触れて欲しそうに首をもたげている。
ゴクリと生唾を飲み込み、相手の欲へ手を伸ばして触れる。


「ん、ぁあっ!」
ビクリと体が震えて、甲高い悲鳴にも似た彼の声。
痛かったのか?と手を離すと、彼は俺を見上げてイヤイヤと首を振る。
「レオンハルト、お願いだ……もっと、もっと…触って」
彼の願いの通り、再びその熱へと触れれば、良かったのか快楽にフルリと身を震わせるフリオニール。
ゆるゆると手を上下に動かせば、彼の口から我慢できないのか、甘い声が上がる。

「気持ちいいのか?フリオニール」
「はっ!ぁあ……いいの、気持ちイイよぉ…レオンハルト」
俺の手の中で、ドクドクと彼の雄が脈打つ。
すっかり固くなったソレは、先端から透明な蜜をタラタラと垂れ流し、もう既にはち切れそうで…。
もっともっと刺激を与えればきっと、彼を快楽に溺れさせる事ができるだろう。
先端を指の腹でこね、幹を擦り上げていたのだが。もう一つ、新しい刺激を与えたくなってきた。
そっと彼の雄に口を近付け、その先端を少し舐め上げる。

「ひっ!やぁああん!!」
ビクンと、たったそれだけの刺激で大きく震える彼の雄。流れ出る声も、酷く熱を帯びていて…色っぽい。
成程、コレがいいのか。
彼の雄の強い香りを感じつつ、それを口の中へと含んで咥内で愛撫してやる。

「ひゃぁん…ぁあっあ……ダメ、レオンハルト、ソレ駄目だぁっ!気持ち…気持ちよ過ぎてぇ……」
駄目だ、と彼は言うものの…そう言う言動とは裏腹に、彼のモノは俺の口の中で嬉しそうに震える。
響く声にも一層の甘さが帯びている。
思いきって、先端を吸い上げてやると呆気なく彼は性を吐き出した。
初めて飲む精液というのは、思っていた以上に苦い味がしたが…しかし、彼のモノであるというだけで、汚らわしくは感じない。
喉を鳴らして飲みほした俺を見て、フリオニールは涙目で何度も何度も謝る。
「レオンハルト、ごめんなさい……俺、俺…我慢できなくて」
「いいんだ…気持ちヨカッたか?」
そう尋ねれば、頬を赤くして頷く。
彼は、俺で感じてくれる…俺の行為で快楽の頂点に昇り詰める事ができる。
その事実が、俺を何よりも悦ばせる。


だが、それだけで満足できる訳がない。
俺だって、大人の男としての欲望を持ち合わせているのだ。


彼の足をぐっと左右に割り開き、その体の内側を曝け出させる。
その奥に息づく、彼の内部へと誘う蕾を見つけ、その入り口をぐるりとなぞる。
「ふっ……んん」
ビクンと強張る彼の体。
クニクニとしばらく押し潰したり、撫でたりを繰り返す。
熱い彼の蕾……。
さぞや、そのの内部は心地が良い事だろう……
ああ……押し入りたい。

「んっ!!ぁ……レオン、何?」
そんな俺の気持ち等は知らず、不安気に震え、俺を見上げるフリオニール。
純真なその瞳は、俺がこれからしようとする事を責めている様な気がする。
その目の前に、思わず手が止まる。


自分を裏切るのか……と、無意識に問われている気がするのだ。
背徳感と罪悪感。
このまま無理に押し進めて、彼を傷つけるような事はないか?


引き潮のように、自分の中で彼に対して興奮していた熱い歪んだ欲が引いていくのを感じ。彼から手を離す。
「レオン?」
開かれていた足を閉じ、トロンとした瞳で彼は俺を見つめる。
「良かったんだろ?……もう、今日はお終いだ」
彼の無垢な視線から目を逸らし、俺はそう呟いた。
「レオンハルト…は?」
「俺は大丈夫だ、お前が良かったらそれでいい」
ああ、折角諦めがついたんだから、これ以上無理に欲を煽る様な事を言わないで欲しい。
「そう……レオン、好きだよ」
そう言うと、元より意識もグラグラだったのだろうか、彼はそのまま目を閉じてしまった。
しばらくすると聞こえてきた、規則正しい彼の寝息に、俺は安堵の溜息を吐いた。
とにかく、汗や何かに濡れた体を拭いて、服を着せないと……。
そう考えて、俺は彼の部屋へと彼の着替え云々を取りに向かった。


「ただいまぁ、兄さん」
「おかえり、皆」
「兄貴!!兄貴どこ!?」
二階の部屋へと脱兎の如く駆けて行くシャドウを見て、ハッとする。
「シャドウ、もうフリオニールは寝てるぞ…起こしてやるな」
俺のそう言う声と、フリオニールの部屋のドアが開けられる音が同時に響いた。
「…………レオンハルト、兄貴が寝てるって、どこで?」
ゆらりと、階段の上から覗き込んだ俺を見下ろすシャドウに、俺は表情が凍りつきそうだった。
深呼吸をして、それから、彼が帰って来るまでに考えていた言い訳を声にする。
「俺の部屋で寝てるよ……帰って来てからも、中々離れてくれなくてな。
最終的に、俺と一緒に寝る…とまで言い出して、俺のベッドを占拠してくれた」
「あらあら。でも、フリオニール凄かったもんね。兄さんにベッタリくっ付いて離れなかったし」
「フリオ、レオン好きだって言った」
「それを言わないでくれぇガイ!!」
二階の廊下に立ったままのシャドウが、ガイの言葉が胸に刺さったらしく、その場に座り込む。
そんな彼を見つめ、マリアはクスクスと笑い、ガイはうろたえていたがマリアに「大丈夫よ」と言われて、ほっとした様に息を吐いた。
「二人共、早く風呂に入って寝るんだぞ」
「はいはい、相変わらず兄さんは保護者気質なんだから」
笑うマリアがガイを連れて奥に向かうのを見つめ、下りて来たシャドウを、俺は捕まえた。

「シャドウ……俺は、帰って来てからフリオニールを着換えさせたんだが」
そこで、彼の方がビクッと大きく震えた。
どうやら、自分の中に心当たりがちゃんとあるようだ。
当たり前か。
「お前、フリオニールに何する気だった?」
「いや……別に。何かアレばいいなぁ…くらいにしか思ってなかったけど」
「そんな理由で、自分の兄を下着を履かせずに外を出歩かせるのか?」
「それは、信じた兄貴の方が悪いと思わない?いや、恥じらってる姿は可愛かったよ…次第に酔っぱらって、最終的にレオンに美味しい所持って行かれたけどさ」
最後の方は苦々しげに彼はそう言った。
俺を見る目も、どこか恨みがましいものとなっている。
どうやら、俺の部屋で寝ている……という時点で、彼には俺が手を出したという事で決まっているようだ。
「言い訳がましく聞こえるかもしれないが、一応言っておく。俺自身は、フリオニールに何もさせてないぞ」
「どうだか?据え前喰わぬは男の恥って言うしな。過保護なお兄ちゃんだって、理性が切れる瞬間ぐらいあるだろ?」
「理性なぁ……確かに切れたが。アイツは無理だ」
純粋過ぎる。
その一言で、シャドウは何か察したらしく、ふと俺に向けていた視線が和らいだ。

「何?本当に兄貴とシテないの?」
「あんまりにも強請るから、その……抜いてやっただけだ」
「マジで?アンタ凄いわ。兄貴のおねだりとか、色気抜群でしょ?無意識なだけにさ…それ我慢できるって、これは相当だぜ」
後悔してないの?と尋ねられ、俺は溜息を吐いた。
「してるよ…。明日、アイツにどんな顔して会えばいいか分からん」
「そっちかよ、全く。アンタ、相当な過保護な体質だわ……血が繋がってなくても、そこまで家族に思ってくれてるって、凄いよ」
そう言うと、彼は大きな溜息を吐いた。
「だから、兄貴も好きなのかな」
「…………何が?」
「アンタの事だよ!!好きだって言ってただろ?アレ…多分、兄貴の本音だから」
真面目な顔してそう言うシャドウに、俺は固まった。
本音、まさか…そんな訳が。
酔っていた時の、勢いというか…そういうものだと思っていたのだが。
違う……違う…違う、のか?

フリオニールは、まさか本当に俺を……?


「本当に“大好きなお兄ちゃん”だって、思ってるんだろうさ、兄貴は」
「…………は?」
間の抜けた声が上がる俺に対し、シャドウはニヤリと笑いかける。
「何?期待したの?有り得ないでしょ、フリオニール相手でさ」
そう言う相手に、俺は溜息しか出ない。
「言っておくけどさ、アンタが兄貴に対する俺の想いを許してくれないみたいに。俺もアンタの事は許す気ないからな!!」
宣言されて、俺はどうも答える事ができなかった。


翌朝、俺のベッドで目覚めたフリオニールが昨晩の出来事を何も覚えていなかった事に、俺がどれほど安心したか知らない。
もし、覚えていたとしたら……どうなっていただろう?
考えるだけで恐ろしい。
ただ……。
「真意を、問えず仕舞いだな」

お前は俺を、本当に好きなんだろうか?
素面の彼は、きっと答えてはくれない事だろう。

「はぁ…………」
悩みの種、というのはいつでも尽きないものだ……。




後書き
レオン→←フリオ、の誘い受けフリオの後編です。
お兄ちゃんは生真面目にも程があるので、いざとなった時に、罪悪感に押し負けるかな……という結論に至りました。
なんですかね、フリオがヘタレな理由はある意味この義兄が原因なのではないか?と意味もなく思った次第です。
しかし、攻めがこうもドキドキして緊張している光景というのは…あんまり無いパターンなんで、書いてて結構楽しかったのです。
2010/9/8


BACK