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兄弟愛だとか、家族愛だとか…… そういうものは、特定の特別な人間との間に生まれる感情だ じゃあ……その特別な人間の中でも、少し“特殊”な人間に対しては…どうなんだろうか? 恋愛適齢期「兄さん、何か悩み事?」 そう尋ねる妹に、俺は首を横に振る。 「そう?……でも、何か最近さ、本当に時々だけど、凄い思い悩んでる様な顔してるよ」 「……そうか?」 そう尋ねると、「そうだよ!」と、自分の言葉を強く肯定する。 「心配する様な事じゃないから、大丈夫だ」 「でも…フリオニールも心配してたよ!」 彼女の出した名前に、ピクリと、俺の中の何かが反応する。 「……自分で解決したい事なんだよ」 動揺を悟られないように、平静を装ってそう言えば、彼女は多少は納得したが、しかし、腑に落ちないといった表情で「そう」と言って、それ以上は追及しなかった。 正直、マリアに言える様な内容ではない。 ましてや、マリアが名前を出した義弟に話すなんてもっての外だ。 俺が何に悩んでいるのか…それは、義弟であるフリオニールに関する事だからだ。 幼くして両親を亡くした彼を、家族として迎え入れてから、既に何年も経つのだが…。 そんな中で、最近気になったのは…俺は彼を本当に“弟”……いや、“家族”として見ているのか…という事だ。 別に、アイツの事を赤の他人の様に思っている訳では無い。 むしろ気になるのは、俺のアイツへ抱いている感情。 家族ならば“家族愛”、兄弟となればそれは“兄弟愛”と言えるのだろうが…いかんせん、俺とアイツは義理の上での兄弟。 血筋としては繋がっていないのだ。 それは、それがなければ兄弟になれない、家族になれない…という否定ではない。 確かに血が繋がっていなくとも、家族になれると思う、実際に俺の家族はフリオニールを受け入れているし、彼自身もその関係を、最初こそはとまどいつつも受け入れた。 血の繋がりだけが、人の繋がりではないだろう。 それは、大いに認めよう。 だが、彼が本当に俺を“兄”だと思っているのか…俺がアイツを本当に“弟”と思っているのか…と言われると、途端に問題が浮上する。 家族という立ち場から考えると、確かに俺はアイツの“兄”という事になるだろう。 マリアと違って、フリオニールは俺を“兄”とは呼ばない。 しかし…アイツとの関係を考えるに、家族だとは思えるというのに…兄弟よりも友人に近い存在に感じられる。 そういう曖昧さは、別に悪くない…むしろ、心地良いとさえ思っている。 だが、他人であるというその事実がある故に、一つ問題が起きる。 家族でありあがら、恋愛が禁止されていない…という事だ。 そう…養子として引き取られた彼は、俺達兄妹とは血が繋がっていない。 法律上は、結婚が認められている。 勿論、それは男女であれば…という事で、本来この事実によって安心するのは、女子であり俺の妹であるマリアの方が正しい。 しかしながら、恋愛という観点で見るのならば…この問題はどうなるだろう? 俺は彼を、恋愛対象とできるのでは、ないだろうか? 「…………なんて、馬鹿げた考えだ」 自室のベッドに倒れ込んで、誰にも言えない呟きを零す。 同性での恋愛なんて、あり得ないとずっと思っていたというのに……。 その“当たり前”の部分を、突き崩されてしまった。 初めて、そういう事を意識したのは、ある日の事……。 俺は夢の中で、フリオニールと二人で居た。 別に、途中までは何て事もない普通の出来事だったのではないか?と思う。 正直……途中事なんて、まったく覚えていないのだ。 一部分だけが、酷く鮮明に脳裏に焼き付いて離れない。 「俺、レオンハルトの事が好きなんだ」 頬を真っ赤に染めて、上目遣いで俺を伺いそう告白するアイツ。 まだまだ幼いその姿は、それでも、恋慕という重い荷物を、しっかりとその胸の内に抱えている。 野の花を思わせる、儚い強さ。 真剣に思い悩んでいるのだろう、初々しくもどこか、思春期に伴い大人びた色気すら感じさせる雰囲気。 無意識に向けられている蠱惑的な彼の立ち姿に、当てられたかの様にその場に立ち尽くす俺。 「好きだよ…レオンハルト」 涙で潤んだ瞳でそう告げる相手。 「フリオニール、俺は……」 俺は、目の前で俺を見上げる相手に、一体何を言うつもりだったのだろうか? 震える相手が、期待や不安の入り混じった瞳で俺を見つめる。 「俺は……」 そう呟いた所で、自分は夢から覚めた。 夢であった事に安心したものの、その後に押し寄せて来た様々な疑問に、自ら立ち向かわなくてはいけなくなった。 それが…今の俺の心を悩ませている、一番の原因だ。 夢にしては余りにもリアルだった。 一瞬、現実なんじゃないか?と見まごうばかりに現実味のある情景。 それはもしかすれば、俺が心の奥底で思い描いていたが故に、夢という形を取って表面に現れて来たのかもしれない。 こんな形になって。 ああ……こんな感情は苦手だ。 やり場のない、モヤモヤとした胸騒ぎ、これをどう表せばいいのか。 分かってはいるものの、受け入れられるものか。 「アイツは、俺の弟だ」 そう何度も口に出してみたものの、頭で思い描くのとは反対に、実感はどこか虚ろで…口にすればする程、段々と頭の中でこうだと思い込もうとしている現実が、自分から遠のいていく。 体が、受け入れるのを拒絶している。 そうとしか、思えない。 ならば、受け入れるしかないのか…俺がアイツを好きなんだって。 そうやって、受け入れたとして……どうするつもりなんだ? 答えの無い問題を自問し続け、頭が痛くなってくる。 所詮、自分はまだまだ恋愛には適していない年齢なのだ。 俺でそうなのだから、アイツがこんな事実を受け入れられるものか……。 いや、アイツはともすればそれを受け入れるだろう、そういう強さを…アイツは持ってる。 だがその事実は、確実にアイツの重荷になる。 アイツの心を苦しめる。 それは、それだけは何としても避けたい。 苦しめたくないのだ、アイツを…これ以上。 「レオンハルト」 控えめなノックと共に、ドアの向こうから俺を呼ぶ声。 声の主が今、自分の頭を悩ませている例の少年である事に心臓が飛び出しそうな位に驚く。 「どうした?フリオニール」 「夕飯だから呼んで来てって」 「そうか、今行く」 そう返答し、ベッドから起き上がる。 部屋のドアを開けると、どこか俺を心配そうに見つめるフリオニールと目が合った。 「どうした?」 「いや……なんか、レオンハルト最近…何か悩んでるみたいだからさ」 マリアの言う通り、彼も俺の事を心配してくれているんだろう。 駄目だ、これ以上…この少年を悲しませる様な事を背負わせては。 「大丈夫だ、大した事じゃない」 「でも…」 「お前が心配する様な事じゃないさ」 嘘だ。 ある意味では、誰よりも、お前が一番心配するべき事だ。 だが、そんな心配りをさせてはいけない。 せめてコイツが、恋愛に適する年齢になるまでは。 こんな事を、受け入れられる位に成長する程大人になるまでは。 その時までは、秘密だ。 時間が流れて、ただの笑い話になる様な日が来ればいいのに……。 そう、今は祈るばかりだ。 後書き FFⅡとして書いた初小説、になるのでしょうか?小ネタとか除けばそうですね! レオン→フリオ、過去話なのです。 過去なのです、フリオが一応14歳くらいの設定です、レオンは幾つなんですかね? 私はこの二人の歳の差を実はちゃんと知らないんですよ…まさかですが、3歳以上離れてるなんて事は無いと思いますが…知ってる方、教えて下さい。 前からチラチラと出現していたレオン兄さんの、崩壊しまくっていたキャラからは一転して真面目な方にしました。 普通に真面目で古風なお兄さんだと思いますよ、ただ…大した意味もなく、弟や妹に対し過保護な性質を持っていそうだと私の脳が受信した為に、キャラ崩壊が起こっていただけです。 自分的には、このまま続きそうだな…とか思ってますので、気が向けば続き増えると思います。 2010/5/23 |