貴方と祝いたいX'mas




町中がどこか浮き足立った12月の末。
この宗教が入り雑じった国において、クリスマスはただのお祭りとしてしか認識されてない。

そう思いつつ、自分の鞄の中に納められた小さな箱を思って、軽く溜め息。

あの人にクリスマスは一緒に過ごそうと言われれば、強制的に私もそのお祭りの中に参加しなくてはいけない。
そして、信者でもないのにこの日を祝い、幸せを感じられるのだから、私も単純なのかもしれない。

プレゼントを渡した時の相手の表情を想像し、ウォーリアは待ち合わせ場所へ向かった。

1、プレゼント


クリスマスの色といえば赤と緑、それはおそらく全世界共通だろう。

「ありがとうございました」
クリスマス用のアレンジメントを手渡し、一礼してお客様を見送る。
そして店の奥へ戻り、作業台の上に乗せられたリースを見て、小さく溜め息。

緑の葉に赤と白の花、完全なクリスマスカラーだ。
完成間近のソレを眺め、これから訪ねる相手の顔を思い浮かべる。
喜ばれる自信はないが、少しは気分も盛り上がるだろうか?
約束の時間も迫ってる、早く仕上げて行かないと。

完成したリースを片手に、フリオニールは冬の街へ踏み出した。


2、リース


キリスト教の学校というのは、どうしても、この日には特別に行事をしたがるらしい。

別に僕自身はこの宗教を信仰してるわけじゃないのに、それでもここに所属している生徒は、全員この日には聖歌を歌う為に集められる。
一般人も多く聞きに来る、とはいえ…僕等がそれで何か得るわけではない。
だから、毎年気が重いんだけど、今年は少し特別だ。

約束したんだ、あの人が。
僕の合唱を聞きに来てくれるって…だから、今年は少しだけ特別。

キャンドルを片手に並んだ時、オニオンナイトは首を伸ばして、待ち人の姿を探した。


3、キャロル


町のどこか暖かい特別な空気を感じ、どこか嬉しくなってくる。
子供っぽいと言われたなら、笑顔で「今日くらいいいじゃない」と返そう。

「予約していたケーキ、取りに来たんですけれど」
「はーい」と、お店の女の子が応答し、予約の名前を確認して店の中へと商品を取りに行く。
「ありがとうございました」
彼女の明るい声に見送られ、僕はお店を後にする。
甘い物が好きなあの人と一緒に、紅茶を淹れて食べよう。

嬉しそうな笑顔で、セシルは家へと帰っていった。


4、ケーキ


そわそわしながら時間を確認する。
何かを待っている瞬間って、凄い楽しいと思わないか?

「来た来た」
相手の姿を確認して大きく手を振ると、遠くから走って来る相手も大きく手を振り返した。
待ち合わせ時間五分前、よしよし上出来。
広場の前の横断歩道で立ち止まる相手を見つめて、少し微笑む。
信号が青に変わって、此方へと急いで走って来る相手の目の前で、ぱっと灯る黄色い灯り。
「時間ぴったり……五時からはライトアップされるって知ってた?」

息を切らして走って来た相手に、バッツは笑顔でそう尋ねた。


5、ツリー


クリスマスと聞くと、なんだか心が暖かくなるのは、何年経っても同じ。

花弁のような赤い葉を付けた花は、この季節にお花屋さんの前に毎年並ぶ。
その内の一つを手に取り、お店のレジへ。

ほんの少しの事でいいの、季節を感じて笑ってくれる人がいたら、それだけで、幸せになれると思う。
…もし、私と同じようにあの子が笑ってくれるなら、それだけで、また一つ嬉しくなれる。
本当に些細な事だけど、特別な日には些細な事も大きな喜びになると思う。

赤く大きな花に少し微笑み、ティナは足取り軽やかに家路へに着いた。


6、ポインセチア


クリスマスというものは、どうも、人を外に連れ出そうという思惑があるらしい。

人で溢れ返った大通りを見て、あまり言葉の多くない自分も更に声を失くした。
人が多い場所は苦手なのだ。
クリスマス用のイルミネーションで彩られた、帰り道を見て溜め息。
青い電飾で飾られた道を眺めて、ふとアイツの事を思い出す。

何をしているだろうか?
そう思った時には、俺の手は既に携帯でアイツの番号を呼び出していた。

携帯のコール音を聞きながら、相手に何て言って話しだそうかとクラウドはしばらく考えた。


7、イルミネーション


あまりにも華やいで着飾った町に、多少の気疲れを感じるのは自分くらいかと思う。

電飾の飾りは綺麗だけれど、時々あまりにも派手で眩しすぎるのがよくない。
暗くなり始めた町を歩きながらそんな事を思っていると、ふと、大通りの中にひっそりと暗くなった場所を見つけた。
灯りの消された広間の中に、ふわりふわりと小さな火が漂っている。
キャンドルだけで作られたその景色を眺めて、これくらい静かな方が、自分の性に合っているな…と思う。
今日はアイツと家で、二人で過ごす約束だった。
二人きりなら特に、これくらい静かな方がいい。

そう考えたスコールは、ガラスの入れ物に入った小さなキャンドルを購入した。


8、キャンドル


宗教には興味がないけれど、この日を定めた人には感謝したくなるんだ。

白い服を着たレディ達が、銀色のベルを使って奏でるクリスマスソング。
周囲には多くの人が集まっていて、寒いハズなのにどこか暖かみのあるこの雰囲気はいいな、と思う。
ふと、人混みの中に見知った顔を見つけた。
自分と同じように彼女達の演奏に耳を傾けている相手は、まだ自分には気づいてないようだ。
「何だよ、来てるならそうだって早く言えって」
相手に少しだけ文句を言うと、ジタンは相手の元へと駆けて行った。


9、ベル


町に溢れる幸せそうな人を見て、自分は小さく溜め息。

好き好んで、誰がこんな日にバイトなんてしなくちゃいけないんだ?
クリスマスはアイツの所行こうって決めてたのに、シフトの欠員なんて、ツイてない。

「ほら、これ」
ふいにやって来た店長が白い箱を差し出した。
首を傾げる自分に、店長は笑いかける。
「サンタが溜め息吐かれても困るんだよ、恋人の所に届けてやれ」
そう言って、店の余りのケーキの箱を渡される。
「ありがとうございます!」

大きな声で礼を言うと、バイトの衣装のままティーダは走り出した。


10、サンタクロース




後書き
12月用の拍手御礼、今年最後だからちょっと頑張って10話作ってみた…という。
それぞれの話は個別で、別に繋がっているわけではありません、キャラが思っているアイツとかあの人などは、皆さんの好きに当て嵌めて考えて下さい。

クリスマスなタイトルで、皆に何が似合うだろうかと思って、即決だった人・最後まで迷った人に二分されます。
特にスコールとクラウドは、完成してからそれぞれの話を入れ替える事になりました…。

雰囲気は凄くいいんですけれど、クリスマスを過ぎると置いておくのが辛くなるのがクリスマスネタの弱点ですね…25日って…12月あと一週間あるよ……。
一月の拍手御礼は…完全なギャグになります……。


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