もしも願いが叶うなら…


星に願いを…


日が沈むにつれて、下がっていく気温。
冷えすぎていない夜風が、肌に心地いい。

遠征の帰り、仲のい二人組みの笑い声を背後に感じながら、早く野営地へ帰ろうと歩みを速める。
仲間達はきっと俺達の帰りを待ってるだろう。

アイツもきっと…。

当たり前だな、アイツは特に仲間思いな奴だから。
誰に対しても平等に接してくれるアイツは、オレにも他の仲間と変わらない笑顔を分け与えてくれる。
始めはなんとも思わなかった、ただ人が好きな奴なんだろうと…そう思ったのだ。
だが、最近になっ気付いた、その笑顔を気に入ってる自分に。


俺は、アイツを気に入ってる。


「……早く帰るぞ」
「おーい、ちょっと待てってスコール!」
後から駆けて来て、俺の肩に手を回すと、そっと俺に耳打ちをする仲間の声…。
「そんなに、アイツの元へ早く帰りたい?」
ニヤリと口角を上げて、無邪気に微笑みながら仲間、バッツは俺にそう問いかける。

アイツ、とは誰の事なのか…そんな事は尋ねなくても分かる。
この男も気に入ってるんだろう、アイツの笑顔を。

「……それは、お前も…だろう?」
「勿論」
ニイっと無邪気に笑って、バッツはそう返事する。

アイツは誰のものでもない、想ってる奴は多いのに。
誰のものにもならなければ、あの笑顔をずっと…皆にくれるんだろう。
平等に、分け隔てなく。

それが、嬉しいような、悲しいような…。

誰にも知らない彼の笑顔。
そんなものを、隠し持っていてほしくはない。
特別なものが欲しいとは思わない、だが…。

誰かの特別になるくらいなら、俺のものに…なんて、思ってしまう。

だが…それも所詮は叶わぬ願い、だ。
いや、叶えるべきでない願いなのか…祈るべきでない、願いなのか。
まあ……どうでもいい、どちらでも一緒だ。


「おーい、ジタン置いてくぞ!」
後方で立ち止まったままの仲間に、バッツがそう声を掛ける。
「今行く!!」
そんな声と共に、走ってくる金髪の頭が夜の中にも見える。
立ち止まって仲間が走ってくるのを待ちながら、そっと輝く星空を見上げる。


もしも…願いが叶うなら…。


『今日もアイツが、微笑みかけてくれるように』





後書き
星に願いを…第3弾、スコール編。
スコールとフリオニールって、本編ではそんなに絡んでないんですよね。
ってか、スコフリってマイナーにも程があるだろうに…需要とかもう考えてないですよ、書きたいだけですよ。

スコールさんはフリオの事をちょっと想ってるだけ、告白とかもう考えてない。
だって、関係性の希薄さから落とすのはほぼ不可能じゃないですか、あと自分の対人関係の苦手さとかから考えても、無理がありすぎるなぁ…と、それでこんな感じに、好きだけど傍から見守ってる方に。
バッツは、それに気付いててそれでも絡んでいく人です、面白がってるんですよ彼は。
その辺は今度のバッツ編で書けたらいいな、と思ってます。

次はクラウド編です。
2009/6/28


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