星に願いを…今日は久しぶりに1日中快晴だった。 夕暮れの空は西から東へと色が変わっていく、とても美しいグラデーションを描いている。 その中に、早くも星が瞬き始めていた。 自然と夜営地へ向けて、歩む足が早くなる。 「おかえり、ウォーリア」 帰ってきた私の姿を見つけて、笑顔で出迎えてくれる仲間に、私の頬も自然と緩む。 昔誰かに、こうやって迎えられたような、そんな朧気な考えの端、忙しなく働く君の姿を追う。 誰よりも他人を気遣ってくれる君を、皆頼りにしている。 騒がしい声と共に帰ってきた、賑やかな三人組も、大人しい少女と知性派の少年も、迎えられた彼の笑顔に微笑み返す。 今日も帰って来たんだな、と彼の笑顔を見る度に思う。 ただ、彼は疲れないのだろうか? 全員に等しく愛情を向けてくれるのは有難い、だが…彼自身は誰かを慕いたい、と思わないのだろうか? もし……それが自分であるなら…そんな風に願わずにはいられない。 もっと…君の側に居ていたい。 そう願う、私の気持ちなんて君は気づいていないだろうけれども。 夕食後、仲間達の喧騒からそっと抜けて、一人どこかへと向かう彼の姿を見てどうしたのかと思ったが、きっと彼だって一人になりたいんだろう。 しかし、夜の森は危ない、彼だってそれは承知していると思うが…もし、しばらくして戻って来なければ、少し様子を見に行こう。 そう心に決めて半時間以上が経った、そろそろ心配になってくる。 探しに行った方がいいだろうか? そっと腰を上げて、森の入り口へと向かう。 「あれ?どうしたんだウォーリア」 そんな風に、私に問いかけるのは、今探しに行こうとしていた彼で、私は体の力が抜けた気がした。 「君の姿が見えないから、探しに行こうと思っていたんだが…心配なかったようだな」 「そっか…ごめんな、気を使わせたみたいで」 申し訳無さそうに頭を下げる彼に、構わない、と私は簡潔に答える。 そう別に構わないんだ、君の事を思うのは苦にはならないから。 だが…心配をかけた事を詫びるのならば、君の心の内を聞かせてくれないだろうか? 君の目が少し赤い事も、今の笑顔が何時もより少しぎこちない事も、まさかとは思うが…隠しきれているとは思ってないだろう? 「何か、あったのか?」 確信を持ってそう聞いてみると、少し間を置いてから、結局言い難そうに「ちょっとな…」と、曖昧な返答だけ返した。 「そうか……」 聞いても、答えてくれはしないだろう…ならば、問い詰めるのも酷というものだ。 そう思うけれども、どこか心に引っかかる部分がある。 私では力になれないのか…と、心のどこかでそんな声が寂しく反響する。 そっと、彼の頭を撫でる。 「君はもう少し、仲間を頼った方がいい」 ふと、そんな言葉が口からついて出た。 苦しい事があるなら、そう言って欲しい。 迷惑などではない、君の力になりたい。 そう思う人間が居るんだから、もう少し…誰かに寄りかかっていいんだ。 「君は何もかも、一人で抱え過ぎている…時々そんな風に感じる時がある。 何かあるなら、もっと仲間を頼って欲しい」 これが、私の本心…。 「……ありがとう、ウォーリア」 少し照れたように笑ってそう言う彼の姿が、普段よりもずっと幼く見える。 彼の背負っている様々なものが、彼を本来の子供の姿から遠ざけているんだろう。 時々、こうして本来の年相応な青年の表情を見せる彼が、とても可愛らしく思える。 君の力になりたい、それで、側に居る事が叶うなら。 君が背負う何かから、開放する事ができるなら。 何時だって、私に寄りかかってきていいから。 もしも…願いが叶うなら…。 願いを掛ける人々の上に、星は瞬く 天の果てまで、その祈りが届きますに… 彼等の声が、届きますように… 〜 Fin 〜 星に願いを…第十弾、ウォーリア編。 終わったよ!終わりましたとも!!ちゃんと当日までに出来て良かった!! 最終話という事で、ちょっと気合を入れてみました、他のよりもちょっとだけ長めです。 そして、ウォーリア編にのみフリオ本人が登場するのは、これ以上、本人無しでフリオ総受けを目指す気力が尽きたのだな、という解釈で間違っておりませんよ。 しかし、書き終わってみて思ったのは…このウォーリア編、前に書いた小説に似てる…。 気付いた時にはもう完成間近でしたので、書き直す気力なんてありませんでした…というか、そんな時間がない。 何はともあれ、これで七夕連載は完結です。 最後までお付き合いして下さった皆様、ありがとうございます。 2009/7/7 BACK |