もしも願いが叶うなら…


星に願いを… 〜 anoter side 〜


一人の時間を邪魔するつもりなんてなかった。
だけど、つい言い返したくなってしまったのだ。

「馬鹿だな、お前」
何も分かってない。
『何だよ、急に出てきて人を馬鹿呼ばわりか?』
彼は俺にそう言う、自分の考えを覗かれて、もっと怒ったっていい筈なのに…彼はちょっと呆れたくらいだ。

人に対して優しいのは、彼の長所だ。
だが、優しすぎるのは逆に人を傷付ける事もあるんだって、彼は知らない。


「お前は本当に何も分かってない」
『だから、何を?』
何をって…それは、仲間がお前へ向ける感情について、さ。

「お前自身が気付かないと、意味がないんだよ」
そうは言ってみるが、できれば気付かなくていいとも思ってる。
俺の気持ちに応えてもらえるなんて、思ってないから。
だから、できるなら彼の優しさに甘えて、彼の側に居たいと思う。

それだけじゃない。

彼がもし、他の人間にそういう感情を抱いたとしたら、俺はそれに嫌でも気付いてしまう…その時は、きっと耐えられないと思うから。
だから、できれば気付かなければいいとも思ってる。
……まあ、そんな感情なんて最終的には俺にはどうしようもないんだけど。
コイツが誰かを好きになったっていうんなら、それはアイツの思いとして俺は受け入れるしかない。


「お前はもう少し、人の気持ちを理解した方がいい」
俺も含めて、お前の周囲の人間のお前へ宛てた気持ちを、もう少し理解してくれ。

『えっ……俺、もしかして誰かに嫌われてる?』
何故、そうなる?
「その逆だ」

好きなんだよ、お前が。
なのにお前はそれに気付かない、溜息だって吐きたくもなる。
「お前は相変わらず博愛主義じゃだな」
『それって、いけない事か?』

その質問に何て返答しようか考えていると、コイツの心がドクリと何かに反応して大きく動いた。


感じ取ったのは、深い悲しみ。
この世界以前の、彼が過ごした日々の苦しみ。
大切な仲間を失った事への、深い嘆き。


ああ……だから、コイツは仲間を誰よりも大切にする。
時には、自分すら省みずに……。

「優しすぎるんだよ、お前は…」
何と声をかけていいのか分からず、不器用に相手の涙を拭う。

全てを背負うには、お前は弱すぎるんだよ。
もう少し、誰かを頼ったっていいだろう。
『しょうがないだろう、俺の性分なんだから…』
涙声で、そう返答する彼。

見上げた空に、彼は故郷を思っていた。
その先に、もう会うことの叶わない仲間の姿があるような気がした…。

(俺は、いつでも側に居るから…)


もしも…願いが叶うなら…。


『彼の悲しみを、癒す力を下さい』




後書き
星に願いを…番外編、アナザーフリオバージョン。
個人的には、コッチの方が気に入ってたりします。

何故に自分は九話をわざわざノーマルとアナザーの二本で書いたのか…いや、これはあれです、一本だったのを二本に分けたんだと思えば少しは気が楽に……一緒ですね。
フリオ編を書き終わった後に、これはアナザー編があった方が分かりやすいかな…と思って、書く事になったのです。

次回で遂に最終話、ウォーリア編です。
2009/7/6


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