もしも願いが叶うなら…


星に願いを…


野営地から少し離れた場所で、ほっと息をつく。

中々一人の時間が取れない、と最近感じる時がある。
仲間に頼られるのは良い事だと思う、だが…俺にだって一人になりたい時くらいあるのだ。
夜風に乗って、どこかの木々の葉が揺れる音が聞こえた。

仲間達の騒ぎの中から離れてみると、どこか…世界が広く感じられる。
だが、不思議と寂しくはない。
彼等は、とても信頼の置ける仲間だから。
何があっても、俺達は一緒だと…そう信じてるから……。

『馬鹿だな、お前』
「何だよ、急に出てきて人を馬鹿呼ばわりか?」
心の中から聞こえる相手の声に、俺はそう言い返す。

『お前は本当に何も分かってない』
「だから、何を?」
『それは、お前自身が気付かないと意味がないんだよ』
溜息混じりにそう言う彼に、俺は疑問しか残らない。 俺の中で俺の生活を見守ってくれてるのは知ってる、当事者である俺が気付かなくとも、傍から見ている人間であれば気付く事だってあるんだろう。
だけど、ああ言った以上は、きっと教えるつもりなんてないんだ。
俺自身で気付くしかない。

『お前は、もう少し他人の気持ちを理解した方がいい』
「えっ……もしかして、俺誰かに嫌われてる?」
身に覚えはないんだけど、でも、もしそうだとするのなら一体誰に?

『その逆だ』
そんな声と共に溜息が聞こえた。
嫌われてないのか…なら良かった、だけど…人に慕われる事で何か問題でもあるんだろうか?
『お前は、相変わらず博愛主義だな』
「それって、いけない事か?」
仲間は皆、大事だから。


もう…二度と大切な仲間を失いたくはないから……。


ふと、そんな台詞が浮かんで疑問、俺は今までに誰かを…大切な仲間を失った事があるのか?
記憶の端の闇の奥から、深い悲しみが去来する。

その時、自分の頬を何かが伝い落ちていった。
一拍遅れて気付く…嗚呼、俺は今泣いているのか。

そうだ…知ってる、この感情を…誰かを失う事の悲しみを……俺は知ってる。
俺は、もう何人も大切な仲間を失ってしまったんだ。
誰かを失う事が、酷く恐ろしい。
だから大切にしたい、今目の前に居る仲間達を。
自分を慕ってくれる仲間を守りたい。


『優しすぎるんだよ、お前は…』
零れる涙を不器用に拭う、その手は、心に潜む声の主からの俺へ向けた気遣い。
そんなぶっきら棒な彼の優しさに、俺は少し微笑む。
「しょうがないだろう、俺の性分なんだから」
涙声になりながらも、俺はそう返答する。

見上げた先に広がる空は、故郷の空によく似ていた…。
空がどこへでも繋がっているなら、俺達は何時までも一緒だよな?


もしも…願いが叶うなら…。


『もう二度と、仲間達が永久に分かれる事がありませんように…』





後書き
星に願いを…第九弾、フリオニール編。
何故、こんな悲しい感じの話を書いてしまったのか…。

フリオは皆の好意に気付いていない→でも、仲間をめっちゃ大事にする→昔仲間を失ってるから大事にしたいと思ってる。
…という図式から、導き出された結果なのですね。
いや…ちょと前にFF2をクリアしたんですが、確かにかなり人死んでますよね、ミンウさんとの分かれの時なんか思わず叫びましたよ(怪しい子)。

フリオは皆の気持ちには一切気が付いていない、かなりの鈍い人なのです。
もう恋愛に疎すぎて、アナザーフリオことシャドウ君がほとほと呆れてます。
次回は遂に最終話…と見せかけておいて、実は九話だけ別編があるという罠。
2009/7/6


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