もしも願いが叶うなら…


星に願いを…


「何で野郎ばっか…」
そう言って溜め息を吐く仲間に、「いいじゃんかジタン、どうせ野営地に戻ったって男ばっかだしさ」と言うと、「そんな現実、思い出させるなよ!」と、怒られてしまった。
なんだよ、現実なんでそんなものだろ。

まあ、悲観する程の事じゃないさ、そうだろ?…スコール?

「…早く帰るぞ」
「おーい、ちょっと待てってスコール!」
先を行く彼の元へと駆ける。

その耳元に小声で呟く。
「そんなに、アイツの元へ早く帰りたい?」
すると彼は表情にこそ表さないけれど、動揺した様に俺を見る。

知ってるんだ、皆あの笑顔を気に入ってる。
だけど、誰もが調和を乱そうとしない、水面下の葛藤なんて表に出さずに、平静に暮らしてる。


「……それは、お前も…だろう?」
確かにそうだ。
「勿論」
笑顔で返答する。

だけど、俺は別に気に入ってるだけで、自分のものにしたいなんて思ってない。
俺は今の状態が楽しいんだ。
平静を保とうとする仲間達の中に、時々波紋を起こして、その反応を楽しんでる。

嫌な奴だって?そんな事ないさ。

だって俺もアイツの事気に入ってるからね、誰かと上手くいきそうなら邪魔してやりたくもなるさ。
いっその事、誰かのものになっちゃえば、もうこんな事しないんだけどな。


もし誰も自分のものにしないなら、俺が貰っちゃおうかな…………なんてね。


俺じゃ、無理なんだろうな。
そんな風に思ってるから、誰かの邪魔をしたくなる。
自分の思い通りにいかないから、他の人間の邪魔をして楽しんでる。

やっぱ、俺って最低な奴?
それもいいか。


「おーいジタン、置いて行くぞ」
「今行く!!」
立ち止まってた仲間の名を呼び、今度は俺とスコールが立ち止まって相手を待つ。
野営地まではあと少し。
星空を見て溜息。
きっと、今日も仲間は笑顔で出迎えてくれる。
俺達は何事もないように、それに答えるんだ。
平静さを装って。


もしも…願いが叶うなら…。


『この関係に、幕を…』





後書き
星に願いを、第六弾バッツ編。
七夕の話でなんでこんな黒バッツを書こうと思ったのか、それは私がバッツは純粋な子じゃないと思っていないからに他ならないのです。
普段の純粋さは演技で、実際は皆の心の中とか考えて行動してて、誰かが動揺する姿とか見て楽しんでいるような黒い子、という勝手なバッツ像がありまして…こんな話になったわけです。
ちなみのこの場合、バッツの被害を一番被ってるのは勿論スコールです、その次はティーダじゃないかな…頑張れ17歳コンビ。

次回はセシル編です…また黒い人の登場じゃないですか。
2009/7/2


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