欲望ってものは、理性で押さえつける事ができる…
だけど、それは我慢しているだけで、無くなってしまうわけではない
それは誰だってそうだろう?ねぇ、兄貴……
Lust or Rational
俺が用意した夕食に下鼓を打つ兄貴が、満面の笑顔で「凄く美味しい」なんて言う。
料理人ならその感想に喜ぶんだろうけど、俺は兄貴の嬉しそうな笑顔が何よりのご褒美となっている。
結果発表についてはまた後日、兄貴なら心配はいらないんじゃないかな?と思うんだけど、それでも兄貴自信はまだまだ不安な所もあるらしい。
「こういうのは、運だからさ」
「実力が運を運んでくるんでしょ?それなら兄貴は心配ないって」
そんな俺の言葉にも、兄貴は苦笑いを返すだけ。
食後の片付けをそのまま引き受けた俺は、キッチンの方を伺う兄貴に「お風呂入ってきたら?」と薦める。
「いいのか?先に入って?」
「いいよ別に、疲れてるんでしょ?」
そう話す俺に兄貴は頷き、「じゃあお先に」と一言伝えて風呂場へと消える。
人を疑わないって、ある意味才能なんじゃないのかな?
信用されてるんだが気付いていないんだが、それとも覚悟の上なのか……。
「今日は、イタダキマスさせて貰うからね」
洗剤で泡だらけになった食器を眺めて、俺は自分の欲望を呟いた。
入浴後、まだリビングに居るかな?と思って顔を出して見ると、案の定、兄貴はまだリビングでテレビを見ていた。
「何してんの?」
「ん?テレビ見てる」
「そりゃあ見れば分かるよ」
兄貴の隣りに腰を下して、テレビの画面を見つめる。
何て事はない、そこそこ視聴率の取れる平均的なバラエティ番組。
兄貴がコッソリAV見てるような状況なんて、多分そんな事は絶対に無い……と信じてる。
夢見てるだけかもしれないけど、好きな人には綺麗で居て欲しい、そうじゃないだろうか?
「どうしたんだ、シャドウ?」
隣りで溜息を吐いた俺に、兄貴がそう尋ね返す。
純粋に疑問を投げかけてくる兄貴に、俺は再び小さく溜息。
「兄貴とイイ事したいなぁ…と思ってさ」
正直に自分の心の内を打ち明ける俺に対し、兄貴の表情が固まる。
無言で俺を見返す兄貴に、俺は真剣な表情で問いかける。
腕を回して抱き寄せると、より近くに感じる兄貴の体の暖かさに胸が高鳴る。
「俺の部屋、行こうか」
そう言うが早い、抵抗する間も与えずに兄貴の体を横抱きにし、俺は自分の部屋へと向かった。
兄貴の衣服を剥ぎ取る様に脱がし、火照った体を灯りの下に曝け出させる。
俺のベッドに横たわり、羞恥に顔を染める兄貴を見下ろすと、見上げる兄貴は俺を睨みつける。
俺も服を脱いで兄貴の上に圧し掛かると、震える唇にキスを贈る。
前は我慢した口の中へ侵入し、ゆっくりと中を味わう。
おずおずと伸ばされた兄貴の腕が、俺の首へと回される。
ギュッとしがみ付く兄貴の手の力に、嬉しくなる。
「はぁ……そんなに俺の事、待ってた?」
お互いの舌を繋ぐ銀糸に見惚れつつ、そう問いかければ、兄貴は俺の視線から逃れる様に顔を背ける。
「素直じゃないなぁ…2週間ぶりに恋人とイイ事しようっていうんだからさ、もっと喜んでよ」
「喜ぶとか、そういうの…んぁっ!」
敏感な耳を甘噛みすれば、それに合わせて甘い声があがる。
近くで感じる声や息使い、そして兄貴の熱い体温……やっぱり、本物がいいよなぁ。
「兄貴だって勉強してた2週間、こういう事を我慢してた訳じゃないでしょ?
……ねぇ、どうしてたの?自分で、ココ慰めてた?」
「ふぁっ!!」
すっかりと起ち上がっている兄貴自身に手を伸ばし、手で包み込めば、それだけで兄貴は大きく反応する。
「俺とシタ時の事とか思い出したりして、一人で楽しんでたの?こんな風に」
強く手で摩ってやれば、それだけでもうトロトロと蜜が溢れ出す、もしかしたら相当溜まっているのかもしれない、兄貴って真面目だし、禁欲的だしさ。
だけど、体の反応は理性ではコントロールできない。
「ヤッん…やだ、止めろよシャドウ…ん、っああ!ヤぅ……」
「兄貴だって健康な男の子だもんね、こうやってHな事一人でするでしょ?どう?自分でするのと俺にされるの、どっちが気持ちイイ?」
手の動きを一旦止めて、兄貴の反応を伺う。
唇を噛んで沸き上がる快楽に流されまいと耐える兄貴の表情が、たまらなく卑猥だ。
「ねえ、どっちがいいの?教えてよ兄貴」
「いい加減にしろよ!!さっきからそんな事ばっかり…俺が、一方的に約束押し付けたの、そんなに怒ってるのか?」
涙目になって、俺にそう尋ねる兄貴。
あっ……ヤバいな、羞恥もあるだろうけど…これは本気の方の涙だ。
「ゴメン兄貴、別に怒ってなんかないよ…ちょっと兄貴を虐めたかっただけでさ」
急いで謝罪し、額に優しくキスして相手を宥める。
俺のキスを甘んじて受け入れ「本当に、怒ってないんだな?」と不安なのか、再度そう尋ねる兄貴。
不安げに見上げる表情…って、何でこんなにエロいんだろうな?
「怒ってないよ、心配しなくっても……大好きな兄貴が頑張りたい事だからさ、そんなの諸手を上げて歓迎するし…まあ、かなりキツかったけどさ」
「やっぱり……」
俺からのキスに身を捩る兄貴の顔に、スッと反省の色が浮かぶ。
「もう!そんな顔しないでよ、兄貴がそんな反応すると…これから先に同じ様な事があった時、俺迷わず途中で兄貴の事襲っちゃうでしょ」
俺の冗談交じりの返答に、一瞬兄貴の体が強張る。
「冗談だよ!冗談なんだよ兄貴!!お願いだから本気にしないで!!」
「いや……お前なら、本気でしそ…ふぁっ!!」
兄貴の生意気な台詞が戻って来た所で、熱を持っていた兄貴自身に再び愛撫を開始する。
俺への非難の言葉は止み、室内に兄貴の高い鳴き声と卑猥な水音が響く。
「やっ!あっ…ぁあああん!!」
元々、快楽に飢えていたんだろう、間もなく兄貴が性を吐きだした。
白濁したソレを一口舐めてみれば、記憶にあるよりもずっと濃い味がした。
兄貴はやっぱり、ストイックな人間なんだなぁ…俺とは違う訳だ。
俺の体の下で、ビクビクと快楽に震える兄貴に笑いかける。
「優しくしてあげるからさ、兄貴……今夜は一晩、俺に付き合って?」
ね?と可愛くお願いすれば、兄貴は視線を逸らしつつも赤くなって小さく頷いてくれた。
「ん……ぁ、はっ!……ぅん」
異物感に震えながらも耐える兄貴の背を、片方の手でゆっくりと撫でる。
「大丈夫だよ、兄貴…」
耳元で優しくそう呟き、精液の絡んだ指で、ゆっくりと蕾を解してゆく。
狭く窄んだソコを、ゆっくりと宥めすかすように押し広げる。
久々に触れたナカは、想像以上に熱そうだ……。
「……まだ?」
「ん、まだ駄目」
涙目で見上げる兄貴に、やんわりとそう答えて三本目の指を入れる。
奥を探る様に指で引っ掻けば、イイ所に触れた様で兄貴の体が大きくしなる。
「ココ、イイんだ…もっと欲しい?」
同じ場所を何度も触ってやれば、縋りつく兄貴の声になんとも甘い色が混じる。
「あっ!……ちょ、ソコばっかり止め…」
「ん?止めていいの?気持ち良さそうなのに」
そう言いつつも、兄貴の要望を聞き入れて止めると、物足りないのかぎゅっと俺にしがみ付く手に力が加わる。
「あっ……シャドウ?」
「うん、何?」
そう言って相手の顔を覗きこみ、俺は身動きができなくなる。
しっとりと汗で濡れた肌に、張り付いた銀の髪。
俺を見上げる兄貴の目に、ありありと欲情の熱が灯っているのが見て取れる…。
「もう…焦らさないで、早く……きてくれ、よ」
熱い吐息と一緒に呟かれる、誘いの言葉。
思わず、ゴクッと喉が鳴った。
「兄貴……」
「も…我慢できない、っん!……」
喰らい付く様に兄貴にキスして、体のナカを広げていた指を引き抜く。
物欲しそうにヒク付く蕾と、欲情した兄貴の表情に眩暈がしそうだ。
熱を持った俺を兄貴の蕾に押し当て、一気に奥まで貫く。
「はっ!!ぅあ、あっ!!」
急な挿入に耐えきれず、兄貴が俺の背中に爪を立てた。
皮膚が裂ける位に、俺の事抱き締めて欲しい。
それくらい求めてくれるなら、嬉しい。
俺から、一方的に好きなんじゃないんだね?兄貴……。
相手の呼吸が落ち着くのを待ち、兄貴の腰へと手を伸ばす。
「動くよ…兄貴」
「ぁ…待って、まだ早……」
これ以上待てないよ……第一、「早く」って言ったのは兄貴だ。
相手の静止を振りきって、律動を開始する。
熱くうねり絡みついてくる兄貴のナカ。
「ぁ、ああん…っあ!」
与えられる強い快楽に、縋りついてくる兄貴の甘い声が側で響く。
優しくする…なんて言ったのに、結局の所、俺は野性的でしかなくて…でも、後で怒られるかどうかなんて、今は興味の範囲外だ。
久々に感じる兄貴に、感嘆の息が漏れる。
「愛してるよ、フリオニール…本当に、大好き」
理性の切れかかってる相手に、まともな言葉が通じるかどうかなんて、そんな事も気にならない。
だけど……。
「俺も、好きだよ……シャドウ」
小さくても、必死でそう返答してくれる相手が、酷く酷く、愛おしい。
「しゃ、ど…もう、駄目…」
「ねぇ……ナカで、イッていい?」
俺自身も限界が近付きそう訴えると、兄貴は俺を見つめ返す。
「いいよ…いい、好きにしていいって…言った……っあ!はぁ、あっああああ!!」
兄貴の最奥を突き上げた瞬間、限界を迎えた兄貴が先に達する。
それに引きずられる様に締まるナカで、俺も性を吐き出した。
グッタリする兄貴を抱きしめて、ゆっくりとキスすると、嬉しそうに俺の頬を撫でて行く兄貴の指。
「シャドウのが、いい」
小さく呟いた兄貴の言葉に、俺は首を傾ける。
「シャドウのが、気持ちイイから…自分でするより、俺は好きだ……ふぁっ!…ん……大きく、なった?」
そう、そうだ…最初に聞いたんだっけ?自分でするのと俺と、どっちがイイかなんて……。
まさか…本気で答えてくれるとはね。
俺って、思ってるよりもずっと…愛されてるのかな?
「…我慢してからかさ。ねぇ…もう一回、いい?」
その問い掛けに兄貴が頷いたのを見て、可愛い兄貴に啄ばむ様にキスをあげて、再び熱い律動を始めた。
欲望も理性も、使いどころ次第で“愛”になるワケだ……。
「……言い残す事はそれだけか?」
「すみません、ごめんなさい、申し訳ありません!!」
ドス黒いオーラと、掠れているものの低い声。
翌朝どころか昼過ぎ。
案の定、立ち上がれなくなった兄貴はベッドに横になって、頬杖をついて俺を見下ろしている。
俺はというと、ベッドから下りて床の上に正座して、完全に土下座の体勢に入っている。
今回悪いのは兄貴の方でしょ?
それでも、機嫌が悪い兄貴のご機嫌伺いをしないといけない訳で。
説教の前に、食事にでもして、それからゆっくり話は聞きますよ。
遅くなりましたが、お預けアナフリの続編でした。
受験って…もうとうに新学期が始まっているという、ね……いやはやエロの遅筆さ具合が半端ないです。
あとはもうヤルだけ!という部分で2カ月放置ですよ…そして時間を費やした割にエロが中途半端という、どうしようもない状況なのです。
で、ネタに詰まってアナフリに「ゴクッ…」って、させてみました(笑)。
オチが見つからなかったとか、反省点大量発生です…精進してきます。
2010/4/26