俺はどうも鈍いらしい
人の感情に気付いてないと言われても、自分では分からないんだ
それは…仕方ない、だろう?
mine
「今日の放課後、先生に呼ばれてるから先帰っていいよ」
帰り支度をしながら、一緒に帰る事がすっかり日課となっている弟に俺は先にそう告げる。
「ん…先生って、誰?」
「進路指導部長」
「げっ!皇帝かよ!!」
俺の返答にシャドウはあからさまに顔を歪めた。
皇帝ことマティウス先生は、進路指導部長の数学教諭だ。
整った顔立ちの美形な男性教師で、見た目に限っていえば学校の女性陣からの支持は高い。
ただ…クールビューティーと言えば聞こえはいいが、何事にも厳格で、自分の思い通りにいかなければ満足しない、かなりの自己中心的な性格を持っている人物である為に、生徒間では“皇帝”と渾名されている。
暗い噂の数も多い、まあ…大半は生徒が面白半分で作った作り話だろうけれども、それが人から人へ渡り歩く内に段々と真実味を帯びてくるから、噂というのは恐ろしい。
「兄貴、あの皇帝には気を付けないと駄目だよ」
「何が?」
「何がって…兄貴、俺は心配してるんだよ?兄貴は無自覚に色気振り撒いてるからさ、悪い虫が付いたらマズいでしょ?
あの皇帝なんか、殺虫剤使ってもしつこくくっ付いてきそうだし」
いや、人に殺虫剤は使うなよ。
「あのなぁ…俺相手に色気感じるのは、お前くらいなもんだよ」
噂でしかないが、あの皇帝は女性関係が派手だという…なんていうか、見た目と性格が相まって強い説得力を持って感じられる。
大体、俺は男な上に教え子だぞ、同性の生徒相手に性的な欲求を感じるというのは、教師としては問題があり過ぎるだろう。
「もう!!兄貴は何も分かってない!!」
そんな俺に、シャドウはムッとしたように叫ぶ。
「分かってないって…何が?」
「兄貴の純粋さから来る色気は半端ないの!男ウケするというか、虐めたくなるっていうか…もう、押し倒したくなる感じ」
「いい加減にしろ!!」
バシッと弟の頬に一発拳を叩きこむ。
イテェ!!と普通に殴られた痛みを表現する弟に、俺はもう盛大な溜息を吐く。
「あ〜に〜き〜、弟の忠告はちゃんと聞こうよ〜」
「お前のは忠告じゃなくて、遠回しの俺への虐めにしか聞こえない…じゃ、俺は先生に呼ばれてるから」
「あっ!もう!!俺待ってるからね!!」
クラス中に響くような声でそう言い、俺へと手を振る弟に呆れつつも、俺も相手へと軽く手を振り返す。
「失礼します」
放課後の進路指導室へとやって来てドアをノックしてそう声をかけると、中から返事が返って来る。
「来たか」
進路指導室の椅子にしっかりと足を組んで座り、片手にはティーカップ……完全に優雅なお茶の時間を楽しんでいる感じだ、まあ…似合っているけれども。
「いつまでもそんな所に突っ立ってないで、早く中に入って座りなさい」
「あっ…はい」
静かにドアを閉めて、俺は彼の目の前にある椅子へ腰かける。
そこを見計らったかのように、俺の前へ紅茶の入ったティーカップが差し出される。
相手の優しさに驚き、すっと見返すと、何時もの高圧的な視線で俺を見返す先生。
「私が手ずから淹れてやったのだ、ありがたく飲め」
「…はい、頂きます」
優しいんだが傲慢なんだか、この人の行動もよく分からないな…そう思いつつ、淹れられた紅茶に口を付ける。
残念ながら、香りや味で銘柄が分かるくらい、自分の舌が鍛えられているわけではないが…とりあえず美味しい…んじゃないだろうか?
どうせ俺に馴染みのある紅茶なんて、コンビニなんかで売られている、ペットボトルや紙パックの市販品だし…。
「進路についてお話があると、聞いたんですけれど?」
「ああ」
そこで先生が用意していたのであろう、資料を出し始める。
そこから先生の説明が始まった、のだが…。
……何だろう、なんか頭がボーとする…。
「オイ、聞いているのか?」
「あっ……すみません」
注意力が逸れているのを気付かれてしまい、慌てて相手に謝る。
先生はフンッと鼻を鳴らして俺を見返すと、かけている眼鏡を少し直し、「顔が赤いな」とそう言った。
「えっ……」
自分でも気づいていなかったのだが、確かに少し体が熱い…ような気がする。
「熱でもあるんじゃないか?」
そう言うと同時に伸ばされる彼の手が、俺の額に触れる。
その瞬間にドクリと大きく高鳴る俺の心臓。
なんだろう?おかしい…。
トクトクと、心臓が早鐘を打っている。
俺を見つめる先生の目がスッと細められる、整った顔立ちの相手の表情が魅力的に見えて、更に心臓が高鳴る。
「…効いてきたみたいだな」
「効いてって……何が、ですか?」
熱くなってきた息と一緒に、吐き出すようにそう問いかければ相手はニヤリと悪い笑みを見せる。
「お前が飲んだ紅茶に混ぜておいた薬が、だ」
あまりにも悪気なくサラリと言われたので、俺は一瞬言葉の意味を理解できなかった。
「はぁ…?……薬?」
額に置かれていた手が、すっと俺の頬へと滑り落ちてくる。
荒れていない、綺麗な男の指が俺の頬を撫でる感覚に、背筋が震える。
「安心しろ、体に害のあるものではない…ただ少し、性欲を掻き立てるだけだ」
「なっ!!何で、そんなもの……」
一体何が目的で?
回転の鈍くなった俺の頭の中に、さっきのシャドウの台詞が蘇って来る。
— あの皇帝には気を付けないと駄目だよ —
「何故か、理由が知りたいか?」
「……そりゃあ」
ドクドクと高鳴る心臓に、熱くなってくる体を押し留めて、俺は理由を尋ねる。
「お前が好きだから…だと言ったら、どうする?」
「……っえ?」
笑みを深めてそう言う男に、俺は驚愕のあまり固まる。
この男、今……何と言った?
「好き……って?」
どんな意味で?
「お前に惚れたと、そう言っているんだ」
机から体を乗り出して、余裕のある笑みを浮かべる相手の瞳に、怯えたような自分の顔が映っているのが見える。
「お前を私のモノにしたい」
「ぁ…………ん!」
思考の鈍くなっている俺の唇に、体温の低い柔らかな感触。
視界の先に映る景色が、自分を呼び出した男性教諭であると自覚するのと同時に、自分がキスされているのだと、ようやく認識する。
角度を変えて何度も何度も繰り返されるキスに、体の奥からジワジワと熱が込み上げてくる。
ゆっくりと離れる感触に、俺は現実に引き戻されたかのように、ようやく男の手を払い抜けた。
「な、に…するんですか!!」
ようやく紡ぎ出せた大声の反論にも、相手は一切動じていない。
一体、どういう神経をしているんだろうか?
「キスくらいでガタガタ言うな。大体、お前の目はこういう行為を欲しているように見えるぞ」
「そんな事ない!!」
立ち上がって相手から距離を取ろうとする俺の足取りは、しかし力なくフラつく。
ドクドクと早鐘を打つ心臓、そしてそこから送り出される血液が体内をどんどんと駆け抜けて行く。
ああ…熱い……。
「嘘をつけ、こんな涙で潤んだ、熱のこもった目で見つめておいて、否定になっておらんぞ」
「嘘じゃない!!大体、俺には…その……ちゃんと、恋人がいるんです!!」
相手に向かってそう叫ぶ、泣き声交じりの叫び声であるが、それでも先生の眉が少し歪められ「意外だな…」という、どこか苦々しそうな相手の返答を聞いた。
「お前は色恋には疎い方だと聞いていたんだが……まあ、年頃だからな…それで、その相手は一体どこの男だ?」
「はぁ!?何で男?」
俺の質問に対し、むしろ相手は不思議そうな顔で俺を見返す。
「…成程、やはり無意識か……」
妙に納得したようにそう言うと、立ち上がり俺の方へと近づく先生。
近寄って来る相手からなんとか離れようと後ろに後退するも、狭い部屋の中、すぐに壁へと追い込まれる。
「お前は女より、むしろ男に好かれ易いそんな所がある……もしや、そっちの気でもあるのかと思っていたが、まあ…そんな事はないだろうな。
どうせ、お前の言う“恋人”も雰囲気に流されて、なんとなく付き合っているんじゃないのか?」
「なっ!!そんな事…ない、ですよ……」
勢いよく反論したい所だが、途中で言葉が詰まる。
「兄貴、大好きだよ!!」
そう言って俺に触れる恋人は、俺とほとんど同じ設計図を持つ、双子の弟。
背徳している、そう言われても仕方ない。
勿論その自覚は自分にもあるし、相手にもあるんだろう…だから、この歳まで明るみに出なかったのだ。
俺は本当に相手に恋心を抱いているのか?
アイツと同じような気持ちで、アイツの事を想ってあげられているのか?
雰囲気に、流されている?……そんな訳ないと、本当に言い切れるのか?
語尾の小さくなっていく俺を見て、先生は勝ち誇ったように笑みを深める。
「ほら見ろ、どうせただの興味本位なんだろう?そんな相手とは早々に別れて私の元へ来い、お前の事を今よりもずっと満足させてやる自信はある」
「なっ!!そんな、酷い事……」
「酷い?本当に好きな相手ができたのなら、それは別に酷い事でもなんでもないだろう?」
本当に好きな相手?
そんな事を言われて思い浮かぶのは、やはりアイツの顔だけで……。
俺は確かに、アイツの事が好きなんだ…それだけは、強く持っておかないと……でないと、今、この男の持つ雰囲気に流されてしまう。
「先生…俺、生徒……なんですよ?」
常識が通じるのであれば、自分と俺の立場、そして今の状況を考えるべきだ。
これが俺にとって、最後の切り札だったのだが……。
「それくらいは分かっている、だが…どうせあと数か月もしない内にお前は卒業だ、そうだろう?安心しろ、お前の学力なら志望大学へは推薦で入れる。
だが、そうなると私にはマズイのだ…お前と会える時間がなくなれば、いつお前を口説きにかかればいい?」
そんなものは、この男の前では既に意味を成さないものなのだと、早々に気付くべきだった。
顔を逸らして相手の視線から逃れようとする俺の顎を、しっかりと相手の手が捕らえ、無理やり視線を合わされる。
「ならば、お前を落とすのは今しかない、そうだろう?」
男の鋭い眼光に射竦められ、俺の背中にゾクリと大きな震えが走る。
ニヤリと笑うその瞳の奥に、牙を剥きだした獣の本能を、見た気がした。
「ふぅっ!!ん、んん!!」
突然の噛みつかれるようなキスに、一瞬体の反応が遅れる。
半分開きかけていた俺の咥内へと、易々と侵入を果たした相手の舌が熱く震える自分の舌に絡められる。
逃げようともがくも、抵抗は虚しく相手の舌に捕らえられ、それを快楽として感じられてしまう今の自分の体が、酷くもどかしい。
「ん……はぁ、ん……」
熱い吐息と共に溶けて行きそうな自分の理性を保ちつつ、相手を睨み返す。
「中々、いい顔だな」
抵抗する俺の腕をいとも簡単に押さえつけると、俺の制服のネクタイに手をかけて、するりと抜きとって行く。
「ちょっ!!何する気なんだよ!!」
「先生にはちゃんと敬語を使ったらどうなんだ?しかし…この状況で、そんな何をしようとしているか分からない程、お前の頭も鈍くはないだろう?」
Yシャツのボタンを外していく相手の手が、俺の地肌に触れた瞬間にビクリと体が跳ねる。
イヤらしい手つきで撫でられていく肌に震えが走る、だが同時に、その感覚を自分の中の熱が悦んでいる。
それに気付いたのか、イヤらしい笑みで俺を見つめる男の手が、戯れるように俺の胸元へ滑っていき、既に尖がっている飾りを摘まむ。
「ぁあっ!!んあ…やぁだ…嫌だ!嫌……」
「どうした?触られただけでこの反応か?随分と敏感なのだな」
男の声色が、さっきよりも格段に喜びを含んだものへと変わっている事に、俺は底知れぬ恐怖を覚える。
触れられる手の体温は低く、人の手ではないようだ。
アイツとは違う、大人びた余裕のある微笑みも整った顔も、俺にはただの恐怖でしかない。
怖い、ただ怖い。
首元に唇を寄せられ強く吸い上げられる、チリッという痛みに、きっと赤い跡が残った事だろう…と推測する。
赤い舌が首筋から耳元を滑るように舐め上げてくる湿った感覚に、ビクビクと体が震えるのは、恐怖からくる怯えからなのか、それとも快楽からくる悦びからなのか…自分でも分からない。
体と感情が違う反応を示しているような、そんな気さえする。
背中を撫でて行く男の手が、結っていた俺の髪を解きパサリと背中に流される髪を一束掴むと、その気先にそっと口付ける。
「髪は、結っていない方が美人だぞ…私の好みだ」
微笑んでそう言う相手の台詞が、ある日のアイツの言葉と被る。
「兄貴さ、髪括ってない方が綺麗だよ」
風呂から出た後の俺の髪を櫛で梳かしながら、シャドウはある日ポツリとそう言った。
「何だよソレ?大体、お前も同じ顔だろ?」
普段は別け目を変えて印象を別けてはいるけれど、本来は二人共髪型も同じ、腰にまで到達する長い髪なのだ、鏡で見た印象は二人共まったく同じ。
なのにコイツは、何故か自分よりも俺の髪の方が好きなんだと言って、こうやって手入れまでしてくれている。
そんな俺の事を見て美人だ、美人だと何度も言うのだ。
「同じ顔でも持ってる雰囲気が俺と兄貴とじゃ違うの、兄貴は清楚な感じがして、それが男としてはいい感じの美人さんに見えるワケ?分かる?」
「俺には、お前の言う違いが全然分からないよ」
だって、どう見たって同じにしか見えないんだ。
「もう、何で分かってくれないかなぁ…兄貴、あんまり人前で髪解いちゃ駄目だからね」
「何でだよ?」
「んー、他の誰かに気に入られるのが気に食わないんだよね」
そう言って微笑む相手の笑顔につられて、俺も微笑み返した。
「シャドウ……」
「…お前の弟がどうした?」
小さく呟いた俺の言葉を聞き取った先生は、怪訝そうに俺を見返す。
「あっ!いや……その、ふぁっ!!」
言い訳しようとする俺の口からまともな言葉が発せられるその前に、相手の手が俺の下腹部へと落ちて行き、服の下で存在を主張している俺の欲望へと触れる。
グリグリと布越しの刺激に快楽を感じつつも、強い物足りさなを感じる。
もっと、直接的な刺激が欲しい…そう願うも、それを口にしてはいけないと自分を律する。
「お前の相手は、あの弟か?」
「はぁ…ぅ、ん……何が?」
そう尋ね返す俺の耳元へと先生は唇を寄せる、相手の吐息がかかりくすぐったくて身を捩る俺の頬を、しっかりと相手の手が固定する。
「このような場面で名前を呼ぶ相手となると、お前の恋人と考えるのが妥当だろう?
まさか、自分の弟に抱かれている、とはな…」
意地悪く笑ってそう言う相手に向かって、違うと叫べるのならそう叫んでやりたい。
だけど……違うと言えない。
本当の、事だから…。
「ほぅ…反論しないという事は、本当に近親相姦なのか?」
「そんな、言い方…止めろ!!」
そんな言葉は聞きたくない。
「だが、これが正しい言い方だろう?」
確かにそうだ……これが現実。
俺とアイツは血の繋がった兄弟、世間の目からは異常な事としてしか映らない。
だけど確かに、俺はアイツの事が好きなんだ。
「美しい兄弟愛か?それは恋愛ではないだろう?」
「違う…俺は、アイツの……事、本当に好きなん、っああ!!」
片手で器用にベルトを外し、下着ごとズボンを下ろした手が、その奥へ息づいている俺自身に直接触れる。
「勘違いなんじゃないのか?それも」
「あっ、勘違いなんかじゃ…やぁ!!ヤダ、止めて…ヤメてって、あっ!ふぁあ!!」
相手の手から直接与えられる快感に抗おうと、必死で理性を動員する。
でも……体は。
「止めて欲しいのか?ん?こんなに蜜を垂らして、ココは悦んでいるぞ」
グチャグチャと部屋中に響く淫らな水音、それが自分から発せられる音なのだという事実が、俺の羞恥心を煽る。
「ぜっ…全部、アンタの飲ませた…薬の所為、だぁ…」
「だが、それに快感を感じているのはお前だ」
「あっ…んん……はっ!…ぅぐ」
背徳的な行為に、涙が零れる。
目の前の絶対的支配力を持つ男に対して抗う力すら奪われ、嫌だというのに、反応してしまう自分の体が恨めしい。
気持ちとは反対に、その先を望んでいる自分の欲望が…何より、最愛の相手を裏切ってるようで…。
自分で自分に嫌気が差す。
「嫌だ!嫌だ…ぁ、っふ…うぁ……ん…ヤダ、嫌だ……」
「いい加減に自分の欲に従え、そうすれば楽になる」
そんな言葉に、流されてはいけない。
俺が好きなのは、アイツでこの男ではないんだ。
「そろそろ、イキそうだな」
「ん、んん…嫌」
「まだそんな事を言うか、強情な奴め」
そう言うと、俺の欲望を扱う指の動きが段々と早くなっていく。
それと共に、自分の中で解放を望む願望が膨らんでいく。
「ほら、イケ」
「ぅ……あっ!あああ!!」
体の奥から高まってきた熱が、限界を超える。
解放感から力が抜け、その場に崩れるように蹲る。
「はっ…は、ぁ……」
荒く息を吐く俺の顎に、男の手が絡む。
上を向けられた俺の目に、嬉しそうな男の笑顔が映る。
「もっと欲しいんじゃないのか?」
すっと俺と同じ目線になるように俺の前に座ると、俺にそう問いかける。
俺の体の熱は、一度の解放では引いてはくれない。
むしろもっとその先を…と望んでいる。
それを、見透かされているようで、顔に血が昇って来る。
「物欲しそうな顔をしているぞ。もっとヨくしてやろうか?」
「ヨく……」
「して欲しいなら、そう言ってみろ…この口で」
有無を言わさぬ口調でそう言う男の指が、そっと俺の唇に触れる。
「ぁっ……俺」
自分は、何を言おうとしている?
こんな俺を酷く嬉しそうに見つめるこの男に、何を求めようとしている?
「どうした?」
「はっ…ぁ……俺」
ボロボロと涙が零れ落ちる。
震える口から自分が紡ごうとする言葉が、何なのか…怖い。
駄目だ、絶対に言っちゃいけない。
だけど……体が、熱い。
「先生…俺……」
熱い息と一緒に吐き出される言葉に、先生の笑みが深くなったのが見えた。
その時だった。
ガラッという音と一緒に、室内に満ちた空気が破られる。
反射的に入り口の方向を見る、それと共に驚愕。
「遅いから迎えに来たよ、兄貴」
ニッと微笑みを見せているものの、威圧感のある雰囲気。
「気を付けろって、言ったじゃん…まあいいや、間に合ったみたいだし」
俺と同じ顔の弟はそう言うと、乱暴にドアを閉めた。
to be continude …
アナザー×ノーマルフリオ←皇帝、の現代パロで裏物を…と以前にリクエストを受けて、まる四カ月放置していました、すみません…しかも完結してない。
そして今回、全くタイトルが思いつきませんでした。
しかし書き上がってから気付いたんですが、皇帝にノマフリを襲わせる必要はあったんでしょうか?
ちょっかいかけてくる皇帝に嫉妬したアナフリが、兄貴は俺のものだ!ってかんじで押し倒すようなのを期待されていた場合、申し訳ないです。
早々に後編を書きます、もうちょっとお待ち下さい。
2009/12/28