言葉にするのって、難しいな…
もっと単純にできていれば、心を表現するのなんて簡単なのに
俺を愛してる弟へ…
「ね、兄貴……キスしていい?」
口調は軽いが、その目がやけに真剣で俺はたじろぐ。
多分、駄目だとは言わせる気が無いんだろう。
此方にも、断るような理由は…ない。
だが、俺が何か返事をするよりも先に彼の唇は、俺のソレに触れていた。
始めは優しく啄ばむように、しかし…徐々に深くなっていく口付けに、だんだんと俺も恥ずかしくなってきた。
「ん、シャド…もう」
いい加減にしろ、と言いかけた俺の口の中へ、するりと相手の舌が侵入する。
「ぅっ!ふぅ…ん」
侵入してきた相手の舌が、俺の口の中で暴れまわる。
歯の裏をなぞり、俺の舌へと絡むぬるりとした相手の舌の感覚に、背筋が震える。
段々と深まっていくキスに、意識が朦朧としてくる。
逃げられないな、と咄嗟に思った。
貪るような相手のキスに、自分は喰われるんだなという事は、安易に予測できた。
だが俺は逃げられない。
飢えた獣の前に餌を置いたのは、他でもない自分なのだから……。
チュッと軽い音をたて相手の唇が離れると、俺と相手の舌先を繋ぐ銀糸がすうっと二人の間に繋がった。
漂う官能的な雰囲気にボーとする俺に、彼は穏やかに、しかしその瞳の奥に確かな熱を持って笑いかける。
「兄貴……ちょっと、場所変えようか?」
そう言うが早い、ソファに沈みかけていた俺の体を、ひょいっと横抱きにして抱え上げる。
「うわっ!ちょっと下せよ、自分で歩くから!!」
「ここで下ろしたら雰囲気ブチ壊しだろ?いいから俺の好きにさせてよ。兄貴が俺に兄貴の事くれるって言うからさ、俺はもう嬉しくて仕方ないんだ」
そんな事を言われても困るのだ、大体、自分と体格の変わらない人間を持ちあげられるって、お前どんな体してるんだよ?
「何だよ兄貴?そんなに俺の体が見たいワケ?」
俺の呟きに対し、いつもの調子で冗談めかしたイヤらしい返答をする弟に、俺は顔が真っ赤になる。
「なっ!ちが…」
「大丈夫だって、存分に味あわせてあげるから…自分で心行くまで確かめてよ」
顔は笑っているけれど、しかし、相手の纏う雰囲気が、今日の言葉は冗談じゃないともの語っている。
ほとんど塞がった手で器用にドアノブを掴んで回すと、自室へと入った弟は俺を自分のベッドにゆっくりと下した。
部屋の電気を付け、暗かった部屋に光を満たすと、嬉しそうに俺の横たわるベッドの上へと上がるシャドウ。
「なっ…ちょっと、待てよ」
俺の上へ軽く圧し掛かり、衣服へと伸ばした手を制してそう言う。
「ん、何?…今更やっぱ無しなんて、当たり前だけど受け付けないよ」
「そうじゃなくって…その、灯りは消してくれよ……」
流石に、明るい中でのこういう行為は頂けない。
何より、俺の羞恥心を煽る。
「うーん……多少灯りは絞るからさ、消すのは無しでいい?俺、暗い中でこういう事するの嫌いなんだよね。
折角好きな人と一緒に居るのにさ、どんなに近づけてもさ、相手の顔見えないと不安じゃない?」
「そんな事、言っても……」
相手の言葉に反論を試みるも、とにかく、恥ずかしいとしか言いようがない。
「だから、灯りは絞るって…………ほら」
ベッドサイドに置かれたランプに灯りを灯し部屋の電灯を消すと、途端に部屋は闇に満たされ、自分達の周囲だけが光を受けて浮かび上がった。
「ねえ、これで妥協してくれないかな?」
俺の耳元でそう囁く相手に、俺は真っ赤になりながら無言で頷く。
もう、これでいいから……早く、そこから退いてくれ。
そんな俺の心の内を見透かしたように「兄貴、耳弱いんだろ?」とそう呟き、パクリと軽く俺の耳を食む。
「ひゃぁん…や、何す……」
「イイ声……もっと、聞かせてよ」
味を占めたのか、耳を舐め上げていく相手の感覚に体が震える。
「ぅ…ん、ぁ……ちょ、耳止め」
「耳は駄目?じゃあ……ここは?」
俺のジャージのファスナーを外し、インナーのシャツの端から手を入れ、すっと俺の地肌を撫でて行く。
「あっ!…ぁん、イタ」
胸の飾りを弄る相手が、嬉しそうに微笑む。
「痛い?気持ち良さそうだけど」
「ん…ちが、痛いって…っあう……」
「うん?スッゲー感じてるようにしか見えないんだけどな」
相手の指先から与えられる感覚はヒリヒリとして痛い、だかそれと共に言い知れない快楽があるのも確かで…。
芯を持って立つその飾りを指先で弾き、喉を鳴らして笑う相手。
「美味しそうな色してる……そんなに痛いなら、舐めてあげようか?」
「えっ?何…あっ!ああん、ひぁ!!」
グリグリと先端を虐めていた指を退け、代わりに尖がった先端に舌を這わせる。
指とは違う湿った感覚と、ピチャという水音。
ちゅっという音を立て吸い上げられ、ビクッと再び背が揺れる。
「ん……んん」
涙を潤ませて相手を見返せば、「気持ちイイんだ、兄貴」と相手は心底嬉しそうに俺を見つめ返す。
空いた手がそっと俺の下半身を滑って行き、熱を持ち始めている俺の雄に布越しに触れる。
「ん、ここもそろそろヨさそ」
そう言うと、俺の胸からそっと口を離し、下着ごとズボンを脱がす。
「あっ……」
外気に晒され、羞恥から足を閉じようと試みるも相手の体が間に滑り込み、それを許さない。
「先っぽもう濡れてる…やっぱ感じてたんじゃん、兄貴」
そう言いながら、俺の雄の先端をグリグリと弄る。
「うっあ、ヤメ」
「うん?嘘ばっかり、こんなに蜜たらしてるクセに」
手を上下に動かし、俺に快楽を与える相手。
グチャグチャという、イヤらしい音が室内に響き、恥ずかしくて目をギュッと強く瞑る。
「ん……も、無理、ねぇ離して」
「何言ってんの?俺、兄貴イカせる為にやってんのにさ」
そう言うと、手の動きはどんどん早くなる。
「はっ!……ああぅ、ん…ああ!!」
ビクンと大きく体が震え、相手の手や自分の腹の上に自分の吐き出した白濁が広がる。
「濃いね、暫く溜まってたんじゃない?」
「うっ……って、そんなの舐めるな!!」
指に絡まった精液を舐め取る弟に、気恥ずかしさを覚え、怒りの混じった声で叫ぶ。
「何で?もったいないじゃん」
そう言いながら俺を見下ろして、舌を出して自分の指を舐めるその姿が、あまりにも妖艶で俺は視線を逸らした。
「さてと……兄貴、ちょっと我慢して」
「何を?……っう!!」
その答えが返るより先に、自分の体の中へと何かが別け入ってくる。
「ん!…ヤダ……何?」
さっきまで快楽に震えていた体に、瞬時に走る悪寒。
「ゴメンね兄貴、ここ…慣らしておかないとさ、後で辛いの兄貴の方なんだ……だから…お願い、暫く我慢」
俺の中へ指を入れてそう話す相手の表情を見て、俺は「嫌だ」とだだっ子のように首を振った。
「シャド…ウ、止めろ、気持ち悪いって、ば!」
涙ながらの懇願も、相手はただ頷いて聞くばかり。
「ん、だからゴメンって、ね?大丈夫、今さ、兄貴の感じるトコ探してるから」
そんな所ある訳がない!!と相手の行為に体ついて行けず、ついつい抵抗する。
小さな子をあやすように、俺の頭を空いてる手で撫でて「大丈夫だから」と言う相手の声は優しいが、その声とは裏腹に、その手を止める気はないようだ。
体の内側を相手の指が蠢く感覚に、快楽とは種類の違う震えが走る。
「ヤダ、本当…ヤメ、や…ん、はっ!ぁああん!!」
俺の中を動き回っていた指が、ある一点に触れた瞬間に、自分でも信じられないくらいの快感と、今までの呻き声とは違う艶のある声に、気恥ずかしくなる。
「ふーん、そっか…ココがイイわけだ」
「あっ!やっ!!ヤダ、イヤァ…そこ、変だっ…ぅあ!」
何度も何度も同じ場所を弄られ、気がおかしくなりそうだ。
頭がボーとしてきて、さっきまで萎えていたハズの自分の雄も力を取り戻し、イヤらしく涙を零す。
「もうそろそろ、いいかな?」
そんな声と共に、自分の体の中を動いていた指が一気に引き抜かれる。
「あっ……」
途端に感じる喪失感、そして物足りなさに、自分でも驚く。
そんな俺の頬を、ゆっくりと撫でていく相手を見つめると、彼はそっと微笑んだ。
「ゴメンね、兄貴…俺も、もうそろそろ限界なんだ」
不思議だった。
こうやって俺の謝る声は酷く優しいのに、俺を見つめる瞳は熱っぽく、どこかギラついているのだ。
「愛してるよ…フリオニール」
自分の名前を呼ばれ、ドクリと大きく高鳴る胸。
ただ相手を見つめている俺の唇へ、優しくキスを落とした後、俺の足を肩に担ぎ上げると、そっと広げられた穴に熱いモノが宛がわれる。
「あっ……ぅ、あああああああ!!」
指とは質量の違う熱いモノが、自分の体の中心へと凄い勢いで侵入してくる。
「ん、兄貴…兄貴、落ち着いて」
苦しそうな表情で俺を見返す弟を、俺はどうしたらいいのか分からず見つめ返す。
「ぅ…痛い、よ……」
痛みからなのか、それとも熱さからくる生理的なものなのか分からない涙が頬を伝う。
「兄貴もっと、力抜いて」
俺の目尻に優しくキスして、そう囁く弟に小さく「無理だ」と答えると、彼の指が俺の顎へ伸びすっと上を向かせると、今度は唇へキスをくれた。
酸素を取り込むために大きく空いていた俺の口の中へ、相手の舌が入り込み、咥内で絡む。
与えられるキスに酔うように、トロンと目を閉じれば体から自然と力が抜けていく。
「ん……ん!んん!!」
ズズッ…と、俺の中に埋められていたモノがグッと奥まで入り込む感覚に目を見開けば、ふっと息を吐いて相手の唇が離れた。
「はぁ…兄貴、感じる?……兄貴の中にさ、俺が居るよ」
ぎゅっと俺を抱きしめて、嬉しそうにそう言う相手の背に、無意識の内に俺の腕が伸びて掴まる。
自分の中に感じる、別の人間の体温。
それは不快ではなく、むしろ…とても愛しいもので。
熱に浮かされた目で相手を見つめ返すと、愛おしそうに俺を見つめる相手が居て…。
この瞬間に、ようやく俺は理解できた……。
理屈とかではなく、ただ単純に……俺は。
「好きだよ……シャドウ」
心から、そう思った。
ビックリしたように見開かれる相手の目。
「あっ!ん……」
そして、急に質量の増した俺の中の相手に、俺も驚く。
「はっ!……もう、何でそんな…可愛いこと言うかな?……耐えられないだろ?」
「えっ?あっ!ん、ああ!!」
急に始まった律動に、準備のできていなかった俺は与えられる快感に付いていけない。
「ぅ、ああ!!…ね、シャドウ……待って!こんな急に!!」
相手の背に掴まる手に力がこもり爪を立てても、相手は一切気にしない。
「言っただろ?俺も限界だって!!なのに、兄貴ってば…あんな自分から誘うような事言って」
「別に、誘ったわけじゃな…ふっ、ぁん!」
そんな事はもう、言い訳にしかならないんだろう。
熱に浮かされた余裕のない相手の表情を見て、そう思った。
「兄貴の中、スッゲーイイ。熱くてトロトロしてて…マジで気持ちイイ」
恍惚とした表情でそう言われても、俺の口から出るのは、甲高い喘ぎ声だけだ。
「はっ!ぅ…あっ……ん、シャドウ…」
「ん?何……兄貴?」
「ぁう…おねが…もう、一回…俺のこと、名前で…呼んで」
相手を見つめてそう懇願すれば、酷く嬉しそうな表情で俺を見返して「フリオニール」と、俺の名前を呼ぶ。
自分と同じ声であるハズなのに、彼が俺を名前で呼ぶ声はどこか違う。
「あっ……もう、一回」
何度でも、何度でも呼んでほしい。
同じ声で、俺の名前を。
「フリオニール…フリオニール、愛してるよ」
「ふっ……あっ!俺も」
「うん。分かるよ、スッゴク……フリオニールも、俺の事大好きなんだね」
嬉しそうにそう言う相手に、俺は無言で頷く。
「あっ!ああん…あっ、俺……もう、駄目」
「いいよ、イッても…俺も、もう無理だから……だから、一緒にイこ?」
そう言うと、ギリギリまで引き抜き俺の奥へと一気に穿つ。
「っはぅ!あっ、ああああ!!」
最奥へ当たり、言い知れぬ快楽で頭が真っ白になる。
その瞬間に、自分の中で熱いモノが弾けたような気がしたけれど…それが何か考えられる程、俺の頭はもう働いていなくて。
「フリオニール、大好き…愛してる」
シャドウが、俺を嬉しそうに見つめてそう言う声だけが耳に届き。
その声に「俺も…」と小さく返答した後、俺は意識を手放した。
to be continude …
アナザー×ノーマルフリオ、現代パロ。
ようやく、エロに辿りつけた…もう、最後の山場越えた感じがします……次回で最後です。
しっかし今回、えらいガッツリとエロを書いたな…と思いましたね、WOLとの初めての時よりずっと力が入ってる気がする。
それはシリーズものの特権ですかね、前フリがあるだけに力が入るんでしょう。
さて、ここまで来たらもうゴールは見えたも同然です、本当に長かった。
そして、時間的にかなりギリギリだ、でもまだ今日なので大丈夫のハズ。
2009/11/29