小春日和の初冬。
陽の良く当たる場所に居ると、ふと…うとうとしてくる。
小春日和
「クラウド……アレ?…寝てるのか?」
学校の図書館の片隅、見慣れた姿を見つけ近寄って見ると、机に突っ伏してどうやら寝ているらしい。
読みかけの本を開いたまま、浅い呼吸を繰り返している。
「まったく、呼び出したのはお前だろ?」
「勉強を教えて欲しい」と相談を持ちかけてきた彼。
「委員会があるから、遅れてもいいか?」と尋ねたら、「図書室で待ってる」と短い返事。
「いいのか?今日、委員会長引くかもしれないぞ」
「構わない…大体、恋人くらい待たせろ」
最後の言葉は俺だけに聞こえるよう、小さな声でそう言う。
そう言われた瞬間に赤く染まる俺の顔を見て、彼はニヤリと笑う。
「止めろよクラウド!こんな所で」
「事実なんだからいいだろう?じゃ、放課後待ってるから」
「う…うん」
赤いままの俺の顔を見て微笑み、頭を軽くポンポンと撫でると、そのまま立ち去って行った。
そして、約束通り委員会が終ってから放課後に図書室に来てみたら…この通りだ。
確かに、今日の委員会は長引いてしまったけれど……そんなに眠かったんだろうか?
「クラウド…クラウド……」
図書室で寝るのはちょっと不味いだろう、そう思って揺り動かして起こそうと試みるも、彼が目を覚ます気配はない。
何度か試してみるが、こうも気持ちよさそうに寝ていると…何だか起こすのも悪い気がしてくる。
麗らかな暖かい午後だ、まあ睡魔に誘われても仕方ないか。
中々起きそうにない相手を見つめ、もう暫く寝かせてやろうか…と思い直す。
どうせ、ここは図書室の端であまり人目には付かない場所だ、先生に見つかって怒られる事はないだろう。
読みかけの本をそっと取り上げて、栞を挟んで閉じておく。
持ってきた鞄から、ノートと教科書から取り出し相手が起きるまでの間、授業の復習でもしておこうと思う。
多分、直ぐに起きるだろうと思ったのだが…俺の予想に反して、彼が起きる気配は微塵も感じられない。
相変わらず、規則正しい呼吸を続ける相手を見つめ、シャーペンを動かしていた手が止まった。
整った顔立ちに、普段よりも幼い寝顔。
綺麗だな……と思った瞬間、ドキリと心臓が高鳴る。
陽の光に当たって、光を反射するクセのある金髪を少し撫でて、ああ…触れてみたいな…と、ぼんやり思った。
……って、何考えてるんだ俺!!
触れたいって…なんでそんな事。
ああ…でも、同性から見ても彼は綺麗だと思う。
いやいやいや、だからって相手に触れたいとか、そういう風に思ってしまうのは不味いだろう。
しかも、ここは学校の図書館で、相手は同性のクラスメイトだ。
いくら恋人だっていっても、周囲にはそういう事は知られていない……ハズだ。
同性同士の恋愛は良くないと、俺が隠しておくようにクラウドに頼んだのだ。
彼はしばらく黙りこんでいたが、やがて「分かった」と俺の言葉に同意してくれた。
だから、周囲からは俺達はただの仲の良い友人にしか思われていない。
事実、クラウドは女の子によくモテるし。
…あっ……なんか、ちょっとイラッとした。
「いや、何考えてるんだよ俺」
自分の心の中に一人ツッコミ。
図書室の中なので、声のボリュームは抑え気味だ。
しかし、相手は一向に起きる気配がない。
そろそろ、起きてもいいんじゃないか?
「クラウド…起きろ、クラウド……」
そっと背中を揺すってみる。
「ん……」と軽い呻き声を上げて、ビックリして手を離すと、すぐにまた規則正しい呼吸が響く。
その整った寝顔を見つめつつ、いい加減に起きろと思う。
そっと周囲を見回して見ると、生徒の姿は見当たらない。
隣で眠る恋人に再び視線を戻す。
どうしようか……と、考える。
相変わらず、相手に触れたいと思う気持ちは…ある。
そっと周囲を見れば、やっぱり人の気配はない。
……少しだけ、なら…いいかな?
ちょっと後ろめたい気持ちを覚えつつ、そっと相手の顔に唇を寄せる。
額に優しくキスを落とし、そっと離れようとすると、「フッ」と相手が息を吐いて笑った。
……まさか?
「どうせ寝込みを襲うなら、唇を期待したんだが」
枕にしていた腕を解き、ゆっくりと起き上がる。
「ク!!クラウドお前!!」
「図書室で大声出すなよ、フリオニール」
注意されて、反射的に黙るが…しかし、そればかりではいられない。
「クラウド、お前いつから起きて…」
「そうだな?『クラウド…アレ?寝てるのか?』の辺りからだな」
つまり、それ最初っからじゃないか!!
「じゃ…何で、寝たふりなんて」
「いや、お前がどんな行動取るのか、ちょっと見ていただけだ」
何て事ないようにそう話すが、しかしそれは余りにも人が悪いぞ。
「何だよ、俺の事試してたのか?」
「まあ……そうとも言えるかな?……だからと言って、別にこんな事を期待したわけじゃない」
そっと口角を上げて笑う相手に、俺は居心地が悪くなって視線を逸らす。
「さて、じゃあ帰るか」
「えっ……勉強教えてほしいって」
「だから、また俺が寝ない内に…帰って教えてくれ」
そう言うと、彼はいそいそと帰り支度を始める。
まったく、自分勝手な奴だ。
……ん?…帰る?
「…って、帰るってお前の家に?」
この流れから考えると、俺がこの恋人の家に行くのか?
「駄目か?」
さも当たり前のようにそう言う相手に、「迷惑じゃないのか?」と控えめに尋ねる。
「大丈夫だ、帰るぞ」
「えっ……ちょっと待って」
急いでノートと教科書を鞄に仕舞い、相手の後を追う。
小春日和の日に、すっかり騙されてしまった。
余裕の恋人に、いつか…きっと仕返ししてやろうと、密かに心に決めた。
クラウド×フリオ、実は途中で逆っぽくなった、という。
この二人で学パロやってみると、なんかWOLフりの学パロ思い出して「えっ…浮気」とか思ってしまった。
でも、やっぱり学パロは書きやすいです。
クラウドはコスモスメンバーの中で最年長、という事で…なんか、大人な余裕を持ってるイメージが強いのです。
2009/11/28