駄目だと分かっていても、ついつい手を伸ばしてしまう…
それが、甘い物の魔力
甘い誘惑
「ティーダ朝だぞ、もう起きろ」
カーテンを引いて朝日を部屋に入れながら、笑顔で彼は俺を見つめて挨拶する。
正直、朝日よりも貴方の笑顔の方が眩しいです。
「フリオ、挨拶は?」
そう言うとキョトンとした顔で一瞬オレを見つめるが、オレの質問の意図を理解し、彼は頬を染めてそっと俺の元へ近付いた。
「ティーダ…おはよう」
柔らかく微笑み、そっとオレの唇に彼の唇が重ねられる。
「…ん」
小さくそんな声を漏らし、触れただけの柔らかいキスを終えて彼はオレから離れる。
ああ本当に、ちょっとした些細な事なんですけど、こんなに恥ずかしそうに頬を真っ赤に染めて。
もう、マジで可愛いです。
「ティ、ティーダ…もういいだろ?ほら、早く起きろ!」
そう言うと、恥ずかしそうに彼はオレから顔を背けて、キッチンの方面へと歩いて行った。
はぁ……本当に、本当に…マジでオレ幸せ者です!!
さて、オレが彼と野営地を出て今日で七日目になりました。
つまり、フリオにあの薬を飲ませてからも七日です。
ええ、それはもう堪能させていただきました……色々と。
だって!だって!!折角恋人になれたんだから、しかも…何やかんやでフリオは自分にベタ惚れだし、オレがお願いすれば基本的に何でも叶えてくれるわけだし…そんなこんなで、幸せ絶頂の1週間を過ごしてきたわけで……。
「明日には野営地に帰らないといけないのか……」
しみじみと、この1週間を振り返って彼がそう口にするのを、オレはちょっと寂しいと思った。
だって…つまりは、フリオと二人っきりで過ごせる最後の日。
今日で、彼との幸せすぎる甘い恋人生活も終わりだという事…。
「なんだか、寂しくなるな」
「えっ……」
自分と同じ事を、まさかフリオニールが考えていたとは思ってもみなくて、オレは驚く。
「ティーダとは何時も一緒だけど、こうやって二人っきりで過ごせる時間って…案外、少なかったから……帰ったら、今度は何時こうやって二人きっりで、長い時間過ごせるかな?」
寂しそうな表情で、そんな事言われた日には…オレ、感動のあまり泣いてしまいそうです。
「フリオがいいなら、オレ…このままフリオと一緒に暮らしたいッス」
「ティーダ……嬉しいけど、でも…皆の所、帰らないと…やらないと、いけない事があるだろ?俺にも、お前にも」
フリオのそんなキッパリとした言葉に、オレの心がズキリと悲鳴を上げる。
そんな当たり前の事、分かってるんだよ。
でも、でも……。
今日が終わったら、アンタはもうオレのモノじゃなくなっちゃうから…だから。
そこで、ふと初めてその事について考えた。
効果が切れたら、どうなるんだろうか?
「ティーダ?どうしたんだ?」
「えっ……何がッスか?」
「なんか、ティーダ怖い顔してたぞ、何…考えてたんだ?」
「別に、何も……」
「ふーん……」
不審そうに俺を見つめるフリオニールに、しかし、オレは何も言い返せない。
だって、今のアンタに言ったって絶対に信じてもらえない。
アンタが本当は、オレの事どう思っているのか、オレは分からない。
でも多分…弟とか、そういう立ち位置でしか見てくれてなかった事は確かだ。
明日、オレはアンタにどう言い訳したらいいんだろう?
素直に言えばいいのかな?
オレの事、好きになって欲しかったって……。
「ティーダ…今日は、もう探索に行くの止めようか」
「えっ……」
「ずっと二人っきりは無理だけど、一日だけでもさ、二人でのんびり過ごしたって…罰は当たらないだろ?」
微笑んでそう言う彼の表情を見ていると、自分の悩みがくだらなく思えてくる。
目先の幸福に釣られて、先の問題を棚上げにしているだけ?
そうかもね……でも。
こんな可愛い笑顔の想い人前に、そんな事言ってられますか?って事ッス。
「フリオ…今日だけ、オレのお願い聞いてほしいんッスけど」
「うん?いいよ」
ニッコリと笑ってそう返答してくれる彼に、やっぱり幸せだ、と思った。
「ふっ……ん、んん」
頬を真っ赤に染めて、オレの雄を口に含み必死にご奉仕するフリオの姿に、オレの欲望が育っていく。
「は、ぁ…ティーダ?」
うあ、涙目で見上げるの止めて、その表情マジでエロいから。
「んっ、あ!!」
耐えきれず吐き出したオレの白濁を顔に浴び、驚いて目を閉じる彼に思わず謝る。
「ゴメン」
「ん…いいよ」
白濁の滴り落ちる顔で、無理やり笑いかける相手に、また自分の欲望が刺激される。
「あっ!ああっ!!ティーダ、ティーダ」
ギュウッとオレの背中に爪を立て、与えられる快楽の波に必死で耐えるフリオニール。
「フリオ、オレの事好きッスか?」
トロンとした瞳でオレを見返す相手に、ふと問いかける。
「あっ!ティーダ…好き、だよ」
すぐにオレにそう返答するフリオに、オレはフリオに「もう一回」とせがむ。
「うん…はっ……好きだよ、ティーダ」
「フリオ、好きッスよオレも、フリオの事大好きッス」
そう言うと、彼は嬉しそうにオレを見返し、「うん」と頷く。
もうそろそろ、限界だった。
「はぁ…ん、ティーダ…あっ!もう駄目、イッちゃ」
「いいッスよ、イッて…オレも、もう限界」
「ひゃっ!ん、あっ!ああああ!!」
一際甲高い声で鳴くと、大きく体を震わせて彼は達した。
イク瞬間の締め付けに耐えきれず、オレも彼の中で達してしまう。
「フリオ、大好きッス」
幸せに満たされながら、そう呟くと、彼も嬉しそうに「好きだよ」と答えてくれた。
ありがとフリオ、オレスッゲー幸せッス。
翌朝、目が覚めると隣でまだオレの想い人は寝ていた。
幼い寝顔を見つめていると、ふと彼が薄らと目を開けた。
「おはようございます」
「うん……おはよう」
ドキドキしながら彼の様子を見ていると、ゆっくりと起き上がり、「ティーダ」とオレの名前を呼ぶ。
「取りあえず、色々と説明しなければいけない事があるよな?」
普段の彼とは違う、低く不穏な声にオレの背中を冷たい何かが下がって行った。
「はい…………ごめんなさい!!」
床に下りて、取りあえず相手の目の前で土下座する。
今のフリオの後ろに効果音を付けるとしたら、多分「ゴゴゴゴゴ」という、禍々しいものが付けられる事だろう。
あまりにも恐ろしいので、土下座のままで事情を説明する。
「つまり、アルティミシアから貰った惚れ薬を飲ませた、と?」
「はい…」
「はぁ……まったく、お前ソレ、もし毒だったりしたらどうするつもりだったんだ?」
呆れたようにそう言うフリオ。
「うっ、それは……でも、実際に毒じゃなかったわけだし」
「結果がよければいいというわけじゃないだろう!!大体、お前何でこんな事!!」
「だっ、て……だって!フリオが全然オレの気持ちに気付いてくれないッスもん!!」
「……っは?」
オレの言葉に、ふと呆然とするフリオに、オレは続ける。
「オレ、本気でフリオの事大好きなんッス!なのに、フリオはいつまで経ってもオレの気持ちに気付いてくれないし!!全然、オレの事そういう風に見てくれないし!それで、オレ焦ってたんッス!勿論、スッゴイ卑怯だって事くらいは分かってるッス!でも…でも、オレ、本当にフリオの事大好きで」
「ティーダ!ティ—ダもういい!!分かったから!!」
まだ続けようとするオレの言葉を止めたフリオの方を見ると、耳まで真っ赤に染めて俯いていた。
あれ?なんていうか、意外な反応。
「あの、フリオ……」
「兎に角、自分がした事…ちゃんと分かってるんだろうな?」
「はい」
最悪、殺されても文句は言いません。
「ティーダ」
「はい」
「こんな事したんだから、ちゃんと…責任取れよ」
「はい……えっ?」
相手の表情を伺うと、未だに視線は床に張り付いたまま、恥ずかしそうに肩を震わせていて…。
あのう、ええっと…これは、つまりですね…そんな風に解釈してもいいわけですか?
「フリオ、あの…責任取るって」
「何度も言わせるな!!」
手近にあった枕をオレの方へ投げて、彼はふいっと後ろを向いてしまった。
呆然とする事、約数秒。
「フリオニール!!愛してるッス!!」
ガバッと彼を後ろから抱きしめると、「うわっ!」という色気の無い声を上げて、「離せ!」とオレの腕の中でもがく相手。
そんな風に抵抗されても、全然いいッス。
何でも言いなりっていうのは、そりゃ幸せな気分味わえるかもしれないけど、でも…覚めてしまえば虚しい夢だから。
アンタがアンタの意思で、オレを選んでくれた。
そんな事実が、今、一番オレを幸せにしてくれるッス!!
fin
ティーダ×フリオ、妙薬話完結です。
ヤッたもん勝ち、と言われそうですが…正しくその通りですよ。
フリオニールは、純粋に自分を好いてくれているティーダを結局無碍には扱えないと思うのです。
だから、最終的にフリオが落とされて終わり、バッドエンドは考えてなかったのです。
ティーダが何を色々堪能したのかは、皆様の想像にお任せ致します。
2009/11/26