それは、背中に舞い降りる声。
a swallowtail butterfly
「…それで、これは一体何の騒ぎなんだ?」
目の前の惨状を前に、俺はそう尋ねる。
「えーと、酒盛りってヤツだよ」
少し頬を染めた、満足げな顔でそう言うセシル。
酔っている事は一目瞭然で、その他の面子に目を向けても誰も彼も似たようなものだ。
特に酷いのは、目の前で突っ伏している銀髪の青年。
「済まない、バッツが飲ませたんだ…私が来た時には既にこの状態だった」
俺の顔を伺ってそう言うウォーリア、俺はこの騒ぎを持ちかけたであろう犯人の旅人に視線を向ける。
「いいじゃん、たまにはさ…フリオニールがここまで弱いなんて、思いもよらなかったんだ」
全然悪びれた様子もなく、そう言うバッツに俺は溜息が出た。
「フリオニールはもう、部屋に連れて帰る」
「済まないな、クラウド」
「いや…俺も、もう部屋で休むから」
「えーえ、何だよクラウド、少しだけでも飲んでいけよ」
「悪いが、明日全員酔いつぶれてると困る人間が出てくるだろう?」
それだけ告げると、俺は自分よりも少しだけ体格の勝っている青年を背負って、酒盛りの続く部屋を出た。
今日は珍しく野営ではなく、宿泊施設として使われていたと思われる建物を見つけて、そこで体を休ませる事になった。
そこで、食料庫の中からバッツが酒でも見つけてきたんだろう。
俺は今日、周囲の見まわりの係りだったから、帰って来たら誘うつもりだったんだろう。
だけど、残念ながらそんな訳にも行かなくなった。
「しっかりしろ、フリオニール」
「ぅ…ん」
そう声を掛けると、背中からくぐもった声がしたが、しかし身じろぐだけで目を覚ます気配はない。
溜息を一つ吐いて、俺はフリオニールに宛がわれていた部屋の戸を開けた。
背中に背負ったままの青年を、ゆっくりとベッドに下ろすと、彼はようやくゆっくりと目を開いた。
「くらうど?」
どこか舌足らずな言葉遣いで、彼は俺の名を呼ぶ。
「大丈夫か?ほら、水飲んで」
「うん」
水差しからグラスへと水を注ぎ、彼にグラスを渡す。
ゆっくりと飲み干すその口の端から、零れた水が伝い落ちる。
「ねぇ、クラウド…俺」
「疲れただろう?服はもうそのままでいいから、髪は解いて、もう寝た方がいい」
おやすみと、彼に告げてその額にキスを送る。
くすぐったそうに目を閉じて、挨拶を受ける恋人に俺は少し微笑み、その部屋を出ようとした。
「クラウド…俺さ、クラウドとイイことしたいなぁ」
背中を向けていた俺に、彼は後から腕を絡めて、俺の耳元でそっと甘えるような声で言う。
「……フリオニール?」
彼の行動に驚きを隠せない俺に、そんな俺に対し彼はお構いなしに絡めた腕を解き、ゆっくりと俺を自分の方へと振り向かせる。
「ねぇ、クラウド…いいだろ?」
トロンとした目で俺にそう問いかけるフリオニール。
明らかに様子がおかしい…絶対、酔っている所為だ、でなければ彼がこんな事を言うはずがない。
「フリオニール、お前…酔ってるだろ?」
「だから、何?」
「何って…」
この男は、俺の理性を試しているんだろうか?
そうではないだろう、本当にその気で俺を誘っている事は誰の目にも明らかだ。
だが、酔った勢いだけで事を進めるのは不味い。
特に、翌朝目が覚めた後に、何を言われるか分かったものじゃない。
嗚呼、だけど…。
「俺、今すぐクラウドのが欲しいな…」
アルコールの所為で赤く染まった頬に、潤んだ瞳。
熱っぽい視線で俺を見つめる恋人の誘いを、どうして断れるっていうんだ。
「フリオニール、誘ったのは…お前だからな」
「ん…んっ、ぅん……」
クチャ、クチュ…っと音を立てて、俺の欲望を自らの口で愛撫する恋人。
慣れていないのに一生懸命にご奉仕してくれるその表情に、とてつもない色香を感じ、俺の欲望は成長していく。
「偶には俺が、してあげる」
熱いキスを交わしてから、ゆっくりとベッドにフリオ二ールを押し倒し、その後、俺の愛撫に気持ち良さそうな声を上げていた恋人が、急に思い立ったかのようにそう言ったのだ。
何を?と俺が口に出す前に、彼はもう行動に移っていた。
俺の下から這い出すと、俺の足の間に滑り込み、俺の欲望をやんわりとその口に含んだのだ。
「今日は、随分と積極的だな」
未だに愛撫を続ける恋人にそう言うと、上目で俺を見返し。
「だって、早くクラウドが欲しい…」
と、普段なら絶対に言わないであろう台詞を、彼は恥ずかし気もなく自ら口にする。
どうやら、彼は酔うと色事に積極的になるらしい。
この恋人の新しく判明した癖に、俺は喜んでいいのか、それとも悩むべきなのか…。
まあ、今は目の前にちらつかされているゴチソウを、頂く方が先決だ。
そろそろ限界を感じ、グイッと彼の髪を掴むと、含まれていた自身の欲望を引き抜く。
「あっ…」
「っく……」
放たれた精液を顔に受け、しばらく方針状態だった彼は、しばらくして恨めしそうに俺を見る。
「顔にかけたかったの?」
「ああ、悪いか?」
「べたべたする…」
顔に掛かった粘液を落としながら、フリオニールはそう言う。
だが、俺にはもう問題じゃない。
そろそろ、俺だってお前が欲しいんだよ。
「フリオニール、俺が欲しいなら…自分で準備して」
俺の精液で濡れた指を取ってそう言う。
「えっ……」
「俺が欲しいんだろ?なら、準備して」
そう言うと、彼は少し頬を染めたのだが、俺をゆっくりと見つめると…白く汚れた指を自分の蕾へと宛がった。
「ん…ぁ……」
「ほら、ちゃんと解さないと入らないだろ?」
「ん…分かって、る」
そう言いながら、ゆっくりゆっくりと自分の中を解き解していくフリオニール。
始めは緩慢だった指の動きも、次第に感じるがままに動き出し、あえやかな声を上げて乱れていく。
「ひぃ…や、ぁっん…んん……」
「感じてるな、フリオニール」
「だって……はぁっクラウド、っうあ!」
涙で濡れた瞳で、俺を見つめるフリオニール。
その瞳は相変わらず熱っぽい。
「ねぇ…クラウド、もう……ちょうだい」
はぁ…と熱い息を吐いて、俺を見返すと自分の蕾を指してそんな事を言う。
そんな彼に、軽く眩暈を覚える。
理性なんて、もう途切れる寸前だ。
溶けてなくなってしまっても、もう構わない。
「挿れるぞ、フリオニール」
「うん、ちょうだい…」
彼の承諾の言葉を貰って、一気に彼の奥まで侵入する。
「ふぁっ!!あっ!あああああ!!」
急な挿入に、悲鳴に近い声が上がる。
「フリオニール、大丈夫か?」
「うん…平気、だから…クラウド、もう早く」
俺の首筋に腕を絡めて、そうやって誘うフリオニール。
もう限界だ。
「動くぞ」
「うん…っひゃん、ふあっ!あっ!!」
しっかりと俺を絡み付いて離さない彼の中。
普段は我慢しているのに、今日は喘ぎ声を止める事をしない。
理性なんて、とっくに飛んでしまたのだろう。
「クラウド、クラウド…もう、イッちゃいそ」
「ああイけ、俺ももう限界だから」
お互いの吐息を感じられる程近くでそう言うと、歳奥の一番感じる場所へ突き上げる。
「ひぃんっ!あっ!!」
ビクリと大きく体を震わせ、一際大きく甲高い綺麗な声を上げると、フリオニールは達してしまった。
その瞬間の締め付けに、俺も彼の中で果てる。
ドクリと脈を打ち、彼の中に俺の白い欲望が満たされていく。
「クラウド…」
「うん?」
俺の名を幽かに呼んだ恋人の顔の近くへ、そっと近寄る。
すると、俺の唇に触れるだけのキスを送る。
「クラウド、大好き」
そう言って満足そうに微笑むと、彼の瞼が下がった。
どうやら、欲望は満たされたらしい。
「俺も、好きだよ…フリオニール」
そう呟き、汗で張り付いた彼の銀の綺麗な髪を撫でる。
気ダルイ情事の後の空気に負けて、結局俺もそのベッドで眠った。
翌朝、目を覚ました後、俺を恨めしげに見つめるフリオニールに、説教されるだろう事を覚悟した俺は、しかし、その後の彼の行動に心底驚いた。
「あの…クラウド、昨日の事は、その…忘れてくれよ!頼むから!!」
「昨日って…覚えてるのか?」
俺はてっきり、酔った時の事だから忘れ去ってしまっていて、それで怒ってるものだと思ったのに。
だが、彼は真っ赤になって俺の言葉に頷いた。
じゃあ、全部覚えてるのか…自分から俺を誘った事も、その後の自分の乱れ方も。
「本当に、本当に…恥ずかしい」
「そんな事、言ってもな…」
昨晩の彼は、理性を掻き乱すくらい魅力的ではあった。
だが、俺が好きになったのは勿論、今こうやって自分の行動を恥じて真っ赤になっている純粋な所を持つ恋人なのだ。
「分かった、忘れるから…」
「本当に!?」
「分かってるよ、アレがお前の本性じゃないくらい…だから、もう絶対に俺の前以外で酒は飲むなよ」
「……分かった」
でも…偶には酔った恋人も悪くないかもしれない。
そんな邪な事を考えたのは、愛する彼には秘密だ。
クラウド×フリオニール、初めて二人がくっついてる話なのに……基本的にただヤッてるだけなんて…ゴメンねクラウド、何故か君でほのぼのは書けない。
クラフリ書きたいんですけど、なんか上手くいかないんです、何故なんでしょう?
っていうか、今回は誘い受けフリオを書こうというのが主な目的でした。
でも、何か撃沈しました、色事に積極的なフリオはやっぱりフリオじゃないんです。
……エロって、難しいですね。
2009/8/16