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どうして、好きになっちゃいけない人が居るんだろうな?

誰よりも、世界でソイツの事好きなのに…

どうして結ばれちゃいけないんだ?

誰より愛する兄貴へ…

「あの…」
急に声を掛けられて振り返ると、見た事ない女子生徒が立っていた。

「フリオニール先輩!」
「兄貴に何か用?」
「……っえ?」
勇気を振り絞って声を掛けたのはいいけど、人違いだ。
頬を真っ赤に染めた少女は、呆然と俺の事を見ている。

双子の兄弟なんて目立つから、知っていただろうに…それでも、パッと見で俺と兄貴はそんなに見分けが付かないか?
まあ、後姿だったら分からないか。

「それ、兄貴に渡しておこうか?」
「えっ!」
それとは、彼女が手にしている手紙の事。
内容なんて、大体予想が付く。
兄貴への恋文ってやつだろう。

「いいんですか?」
「構わないよ、ただ…兄貴、色恋沙汰に興味がないからさ、あんまり期待しない方がいいけどね」
「あの…ありがとうございます!!」
ペコリと頭を下げると、彼女の結んでいた髪が大きく跳ねた。
色が白くて小柄な、大人しそうな女の子。
結構、可愛らしい女の子だ。
再度、俺に礼を言うと彼女は走り去った。

真面目で面倒見の良い兄貴は、ああいう大人しいタイプの女の子に好かれるんだよな…。
預かった手紙を見て、俺は少し溜息。
「悪いね」
この手紙、残念ながら兄貴の手には届かないよ。

「何やってるんだよ?」
今度は別の方向から声がした。
よく知った声だ。
自分の声でもある。

「また女の子から告白されたのか?」
兄貴はそう言うと、俺の手に握られている彼女からの手紙を見た。
宛名が隠れていた為に、兄貴はそれが自分宛てのものだと気付かなかったらしい。
それが分かって、俺は安心する。
だけど、まだ油断はできない。

「見てたのか?」
「礼を言って、走り去るところだけね、可愛い子だったけど」
兄貴は、派手好きな今風の女の子よりも、さっきの子みたいな大人しい女の子の方が好みなんだよな…。

だから、絶対に教えない。
この手紙が、誰に宛てて淡い気持ちを綴ったものなのか。

「俺のタイプじゃない」
「ふうん……いいよな、同じ顔なのにモテる奴は」
そんな事を言う兄貴に、俺は少し良心が痛む。

本当は、俺よりも兄貴の方が人から好かれてるんだけど…本人の元にその声が届く事はない。
大体、俺がその前に立ち塞がってるから。
こういう時、双子ってスッゴイいいよな。
勇気を振り絞って体当たりしてくる子は、大体俺と兄貴を間違える、時々本人のふりをしてお断りしたりもしている。
兄貴みたいな優しい笑顔を作って、申し訳無さそうに「ごめんね」と相手に謝るんだ。
「いいんです」そう言って、相手の子は涙を溜めながらも走って行く。
それで終わり。

本人に直接話す勇気のない者は俺に兄貴への想いを託す。
今みたいに。

絶対に届けるつもりない。
酷いのは分かってるけど、でも…悔しい。

彼女達は自分の想いを伝える事ができるのに、俺はそれが許されない。

絶対に、俺の方が彼女達よりもこの、隣に立つ人の事を想ってるのに。
なのに……俺達は同じ血を分け合った兄弟。
俺の想いは、許されざるもの。


それが、酷く悔しいんだ。


「あの子、どうするんだ?」
「断るに決まってるだろ?全然知らない子と付き合えないし」
「勿体無いな…お前が断るなら、俺と付き合う気ないかな?あの子」
そんな言葉を聞いて、俺はビックリして立ち止まる。

「なんてな…そんな邪な気持ちでいるから彼女できないのかな、俺」
ハハハと、そう言って笑う兄貴。
俺は、笑う事ができない。
ぐしゃりと、俺の手の中で彼女の手紙が握り潰された。


分かってる、兄貴の心は兄貴自身のもので、俺にはそれを束縛する権利なんてない。
握り潰したこの手紙だって、本当は兄貴に渡すべきだって事も分かってる。
だけど……どうしてもそれができない。


彼を、咎められる事なく愛せる他の誰かへの、これは嫉妬だ。


「どうしたんだ?」
早く帰ろう、と俺の前を行く兄貴が振り返ってそう声を掛ける。
「…ああ」
笑顔で俺を見つめる兄貴に、そう返事する。

誰よりも、俺は兄貴の幸せを祈ってるさ。
だけど、俺は同時に独占したい。
目の前に居る、誰よりも愛しい兄貴を…。
できれば、誰にも渡したくなんてない。


「今日は、バイトが遅くなりそうなんだ…夕飯はどうする?」
先に食べてても構わないけれど、と兄貴はそう言う。
「待ってるよ、兄貴が帰ってくるの」
「そっか、じゃあ帰って来たら一緒に食べよう」
そう言って笑う兄貴に、俺も微笑み返す。

今、この笑顔は俺のものだ。

俺の中の独占欲が、満足気に微笑んだ。


to be continued …

後書き

アナザー×ノーマルフリオの現代パロ、結局続きました。
そして、まだ続きますこの話、どこまで書くか未定なので前編・後編とか付けれません。
個人的にはアナフリの告白から、二人がくっ付くまでを書きたいな、と思ってます。

アナフリが酷い人になってます、彼が誰かに嫉妬するのを書きたかったんです。
自分の前に立ちはだかる障害に、彼はとっても追い詰められてるんです。

最近、アナフリ×ノマフリが自分の中で来てるかもしれません。
2009/7/12

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