俺は、偶然の産物
本来ならば、存在するはずのなかった存在
そんな俺でも、貴方は認めてくれますか?
愛してくれとは言わないけれど、ただ……
貴方を好きでいていいですか?
“さよなら”と別れを告げた後も、少しだけ残された自分の意識。
どうして残ってしまったのか。
簡単だ、アイツの事が心配だったから。
人に優し過ぎる上に、無防備で初心。
あのドSの馬鹿野郎、こと皇帝に付き纏われて…貞操が心配だ。
普段の生活でも、秩序の戦士達の中で騒がしい馬鹿共に絡まれて、自分の言いたい事言い返せなさそうだし…。
少しくらい、強気になれるような存在が居た方がきっと為になる。
なんていうのは、後付の理由で…。
本当の理由は、消えてしまいたくなかったのだ。
アイツが好きだから……。
自分勝手かもしれない、独りよがりの我侭だと言われても、決して言い返せない。
許して欲しい、勝手に見守っている俺を。
健やかに眠るアイツの夢の端に、俺は立っていた。
「居るんだろう?」
アイツはそう言う。
誰に向けてなのか?俺は分からずにその様子を見守る。
「そこに居るんだろう?シャドウ」
お前の影だから、っとそう言って以降、俺の呼び名となったその愛称。
バレているのなら、隠れていても仕方ない。
それに、アイツに会いたい。
自分から、会いに行こうとは…何時も思えないから。
「何で分かったんだよ?」
夢の端から、夢の中へと足を踏み入れて、アイツの前に姿を現す。
フィンと呼ばれるアイツの生まれ故郷、その町を臨む丘の上。
同じ声、同じ顔、来ている服は見分けがつくように相変わらず二人で別々。
見かけは全て同じ、だけど中身は正反対。
無愛想な表情の俺に、彼は優しく微笑み返した。
俺の好きな笑顔だ。
「そりゃあ、自分の中の事だからさ…俺の中にまだ残ってくれているだって分かってる。
夢の中でなら会えるかと思ったんだけど…本当に会えるなんて、な…」
「あの時の俺じゃないかもしれないだろ?お前自身が作り出した、本物の夢かもしれないぞ」
嬉しいクセに、そんな事を言ってしまう。
「そうやって言い返すのは、お前が本物だからなんだろう?」
ちょっと微笑んで、彼はそう言った。
「……正解だ」
溜息混じりに、俺はそう返答した。
「…で、俺に何の用だよ?」
「いや…どうしてるのかと思ってさ、一人で閉じこもってさ…時々、表に出てくるけど」
「迷惑か?」
自分とは違う、正反対な俺では…自分の言いたくない事まで言ってしまう。
迷惑でない、と…言われてもしょうがないだろう。
「迷惑ってわけじゃないけどさ、黙って出てくるとビックリするだろ?
あっ、でもお前が居てくれるお陰で、皇帝に付き纏われなくなったかな」
感謝してるよ、と彼は微笑んで言った。
「ただ、ちょっとやりすぎじゃないか?」
「……しょうがないだろ?これが俺の性格なんだ」
「そんな曲がった事言ってるから、人に好かれないんだぞ、寂しくないのか?」
苦笑いして、コイツは俺にそう言う。
「寂しくなんてない」
ふいっと突っぱねて、相手にそう言う。
本当は、会いたいと思ってた。
「また、そんな事言ってさ…本当は、人に交わりたかったんだろう?」
「何でそう思うんだよ?」
半分当たってるけど、半分ハズレ。
「お前がいるのが、俺の中だからさ…なんとなく」
そう思ったから、会いに来たっていうんだろうか?
相変わらず、お人よしだなぁ。
「俺が会いたかったのは、お前だけだ」
これが本音。
「なら、そう言えばいいのに…相変わらず、天邪鬼な奴だな」
「ほっとけ」
「放っておけないから、こうやって会いに来たんだろ?」
そう言って、隣に立つ俺の頭にそっと手を伸ばす。
ぽんぽんっと、子供に行うように軽く頭を撫でていく手。
「止めろよ、恥ずかしいだろ?」
相手にムスっとした目を向けつつも、手を振り払う事はできない。
正直に言うと…嬉しい。
「夢の中の事だろう」
だから気にするなよ、なんてコイツは言う。
「子供扱いするなよ」
一応、お前と同じ年なんだから。
「悪い悪い」
撫でていた手を止めて戻そうとした手を掴み、俺の腕の中へと、相手の体を引き寄せる。
「わっ!…と、何だよ?」
「……何でもいいだろ」
ぎゅうっと、相手を抱き締める手に力を込める。
折角会えたから、触れ合いたい。
なんて、言えるわけないだろう。
「正直じゃないな」
そんな俺を見て、ちょっと呆れたような声でコイツはそう呟く。
「正直じゃなくて悪かったな」
俺はお前の事を思って、こうやってそっと影から見守ってるのに。
自分からコイツの前に現れないのは、そうやって俺がコイツの中で存在が巨大化しないように。
俺の我侭で残っているんだ、コイツ自身を圧迫するような事があっちゃいけない。
必要ないと判断されれば、明日にでも消えられるように。
コイツの邪魔にならないように…。
「本当は、寂しかったんだろ?」
「……悪いか?」
「別に悪くはないけど」
「俺が寂しかろうと、お前には何も関係ないだろう?」
「関係あるよ、俺の事思ってくれてるのに…俺が何もできないのは、嫌なんだ」
真面目な青年はそう答える。
ああ、やっぱりコイツはお人よしだ。
自分の中に全く別人が居るのに、嫌悪したりせず受け入れる。
それだけでいいんだ。
俺の気持ちなんて、どうせ、叶うものではないから。
これ以上、期待なんてさせないでほしい。
「もう…俺は帰るから」
これ以上、居てはいけないと思って、そっと抱き締めていた腕を解く。
「もう…そんな時間なのか?」
「ああ、もうすぐ朝だ」
何時までも引き止めていられない、コイツにはコイツの日常があるから。
俺は、それを影から見守るだけ。
「そっか……またさ、会いに来てもいいか?」
おずおずと、そんな事を尋ねる。
そんなの…いいに決まってるだろ、俺からしたら願ってもない事だ。
「好きにしろ」
だが、口から出たのは結局そんな言葉で。
「分かった、じゃあ好きにさせてもらう」
そんな俺の心中を見透かしたように、コイツは穏やかに微笑む。
「じゃあ……またな」
そう言って、俺はアイツの前から立ち去った。
いつもの定位置に戻って、自分を落ち着ける。
「期待なんてするな」
自分に言い聞かせるように、そっと声に出して呟く。
アイツの優しさに、期待なんてするな。
「俺、女々しい奴だな」
自嘲気味にそう言って笑おうとするも、上手くいかない。
「やっぱり、俺はお前が好きだよ…フリオニール」
邪魔にならないようにするから、ここに居る事を、どうか許してくれ。
あとがき
アナザー×ノーマル、再び。
アナザーフリオことシャドウ君復活を望む声がかかったので、あの後の二人を書いてみました。
シャドウ君はフリオの魂の一部として、(主に皇帝による)フリオの身体の危機、及び自分の堪忍袋の尾が切れた瞬間に現れます、別にストーカーしてるわけではありませんのであしからず。
フリオの一部になったので、フリオを自分のものにしたいとか願っちゃいけないと思ってます、でもフリオが大好き。
シャドウ君を学パロとかに出演させたいなぁ…と模索してます、その内出演するかもしれません、勿論彼はクラスの不良役です。
2009/6/14
アナザー×ノーマル、再び。
アナザーフリオことシャドウ君復活を望む声がかかったので、あの後の二人を書いてみました。
シャドウ君はフリオの魂の一部として、(主に皇帝による)フリオの身体の危機、及び自分の堪忍袋の尾が切れた瞬間に現れます、別にストーカーしてるわけではありませんのであしからず。
フリオの一部になったので、フリオを自分のものにしたいとか願っちゃいけないと思ってます、でもフリオが大好き。
シャドウ君を学パロとかに出演させたいなぁ…と模索してます、その内出演するかもしれません、勿論彼はクラスの不良役です。
2009/6/14