「愛してる」
そう言ってくれる貴方の気持ちに応えたい、と思う。
実際、俺も強く貴方の事を想ってる。

だけど…。

応えたいという俺の気持ちを阻む、あるものが存在する。
俺の、心の中に。

初心な心と情欲と…

正直に言おう、今まで十八年間生きてきた中で、俺は恋愛とかそういう事は、これが初めてだ。
だっ!だって!!しょうがないだろう?経験がないのは、俺の所為じゃない…多分。
とにかく!俺は、そういう経験が一切なかった。
だから、この人の想いに自分の返事を返すまでも時間が掛かってしまったんだ。

俺達の中心的人物、ウォーリア・オブ・ライト。
まさか、彼が自分を好いてくれているとは思いもしなかった。
だけど、彼に対して嫌悪感どころか、そのむしろ好感を持てた俺は、どうやら彼の事が好きなようで…。
見事に、彼の気持ちに応える事になったんだけど。
けど……。

さっきも言った通り、俺は恋愛という経験が一切ない。
一切ないから、その…そういう触れ合いというのも、一切受けた事がないわけで。
つまり…その、何だろうか……慣れてない、とでも言うのか。
そう、慣れてないんだ。
恋人としての行為に。


「待って、ウォーリア…」
覆い被さりかけた相手へ、向かって静止を求める声。
ほとんどパニック状態の思考の端で、「ああ、またやってしまった…」という声が聞こえた。
自分の声だ。

「まだ、駄目か?」
優しく問いかけるウォーリアの声、その相手の温もりはほとんど触れる位置にある。
その暖かさは、ゆっくりと俺の上から退いていった。
「ごっ…ごめん、なさい」
消え入るような声で、相手に謝ると「気にするな」と言って、彼は大きな手でゆっくりと優しく俺の頭を撫でた。
「疲れているんだろう?今日は、もう休もう」
「う…うん……」
申し訳なさで一杯になりながら、俺はゆっくりと彼の隣で横になる。


これで何度目なんだろう?彼からの誘いを断ったのは。
はぁ…っと小さく溜息を吐くも、どうしようもない。
だって、どうしてもパニックを起こして、勝手に口が断りを入れてしまうんだ。
そして、そんな俺に対してウォーリアは意図も簡単にその身を引く。
それは無理に事に及びたくない、というウォーリアの優しさなんだろう。

分かってる、分かっているが…どこか、張り合いが無い、とでも言うのか…?
いや、別に俺はそんな事したいと思ってる訳じゃ…いやでも、だからと言って嫌な訳でもなくて…。

あぁあっ!!もう、俺はどうしたいんだよ!!

ぐるぐると繰り返される自問自答に、どうしたらいいのか、と答えを問うても同じ。
不安に揺れながら、俺は彼の隣に横になる。

「ウォーリア」
恋人の名を呼び、隣で横になった彼の手に俺の手を重ねる。
「どうした、フリオニール?」
優しい声で俺の名を呼ぶと、俺と向かい合うウォーリア。
そんな彼の優しさに甘えてそっと擦り寄ってみる、すると彼はふっと小さく微笑むと、俺の方へ向かいゆっくりと頭を撫で始めた。

「君がこんな風に甘えてくるなんて、珍しいな」
「そうだな…」
そうだ、確かに俺から彼へ向けて、こんな風に彼に好意を行動で示す事は珍しい。

彼を思うのならば、俺から彼へ向けて、もっと行動に出なければいけないのかもしれない。
心の中で、そっと決意を固める。


「なあ、ウォーリア…」
頭を撫でるウォーリアの手の温もりに、彼の優しさを感じる。
甘えてもいいんだ、と思ってしまう。
だが、甘えすぎちゃいけない。
俺も、彼に愛情を返さなければ。

「なんだ?」
ふわりと微笑み返して、俺にそう問いかけるウォーリア。


「もし、俺が…ウォーリアともっと近付きたいって言ったら、ウォーリアはどうする?」


思い切って、そう言ってみる。

「……フリオニール、今、君は駄目だと言っただろう?」
しばしの沈黙の後、優しい笑みを消してウォーリアは俺にそう言った。
責める、というよりも何かを諌めるような、そんな口調だ。
無理はするな、言葉には出していないが彼の雰囲気からそう伝わってくる。

「ウォーリアは、どうなんだ?」
ズルイとは分かっているものの、質問に質問で切り返す。

俺に近付きたいと思わないわけでは、ないだろう?
無理強いをさせないようにと、気を遣っているだけで……。
でも…そんな事、もうさせたくない。
本心を聞かせて欲しい。

「私は君を愛してる」
そんな俺に、ウォーリアは真剣な声でそう言った。
「勿論それは純粋な気持ちだ、だが…私も男だ、そういう欲が……ないわけではない」
「うん」
「だが、君に無理を強いたくもない、それは分かってもらえるだろう?」
真剣な表情で、俺にそう問いかけるウォーリア。
貴方の俺への気遣いは俺も感じてるさ、それはもう痛いくらいに。

「だけど…俺は、このままじゃウォーリアにばっかりさ、無理させてしまう」
それは嫌だ。

俺が貴方を拒むのは…その行為に慣れない己の所為だ。
そりゃあ、恥ずかしいけど、でも…できれば貴方の想いに応えたい。
それを阻んでいるのは、俺の中にある、幼い心が生む羞恥。
打ち破るには、貴方に近付くしかない。
これは、決して無理してるわけではない。

勇気を持たなければ、何時まで経っても俺は…。


「俺はこれ以上、貴方に我慢させたくはない…俺だって、嫌なわけじゃないんだ」
「無理強いはさせたくない、とさっきも言っただろう?」
ウォーリアの声色に、俺を咎めるようなものが含まれる。
どうして分かってくれないんだ?

「ウォーリアは、貴方に近付きたいっていう俺の気持ちが、貴方を想う俺の気持ちから来てるんだって、信じてはくれないのか?」
「フリオニール…」
「貴方が俺を気遣うように、俺が貴方を気遣っちゃ駄目なのか?
貴方が俺を愛するように、俺も貴方を愛したいと、それを少しでも示したいと思っちゃいけないのか?」

「フリオニール、いい加減にしろ」
その責めるような声に、続きの言葉は全て飲み込まれた。
折角の彼の気遣いを無駄にして、こんな事言って、困らせて…。
俺はもしかして、かなり我侭なのかもしれない。

「あの、ごめんなさい」
さっきと打って変わって、しゅんと萎んだ声で彼に対して謝罪すると、ウォーリアはフッと笑って、俺を抱き締めた。

「まったく、君が人を困らせるのが好きなんだとは知らなかった」
俺の耳元に唇を寄せてそう囁く。
「ウォーリア?」
それがくすぐったくて身を捩るも、横になった体はしっかりとウォーリアの腕の中に捕まってしまっている。
「あんまり可愛い事を言うな、止まらなくなりそうだ」
何が?と問う前に、俺の言葉は飲み込まれてしまった。
ウォーリアの唇が、俺の唇を塞いだ所為で。

「ふっ…ん……」
ウォーリアの舌が咥内に差し込まれ、それを受け入れると、咥内を荒らされる。
逃げ惑う俺の舌を捕まえて、自分のものと絡ませる。
熱い舌の動きに、クラクラとする俺の意識。

長く深く、貪るようなキスを交わした後、そっと離れたウォーリアの瞳にの奥に、今まで感じた事のない程に色濃い、欲望の熱を見た気がした。

「フリオニール…君が誘ったんだから、構わないんだな?」
最後の確認に、俺に覆いかぶさったウォーリアはそう尋ねる。

肯定してしまえば、もう逃げられない。
いや、逃げるつもりなんて元からない。
不安はある、羞恥なんて頂点だ。
だが、それ以上に彼に応えたいと思う自分が居る。

「ああ、構わない。
ウォーリアの、好きにしてくれ」
顔に熱が集まるのを感じつつも、そう答える。

「それでは、遠慮なく頂くとしよう」
今まで見たことない、ウォーリアの妖艶な微笑みに心臓が大きく跳ねた瞬間、再びこの唇は彼によって奪われた。


キスから始まる夜は熱く、どこまでも二人を包み込む。


あとがき
今までほとんど着手してこなかった18禁の小説、まあ18禁は後編からなんですが…。
書けないんです、上手く。

今までずっとルーズリーフの端とかに練習してたんですが、もういい加減諦めて書いてみよう、量産すればその内慣れると、先日割り切りました。
しかし、そういう雰囲気に持って行くのが面倒でしたね。
この後どうなるのか、既に作者自身でも分からないんですが、結局やる事やるだけです。

言っておきますが、練習も兼ねてますので、あんまり期待はしない方がいです。
2009/5/10
close
横書き 縦書き