それは、ある人物の一言から始まった。
「フリオニールって、結局誰の恋人なの?」
「……はい?」
首を少し傾けて、可愛らしい仕草でそう尋ねるのは、コスモス陣営最年少のオニオンナイト。
いやいやいやいや…ちょっと待ってくれ、少年よ。
誰の恋人って、俺誰かの恋人になった記憶はないんだが…。
っていうか誰の?なのか?…誰が?じゃなくて。
えっ…僅かな違いだけどさ、それて暗に俺が所有される側である事を表してるのか?そうなのか?
「あの……オニオンナイト?」
「ねえ、誰の恋人なの?」
俺は誰かの恋人になったつもりはない、と答えると、少年は小首を傾げて尋ね返した。
邪気の感じられない、いや、だからこそ黒さの際立つ、無垢な少年の顔で。
「でも、フリオニールってさ…もう処女じゃないんでしょ?」
「…………えっ……?」
いや…いやいや。
いやいやいやいやいやいやいや!!
ちょっと待って、何か凄く待って!!お願いだから、誰か誰か…答えて下さい、お願いします。
この何とも言えない質問に対し、俺、どう返答したらいいですか!!?
Keep quiet like a good boy!!
子供の発言、というのはどうも誤解を生みやすい。
それは覚えた言葉や、見た光景を意味を分からずに伝えてしまったり。
本来ならば隠すべき場所を、無知である為に隠さずに発言してしまったりと…そういう弊害から起こるのだが。
それは、何も分からない幼子である場合だ。
目の前に立つ少年を見る。
秩序の戦士達の中で、いや混沌の軍勢を含めても最年少である彼は、どう見ても12・13は超えているだろう。
…という事は、物事の判断くらいはそこそこ備わっているはずで。
特に、彼は大人びていて知力に優れているのだから、そういう判別くらいは付くだろう、という事は…。
ワザとか、ワザとなのか?
ワザとそんな事を聞いて、俺を困らせようとしているのか…それとも。
がっしりと俺の肩に感じる誰かの手。
間違いない、奴等だ。
「それは…一体どういう事なのだ?フリオニール?」
「あの……ウォーリア?」
すみません光の戦士さん、目の奥に何かよく分からないんですが、黒いモノが渦巻いてますよ。
「正直に言ってごらんフリオニール、僕の知らない所で、一体誰に何をされたのか」
「セシル……」
くいっと首を傾けて、何時もの柔らかい笑顔でそう言うも、その笑顔がたまらなく恐ろしいんですが…。
「過去の事は気にしないが、もし…お前が過去に苦しめられているのなら、その時は任せろ」
「いや、クラウド…俺は別に…」
何もされてないから、その刀を下ろして下さい…あと目がマジなんですけど。
「怖かったッスよね?フリオニール。大丈夫ッスよ、俺が付いてるから!!」
「はあ?あの、ティーダ?」
いや、付いててくれるのは嬉しいけどさ、そういう意味ではなくて…。
っていうか、すみません。
何で強姦された事前提で、話しが進んでいるんでしょうか?
実際は誰にも何もされてないし、勿論そういう事実も皆無ですよ。
当たり前だろう!だって俺、男の子ですよ!!
っていうか、何故その発言をそこまで真摯に受け止められるんだよ?明らかに俺をからかう為の冗談だろ!?
もしかして、俺って……そんなにアブ・ノーマルに見られていたのか?
知らなかった、なんか…かなりショックだ……じゃなくて。
「あの…皆、俺…別に大丈夫だから」
早いとこ誤解を解かないと、なんかもの凄く面倒な事になりそうだ。
「大丈夫?というのは?」
「相手を許してるって、事かな?」
「いや…そうじゃなく」
まず相手が居ない。
「…もしかして、そういう趣味…なのか?」
「まさか…フリオってドM?…」
「違う!違う!違う!!」
別に、そういう危ない趣味なんて持ってない。
「あの…俺、別にその…そういう経験はないから」
そんな悲しい過去は背負ってないんで、マジで。
そう言うと、俺を取り囲んでいた四人に安堵の表情が広がった。
どうやら、誤解は解けたらしい、何でこんな誤解を受けたのか、その意味も分からないが…。
いや、分かりたくない。
「そうなんだ、男にめちゃくちゃ好かれる体質っぽいから、
既に奪われてるものだと思ってたよ」
「なっ!!!!」何を言い出すんだ、このお子様は!!
っという俺の心の底を見透かしたのか、表情は一切変えず俺の方をじっと見返す。
その瞳の奥に、何か影を見た次の瞬間。
「じゃあ、フリオニールは誰に処女をあげるの?」
再び、爆弾を投下してきやがった。えーーーーーと……?
今、彼は何て言いましたか?
俺の聞き間違いだよな?そうだよな?
「ねえ、フリオニールはこの中の誰にあげるの?しょ「だあぁぁぁぁああ!!!」
急いで少年の口を塞ぐ、俺の顔が赤くなっているのは、最早言わなくても分かるだろう。
何だ?何だ?何なんだ?どうしたんだよ今日は?
普段はそんな子じゃないだろ、オニオンナイト?
そんな、際どい質問投げかけるような悪い子じゃないはずだろ?
何で今日は…ッハ!!
ティナが居ないからか!!?
っていうか、教育的に過激過ぎる発言なんだから、誰か止めろよ…。
そう思って、彼等を振り返ってみると…。
「……」
「……」
「……」
「……」
「あの…皆?」
えっ…何?皆何で無反応なの?
何で自分の世界に閉じ篭ってるの?
何でそんなに嬉しそうなの、ねえ?
もういい機会だから、そのまま夢の国の住人になってしまいますか?
うん、そうしたら少しは俺の身にも平和が訪れてくれるかも…。「甘いね、フリオニール」
「何が?」
口を抑えていた俺の手から逃れて、フフンっと得意げに笑ってそう言うオニオンナイト。
「彼等が自分の世界において、何を見てるのか分かってる?」
「……いや…」
っていうか、勝手に人の心の中を読まないでもらえるかな?
「いいじゃない別に、タダなんだし」
タダでも、人の迷惑とか考えようよ。
「何でさ?別に何も減らないし」
いや、減ってるよ…俺の胃粘液とかが……。
「大丈夫だよ、今更ストレスが一つ二つ増えたって、
フリオニールの胃への負担なんて変わらないから!!」
どっちにしろ変わらないって言っても、それを軽減させてはくれないんだ…。
実は、オニオンナイトは人をいたぶるのが好きなのかな?「いたぶるのが好きなんじゃないよ、虐めるのが好きなんだ」
なんか、もうどっちでもいいよ…。
「まったく、この差って意外と大きいんだけどなぁ…まあいいや。
それより、さっきの話しだけど」
さっき…ああ、彼等が夢の中で何を見るのかって話しか…。
「いや、あの…オニオンナイト……別に言わなくていい」
「どうして?」
嫌な予感がするからだよ、いや予感じゃないな。
なんかもう俺だってね、見えてるんだよ。
奴等が何を考えてるのか、それくらいの予想はできるんだ。
だけど、その…なぁ……言葉にされるのは流石に。
「やっぱり恥ずかしい?自分が犯さ「わーわーわー!!」煩いよ」
自分の発言が邪魔された事に対して、ムスっとした顔で俺を見返すオニオンナイト。
「何だよ?別にいいじゃない、本当の事だしさ…
それに、フリオニールが彼等の手で善がってる姿なんて、別に僕は想像しても楽しくないしさ」
「…………」
何なの!?俺はもしかして君に何かしたの?
ねえ、もう謝るからさ、それ以上何も言わないでくれるかな?泣きそうなんだけど。
「うん、泣けばいいんじゃない?
っていうか、鳴かされちゃいなよ、諦めて」
無垢な笑顔でそう言うオニオンナイトに、俺は最早、溜息しか出ない。「オニオンナイト…字が違う…・・・」
「言っとくけど、誤字じゃないよ」
だろうな。
はぁぁ…なんか、ちょっとずつ胃が痛み出してきてる気が……。
(彼等はそれでまだ我慢できるみたいだけどさ…それも何時まで続くかな?
僕的には、目の前に本人が居るんだから、いっその事誰も居ない時に襲っちゃえばいいのにって思うんだけど。
まあ、なんとか口説き堕としたいって思ってるのかな…。
押し倒して抵抗する術を奪っちゃえばいいのに、絶対フリオニールならそのまま流されちゃうって…
無理矢理ヤリたくないのかな?既成事実作っちゃえば、もう逃げられないのに)
アレ…何だろう?
今、何か聞いちゃいけない声が聞こえてきたような……。
オニオンナイトの、心の声…?まさかな、そんな事ないよな?
うん、子供の発言にしてはちょっとあまりにも過激過ぎるし、な…。
(薬でもなんでも盛っちゃえばいいのに、それで求めて来た所をそのまま美味しく頂いちゃえばいいのに)
気のせい、気のせい何だ!きっと!!
きっと、これは幻覚に過ぎないんだ!!
きっと…きっと疲れているんだ、俺は…。
「僕さ、ずっと前から思ってたんだけどさ、フリオニールの態度が悪いんだと思うんだ」
いきなりそんな事を言われても、今の状況が一杯一杯な俺にはどうしようもない。
まあ彼等は今、静かに夢(という名の妄想)の世界に旅立ってるから動かないけど。
「俺の態度が悪いってどういう事だよ?」
「うん、フリオニールは彼等の気持ちは知ってるんでしょ?
それを知ってて、どっちつかずの態度でいるのが悪いんだと思うんだ、だからさ、そろそろ腹括りなよ」
オニオンナイトの言ってる事は、まあ半分くらいは正論かもしれない。
だが、考えてみてくれ、俺は何回も言うように男なんだって!
男色は流石にちょっと…生物としては…。
「理性と心は相反するものだよ、だから、フリオニールの心の赴くままに決めなよ」
「っう…」
そう言われると反論し辛い。
世間から冷たく見られる事を承知で、茨の道を歩くか否か…。
って、何で俺はオニオンナイトに諭されてるんだろう?
「まあでも、やっぱり男なんだがらさ、自分よりも弱い相手に身を任せられないんでしょ?
ならさあ、もう面倒くさいし。
いっそ勝負して、負けた人に処女あげちゃえば?
それで、その人と付き合っちゃえば?」いいアイディアでしょ?と誇らしそうに、笑顔でそう言うオニオンナイトを前に。
「ちょっ!!ちょっと待てぇぇぇぇえええ!!!」
人生でもかなり重要なポイントだよな?それ?そんな簡単にあげていいものじゃないよな?
少なくとも俺はそう思うんだけど、ねえ?そうだよね!?
「「「「「マジで!?」」」」」
「何で乗り気何だよ!!?っていうか、一人多い!!」
何時の間に現れたんだよ皇帝、っていうか、状況がややこしくなるから帰れ!!「帰れと言われても決して帰らんからな」
「いや帰れ」
「今すぐ地獄に帰りなよ」
「消え去れ」
「大人しく帰るッス」
既に臨戦態勢なんだけど、自分達で潰しあってくれないかなぁ…。
「いらない期待はしない方がいいと思うよ、ていうかいい加減に大人しく食べられろって」
「オニオンナイト!!お前、本当に今回その発言どうしたんだよ!?」
「そんな事は気にしたら負けなの、さあ早く誰と(に)闘う(喰われる)か選びなよ」
ちょっと待って、いま闘うと被った言葉が気になるんだけど!!
っえ!?っていう、何?これもう決定事項なの?
俺、負けたら本当に食べられちゃうの?
「「「「「フリオニール、勝負だ!!」」」」」
「ええぇぇぇぇえええ!!!!」
いや、そんな…なんで得物向けられてるの俺?
もう!誰か助けてください!!
「無駄だって」
「オニオンナイト!!」
そんな無垢な笑顔で見捨てないでくれって。
「一回ヤッたら案外ハマるかもよ?」
何でそんな笑顔で、そんな発言繰り返すかな?っていうか、そんなものに目覚めたくないんだけど俺!!
「じゃあ皆頑張ってね、僕は居ない方がいいでしょ?」
「ああ、子供はこれ以上見てはいけない」
「気が利くね、オニオンナイト」
「フン…」
「やっぱりオニオンナイトは偉いッスね」
「今回ばかりは褒めてやるぞ、小さい虫ケラ」
「ちょっと待てぇぇぇええ!!」
さっきまで全く無視してたオニオンナイトの発言に、そこだけ同調するな!!っていうか、どう考えても今までの発言を振り返ってみると良い子ではないぞ!!
「じゃあね、皆…あっそうそう。
初めてなんだから、優しくしてあげてね」
最後にほんの少しだけ優しさ(?)を見せて、オニオンナイトは立ち去って行…。「まあ、嫌がるなら無理矢理にでもヤッて既成事実作っちゃえば?」
ちょっ!!!!もう、良い子だから静かにしてくれ!!!!
〜オマケ〜
「アレ?オニオン君、こんなところで一体何してるの?」
「ティナ!何でもないけど…あっそうそう、この先には行かない方がいいよ?」
「えっ?どうして?」
「今ちょっと取り込み中だから、皆で真剣勝負してるみたいだし…邪魔したら悪いでしょ?」
「そう……分かった、そうだ!今日ドロップしたアイテム、オニオン君なら使えると思うんだけど…」
「本当に?見せて見せて」
ティナの前では、彼は普通の良い子なのである。
(不憫だ…)
そう思うのなら助けに行ってあげようよ、スコール…まあ、あの状況を見れば行きたくないのも分かりますが…。
「ぇえええ!!助けてくれよ!!」
そう叫んだフリオ二ールの声も虚しく、天からの救いの手は無かったそうだ。
因みに、彼が自分の貞操を守りきったのかどうかは…ご想像にお任せします。
あとがき
まずは、純粋無垢なオニオンナイトのファンの皆様へ…。
とにかく、フリオがオニオンナイトの発言に振り回されているだけという…。
何でこのような事になたのか、作者自身も分かりません。
2009/4/15
まずは、純粋無垢なオニオンナイトのファンの皆様へ…。
すみませんでした!!!!
なんか、やらかしてしまいました…フリオ総受け、にもなってない馬鹿話しです。とにかく、フリオがオニオンナイトの発言に振り回されているだけという…。
何でこのような事になたのか、作者自身も分かりません。
2009/4/15