神々の闘いの途中…
これは、そのバックヤードでの出来事だ

何がなんだか見当が付かなかった!

くっ……何だ、頭が痛い……それに、体が上手く動かん。
椅子に座っているようだ、が……縄で縛られていているのか。
しかし、一体どうしてこんな事に?…確か俺は、仲間達を眠らせる為に奔走している途中だったハズだ。
このまま進めば、俺はティファと合流する事になるハズだったんだが…ここは?

「あっ、目覚めたみたいッスよ!」
そんな明るい少年の声がした、それとほぼ同時に俺の視界に人の影が映る…暗くてよく見えないが、覗きこんでいるのか。
「大丈夫そうッス、あれだけ本気で殴ったけどちゃんと生きてるッスよ」
生きているだと…という事は何だ?お前達は下手すれば俺を殺していたかもしれないのか?
一体、何が起こっている。

現状を理解しようと努める俺の頭に、水がぶっかけられる…兜や鎧の間から入って来る液体は、どうやらポーションらしい。
体の傷が癒え、頭の痛みが引く…ぐっと声を零してから、俺は顔を上げた。
「良かった良かった、君には色々と話を聞かせてもらわないといけないんだよねぇ…カイン」
暗闇の向こうからする声、その声はよく知っている相手のものだった。
「セシル……お前なのか?…コレは一体?」
そう尋ねる俺へ向けて、灯りが向けられた。
眩しくて目を細め、目が光に慣れるのを待つ。
室内には椅子に縛られた俺と、数名の人間が居る事が分かった。
机を挟んで向かいに居るのが…俺の元の世界での仲間で、親友であるセシルだった。

「やぁ、カイン…僕達は君にちょっと話があるんだけど、何か分かるかな?」
笑顔で首を傾げる彼の、その裏にある禍々しい気配を感じ取って、これは危険だと判断した。
こういう時のこの親友は、酷く怒っているのだ。
一体何に対して怒っているのか…想像できない訳ではない。

「俺が仲間を裏切った事、か…?」
「そうだね、だけど君からそれを奪ったら一体何が残るって言うんだい?唯一のアイデンティティは大切にしないとね」
今、コイツは笑顔で酷い事を言わなかっただろうか?
ちょっと傷付いたのだが、それを今進言した所で取り合ってはもらえないだろう。

「ところでセシル、どうしてここにカオスの者が二人居るんだ?」
「フフフ…彼等の存在に気付いて、まだそれを言うのかい?」
セシルの背後に構える金髪の二人組、彼等は俺の事を殺意のこもった目で見つめている。
一体、何が……待てよ、この三人は確か…次の輪廻では同じパーティーか。
だったら何だ?今は敵同士だろう、何故ここに揃わないといけない…一体俺が何を…うん?
「お前達、フリオニールはどうした?」
「うん、僕達はそのフリオニールについて君に話があるんだよ」
「俺達の誰よりも、フリオニールと長い間行動を共にしたアンタにな」
「そうッスよ、オレ達のフリオを裏切った罪はデカイッス!」
フリオニール…コスモスの陣営に居る、あの純粋で純朴な青年の名前を出した途端に、彼等の殺意が今までよりも二割ほど増した気がする。
あの青年はどれだけ仲間から信頼されているんだ?
「カイン、君がまさか初登場の身でありながら僕達のフリオニールに手を出してくるなんて、予想してなかったよ」
「僕達の…と言われてもな、大体セシル…お前には妻子が居るだろうし、後ろの二人に至っては今回彼女が出演して…」
「それとこれは別問題だよカイン、フリオニールは僕の大事な大事な仲間なんだから」
待て、俺は確かお前の親友と紹介されるような立ち場の人間だったはずだ、その俺よりもかの仲間は優先順位が高いのか?
「彼女が出演している…だから何なんッスか?…オレの、大事な大事なお兄ちゃんを攻撃したアンタは許せないッス」
「同感だ、俺の可愛い弟に手を出した罪…どう始末を付ける?」
待て、カオス二人組み。お前達は混沌の軍勢に入る事で、心まで悪役に奪われたのか?
とりあえず17歳、ボールで人を狙うな…21歳、その得物を下せ。

「何故フリオニールにだけ反応する?俺は他の仲間達もこの手にかけてきただろう」
「違うよカイン、僕等が許せないのはその過程」
「過程?」
過程と言われても、俺は偶然出会ったフリオニールと行動を共にしていただけだ、それだけで恨まれなければいけないのか?

「フリオニールに気を使ってもらったッスよね?」
「話かけて、アイツの好感度上げたな」
「何より二人旅だったからねぇ…ずっと一人で心細かっただろうフリオニールの笑顔、君は一人占めしてた訳でしょ?」
……何だ、この三人の禍々しいまでのオーラは。
「それが何だ?仲間なんだから、それくらいはするだろう…」
というか、これは多分アレなのではないか?
ただ単純に、彼との二人旅を羨んでいるだけなのでは?
だとすれば……何だ、この空しさは…。
俺はこんな理由で気絶させられ、こうやって縛られて詰問されているのか?

「問題はここから何だよね……カイン、まさかだけどさ…君、僕達のフリオニールに手を出してないよね?」
「手を…何だって?」
「フリオが可愛いからって、押し倒したりしてないだろうな!」
「アイツは優しい上にそういう事に疎い…そんな特性を生かして、無理強いさせてないだろうな?」
何だ、この以上なまでの過保護さは…コイツ等にとって、あの青年はそこまで守るべき存在なのか?
「安心しろ、お前達が心配するような事は起きていない」
溜息を一つ、彼等の誤解を解く為に俺はそう言う。
確かに可愛らしい青年だし、人を疑う事を知らないので危なっかしくはある…だが、そこまで俺は切羽詰まっていない。
そう説明すると、三人は一様に顔を合わせた。
しばらくの間話し合いが行われたようだが、そこで今後の俺の身の上が決められているのかと思うと…恐ろしい。

「カイン、僕達はまだ君の言葉を信じてあげようと思うんだ」
「フリオからこれといって話も聞いてないしな」
「まあ、要注意人物ではあるが」
ああ、向けられた視線が痛い。
まあ、これでなんとか解放されるか……。
「だけどねカイン、僕達の他にもまだ君に話がある人達が居るんだ」
「は?」
「呼んでくるから、大人しく待っててね」
待っててねも何も、俺は今この場から動く事ができないのだが……。

バタンと音がして部屋から三人が出て行く、一体他に誰が俺に話があるというんだ?
それにしても…あの保護者達め、恋愛くらいは人の自由だろう。
あの青年が本当に不憫に思えて来た。
だが……シヴァに対するあの反応、女性との経験が無いのは本当の事なのだろう。
そういう純真さというものは、確かにいつまでも保っていて欲しいものだが。

バターンと、大きな音を立ててドアが開け放たれた。

「カイン!貴様は私のフリオニールに何をした!?」
「なっ、ウォーリア剣を引け…俺は」
「問答無用!貴様に弁明の言葉等必要ない!!」
何故、今の俺は二方から同時に剣を向けられているんだ?
そして光の名前を持つ二人組、お前達…本当は仲がいいんだろう?

「二人共落ち着け、俺は別に彼には何もしていない」
「問答無用だと言ったはずだ」
「私達は、君を許す訳にはいかない」
止めろ、何でEXモードをここで発動する?
何故、俺をこの場で仕留めるつもりでいる?
「少しは落ち着け、お前達!!」
そんな俺の叫び声も空しく…俺は一度に、二人分のEXバースト攻撃を目撃する事となった。


「カイン!カイン!大丈夫か?」
俺を心配そうに覗きこむ金色の瞳、ここは天国なのか?
「カイン、何言ってるんだよ?…それよりどうしたんだ?酷い傷だったけど」
「ああ……少し、強敵にあってな」
「そうか…とっておきのポーション、持ってて良かった」
ほっと胸を撫で下す相手を見て、俺はお前の所為でこうなった…と言いだせなくなった。

「フリオニール」
「ん?何だ?…どこか痛むのか?」
「お前は、随分と仲間に愛されている…な」
俺の言葉に、不思議そうに首を傾ける相手。
「そうか……?…ありがとう?」
意味も分からずに礼を言っているのだろうが、まあ…愛らしい存在ではある。
「もう少し、ここで横になっていてもいいだろうか?」
「ああいいぞ、こんな体勢で構わないなら」
誰が嫌だと言うだろう?
彼等には秘密にしておいてもらわなければならないが、彼の膝枕をもう少し俺は堪能させてもらおう。

あとがき

DDFF、12回目の輪廻六章にて…カインの後を付いて来るフリオニールを見て思ったのです。
これってデートじゃないか!何気に4710の三人よりも活動している時間も長いし……。
という事で、カインは他のメンバーからフルボッコにされていればいいなぁ…と思いました、別にカインの事が嫌いな訳ではないです。

新キャラが追加されたので、総受け派の人間からすると…攻めの選択肢が増えて面白い事になるなぁ…とか思ってたんですけれど。まさか、カインがこんなに本編でフリオと絡んでくれるとは思ってもみなかったので、とっても楽しかったのです。
カイン×フリオニール…凄く見たいです、誰か下さい。
2011/3/9

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