少し離れた場所で、仲間達と笑い合う恋人。
君の笑顔は何時だって明るい。
君が笑うから、世界は明るい
彼の周りが、何だか少し明るい気がするのは私の気のせいなんだろうか?「ええ、気のせいだと思いますよ」
「…………」
「どうして自分の考えてる事が分かったのかって、不思議そうな顔してますけど、そりゃ分かりますよ。
だって、口に出てたんだもん」
呆れたようにそう言う少年。
「口に出てた、のか?」
「気付かなかったんですか?」
それ以前に、この少年は何時の間にここに現れたんだろうか?
「僕はさっきからここに居ましたよ、ただ、貴方が気付いてなかっただけ」
小さくて見えなかった、わけではないだろう、流石に。
もし仮にそうだったとしても、口には絶対に出さないが…。
「貴方の意識は、時々一人に向いたまま返ってこないからさ」
だから気付かれずに安易に近寄れるんだ、と少年は話す。
「こういう時の貴方は、本当に隙だらけで驚きますよ」
近くの岩に腰かけ、少年は私を見ながらそう言う。
「こういう時、というのは?」
「そうですね…何て言ったらいいんだろう……
恋に溺れてる時、とか?」
思いもよらない台詞だった。
いや、今の言葉がもしあの金髪の尻尾の生えた少年が口にするのならまだ分かる、だが…。
「ジタンの真似してみただけですよ」
そう言って、オニオンナイトは笑った。
その無垢な笑顔のどこかに、何だか意地の悪いものが含まれている気がした。
「何の用だ?」
「いえ、ただ貴方があまりにもボーとしてたんで、ちょっとからかってみたくなっただけです」
それじゃあ、別に何も用はないという事か…。
「今、ちょっと安心しました?」
「何で?」
「雰囲気と勘、ですね」
それが当たっているのだから、末恐ろしい子供だと思う。
ただ、彼には一つ尋ねたい事ができた。
「どうして僕が知ってるのかって?」
「……」
「見てれば分かりますよ、僕だって色恋沙汰くらい分かる年ですから」
その返答に溜息が出る。
「あっ!今、面倒だなぁ、とか思いました?いいじゃないですか、別に。
僕は何も、どこかの皇帝サマとは違って邪魔をしようだなんて思ってないんですから」
「アイツの名前を出すな」
彼も私も、アノ男は好かない。
「すみません」
ちょっと申し訳なさそうに謝るが、しかし少年は再び意地の悪い笑顔を浮かべる。
「ところで、二人はどうして付き合い始めたんですか?」
「それは、君の興味か?」
「子供は好奇心旺盛なんです」
にっこりと微笑む少年。
さて、どう対処したものだろう。
「話さないといけないのか?」
「嫌なら別にいいんですよ、踏み込んではいけない大人の事情があるなら」
別にそんなものはない。
ただ、私はそういう話しをするのはあまり得意ではないこと。
そして、恋人が仲間に気付かれるのを良しとしていないこと。
また、気付かれていたとしてもおおぴらにするのは頂けない、そんな三つの事情がある。
「じゃあ、質問を変えますね、貴方はどうしてフリオニールの事が好きなんです?」
今まで伏せていた恋人の名前を普通に口にされた。
そこで、本当に気付いていたのか…と思い、溜息が漏れた。
「それも、答えなくていいか?」
「どうしてです?恋人の惚気くらい聞きますよ」
いや、その笑顔を見るに、それは“聞く”じゃなくて“聞いてみたい”の間違いだろう。
遠くで仲間達と談笑を続けている彼の笑顔に、再び視線を寄せている自分が居る。
「彼の笑顔は、明るいな」
ふと口をついて自然とそんな言葉が出た。
「そうですか?明るい笑顔といえば、ティーダやジタンやバッツの方がそれっぽいですけど?」
確かにそうだろう、だが彼等とはまた違う笑顔なのだ、彼は。
「そうかもしれないが、私が強く引き付けられるのは彼の笑顔だ」
「それは好意を寄せてるからでしょう?」
「だろうな」
少年の言葉を肯定し、それじゃあ自分はどうして彼の事を好きになったのか、思案を巡らす。
いったい何時、彼に心惹かれたのか…。
そこで思い出したのは、彼と初めて会った時の事。
「貴方も、秩序の戦士なんですか?」
初めて会った時、青年は真っ直ぐに私の目を見つめてそう尋ねた。
「ああ、君もか?」
「はい」
私の問いかけに、青年は、はっきりとそう返答した。
「俺は、フリオニールっていうんです、貴方は?」
「私にはあるべき名前がない、だから今はウォーリア・オブ・ライト、と名乗る事にしている」
「ウォーリア・オブ・ライト…光の戦士か…成る程、貴方にはピッタリの名前だ」
一瞬、私の身を案じるような表情を見せた後、青年は優しく微笑んだのだ。
その笑顔が、どこか光を帯びているような気がした。
それ以降、ずっと彼の笑顔は輝いて見える。
「……つまりは、一目惚れですか?」
「そうなるのか?」
「さぁ、僕は何とも…」
分かりません、と言いつつも、どこかその笑顔がニヤケている気がする。
「彼が貴方の光、ですか?」
「さぁ?私は常に光と共にある、彼もその光の一つだろう」
「ふうん…まあ、お二人がアツイ事はよぉーく分かりました」
そう言うと、少年は座っていた岩から腰を上げると、私の目の前で来て立ち止まる。
「一つ、いい事を教えてあげます」
「何だ?」
「彼も貴方も、僕達の中の中心に居る事は間違いない事実だと認識しておいて下さい。
貴方はリーダーとして、そして、彼は何なのか、分かります?」
「何を言いたい?」
「貴方だけじゃないんですよ、彼の笑顔が輝いて見える人間は」
僕には分かりませんけど、と少年は肩を竦める。
「だから気を付けた方がいいですよ、あの輝きを独り占めしたいなら」
「ウォーリア」
「じゃあ、僕は失礼します」
背後から名前を呼ばれ、その人物が誰であるのか見ていた少年はそういい残して立ち去った。
「オニオンナイトと何の話ししてたんだ?」
私の隣にやって来て、そう尋ねるフリオニール。
ここで、お前の話しをしていたとは言えない。
私は別に構わないが、彼はきっと取り乱す。
しかし、嘘をつくは嫌だ。
「いや、ちょっと…からかわれてしまったようだ」
「ウォーリアが!?」
勇気あるな、アイツと関心したようにフリオニールは呟く。
これは事実だ、嘘は言っていない。
しかし、少年の言葉が気にかかる。
彼の笑顔が輝いて見えるのは、私だけではない…か……。
「皆と何の話ししてたんだ?」
随分と楽しそうだった。
「いや、色々と雑談をな」
「そうか」
「…どうか、したのか?」
訝しげにそう尋ねる。
「何が?」
「いや…なんか、変だぞ?」
それは、アノ少年の言葉が引っかかってるからだ。
「お前は、誰にでも笑いかけるな、と思ってな」
あの私の好きな輝く笑顔を、太陽のように平等に与える。
独り占め、させてはくれないのだろうか?
「そうかな?」
「私にはそう見える」
「そっか」
そう言うと、彼は私の隣に座った。
「私の為に笑ってくれないか?」
隣に座った彼にそう尋ねると。
「なっ何だよ、急に」
そう言って、彼は吹き出した。
よく分からないが、ウケたようで彼は笑い続ける。
輝く笑顔。
「そんなに面白いか?」
「いや、貴方がそんな事を言うなんてなんか珍しいな、と思って」
「不安になるのさ」
太陽は誰に対しても等しい。
たった一人の為には輝かない。
ならば、この手に掴んだ光は本当に私のものなのか?
「何に不安になるんだ?」
「君が、心変わりしないかどうかに」
「そんな事…大丈夫だよ」
「どこに保障がある?」
「どこにって…」
彼はちょっと頬を染めると、周りを見回し…。
そっと、私に口付けた。
触れるだけで、すぐに離れていく彼の体温。
彼の顔を伺い見ると、耳まで赤く染めている。
「こっ…これで…満足か?」
上目遣いにそんな事を尋ねる彼に、驚き、続き笑顔が零れる。
「なんだよ!!」
「君は、可愛いな」
「嬉しくない」
むうっと剥れた顔をするも、私が笑顔に、諦めたように溜息を付くと、彼も笑った。
私の好きな、輝く笑顔。
ああ…君が笑うから、世界は明るい。
あとがき
甘い!糖度高い!!このサイトこんなのばっかです。
そして、オニオンナイトはウォーリアに対して敬語でしたっけ?
普通に話しかけたら違和感しか残らなかったんで、敬語にしてみたんですけど。
クラウドに敬語なら、ウォーリアにも敬語ですよね?
オニオンのキャラが違うとか、そんな台詞は無視ですよ、私の考えるオニオン君はこんな子です。
2009/3/16
甘い!糖度高い!!このサイトこんなのばっかです。
そして、オニオンナイトはウォーリアに対して敬語でしたっけ?
普通に話しかけたら違和感しか残らなかったんで、敬語にしてみたんですけど。
クラウドに敬語なら、ウォーリアにも敬語ですよね?
オニオンのキャラが違うとか、そんな台詞は無視ですよ、私の考えるオニオン君はこんな子です。
2009/3/16