恋人の為の日なんだ、どうせなら…とびっきり甘く、過ごしたくない?

恋人達の夜に…

「兄貴!愛してるよ!!」
ガバッと愛しい兄貴の背中に抱きつき、その温もりをしっかりと腕の中に感じる。
「ちょっ……もう、お前は大袈裟だな」
夕飯後、洗い物をしていた兄貴は呆れつつも俺に向けてそう言い、そして俺の腕の中に収まってくれている。
なんていうか、ちょっと嬉しい…こうやって甘やかされてるのかな?という事実が。
「ねぇねぇ兄貴、兄貴のエプロン姿ってさ……」
「俺のエプロン?」
「そそるよね」
俺の一言を聞いた瞬間に、兄貴は手にしていた皿を取り落とす。
運の良い事に割れる事はなかったものの、腕の中の兄貴がプルプルと震えている。
「もう、何してるのさ兄貴…気を付けないと、危ないでしょ?」
「危ないって…なぁ!!お前の所為だろ」
怒った顔で俺の方を振り返ってそう言う兄貴に、俺は笑いかけてその口にキスする。
不意打ちにビックリして肩を揺らす兄貴を、逃げられない様にしっかりと腰に腕を回す。

「何…して」
「ん?兄貴が可愛いからキスしました」
「そうじゃなくて…」
うん?じゃあもしかしてアレですか?
兄貴の服の中に侵入してる俺の手の事ですか?

「それ以外に何があるんだよ」
不機嫌そうな声で俺に向かってそう言う兄貴に、俺はニヤリと笑いかける。
洗い物の途中で泡の付いたスポンジと、濡れた手を持て余している兄貴。
手が塞がったままの兄貴の服の下、素肌の上を撫でて行く。
俺の手つきに、兄貴が顔を赤らめて俺から逃れようと身を捩る。
そんな事で、俺から逃げられる訳ないでしょ?
「兄貴の肌…凄い触り心地いい……ずっと撫でてたい」
「止めろよ……お前、またこういう事する気…」
「いいじゃん、バレンタインでしょ?俺はそろそろ、兄貴を“頂きます”したいの」
「またそうやって、イベントを言い訳にする」

何?それが悪いの?
イベントっていうのは、そういう風に活用する為にあるんでしょ?

「おま……いい加減にしろよ!」
そうやって怒るものの、兄貴は諦めたのか抵抗しようとする力は薄まっていく。
そんな兄貴からスポンジを取り上げると、兄貴の腕に滴る泡にも官能的雰囲気を感じた。


「それじゃあ兄貴、頂きます」


「……なぁ、シャドウ?」
「何?兄貴?」
「俺は…エプロンだけ残して人の服を脱がすなんて…そんな器用な事のできる、お前の無駄な上に使いどころの無さそうな技術に、大変驚いてるんだが……」
ヒクッと怒りなのか羞恥なのかで、体を震わせつつそう言う兄貴。
その言葉の差す通り、兄貴は現在…俺のベッドの上で裸の上にエプロン一枚、という格好でいる。
勿論、俺がそうさせたのだが……何か不味い事があるだろうか?

「兄貴のエプロン姿はそそるって、さっき言ったじゃん」
「だからって……これは無い」
赤い顔してそんな事言っても、怒ってるんじゃなくて恥ずかしがってるだけだと取られるよ、兄貴…まあ自然な反応だけどさ。
それにしても、見えるようで見えないっていうのが…また、いいんだよね。

「お前、本当に変態だろ?」
「それは兄貴に対してだけね」
何も解決できてない…とスネる兄貴の、エプロンの布越しにその胸へ触れると、ビクッと跳ねる体。
「ん?兄貴のココ、なんか尖がってるよね?触って欲しいの?」
「ひぁっ!……ちょっ…と……」
尖がった胸の飾りを指で挟み込み、グリグリと弄ると甲高い鳴き声が上がった。
その反応に気を良くして、そのままエプロンの中へと手を滑り込ませる。
「んっ!」
もぞもぞと動く手から視線を逸らして、兄貴は身をくねらせる。

「兄貴のココは可愛いね…それに、ココも」
胸から手を抜き、エプロンの裾へと手を差し入れ…その奥に息ずく兄貴の性欲に触れる。
「触って欲しいんでしょ?俺に」
熱く固くなりつつあるソレ…何だかんだ言ったって、兄貴は俺の手で高められていく。


それは酷く、気分が良い。


兄貴は俺のモノ、俺だけのモノだって…そんな気がするんだ。
気の所為かもしれないけどさ。

恋愛の幻想?いいんじゃない、それで。


「兄貴のココから、蜜が溢れてくるよ…」
「ん……んん……」
唇を噛んで声を抑えようとする兄貴に、俺は苦笑い。

「コラ、声抑えちゃ駄目だって」
「あっ…んぁ」
空いている手の指を、兄貴の咥内へと差し入れて閉じる事を塞げば、兄貴は困った様に俺を見る。
「声、聞かせてよ…兄貴」
欲を扱う手を早めてやれば、耐えきれず、閉じる事の敵わない口からは声が漏れる。
「ふぁっ!あっ…ん、んん…ぁっああ!!っふ…ん!」
強い快楽に流されまいと、必死で自分を押しとどめる兄貴。
最後の一瞬…吐き出された白濁は俺の手と、兄貴のエプロンを汚し…そして、快楽に耐えようとしたその口が、俺の指を噛んで攻撃した。

「イッタ……」
強い力で噛みつかれ、指先に鋭い痛みが走る。
力が抜けて、クタリと倒れる兄貴の口からゆっくりと指を引き抜けば、薄らと血の痕が見えた。
「……ぁ」
自分の反撃の効果に、ビックリした様に兄貴が声を上げる。

恐る恐る俺を見やる、その怯えた様な表情…何?もしかして俺が怒ると思ってる?
ニヤリと俺は口角を釣り上げて兄貴に笑いかけ、それを見た兄貴は意味が分からないといった表情で見返す。

「思わず噛みついちゃった?それとも、お腹空いたの?……俺の事、食べたくなるくらい」
兄貴の唾液と自分の血で濡れた指を、自分の舌で舐め上げてそう尋ね、浅い呼吸を繰り返す兄貴の唇へとキスする。
半開きだった兄貴の咥内へと簡単に侵入し、その奥に引っ込んでいる兄貴の舌に自分のものを絡める。

「どう?俺は美味しい?」
クチャッという水音と共に兄貴から離れれば、ボーとした様子で俺を暫くは見つめ返していたものの、乱れた呼吸で小さく「バカ」と罵られた。


「ん?美味しくなかった?……兄貴はいつだって美味しいんだけどなぁ…」
「ぅん!」
再び兄貴の唇を塞ぎ、片手は兄貴の尻を撫でる。
「んっ!んん!!」
吐き出された兄貴の性で濡れた指で双丘を割り開き、その奥の蕾へと触れれば、兄貴の体が強張った。

「うん?でも、兄貴のコッチの口は寂しがってるみたいだね…俺の指、美味しそうに食べてる」
「やめ…そういう風に、言うなって、っあぁん!」
グリッと兄貴の一番感じる所を引っ掻くと、兄貴の可愛い鳴き声が上がる。
「食べたいんでしょ?俺の事…ほら、兄貴のココは涎垂らしてさ、さっきから兄貴の大事なエプロン汚してるよ」
「ふぁっ!」
反応している兄貴に触れれば、イヤイヤと兄貴は首を横に振る。
相変わらず、素直じゃないね。


「ねぇ…俺はもうすっかりできあがってるんだけどさ……フリオニールのココは、まだ俺の事いらないの?」
「ぁ、う……」
耳元でそう尋ねる俺から、顔を背けようと首をひねる兄貴の顎をしっかりと手で固定する。
「ねぇフリオニール…ココに欲しくないの?俺は…そんなに美味しくない?」
「あ……ぁ…シャドウ…もう、そういうの止め」
「止めない、どうなんだよ?俺の事、食べたくないの?」
「んっ!」
兄貴の中から指を引き抜くと、それこそ、口寂しいと蕾がヒクつく。
急に消えた圧迫感と、それに伴う喪失感からか兄貴は切なそうに俺を見やる。


どうしたらいいか、純情な兄貴には分からない?


「ねぇ、どっち?俺の事、食べたいの?食べたくないの?」
意地悪に再度そう尋ねる。
顔を赤く染めて震える兄貴が、もうそろそろ限界だろうな…なんていうのは、分かってるんだけどさ…その口から言って貰いたい。
俺を、求めてくれないだろうか?


「シャドウ…も、早く……お前のを…」
「俺の、食べたい?」
「……もう、そうだよ!お前のが食べたいんだ!!」
真っ赤になって涙交じりに叫ぶ兄貴を見て、俺は満足感に浸る。

だけど、これ以上怒らせるのはまた問題だろうな…なんて思って、兄貴のエプロンの端をゆっくりと持ち上げる。
隠れていた太ももと、そしてその奥が露わになり…恥ずかしそうに身を捩る兄貴。

「お腹を空かせた兄貴に、俺が、沢山ゴチソウしてあげるからね」
「だか、ら…そういうの止めろって!…んぁっ!ぁあん!!」
兄貴の蕾に俺の雄を押し当て、中へと押し入る。
途端、歓迎するように俺を締めつけてくる兄貴の中は…本当に、俺の事を食べてるようだ。


兄貴に食べられるなんて……絶対に幸せだと思う。
そう思うのは、俺だけかな?
俺だけであれば、いいな。
そうすれば、誰にも邪魔される事なく…俺も兄貴も、お互いの事を味わえる。


「兄貴、俺は美味しい?」
「あっ!…ぁあ、おいひ…おいしい、よ!」
すっかり理性の切れた兄貴が、俺に縋りついてそう言う。
激しい攻めと快楽の波に身を震わせる兄貴が、俺の首に腕を回して、しっかりと抱きついている。


「フリオニールもね、凄い美味しい…本当、何でこんなに美味しいんだろうね?」
そんな事は知ってるんだ、よく知ってる。

「ふぁんっ!あっ!!ああ!!!!」
頂点を極めた兄貴が、俺の首を絞めるんじゃないかというくらいの力で掻き抱く。
弓なりに仰け反る兄貴の体、食い千切られそうな体内に、俺も我慢できずに自分の性を吐きだす。

情事後の甘ったるい倦怠感に包まれる中、俺は兄貴にキスを贈る。
それを甘んじて受け止めた兄貴が、俺を見て「好きだよ」と呟いた。
「ああ……もう、兄貴には敵わないなぁ」
溜息交じりにそう呟くも、俺は呆れでも悔しいんでもない…。
事実、俺はこの人には勝てないのだ。


愛されたいんです、俺は貴方に。
無上の愛を注いでほしいんです、俺に。
だから、貴方が俺を求めてくれるならそれで幸せで。
貴方が俺に与えてくれるなら、それで喜べる。


「愛してるよ…誰よりも」
耳元でそう呟けば、兄貴は嬉しそうに俺に擦り寄って来る…。

これくらい、普段も素直ならいいのに。
まぁ……そういう所も全部を含めて兄貴だから、その全てを愛してますけど!!


「愛情籠った料理、ご馳走様」
静かに寝息を立てる恋人の額にキスを贈り、俺はそう呟いた。

あとがき

アナザー×ノーマルフリオの、バレンタインの夜の話が読みたい!
…と、2月にお世話になった方から言われましてですね…ようやく完成しました。
ギリギリ3ヶ月経って…経ちましたね、遅いです、すみません。

何故に自分はフリオに裸エプロン等させたのだろうか?と、途中から自分の意図を見失った上にバレンタインな感じがありません。
なんか、なんとか“食”を絡めた話を書いてやろうか…と思いまして、結果こうなりました。

お礼の気持ちはありますが、クレームはいつだって受け付けてるのです。
2010/5/10

close
横書き 縦書き