バタバタと空へと響くやかましい足音。
はぁ、はぁ…と短く繰り返される荒い呼吸。

急げ!急ぐんだ!!

馬に鞭を入れるように、自分へ向けて叱責する。
全速力で走る俺は、一人、この世で一番嫌いな男の元へ向けて走った。

二儀・二三子・二者択一

ゆっくりと意識が覚醒し、薄らと目を開けて見るものの…世界は霞んで安定しない。
何度か瞬きを繰り返せば、視界がクリアになってくる。
目の前に広がるのは、ガラスのような冷たい石の壁に囲まれた万魔殿。

「フン、ようやくお目覚めか?」
コツコツとヒ—ルが床を擦る音と共に、俺の前へと表れた男に俺は敵意を表す。
「……皇帝…」
そう呼べば、彼はニヤリと口角を釣り上げて可笑しそうに笑う。

体を動かそうとするものの、後ろ手に枷で繋がれていてそれは叶わない、足も同様に枷をはめられている。
なんとか逃れようともがくものの、動かす度にジャラジャラと金属の擦れる音がする。

「無駄な抵抗は止せ」
そう言うと、男は俺の顎へとその長い指を伸ばしクイッと上を向かせる。
無理矢理合わせられた視線、怒りを込めて睨み返してやる。


この男の罠に嵌まって、俺が掴まってしまった事は…多分仲間には知れている事だろう。
気を失う寸前、共に闘っていたティーダが必死で俺を追おうとしていた事を覚えている。
彼は大丈夫だろうか?怪我をしていたと思うけれど、無事に野営地に帰り付けただろうか?

「何を考えている?」
「仲間は無事だろうか、と…そう思っていたんだよ」
「こんな時に仲間の心配か…お前はもう少し、自分の心配をしたらどうなんだ?」
そう問いかける皇帝に、俺はキッと睨み返す。
そんな俺を見て「そんなに怒るな、皺が増える」とそんな事を言う。

余裕の表れか…今に見ていろ、絶対に抜け出してお前の首を撥ねてやる……。


「これでようやく、私とお前の二人っきりになれたわけだ」
ククク…と喉を鳴らして笑う皇帝に、俺は叫ぶ。
「俺とお前の二人っきり?ふざけるな!人を拉致監禁しておいて!!」
そんな俺の叫びを聞いて、皇帝は機嫌の片方の眉を吊り上げ機嫌の悪い顔になる。
「拉致監禁?人聞きの悪い…花嫁強奪と言え」
「…………はぁ?」

今、コイツは何て言った?
俺の耳が悪くなければ、確か“花嫁強奪”と言ったな?
人聞きが悪いと言っておきながら、“強奪”という、また穏やかじゃない言葉が入っている事については、まずは置いておいて。

「なぁ皇帝…それは一体“誰”が、“誰”の花嫁なんだ?」
「無論、お前が私の妃になるに決まっておろう」


いや、いやいや……。
いや!いや!!いや!!!いや!!!!


「何で俺がお前の嫁にならないといけないんだよ!!?」
「そんなものは決まっておろう、私が貴様を見染めているからだ!」
いや、それは以前から知っている。
何かしら彼に付き纏われ、毎度毎度「愛している」だの何だのと小っ恥ずかしい台詞を吐いていたが、毎度毎度マスターオブアームズを叩きこんで返していた。
遂に、こんな手まで使って来やがったか。
だが……そんな独りよがりな理由で、結婚なんてできる訳がないだろう!!
知っているか皇帝、結婚というものは二人の間で交わす“契約”なんだ!相手の同意を得られなければ、結婚なんてできないんだぞ!!
大体、根本からしてまず問題がある。

「俺まだ18だし!第一に男は嫁には行けないぞ!」
「18は結婚が可能な年齢だろう?そこにまず問題はない、そして同性同士の結婚が法度になっているのならば…そんなものは法律を変えてしまえばいいだけの話だ」
「そんな簡単に変えられるわけがないだろう!?」
「貴様は私を誰だと思っているのだ?パラメキア帝国の皇帝だぞ、我が国において私に異を唱える者等はいない」
そうだった……コイツ、こう見えても無駄に権力持ってるんだ、コイツの国ではコイツが白と言えば黒でも白にされるんだった…。
だがそんな事を言われても、俺の意思は変わらない。


「俺は絶対にお前の妃になんて……」
「花嫁衣装は何がいい?お前のその艶のある褐色の肌が映える白いドレスがいいか?それとも、そうだな…南国の砂漠の民の民族衣装のような肌の露出の多い着飾った物の方がいいか?私はどちらも似合うと思うが」
「いや、どちらも着ないし!誰も嫁ぐとは言ってない!!」
何勝手に人の一生を決めようとしてるんだこの馬鹿は。
誰も着ない花嫁衣装の妄想話は、俺の居ない所で壁に向かってやってくれ!!
「そうか、ならばどんな物がお好みだ?和装か和装がいいのか?フン、それもいいな…白無垢で厳かな雰囲気の中で式を上げるのも……」
「妄想垂れ流してんじゃねぇ!!このストーカー野郎!!」
疲れ始めた俺が彼に反論しようとした所で、彼の方へ向けて矢が飛んできた。
その矢は、妄想前回だった皇帝に見事にクリーンヒットし、更に奥へと飛ばされどこかで壁にぶつかる音がした。
そして、このパンデモニウムに現れたのは、俺とは正反対の赤い衣装に身を包んだ俺の影。
「シャドウ!!」
名前を呼ぶ俺を見て、アイツはニッと安心させるように笑いかける。
「助けに来たぞ、フリオニール」
そう言うと、彼は俺の元へと近づいてくる。

「済まない…手を煩わせて」
「何言ってるんだよ?俺はお前を守る為に居るんだって!それにこういうのってさ…まあ、お姫様奪還って奴だよね?」
ニッと俺を見てニッコリと笑うと、俺を繋ぐ枷に手を掛ける。
取り出したアクスで鎖を断ち切り、器用に手枷を外し、足の枷を外してくれる。
自由になった腕には、赤い痕が少し残っているものの他には外傷はない。
闘っていた時の傷は、どうやら皇帝が勝手に治癒してくれていたようだ。

「怪我してない?」
俺にそう尋ねる彼に、「大丈夫だと」返答すれば、心配そうに見つめるものの、それが真実だと分かると安堵の溜息を吐いた。
「怪我してるなら言えよ、とっておきのポーション持ってきてるんだし」
「ああ。ありがとう、本当に」
彼に礼を言う俺に対し、シャドウはじっと真顔で見つめ返す。

「なあ……あのストーカーに何もされてないよな?」
「皇帝に?繋がれてはいたけど、他に外傷はないかな…」
「そうじゃなくってさ……イタズラ、されてないだろうな?」
ずいっと俺に顔を近付けてそう尋ねるシャドウ。
「悪戯?」
意味の通じていない俺に、少し苛立ちを覚えたのか「ああ、もう!!」と言うと、ムッとした表情で叫ぶ。
「貞操は無事かって聞いてんの!!」
「て、貞操って……ああ…その、大丈夫だよ」
真っ赤になって語尾が小さくなってそう答える俺に、シャドウは不振そうな目を向ける。

「…………何、その間?」
「いや…その、何もされてないから大丈夫だけど…なんていうか……そんな恥ずかしい事聞くなよ!」
何か想像してしまっただろ!!
自分の頭の中に浮かんだイメージ映像を振りはらいつつ、そう叫ぶ。
「恥ずかしい事じゃないだろ!!っていうか、凄く重要な事だし!!」
「何が!?」
そう問い返す俺に、彼は盛大な溜息を吐く。
それはもう諦めたような、いや…どこか呆れたような溜息。

「俺、前も言ったよな…?アンタが好きだってさ」
真面目な顔してそんな事を言うもんだから、俺は恥ずかしくて俯くしかない。
「体が無事なだけじゃ、意味ないんだよ」
そう話す彼の手が、俺の頭を撫でて行く。
ああ……優しい手つきが心地いい。
「心配、してくれて…ありがとう」
でも大丈夫だから、と再度告げると、ようやく俺の言葉を信じてくれたようで「うん」と頷いて笑顔になった。


「ねえ、お礼貰ってもいい?」
同じ位置にある琥珀色の目が、俺に向けてお願いとそう言う。
何なのか分からずにコクリと頷くと、嬉しそうに「じゃあ、イタダキマス」と言って、さっきの皇帝と同じ顎の下に彼の手が添えられる。
そして、そのまま彼の顔が近付きゆっくりと唇が重なる……。


「きっ……貴様!!何をしている!!」
そんな声と一緒に放たれたフレアに気付いたシャドウが、俺を庇う形でシールドバッシュして弾き返す。
弾き返されたフレアを寸前で避けた皇帝は、俺達二人と対峙する形で立っている。
「何をしてるって…それはコッチの台詞だぞこの変態!折角の良い雰囲気が台無しだろ!空気読めよ、空気!!」
皇帝に向かって吠えるシャドウを、皇帝は忌々しそうに見つめ返す。 「馬鹿者!貞操を気にしていながら、自分からは相手に口付を強請るような、そんな下心が垣間見えている奴に言われたくは無い」
「拉致監禁して無理矢理繋がろうとしてた奴より、ずっと俺のがマシだろうが!!なあフリオニール!?」
「えっ……えーと…」
俺、どうしたらいいんだろう?
シャドウの隣りに立ち、困惑している俺を見て、彼は少し思い直したかのように俺に微笑みかける。
「ゴメン、そういう事言ってさ…でも、キス許してくれたって事は…俺の方がいいんだよね?」
耳元に口を近づけてそう言いつつ、彼の手は俺の腰へと回る。
「まあ、嫌ではないけど……」
「ほらな」
勝ち誇ったかのようにそう言うシャドウに対し、その光景を見ていた皇帝は怒りを露わに……していなかった。
むしろ、そんな俺達をしげしげと眺めつつ、何か思案にふけっている。

「どうしたんだ?アイツ?」
「さあ?」
俺に聞かれても困る。

「……ふむ、そうだな…悪くはない、むしろ良いかもしれぬな」
何か一人でぶつぶつと呟いている皇帝。
そうやって真剣な顔している時は、美形であるから様になるというのに……何ていうか、勿体ない…のか?

「お前達は、二人共“フリオニール”である事に変わりは無いのだろう?」
そんな皇帝の質問に「まあ、それはそうだが…だから何だ?」とシャドウが答える。
ああ……何だかよく分からないが、嫌な予感がする。


「お前達二人共、私の元に嫁げばいい」


……えっと…何でしょうか?
「何…言い出すんだこの変態!!」
俺が何かを言い返す前に、俺の隣りに居たシャドウが飛び出して行った、そして皇帝を殴り倒すと馬乗りになって見下ろす。
「フフフ、イイ眺めだな…騎乗位は好きだぞ」
「テメェの趣味なんか知らねえよ…さぁ覚悟はいいな、ここで地獄に落ちやがれ」
ドスの利いた声でそう言い放つシャドウに、皇帝はニヤリと笑う。
「フッ…忘れたか?私は何度でも地獄の底から蘇って来れるのだ、フリオニールを我が妃に迎えるまでは……」
「誰がやるか!!」
あっ…という声を上げる前に、ゴッという鈍い音。
皇帝の頭を思いっきり殴った。
「安心しろ、お前も一緒に迎えてやるぞ」
「テメェの嫁なんて勘弁なんだよ!大体なんのつもりだ」
「二人居るならば二人共、私の元へ来ればいいだろう…ずっと共に入れるぞ」
「お断りだこの野郎!!何だ、それは両手に花か!両手に花を狙ってるのか!!!!」
再び殴ろうとしたシャドウの手を、皇帝が掴む。
「!」
「やられてばかりの私ではない」
不敵に笑ってそう言う皇帝に、シャドウの顔色が青くなる。
「離せこの野郎!!」
そのまま腕を引きよせられ、彼の上に倒れ込むシャドウに、危ないと思って俺は皇帝から引き剥がす。

「はぁ……はぁ…気持ち悪いんだよ!!」
そのまま、未だ地面に這いつくばっている皇帝の頭を踏みつける。
「うぼぁああ」
聞き覚えのある断末魔の叫びに、踏みつけられた皇帝は地面を何度も手で叩く。
ギブアップを示しているというのに、シャドウは止めるつもりはないようだ。

「死ね、死ね…マジで死ね、死んでゴキブリに生まれ変わって来い!!」
「ちょっ…待て、待て…貴様、ちょっ…私の髪が、乱れる、だろうが!!」
「そこかよ!!」
グリグリと踏みつけるシャドウに対し、抗議する皇帝に思わず入れてしまうツッコミ。
いい加減に離してやれと、シャドウの肩を掴み皇帝から引き剥がす。
なんていうか、不憫に思えて来たからである。
「こんな奴に情けなんてかけなくていいだろ!」
そんな俺に反論するシャドウに苦笑い。
「まぁそうなんだけど」
「ほら見ろ、フリオニールは私にも優しいだろう!私を受け入れる意思が…」
「それは無い」
皇帝の勘違い甚だしい台詞を、正面から切る。
「照れなくていい」
「いや、本当に無い」
心の底から欠けらも無い。

そう返答する俺に皇帝は酷くショックな表情を見せる。
逆に勝ち誇ったような笑顔になるのはシャドウ。

「ほら見ろ、お前の所になんか嫁がせないって…フリオニールは俺の嫁になってくれるんだよな?」
「いや、お前の嫁になるとも一言も言ってない」
「…………マジ?」
勿論だ、何勝手に皇帝が駄目な理由はお前の嫁になるからだって、そんな風に受け取ってるんだよ?
俺は誰かの元に嫁に行く気は最初からないし。
「何だよ!!お前の純情具合から考えて、将来嫁を貰ったってどうせ尻に敷かれるのがオチだぞ!それだったら誰かの元に嫁いで大事にして貰った方がいいって!!」
「その通りだ、だから私の元へ来い!一生不自由なく暮らせるぞ」
「黙れ変態!お前の嫁なんて世界一不幸な場所になんか行かせねえ!!」
「黙れ、偶然の産物が!お前にフリオニールを養っていけるだけの経済力があるか!」
「経済力があるからっていって、平気で俺とコイツの二股企んだお前より俺の方が何倍も幸せにできるな!」
「二股ではない!貴様等庶民の考える恋愛事情と、私のような一国を統べる者を同じにするな!!」
なんだろう、この一人取り残されている感じは…。
もういいから、野営地に帰ろうかな…そろそろ夕飯の準備しないといけないし……。


「あー…………あの、二人共」
「「何だ!?」」
綺麗にステレオで返って来たな、タイミングもバッチリだったぞ。
もういいんじゃないか、お前達がくっ付いてしまえばそれで万事解決だろ?……ほら、シャドウの方が原作に近い衣装なんだしさ…。
なんて、そんな事言っても即効で却下される事は目に見えているので、ここはあえて黙っておく。

さてと……そろそろ、この何も生産性のない言い争いに決着を付けようか。


「別に、俺だって結婚を考えないわけじゃないけどさ…それにだって条件があるぞ」
一旦深呼吸をしてからそう言う。
その俺の一言に、二人の動きが止まる。
ああ……なんて分かり易い奴等なんだ……。

「二人共、結婚だ結婚だ…って、さっきから言ってるけどな、それは当人だけじゃなくて家の問題も絡んでくるだろ?」
「フン……まあ確かにそうだな」
「それは勿論分かってるけどさ、それがどうしたんだよ?」
そう尋ねる二人に、俺はニッコリと笑顔で答える。
「俺の家族や知り合いを説得できるっていうんなら、考えてやらない事も…無いぞ」
「……お前の…」
「家族と知り合いって……?まさか、だけど…な?」
そうだよ、他に誰が居るんだ?

「マリアとガイや、レイラさんにも相談したいし…まあ、絶対的に話をつけてもらわないといけない相手といえば……。
やっぱり、レオンハルトとミンウさんだな」
そう言った瞬間に、二人の動きが今度は完全に停止した。
それもそうだ、同じ世界から来た皇帝と俺の分身であるシャドウが、俺の家族や仲間を知らないハズがない。
特に後半の二人は、彼等の記憶にも鮮明に刻まれているハズだ。

兄弟の事となると途端に目の色を変え、一個軍隊すら壊滅させられるような底力を秘めた俺の義兄。
取り乱した義兄を押し留める(という名目で取り押さえる)事のできる数少ない人物の一人で、俺を可愛がってくれていた白魔導士。

「彼等、特に後者の二人の許可を取ることができたなら……俺も考えてやらなくもないぞ」
説得……できるものならな。
なんて笑顔で言ったものの…どうも彼等の耳には聞こえているんだか居ないんだか、その判断ができなかったので、まあいいか!っと思って、そのまま彼等を残して、俺は野営地へと一人帰る。


「皆、元気にしてるかな?」
故郷に居るのであろう仲間の事を考えつつ、俺は皆の待つ野営地へと戻る。


「はぁぁああ……フリオニールは無事だろうか?」
「兄さんってば、そればっかりね」
深い溜息を吐くレオンハルトを見て、マリアは苦笑交じりにそう言う。
「レオンハルト元気出す、フリオきっと元気」
「そうだな……ありがとうガイ」
友人や妹の慰めに、レオンハルトは力なく頷く。
「まったく…レオンハルトが心配してるのはフリオの健康なんかじゃないんだろ?」
呆れたような口調でそう言うレイラに、マリアは首を傾けて「どういう事?」と尋ねる。
「アンタのお兄さんは、きっとフリオニールに悪い虫が付かないかを心配してるんだろ?」
「心配しないわけがないだろう!!アイツの性格を知っているか?どれだけ色恋沙汰に疎く、男の下心に気付けないか……そんなアイツが、俺やマリアの目の届かない場所に居るんだぞ、心配しない方がおかしい」
「兄さん…貞操って言ったって……フリオニールは男な訳だし」
苦笑い気味にそう言うものの、マリアだって分かっている、フリオニールがどれ程男の興味を惹く人間であるかを。
だからこそ、家族として過ごす内に彼を守ろうと思い始めたのである、悪い男の手から。

その反動からか、人の気配や感情を敏感に感じ取れるにも関わらず、彼は恋愛面においてだけ物凄く人よりも鈍く・疎く・純情な青年になってしまった。
そういう初心で純粋な所が、また男の興味を惹き……と、この悪循環の繰り返しである。

「第一、向こうの世界にはあの皇帝が居るんだぞ、アイツがフリオニールを見てどう思うのか…そう思うだけで」
「そんなに心配しなくとも、フリオ二—ルはそんなに簡単にやられませんよ」
「ミンウさん……」
「彼の仲間だって信頼のおける人達でしょうしね……。第一、彼だってもう18なんでしょう?恋愛くらい楽しんでもいい年頃だとは思いますが」
白魔導士の言葉にレオンハルトの目の色が変わる。
「甘いぞミンウ!アイツの天然さは天下一品だ、悪い男に騙されてもそうとは気付かずにああいう事やそういう事を…」
ピルピルと背中を震わせるレオンハルトを、ミンウは憐れみを持った目で見つめた。

「君はもう少し、フリオニールを信じてあげた方がいいんじゃないですか?」
「何を!俺はちゃんとフリオニールを信頼している、もし…連れて来た結婚相手が“認められる相手”であれば、ちゃんと嫁にだって出すつもりでいるぞ」
「……男が嫁ってねぇ、まぁ、あの子はその方が幸せかもしれないけれどもさ……」
レオンハルトの言葉を、複雑そうな表情で聞き流すレイラとマリア。
「まあ、認められない相手であった時は…その時は俺の義弟を誑かした罪で断罪してやるつもりだが」
「全く……しかし、そうですね…彼にとって害をもたらすような相手であれば、その時は私も手を打ちましょう」
「頼めるのか?」
「勿論ですよ」
ギラリとした目で尋ね返すレオンハルトに、ミンウは人の良さそうな笑顔でそう返答する。
彼等二人の間に流れる余りにも平穏ではない空気に、マリアは苦笑い。

しかし、よくよく考えなおしてみれば…こんな事を言い合えるのは、この世界で起こっている争いが止まってしまっているからである。
戦いの渦中にあるフリオニールは、今どうしているのだろうか…マリアはふと心配になった。
「大丈夫よね、フリオなら」
そう呟いた少女は、一時的とはいえ争いの止まった町の空を眺め…義理の兄弟へ向けて小さく告げる。
「私達は皆、元気だよ」

あとがき

平成22年2月22日というこの2並びの日付は、絶対にフリオの日ですよね!!
という事で、フリオニールと2のメンバーだけの小説を書こうと思ってできたのがコレ……。
いや、ギャグですね……頭悪いギャグですね、途中はもう皇帝とアナフリの独壇場でしたね…フリオ関係ないじゃんとか言っちゃ駄目なんです。
最後はマリアでほのぼのとイイ感じに締めてもらいました、彼女は珍しいですけれども、一応はヒロイン的立場にいつつ嫌いにならなかった女性キャラ。
…多分、FF2の中でそんなに恋愛模様が描かれなかった事もあるんでしょうけれども……彼女は、清楚で強く生きてそうですよね。

本当はコレの他に、色々な感じで2キャラのフリオ三つ巴な話を考えたんですけれども……どんなに頑張っても、激裏になってしまうので見送りにしておきました。
かといって、このギャグもどうかと思ったんですけれどもね……。
レオンハルトの性格が崩壊してる事についての苦情はいつでも受け付けます、しかし…これでも私はレオン兄さん好きです、今フリオとの絡みを書きたい相手です。

ギリギリだけど、フリオの日に間に合って良かったです!!
H.22.2/22

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