この世界は、俺達の元居た世界と繋がっている
しかし、秩序の神であるコスモスが消滅した今、この世界の均衡は崩れつつあるらしい…
だから、こんな事も起こりうるようだ

旧友再会

「…それで、彼等は君の“元の世界”の仲間、だと…?」
朝から、俺は我等がリーダーにそう詰問されている。
その理由は…俺達の前に居る彼等。
「ああ、敵じゃないから大丈夫」
俺はそうやって、彼等が敵でないと保証する。


それは、今朝の出来事だった。
突如として次元の壁が歪み、そこから現れたのは懐かしい顔。

「イテテテ…一体何が起こったんだい?」
雪崩れるようにして落ちてきた彼等の、一番上に居た女性が立ち上がって彼等の上から退く。
順次立ち上がる彼等は、珍しそうに周囲を見回す。
「フリオニール、か?」
「皆、どうしてここに?」

この世界の均衡が崩れてるのは知っていたけれど、こんな形で現れるとは思ってもみなかった。


「それにしても、この様な巨大な魔法があるとは…」
「アンタも、こんな事に巻き込まれてるとはね」
「そう!皆心配したんだよ!!」
「ゴメン、心配かけて」
仲間達のそれぞれの反応に、俺は笑ったり謝ったりする。
「それで、フリオニール…一つ尋ねたいんだが」
しばらく黙って何かを考えていた義兄は、俺の顔を真っ直ぐ見つめて、改まったようにそう言う。
「うん?何?」
アレ…何だろう、なんか……凄く嫌な予感がする。

「まさか……この中に、君の恋人は居ないだろうな?」 ……あの、お兄ちゃん…。
俺、もう十八歳なんですよ…いいじゃないですか、恋人くらいできても。
何でそんなに真剣な目で俺を見るんですか?
まるで、娘が恋人を連れてきた時のお父さん、みたいな…。

「まさか…忘れていないだろうな、フリオニール?」
「えっ…何を?」
「昔、俺のお嫁さんになってくれると約束しただろう!!」
えっ…何の話でしょう?
それって、アレですよね?ほら…小さい頃によく言うじゃない、自分の親とか兄弟とかに「将来お嫁さんになる!」って、アレをマジで信じちゃってるんですか?いまだに?
「忘れていないだろう?」
信じてるんですね!!

「兄さん、それ何時の話よ…」
「まったく、ふざけた男だねぇ」
「子供の頃の話を、いまだに信じているとは…」
ほらほら、皆呆れてるだろ?元の世界の仲間達だけでなくさ、ほら…コッチの世界の仲間達まで呆れた目で見てるし……。

「レオンハルト、フリオニールが君の嫁に来てくれる分けないだろう?だって君の弟なんだから」
柔らかな笑顔で、相手にそう告げるミンウさん。
そうだよレオンハルト、残念だが、そんな幻想いい加減に捨ててくれ。
「だからフリオニール、私の所へ嫁いでおいで」
「は、ぁ……えっ!?」
そのふんわりした空気に、一瞬頷きそうになったえど(危ない)、ちょっと待ってくれよミンウさん、今トンデモない発言したよね?
「ちょっと待てミンウ!貴様、俺のフリオニールに一体何…」
「「「フリオニールはお前のものじゃない!!」」」
そうやって声を揃えて言って下さるのは、大変嬉しいんですけれどもね、皆さん。
その熱の入りようが、恐怖っていうか、何ていうか…。
ほら、ガイが一人付いていけずに取り残されてるだろう?ちょっとは仲間の事考えてあげようよ……。

「コイツ…変わった魔物」
「召還獣だよ、そっちの世界には居なかったんだっけ?」
「初めて見る」
…なんか、ジタンとカーバンクルに癒されてるよ。
そっか、アイツ動物好きだもんな……。


「フリオニール」
「何だよ?オニオンナイト」
「もう、これが君の定番でしょ?」
ニッコリ爽やかな、無邪気な子供の笑顔で「諦めろ」って告げるの、頼むから止めてくれないかな?
「フリオ、元の世界でも苦労してるんッスね」
「コッチでは皇帝にストーカーされ、元の世界では争奪戦か…同情するよ」
なぁ、その何か可哀相なものを見る目で俺を見るの止めてもらえるかな?
ティーダもバッツもさ、コソコソ話してるつもりかもしれないけど、全然筒抜けだから。

「フリオニール!!今日こそ我が后として私の元へ迎え入れに来たぞ!!」
うわぁ…面倒な奴が来やがった!!
「今すぐ帰れ!!」
頼む、これ以上面倒な事になる前に自分の趣味の悪い城に帰ってくれ、皇帝!!

「なっ!!皇帝、貴様何故ここに居る!?」
「貴様等こそ何故この世界に居るのだ!?」
レオンハルトと皇帝がぶつかり合う、それだけではない、ミンウさんはしっかりとホーリー(Lv16)の準備をしてるし、レイラは短剣をしっかり構えてるし、マリアもしっかりと弓に矢を番えている。
うわぁ…めっちゃ物々しい雰囲気なんですけど。
「フリオニール」
「何?セシル?」
「アレ、止めて来て」
ニッコリと微笑んでセシルはそう言った。
「…………っえ?」
ちょっと待て、コレってさ…ねえ、つまりは……。

死刑宣告、と…受け取ってよろしいんでしょうか…?

「事の責任は、君にあるよ」
ふわりと微笑みつつ、背後にドス黒い何かの気配を感じるのですが…セシルさん?
「何で俺!?」
「だってそうじゃない…フリオニールが、お義兄さんの言うようにお嫁さんに行けばさ、ここまでややこしくはならないんだよ」
いえ、あのさぁ…俺、一応じゃなく男だからね。
男だからね、お嫁には行けないからね。
それと、血は繋がっていなくとも、レオンハルトは俺の“兄”だから!!
「兄弟だってね、愛があれば大丈夫なんだよ」
「何が!?」
いや、“何が”なんて、このブラコンに聞く方が間違ってる。

「今、何か言ったかい?」
スミマセン、笑顔に影落とすの止めて頂けないでしょうか…物凄く怖いです。
「いえ…何も……」
「そう、ならさ…早くアレ、止めて来てくれる?」
「……分かりました(泣)」


仲裁に行って巻き込まれるか、影のある笑顔で俺を見つめる彼による、意味のない八つ当たりを受けるのか…。
比較してみると、前者の方がよっぽど容易いだろう。


「ちょっ…皆!いい加減にしてくれ!!」
睨み合いを続ける皇帝とレオンハルトの間に割って入る。
「フリオニール、何でコイツがこの世界に居るんだ!?」
「それは私の台詞だ!!何故この世界に貴様等、反乱軍のメンバーが居るんだ!?」
「俺に聞かれてもそんな事知らないよ!!召還した神に聞いてくれ!!」
「無理だ!!カオスは今、家事に疲れて引きこもっている」
「そんな事で引きこもるな!!っていか、何で神が家事をやってるんだよ!!」
何なんだよ、カオス陣営は…何が起こってるんだよこの世界で……。


頼む、コスモス…秩序を取り戻してくれ。


「ところで、二人共…その手を退けなさい!!」
シュバッと、見えないくらいのスピードで放たれた矢が俺を挟んでいた二人をどこかへと連れ去る。
さっきから二人が俺の腰にさり気に手を回していたのは知ってたけど、もう何か疲れるから一切突っ込まなかったのに……ありがとうマリア。
それにしても…腕を上げたなマリア…俺のストレートアローより精度高いんじゃないか?

「まったく、皇帝もこの世界に召還されていたのか…どうりで、最近コッチの世界が平和だと思った」
「アンタも不運だねぇ…安心しな、フィンの再興は着々と進んでいるよ」
ポンと俺の肩に手を置いてそう言うレイラ。
「ねえ、フリオニールはいつになったらこの世界に戻ってこれるの?」
「さぁ…この世界の混沌の神を倒した時、かな」
「家事に疲れて引きこもるような神を倒した時…かい?」
ミンウさん、それにはもう触れないでくれ…。
「うん、一応この世界の脅威だから」

「マリア!!兄に矢を射るなんて酷いじゃないか!!」
「この程度の弓ならば、フリオニールの攻撃で慣れておるわ!!」
復活、早っ!!


「全く、仕方ない二人だね」
「レイラ!!俺をこの暴君と一緒にするな!」
「同感だ!!」
「ホーリー(Lv16)」
速攻で放たれるミンウさんのホーリーに、二人の叫び声が響く。
相変わらず、魔法の力は衰えていないようで…。

「さて…ところで、我々は帰れるんだろうか?」
「ミンウさんでも、やっぱりここへ来た理由は分からないの?」
「うん、残念だが…戻り方もこれじゃあ分からないね」
という事は…しばらくこの騒動も続く、という事か……。
まあ、彼等が居てくれた方が皇帝避けにはなるだろうけど…レオンハルトは帰してくれないかなぁ…。

「俺だけ扱いが酷いぞ!フリオニール!!」
「レオンハルト、それは当たり前だろう」
「何だと!!」
「君のようにしつこい男は、フリオニールも嫌いなんだよ」
何か、義兄と城間同士の間で再び火花が散っているんですが……。
「虫ケラ共が…私を差し置いて……」
お前はもう帰れ皇帝、地獄でも砂でもどこへでも帰ってくれ。


「埒が明かん!!ここは本人に決めてもらうしかないだろう」
えっ、何を?
「最初からそうしとけばいいだろう」
ミンウさん、だから何を?
「という訳でフリオニール、お前に尋ねたい、将来誰の元に嫁いでくれる?」

レオンハルトのその言葉に、俺の中で遂に何かがキレた。

「いい加減にしてくれ!!」
渾身の力でアルテマ(Lv16)を放つ、久々に使ってみたけど、この世界でも威力は変わらないらしい。
さすが最強魔法、一気に周囲がシーンと静まり返った。
唯一、ミンウさんのみが危険を察知して、アルテマの射程範囲から逃れていた。
っていうか、無理に黙らせたんだけど…。

「あらあら、随分と騒がしいですわね」
そんな所へ、ひょっこりと現れたのは淑女。
「シャントットさん、珍しいですね、こんな所へ来るなんて」
彼女の権力により、彼女には絶対に敬語を使わなければいけないというのが、コスモス・カオス両陣営の暗黙の了解である。
「いいえ、実は…次元の継ぎ目が現れてしまったようで、他の世界と繋がるような珍しい現象だったので観察しに来たのですわ」
「あの…もしかして、シャントットさんなら彼女達を元の世界に帰したりできます?」
「ええ、可能ですわよ」
あっさりとそう言う淑女に、俺はコケそうになった。

「その代り…と言っては何ですが、しばらく雑務をお願いしたいのですが…」
「雑務、ですか…俺にできる事ならやりますけれど」
「いいでしょう、彼女達とアソコで転がっている殿方を元の世界に戻せばよいのですわね?」
レオンハルトを指差して、そう尋ねるシャントットさん。
むしろ、アイツだけ残されても困るんだけど。


「フリオニールは帰れないの?」
そんなマリアの質問に。
「召還されている人間は、その役目を果たさなければ元の世界には帰れませんのよ」
そう、的確に返答するシャントットさん。
「そっか…まだ、帰れないんだ」
「大丈夫だよ、きっと帰るから」
「うん」
「フリオ二ール、元気で」
「ちゃんとこの世界、救ってくるんだよ」
「しっかりと、この世界での勤めを果たすんだよ」
「はい」
「準備はよろしいですの?それでは参りますわよ」

そんなわけで、懐かしい仲間達は義兄を引き摺って帰っていった。

まあ、騒がしい一日だったけど…懐かしい顔を見れて、少し安心した…かな。
皆、元気だったし……。


「さてと…貴方、約束は約束ですからね」
「はい?」
「丁度、手が空いてなくて困っていましたの。さあさ、何をぼんやりしてらっしゃいますの?早く帰りますわよ」
俺の首根っこを引っ掴むと、シャントットさんはズルズルと引き摺っていく。


それからしばらく、約束をネタに、俺が馬車馬のごとく彼女にこき使われたのは、また別の話。

あとがき

20,000HITフリーリクエスト小説。
ハルタ様のみお持ち帰りOKです。

DFFの世界に迷い込んだFF2キャラによるフリオ争奪戦…とのリクエストだったんですが……予想外に苦労しました。
登場キャラが多過ぎた為、会話文がめっちゃ多いのが読み難い原因だと思います。

FF2のキャラ、マリア・ガイ・ミンウ・レイラ・レオンハルトの人選は、ずばり私が気に入ってる子達です。
特にレイラさんとミンウさんが気に入ってたりします。
扱いが大分酷かったんですが、別に私はレオンハルトの事が嫌いなわけじゃないですよ、ただ、彼が一番イジり易い人だったんです。

最後、フリオがどんな目に遭ったのかはご想像にお任せします。
ウチのサイトで、オチに勝利者のないフリオ総受けでは、彼は酷い目に遭う事になってます。

さて…恐らく、想像のものと違ったのではないか、と思いますが…。
このようなもので良かったら、ハルタ様お持ち帰り下さいませ。
2009/8/15

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