何より恐ろしいものは、行き過ぎた他人の行動だと思う。
一つの事に一直線であるからこそ、周りが見えなくなるような人間、そんな人間の行動がとても恐ろしい結果を引き起こす。
しかも、一直線であるから、誰が何を言ったって止まりやしない。
ただ一つ、対抗できるものがあるとすれば…。
報復絶倒
「フリオニール」
仲間を呼び止めたのは光の戦士こと、ウォーリア。
「?どうかしたのか?」
呼び止められて彼の方を向くのは反乱軍の義士、フリオニール。
「髪が絡まってる」
そう指摘されたように、彼のあの特徴的な長い髪が、風に煽られた影響だろうか?弓の弦に絡まってしまっている。
「えっ?…あっ、本当だ」
外そうとするも後ろなので、上手く手が届かないようだ。
「待て、私がやろう」
そう言ってフリオニールの髪に手を伸ばし、ゆっくりと絡んだ髪を外す。
「これでいいだろう」
「ああ、ありがとうウォーリア」
にっこりと笑って礼を言うフリオニールに、表情こそ変わっていないが、見惚れているウォーリア。
ウォーリアがフリオニールに想いを寄せている。
それは秩序の戦士のみならず、混沌の戦士達の間でももうすっかり知られてしまっている。
だが、どういうわけか、彼の恋路は上手くはいっていない。
当たり前だ、ウォーリアとフリオニールは同性同士、フリオニールにアブノーマルな性癖が無い限り、彼等が結ばれる事はない。
「フリオニール、君は今日も麗しいな」
彼の笑顔に見とれたまま、そう言うウォーリア。
「そうか、ありがとうな…でも、そういう事は女性に言ってくれないか?」
そんな彼に、まだ優しい笑顔を向けるフリオニール。
だが、その人の良さそうな笑顔とは裏腹に、彼は自分の腰へと伸びてきた相手の手首を、思いっきり捻り上げている。
笑顔と行動のギャップに、一同は恐怖を覚えた。
「君の腰布の端が破れてる」
自分がそこに腕を伸ばした理由はこれなんだと言うように、ウォーリアはフリオニールに告げる。
「ああ、さっきイミテーションと闘ってきたから、きっとその時に破れたんだろう、後で縫っておくよ」
破れ目の存在に指摘されて気付いたらしいフリオニールは、そう言ってウォーリアの腕を開放する。
「怪我はしてないのか?」
「うん、さっきケアルしたから大丈夫」
心配そうに、今度はフリオニールの手を取るウォーリア。
両手で彼の手を包み込み、まるで恋人であるかのように相手の目を見つめる。
その真剣な目に見つめられて、フリオニールは。
「なあ、ウォーリア」
「どうした?」
「俺この後ティーダと手合わせの約束してるから、離してくれないか?」
離して、とは何を指しているのか、それはもう明らかだろう。
しっかりと握られた自分の手だ。
「あの、フリオニール…」
なんとかして彼を引きとめようとするも…。
「約束あるんだって、じゃあな」
ぱっと相手の手から逃れると、自分はそのままそっぽを向いて歩いて行ってしまった。
一人残されたウォーリアは、表情こそ変わっていないが、今度は酷く落ち込んでいるようだ。
当たり前だ、自分の好意を寄せる相手に冷たくあしらわれてしまって、落ち込むなという方が無理な話である。
こんな状態が長く続いている。
一向に発展しない相手との関係に、ウォーリアは悩んでいた。
そこで彼は気付く。
この想いを彼に充分に知ってもらおう、そうすれば分かってもらえるかもしれないと……。
つまりは何なのかというと、ウォーリアは嫌われるのを覚悟で…いや、嫌われるとかそういうマイナスな考えは彼の中にはない…とにかく、彼に自分の気持ちを伝えるために、猛アタックが始まった。
何かと口説こうとするのは日常茶飯事。
相手の手を握る、肩を抱き寄せるは、まだマシな方。
腰を引き寄せる、未遂に終わったものの押し倒すという暴挙に出た事もあり、秩序の戦士達からは迷惑だと思われている。
まあ、一番の被害者はフリオニールなのだが。
しかし、彼に何を言っても止まらないだろう事は先行苦承知しているので、彼等は傍観に徹しているのだ。
それに…。
「次は私が相手になろうか?」
ティーダと対戦を終えて戻って来たフリオニールにそう尋ねるウォーリア。
「本当に?じゃあ頼むよ」
顔こそ笑顔であるが、自分の肩に伸ばされた手をべしっと払い除けるフリオニール。
その油断のない行動に、本当に彼は恋愛に奥手なんだろうか?と疑問に思う秩序の戦士達。
フリオニールの自己防衛本能とでも言うのか?そこには隙がない。
だから、今まで取り返しのつかない惨事は引き起こされていないし、仲間達も安心して傍観に徹していられる。
「フリオニール、話がある」
「何?」
真剣な顔で相手を見つめるウォーリア。
何が起こるのか、と恐る恐るその様子を伺う秩序の戦士達。
「私は君の事が好きだ」
フリオニールを自分の胸の中に抱き寄せて告白するウォーリア。
「ウォーリア?」
「君を私のものにしたい」
真剣に彼に告白する彼。
だが…。
「お断りします」
フリオニールは、何の迷いもなく相手の想いを一刀両断した。
「…………」
何とも言えない静寂が辺りに漂う。
誰もが思った事だろう。
ウォーリアの心がBREAKした!!
「一体、どうして?」
しばらくして、意識の戻って来たウォーリアがフリオニールにそう問いかける。
彼に一直線なだけに、必死だ。
「いや、俺は貴方の事は尊敬してるよ」
そんなウォーリアに対し、フリオニールはそう答える。
「じゃあ」
ちょっと彼の表情に希望の光が戻る。
「でもな、こんな風に手癖が悪い人は嫌いだ」
自分の腰から尻へと伸びていた手を捕まえて、ニッコリと笑ってそう言うフリオニール。
「済まない、だが私の気持ちは…」
「気持ちが純粋でも、行動が伴わなければ意味がないよな?」
「いや、私は」
「意味がないよな?」
有無を言わさぬフリオニールの顔から、一瞬、笑顔が消え去った。
ギリギリギリと音がするくらいにウォーリアの手を、捻りあげている手。
再び彼の顔に笑顔が戻ったものの、その背後に果てしない暗闇が見えるのは、気の所為ではないだろう。
彼の怒りが頂点に達している事は誰の目にも、ウォーリアの目にも明らかで…。
「済まない」
しゅんと、肩を下げて謝る彼に対しフリオニールは。
「分かればいいんだ」
そう言って、ウォーリアの手を離した。
完全に気落ちしたウォーリア。
全ての終わりを全身で表現するかのように、地面に膝を着いて倒れる。
そんな彼を見て、フリオニールは声を掛けた。
「ウォーリア、手合わせしてくれるんだろう?」
そう言ってちょっと微笑む。
それは彼なりのちょっとした優しさ。
そこまで気を落としてほしくない、という彼なりの心遣い…。
「…フリオニール」
そんな彼に希望の光を見たウォーリアは、再び彼に抱き付こうとして…。
「それ以上俺に近付いたら、今後一切、ウォーリアとは絶対に口を利かないからな」
その素晴らしいまでの笑顔の拒絶に、ウォーリアの心は再びBREAKされた。
迷惑なまでに一途な想い。
それに対抗できるもの。
それは…意地悪なまでに完全な、笑顔の報復。
10,000HIT御礼!!
貴方のご来訪に感謝致します
黒い森〜花鳥風月の宴〜 管理人・忍冬葵
計都様からのリクエスト、「セクハラなみの責め側のアピールに対し、FF5のバッツなみにフラグクラッシャーする天然腹黒フリオニール」との事ですが…。
えーと、私実はFF5が未プレイでして、ディシディアのバッツのイメージしか持ってないのです、なので、リクエスト通りの作品に仕上がっているかどうか自分では全然自信がないんですが、あの、これくらいで勘弁して下さい。
相手の指定はなかったので勝手にウォーリアになりましたが、セクハラなら皇帝にさせた方がそれっぽくなったんじゃ、と後で気付いた人間です。
でも、感謝の気持ちはこもってますよ!とっても!!
計都様のみお持ち帰りOKです、そして何時でも返品して下さって構いません。
では、リクエストありがとうございました!!
2009/5/10