ブログ小話まとめ

仕事終わり、車で走っていると前の道が塞がれているのが見えた。
車両の上で回るランプ、そして白と青い塗装の車両、民警の車両だ。
一体どうしたのか、と思いつつも近くまで向かうと一人の警察官に止められた。

「すみません、どうかしたんですか?」
早く帰りたいのに、と思いやって来た警官に理由を尋ねると「検問だ」と短い返答が返って来た。
刑務所から死刑囚が脱獄したらしい、そんなニュースを聞いてはいたものの、こんなにも身近で起こっていた事件だったとは……そう思うと、恐怖で耳が垂れ下がる。

「身分証明書をお願いします」
警察官にそう言われて、俺は自分のポケットから免許証を取り出して見せる。
ゴーグルを外し、それを確認する警察官の耳がピクリと動いた。

「似てるな……」
「はい?」
「顔立ちや体格が、奴の仲間にそっくりだ」
死刑囚の仲間に似てる、なんて言われて自分の体に震えが走る。
確かに目つきは多少鋭いかもしれないけれど、自分は別に何も罪は犯していない。
「いえ、自分は……」
「とりあえず、身体検査だ…外に出ろ」
銃口を向けられて告げられた言葉に、ビクンッと大きく体が震える。
大人しく従うしか、方法は無いだろう。
大丈夫、何も悪い事はしてないんだから…直ぐに解放されるハズ。

震える手でドアを開けて、指示されたようにボンネットに向かって立つ。
背後に回った警官が、俺の体を手で触れて確認していく。
「っふ、ぁ……」
その手の感覚に震え、思わず声が上がる。

「……どうした?」
「いえ、あの……」
恥ずかしくて思わず顔が赤くなる、耳もすっかり垂れさがったまま戻らない。
恐怖ではなく、彼の手の感覚がくすぐったいのだ。
それをどう弁明しようか考えていると、ふと背後からフッと笑い声がした様な気がした。
「ひゃっん!」
再び動いた彼の手が、俺の胸を服の上から撫でていく、その感覚に甲高い声が上がった。

「アンタ、感じてるのか?」
「ぅう……」
後ろから聞こえる揶揄する様な声に、俺は更に恥ずかしくなって震えるものの、彼はその手を止めてくれない。
胸だけでなく、腰や背中…太股等、全身くまなく確認される。
それが彼の仕事とはいえ、背後に立つ彼を俺は恨めしく思う。


検査も大体終了したのか、彼の手がそっと放れる。
それにほっと息を吐いた瞬間、ビクンと体がしなった。
「ふっ!!ふぁあああ!なっ、ちょっと尻尾は、止めて!!」
もう終わりだと気を抜いた一瞬、自分の尻尾をわし掴まれて、弄ばれる。

「こちらの勘違いか……アンタは正直者そうだな、体も含めて」
背後の警官は満足した様に笑ってそう言うと、今度こそ本当に俺の事を解放してくれた。

安堵感と彼から与えられた色々な感覚に足が震えて、解放された瞬間、俺はその場にへたり込んでしまった。
「大丈夫か?少しやりすぎたみたいだな」
手を貸してもらって、ようやく立ち上がる。

「どうする?このままだと、辛いか?」
「はぇ?」
「良かったら、俺が楽にしてやるよ」
ニッコリと微笑むと、青年は俺を車へと運び、自らも乗り込んできたのだった……。


ウサビッチのシーズン2を見ていて、身体検査されるプーチンをフリオで擬人化させたかったんです。
擬人化でもウサ耳は付いてます、相手がクラウドなのは管理人の直感で警察官のイメージがクラウドだったからです。
この後は勿論、一般人フリオは警察官クラウドに美味しく頂かれました。
2010/11/19


「アンタその武器、全部使うの?」
俺に向けてそう尋ねた少年に、俺は「そうだ」と返答する。

新しくやって来た仲間、彼はヴァンと名乗った。
ティーダに似て、快活そうな笑顔が特徴の明るい少年の様だ。

「お前も、武器を持ちかえて闘うタイプだろう?バッツとは少し違うみたいだけど」
さっき彼のクイックバトルを見せて貰ったのだが、自分と同じ様に多彩な武器を扱うタイプのようだ。
違う点と言えば、俺よりも身軽に動けるという事だろうか。

「まあ、扱えると言っても……俺は独学で学んだ、に近いかな?俺の世界では戦争が続いてて、必要ならばどんな武器でも使えた方が、便利が良いし」
そう言うと、少年は俺の話に小さく頷いた。
「オレもそんな感じかな。俺の国も戦争で負けてさ……でも終わりじゃなかったんだよな。なんか色んな事に巻き込まれて…でも、元々は町で知り合いの手伝いとかして暮らしてたんだ。
邪魔になる弱いモンスターとか、そういうのを追い払ったりはしてたけど」
「俺も狩りをして生活してたんだ。義兄に剣を教えて貰ったり、義妹に弓を教えたりして……」
「オレにも兄貴が居たよ」
「そうか」
そこまで聞いて、どうやらこの少年と自分は似た境遇を持つ様だ、と思った。

「ヴァンの故郷は、どういう所だったんだ?」
そう尋ねると、少年は俺から視線を外して空を見上げた。
「オレの故郷は……砂漠の中にある凄く大きな国なんだ、周辺の町や村から、色んな人や物がやってくる大きな町、町の外は何もない砂漠だけど、でも豊かで綺麗な町だった」
空を見る少年の顔が、輝いている。
故郷の空を、思いだしているのだろうか?

「……アンタ、えーと」
ふと俺に視線が戻り、どもる少年。
「フリオニールだ」
「フリオニールの故郷は、どんな所?」
興味から聞かれたのだろう、少年の質問に俺は少し微笑み、答える。
「俺が生まれたのはヴァンとは反対で、雪国なんだ…小さくて静かな町で、両親と一緒に暮らしてた。だけど、戦争で両親が死んで、その後は緑が豊かな国で、仲間達と一緒に住んでた」
その故郷が戦火で焼かれた光景をふと思い出して、俺の内側がズキッと痛んだ。

「なんか、こうやって話聞いてるとオレとアンタって似てるかも、な」
少年の呟きに、俺は「そうみたいだ」と答える。
どうやら、同じ事を考えていた様だ。

「なぁなぁ、今度オレにも弓の扱い方教えてくれないか?」
「使えるんじゃないのか?」
「アンタ上手そうだし、ちゃんとした使い方見てみたいんだよ」
そう言う少年に、俺は笑顔で了承の意を伝える。
「なら、あの武器の使い方教えてくれないか?スコールの武器に似てるけど、ブレードの無い…」
「銃の事?」
「そう、それ……俺の世界には無かったんだ、そういう武器」
そう言うと、今度は少年が驚いた。
他の世界から来た仲間達から聞けば聞く程、自分の世界との文化の違いに驚かされる。
だけど、新しい事を知る事ができて、それは楽しい。

「じゃあ、約束な」
「ああ」
輝く太陽の様な笑顔を見せる少年に、俺も微笑み返して「約束だ」と言った。


「どうしたのティーダ?」
騎士にそう尋ねられて、新人と自分が慕う人が仲良くしているのを影からこっそりと見守っていたティーダは、顔を上げた。
「あの新人……前から俺に似てるって、言われてるッスけど……。
フリオの隣は絶対に渡さねぇ!!」


DdFF発売という事で、新キャラ発表が順次されていく中で、そういえばヴァンとフリオは共通点多いよね…絡んでくれないかな?と思った結果です。
後日、公式の発表によってティナと絡むヴァンが居て、オニオンナイトはどうした!?と本気で叫びました。
おそらく…一番早い12×2です。
11/25


「兄貴!兄貴!!今日が何の日か知ってる?」
突然そう聞かれて、俺は首を傾ける……月末で思い当たる事、というと…。
「お前のバイトの給料日?」

「違う!!」
盛大に俺の返答を否定し、盛大にうなだれる弟。

彼は「カレンダーを良く見て」と言うので、確認してみた。
11月25日、誰かの誕生日や記念日にしては心当たりがない、一体何があるのだろうか?

「ほら、日付を見てみてよ…1125で『いいふたご』の日でしょ?」
「あっ!……ああ……あー……それが、どうした?」
ネタばらしをされて一度は納得するものの、だからどうしたのか、と首を傾ける俺に、相手は更にがっくりとうなだれた。
「もう!良い双子の日なんて、俺達みたいな特別な間柄じゃないと祝えない日じゃん!何でそんなにノーリアクションなの!!」
「いや、だって……別にお祝いする様な日じゃないだろ、大体、それってゴロ合わせで無理やりみたいな感じがするし」
「いいじゃないか!タダだし!」
「いや、何がタダなのか分からないよ」

そう言って溜息を吐く俺よりも、更に隣でべったりと床にへばりつく様に倒れ込み、大きな溜息を吐く弟。
コイツはいつもそうなのだ、俺よりもイベントやお祝い事が大好きで、こうやって色々な事を持ち寄ってくる。
俺はそういう事に疎いのだけれど、結局、コイツが何をしたいのか…それは分かるのだ。

「シャドウ、お祝いに何食べたいんだ?」
「…………兄貴?」
「お前と俺で、相手の好きな料理作って、それでお祝いしよう……良い双子の日」
そう言って笑いかけると、相手は顔を輝かせて大きく頷いた。
「やっぱり、兄貴大好きだぜ!」
そう言って抱きつく相手に、俺は呆れてものも言えない。

コイツは、なんだかんだで俺と一緒に居たい、そう思ってるだけ。
俺は、それが嬉しいと思うから、ついつい甘やかしてしまうだけ。

だけど良いだろ?
今日は、俺達……兄弟の日だ。


11/25は良い双子の日だと聞いたので、ウチの双子に祝ってもらいました。
どことなく、ノーマル×アナザーの様に見えない事もないかもしれないですが、アナノマですよ。
11/25


「誕生日おめでとう」
義妹の笑顔に、俺は苦笑を返す。

「フリオ、今日特別な日」
「ああ、ありがとうガイ」
両手に抱えた荷物の山から、顔を覗かせてそう言う幼馴染。
荷物持ちを任されたガイは、彼女に連れられて台所へと入っていった。

この歳になって、誕生日を祝われるのは流石にちょっと恥ずかしい。
子供の頃は自分が一つ歳を重ねる事を、とても楽しみにしていたのに。年齢が上がるにつれて、それは当り前の事になってしまったのだ。

「だが、めでたい事には変わらないだろう?」
「そうかな?」
言い渋る俺の頭を、レオンハルトの大きな手が撫でた。

子供扱いされている、相変わらずこの義兄は自分よりも大人なのだ。
それは、いつまで経っても変わらない。
だけど、そう……一つ歳を重ねると、彼に近づけるような気がしていたのだ。

俺を守り大切にしてくれる彼の様に、俺も彼の様になりたいとそう思っていたのだ。

それは今でも変わらない。


「なぁ、レオンハルト……俺は、まだ子供でいいのか?」
「お前は俺が見ても充分に大人だ、だから偶には子供らしくしておけ」
そう言って笑う彼は、少なくとも俺の事をまだ子供だと思ってくれているのだろう。

ゆっくりと流れる時間、台所からマリアとガイが料理をしている声がする。

「兄さん!兄さんばっかりフリオニールと遊んでないで、コッチも手伝ってよ」
「分かったよ、今行く」
そう言って腰を上げる義兄は、俺を見て笑った。

「待っててねフリオニール、今夜は凄いごちそうにするから」
笑顔でそう言うマリアは、本当に楽しそうだ。

「ありがとう、皆」
平和な世界の片隅で、こうして笑い合って過ごせる日々が愛おしい。

テーブルの上では、マリアが摘んできたのばらの花が揺れていた。


FF2の発売22周年記念のお祝い小説でした。
2の発売記念なのに、フリオのバースデーの話にしてしまいましたが、まあ間違いではない…ですよね?
H.22/12/17

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