ブログ小話まとめ
イライラしながら、携帯を眺めていた。
まあ、時期も時期だが…新幹線なり回数券なり、どういう訳か駅の窓口は高齢者の集団で混んでいる。
少子高齢化社会、か……。
それにしても、時間を持て余した老人は、何故こんなにも出歩くのが好きなのか?
考えても仕方ない事を考えつつ時計を眺めていると、ふと一人の駅員が出て来るのが見えた。
「あの、定期券でお待ちの方いらっしゃいますか?」
おずおずといった感じでそう声をかける、銀髪の若い駅員。
「あ……はい」
ずっと並んでいる俺を見て、頭を働かせたのか…それとも、時間が経つとそう尋ねるように言われているのかは不明だが、とりあえず、声をかけてくれた彼に感謝したい。
若い駅員は頷いた俺を見て、記入した定期券購入用の用紙を受け取った。
「それでは、少々お待ち下さい」
笑顔でそう言って奥へ引っ込む彼の笑顔が可愛いとか、口にしたら何を考えてるんだコイツは?と思われるような事を考えつつ…ふと、目の前にある掲示を見て首を傾ける。
『通学定期を購入のお客様へ
新年度、通学定期を購入の際は、必ず、通学証明証を提示の事……』
自分の手の中にある学生証を見て、再び首を傾ける。
いいのか?
そんな疑問を抱く俺の元へ、さっきの駅員が慌てて戻ってくる。
「すいません、あの通学証明証を…」
……やっぱりな。
用意していた学生証を彼に渡すと「すみません」と頭を下げる彼を見て、もうしばらく待つ。
「すいませんお待たせしました、それではご確認をお願いします…明日から有効の通学定期で、期限が」
「あの、期限が違う…」
「えっ?」
日付が、どう考えてもおかしい。
三カ月と書いておいて、四月に購入し五月が期限はおかしいだろう。
頭を傾ける彼の元へ、同僚なのか先輩なのか、の駅員が呼びかけ「それ三カ月じゃなかったか?」と尋ねる。
「あっ!すみません!!」
気づいたらしい彼は、再び奥へと戻っていく。
随分とおっちょこちょいな駅員だな、と思ったが…本日の日付とさっきのやり取りを思うと、多分新人なんだろう。
毎年そうだ、この季節の窓口業務には研修生が立っていたりする事が多い。
まだまだ、仕事に慣れていないんだろうな。
「すいません!お待たせしました!!」
本日何度目かの彼の「すみません」を聞き、呆れや苛立ちよりも、どこか微笑ましさを感じる俺。
代金を受け取って、釣を取りに再び奥へと戻っていく彼。
ところで、この駅はどうして窓口が一つしかないんだ?一応、全ての快速が停車するそこそこ大きな駅なんだが…。
受け取った定期券を仕舞い、駅の構造という利用客としてはどうしようもない事を考えていた俺の下へ、さっきの駅員が戻って来た。
「お釣りの五十円になります…細かくなってしまってすみません」
そう言って、受け取ろうとした俺の右手を取って、お釣りを持っている彼の手がすっと俺の右手に小銭を握らせる。
思わぬ触れ合いにビックリする……というより、心臓が悪いくらいに高鳴った。
「ありがとうございました!!」
「……はい」
ニッコリ笑う駅員の笑顔が、酷く輝いて見えた。
そしてバッチリと彼の名札を見て名前を確認している自分の、抜け目の無さに、軽く嫌気が差した。
新年度、これから駅に通うのを酷く楽しみになった自分が居た。
新人駅員さんに萌えた結果誕生した、学生スコ→駅員フリオ。
事実を元にしたフィクションです(笑)。
2010/4/2
朝というのは、どうにもこうにも気分が上がらない。
爽やかな目覚め…という言葉があるが、目が覚めた後は頭がボーとするし体がダルかったりと、爽やかにはかなり程遠い。
学校へ向かい、真面目に授業を受ける…学生の本分とはいえ、それも面倒な時だってある。
まぁ、普通に考えたらそれを億劫に思っている学生は中々多い事だろう。
だが、俺が駅へと向かう俺の足取りは軽い。
軽い…というか、意味も無く急いていると言った方がいいだろうか?
学校へではない、“駅”というのがポイントだ。
「おはようございます、行ってらっしゃいませ」
改札の傍から聞こえてくる、よく通る声。
その姿を確認し、密かに、心の中でガッツポーズ。
制服のポケットから使用している定期券を取り出し、今まで急いていた足取りとは逆に、今度はゆっくりと改札へと向かう。
駅員室から一番近い改札へ向かい、通り抜ける。
「おはようございます、行ってらっしゃいませ」
皺の無い紺色の制服に映える、銀色の髪。
朝の爽やかさをそのまま表したような、綺麗な笑顔の青年。
そんな彼に「おはようございます」と、ほぼ聞こえない声で挨拶する。
彼は俺を覚えてくれているだろうか?
『フリオニール』という彼の名前は本人から聞いたのではなく、制服に付けられた名札を見て知った名前だ。
一日に何百人、下手すれば何千人と使用しているだろう駅の改札に立って、行き交う人を眺める彼に、その内の一人を覚えてくれなんて、無理な願いなのかもしれない。
それは分かっている。
新学期が始まって以降、毎日のように繰り返す自分の行動に呆れつつも、止められないのもまた事実。
営業スマイルなんだろうな、と思いつつもそれでも輝かんばかりの彼の笑顔に見送られて。
今日も、俺は色々な感情を腹の内に抱えたまま、人混みに混じって揺れる電車の中へと入る。
前回からの続きで、新人駅員フリオと学生スコール。
絶賛スコール片想い、接点無い片想いは本当に辛いと思います、彼の場合は。
2010/4/3
「ご利用、ありがとうございます」
改札でペコリと頭を下げる駅員の姿を見て、溜息。
自分の知っている、“彼”の姿は…今日は無い。
電車というのは公共交通機関だ、一年365日、休まず営業しなければいけない。
それはつまり、彼等には世間での休日が必ずしも適用されるという訳では無い、という事。
平日が休暇になる事だってあるだろう。
それに、早朝から深夜まで動き続ける路線を支える駅員は、その時間に合わせて働く時間が異なってくるのだろう。
毎日会える…そんな訳が無いのだ。
それは分かっている、分かっているものの…何だか気分が下がる。
どうしようも無い事だ、それは分かるが、こればっかりは仕方無いと割り切ってしまうには…どこか心の奥がもやもやする。
自分は、彼の事をほとんど何も知らない。
職業が駅員で、恐らく今年入った新人で、そして名札を見て知っている名前、その程度だ。
知っているのは、たったそれだけの情報。
そして、相手は自分の事を全く知らないのだ…。
どうあがいたって、覆らない事実、こればっかりはどうしようもない。
深い溜息を吐く俺の背に、「あの」という声がかかる。
その、余りにも良く知っている声に驚いて…俺は急いで振り返る。
「これ、落としましたよ」
俺に対して少し微笑んでそう言うのは、自分がたった今、その所在を思っていた相手で。
休日だったんだろうか、いつもの制服とは違う私服姿の彼は、黒い革製の生徒手帳を俺へ向けて差し出している。
「……ありがとう、ございます」
予想だにしなかった登場に、もごもごと小さな声でお礼を言うと、彼は「いいえ」と言ってニッコリと笑った。
「この間はごめんなさい、初めてだから手間取って」
早鐘を打つ心臓を押さえつけ、なんとかその場を立ち去ろうとした俺は、しかし彼の一言で完全にここに縫い止められる。
「えっ……あの、覚えて…」
「毎日、この駅を利用してるでしょ?決まって同じ時間に来るからさ…なんか覚えちゃって」
はにかみ笑いを見せる彼は、多分、何も分かっていないだろう。
俺が、その言葉をどれくらい喜んでいるのかなんて。
「新人さん、ですよね?」
「そう、まだ入って二週間なんだ…まだまだ、研修生」
入社したばかりだと言う彼は、眩しい笑顔を見せる。
「今日は、休みだったんですか?」
「ああ、そうなんだ」
プライベートな質問は聞かない方が良かったか、と思ったものの…彼は嫌な顔一つせずに聞いてくれた。
それだけでも嬉しい。
「あの…明日は?」
別に、それで調子に乗った訳ではないが…つい聞いてしまった。
明日は、貴方に会えるだろうか?
「明日は朝からだから、明日は会えるよ」
嫌な顔一つせずに、そう答えてくれた彼。
明日は会える……。
いや、明日“も”会える…のか。
「俺はフリオニールっていうんだ」
その名前は知っていたけれど、そんな事は言わなかった。
「スコール・レオンハートです」
できれば、これからも宜しくとそう言いたかった。
「宜しく、スコール君」
彼からそう言って貰えるのは、自分で言うよりもずっと嬉しかった。
新人駅員フリオとスコールの話、前回から続きました。
この二人可愛いとか言われて嬉しかったんですが、ネタが続かないというのが難点…。
2010/4/8
「ありがとう、お兄ちゃん」
ニッコリ笑って、少女は俺に飴を差し出した。
一人で迷子になっている女の子を見つけ、お母さんを探してあげるのを手伝ってあげた、それだけなのに。
泣いていた女の子は、最後に笑って俺にそう言ってくれた。
肩から下げていた鞄から、何かを取り出して俺に差し出した。
「優しいお兄ちゃんに、お礼」
「ありがとう」
断るのも悪い気がして、その子からオレンジ色の飴を受け取る。
バイバイと手を振る女の子に手を振り返し、母親に手を引かれて遠ざかっていく女の子を見送って、そういえば、自分の待ち合わせをしていた相手は一体どこだろうか?と思った。
「全く、自分から約束しておいて……」
そう文句を言うものの、相手がいなければそれもただの独り言。
携帯のメールを確認するものの、新着は無し。
今一体どこに居るんだか……。
さっき貰ったばかりの、飴の包み紙を取り中身を口へ運ぶ。
白い棒の付いた飴を舐めつつ、相手を待つ。
「フリオ、お待たせッス!!」
走って来た相手が俺へ向けて頭を下げる。
「遅いぞ、ティーダ」
笑顔で何度も謝る相手に、俺は溜息交じりにそう言う。
「あれ、フリオ何食べてるんッスか?」
俺の咥えている物に気づいたらしいティーダが、俺の口から出ている白い棒を指して言う。
「何って、飴?」
「何で疑問系なんッスか?……いいなぁ、オレも欲しい」
そう言うティーダに、俺は溜息。
仕方なく、さっきまでの経緯を説明する。
「へぇ……フリオ、ロリコンッスか?」
「何でそうなる?」
怒りを露わにする俺に対しティーダは笑顔のまま、俺が持っていた飴をパクリと咥える。
「あっ……」
「もーらいッス!」
悪戯をやり遂げた子供の様な表情で、ティーダはそう言って俺の手を取る。
「ほら、行くッスよ」
そう言って歩き出すティーダに引っ張られ、歩き出す。
「美味しいッスね、オレンジ味」
「そうか……」
口に含んだ飴を味わいながら、嬉しそうにそう言うティーダ。
遅れて来て、反省して…そんな人間が人の物奪うか?
そんな事を思っていたら、「フリオ口開けて」と言われて、ついうっかりその言葉に従ってしまう。
「んっ!」
「ありがとッス、美味しかった」
そう言うものの、彼が返却した飴はまだまだ十分な大きさが残っていて。
よくよく考えたら、これって間接キスになるんじゃないかな……なんて事を、自分の口の中にあるオレンジ味を感じてから思い、俺は羞恥で顔が赤くなった。
そんな事は気にせずに、どんどんとティーダを俺の手を引いて歩いて行く。
「今日はフリオの事、連れて行ってあげたい所があるんッス」
そう言う彼の表情が、どこか普段よりも嬉しそうで……。
まあ、遅れた事は勘弁してやろうか……と、仕方なくそう思った。
結局、俺は彼には甘いらしい。
口の中の飴くらい、甘やかさないように…気をつけた方がいいかもしれない。
オレンジデー記念小説、日本人のオレンジデー認知度の低さを払拭とまではいきませんが、少しは広めてみようかと…。
オレンジ色にはティーダのイメージがあるんですね…。
2010/4/14
「2号車、駅出発します」
無線に向かってそう報告し、停留所から発車する。
バスの車内は満員だ、授業時間前だから生徒の数が多い。
生徒の数が多い時間帯の為、バスはひっきり無しに行き来している…歩いて行けない距離でも無いんだろうが、生徒の大半はバスを利用している。
まあ、山の中にあるからな…女子学生がヒールで歩くには、ちょっと足が痛くなるのかもしれない。
混み合っている車内はそれと同じ様に学生の話声で賑やかだ。
公共交通機関ならば迷惑がられるだろうが、此方は彼等が居なければ仕事にならない訳だし、学生同士が集まって静かというのも、何だか変な話だ。
無線から流れて来る同僚の声を聞きつつ、決められた道を走っていく。
向こうから来たバスの運転手に手を挙げて挨拶すれば、相手もそれに応じてくれる。
バスの往来が激しいという事は、すれ違う事も多いのだ。
赤くなった信号の前で止まると、丁度曲がって来たバスが目にとまった。
学校名が入った同じ型のバス、運転手に向けて手を挙げようとして、ふと一瞬それを躊躇った。
バスの大きなフロントガラス越しに見えた、輝かんばかりの笑顔。
お前はどこの女子学生だ?とツッコミを入れたくなる位に、自分に向けて手を振ってくれている後輩。
犬だったらはち切れんばかりに尻尾を振っているに違いない、いや実際に耳と尻尾が見えそうだ。
そんな相手に自分は苦笑いして、形式通りに手を挙げて応じる。
また飯時になれば昼食に誘われるんだろう。
今日はどこに行こうか、なんて思いながら、青に変わった信号を左へと曲がった。
バスの運転手さんに萌えを感じた日でした、いやはや、世の中には萌えな方が本当にいらっしゃると思います。
2010/4/27
部活帰り、先輩達と電車に揺られつつ地元へ向けて帰る俺達。
今日の練習試合が勝った為か、皆少しテンションが高い。
まあ、オレだって勿論嬉しいんだけどさ。
だけど……ね。
部員達から少し離れた場所で、携帯を開く。
新着メールは無し。
鳴らない機械を恨めしく思い、仕方なくデータフォルダを開く。
「どうしたんだよティーダ、浮かない顔して」
「うおっ!バッツ先輩!!」
急にオレの横から現れた先輩に驚き、隣の人にぶつかる。
「すいません」と女性に謝り、先輩の方を見ると、オレをニヤニヤと笑いながら見る彼。
どうしたのか?と思っていたら、先輩がオレの携帯を取り上げているのに気づいた。
「ちょっ!先輩、何してるんッスか!!」
「いやいや、ちょっと面白いものが見えちゃってさ……コレ、何?」
そう言って先輩がオレに差し出した携帯の画面には、オレが開きかけていた写メのデータが映っていて…。
「ちょっ!!先輩、それ返して下さいよ!」
「何でだよ?別に変な画像でも何でもないだろ?」
そう言いつつも、オレをニヤニヤとした笑顔で見返す先輩。
「そんな慌てる事ないだろ?で、何でフリオニールの写メなんてお前持ってるワケ?」
オレの携帯をひらひらと振りながら、先輩はオレにそう尋ねる。
フリオニール先輩は、バッツ先輩と同じクラスだ。
っていうか、この先輩を通じて知り合ったわけだし、結構オレ達が仲良くしてるのだってこの先輩は知ってるハズじゃないか。
「別に、いっ、いいじゃないッスか」
「いやさ、俺は悪いとは言ってないけど…でも、このフリオ結構キレイに撮れてるよな?…どうやって撮ったんだよ?」
「あっ……いや、その…」
そう尋ねられて、思わず返答に詰まる。
そこに映ってる先輩の写メというのは、授業中の先輩の横顔であって…。
普通に考えると、後輩であるオレがそんな写真なんて撮れるハズがないのだ。
「く…クラウド先輩から貰ったッス」
苦しい言いわけに聞こえるかもしれないが、事実だ。
実際に、バッツ先輩のクラスメイトであるクラウド先輩に頼んで、撮って来てもらった写真なのだ。
バッツ先輩ではなくクラウド先輩に頼んだ理由は…彼の方が、口が堅いからである。
「あっ、そう…じゃあ何で残してたんだよ?」
オレの返答を簡単に肯定すると、バッツ先輩は次いでそう尋ねる。
「それは…その……何だっていいじゃないッスか!!何となくッスよ何となく」
「フーン…さては、フリオ先輩といつも一緒に居たいとか、そういうのじゃないの?」
ズバリ言い当てられて、オレの心の中に動揺が走る。
「……と、あっ!お前結構、フリオの写メ撮ってるじゃん」
「って!!何勝手に人の携帯見てるんッスか!!」
フォルダ内の写メを勝手に見られて、オレの額には冷たい汗が流れる。
先輩のニヤニヤ笑いが深まるにつれて、羞恥で死にそうになる。
「へぇ…お前がフリオを好きだなんてね、まぁ結構お似合いだと思うけどさ」
オレに携帯を返しつつ、先輩は嬉しいけれど今は酷く迷惑な言葉をかけてくれる。
「そういうんじゃないッスから!本当、ただ偶然なんッス!!」
「ふーん?でも、その割にはちょっと写メ多すぎるだろ?……あっ!もしかしてお前が今日元気ないの、フリオニールが応援来なかったからか?」
「!!なっ!…そ、そんなわけ、ないじゃないッスか!!」
しかし、この絵に描いた様な動揺では、バッツ先輩は全く信じてはくれないだろう。
むしろ、ニヤリとした笑顔を更に深めてオレを見る。
「そうだ!そんな先輩大好きなティーダ君の為に、俺も愛しのフリオ先輩の写メあげようじゃないか」
「いらないッス!!」
そう言うものの、先輩は自分の携帯を取り出すとカチカチと何か操作し始める。
「ほらコレ、修学旅行の時の写メなんだけどさ」
そう言って先輩がオレに見せてくれた写メは、顔を真っ赤に染めたフリオ先輩の半裸の写真…。
「…………先輩、何でこんな写メ持ってるんッスか?」
「うん?いや、部屋でふざけた時の写メだよ、それ見せるとフリオ今でも慌てるんだよなぁ」
弱みと思い出として残してた、とバッツ先輩は悪びれずにそう言う。
「どうよ?夜のお供に?」
人の悪い笑みでそう言う先輩に、オレの顔に熱が集中するのが分かる。
「いらないッス!!」
即答でそう言うものの、先輩は人の悪い笑みのまま「よし、じゃあ送っちゃうぞ」と勝手に携帯を操作してオレへとメールを送る。
「いやぁ…まさか、こんな形で役に立つとはね」
「全然役に立ってないッスよ先輩!!」
そうやって否定するものの、先輩から送られてきた写メを見て、一人で赤面。
バッツ先輩から送られてきた写メは2枚。
一枚は最初に見せて貰った写メ、もう一枚は更に程度の酷くなっているフリオ先輩の写メ。
何の程度かって……そりゃ、服の剥け方の。
「大事にしろよ」
「そんなんじゃないんッスよ!」
そう言った瞬間に、オレの携帯が振動する。
急いで画面を見れば、表示されているのは噂の人物の名前で……。
先輩のからかいも一瞬忘れ、胸が高鳴る。
「へぇ…愛しの先輩からラブコールだぜ」
「バッツ先輩!!」
全く、この人の所為で台無しだ……。
写メは……言葉に反して永久保存されそうだけど…。
電車で出会った先輩と後輩のやり取りから派生して生まれました、本当は写真の画像はアイドルだったんですけれどね。
あまりにも、後輩君がティーダを彷彿と思い起こさせるものですから…つい。
2010/5/15
「あっ……やっぱり、スコールか」
入り口から響いた仲間の声に、視線を其方に向けた瞬間に…そこから目をそらした。
「家事とかで遅くなっちゃってさ…俺も入っていい?」
「……ああ」
むしろ、その状態で断ろうとは思わない。
腰にタオルを巻いたフリオニールが、俺へ向けて微笑みかけていて、どうやったら断れる?
「ん…湯加減も良さそうだな」
大浴場の湯船に足を入れて、ゆっくりと体を沈めていく相手。
薄明かりの中に浮かび上がる、彼の褐色の肌と銀髪。
洗った後の濡れた髪が、その背中に張り付いているのに官能的な雰囲気を感じつつ、横目で相手を見る。
完全に視線を逸らせないのは、自分の年齢的な性か……。
「……ん?どうかしたか?」
俺の視線に気づいたんだろう、俺の方を向いてそう尋ねるフリオニール。
「あっ……いや」
どう弁明すれば、一番怪しまれずにこの場を切り抜けられるだろうか?……と俺が、自分の頭を総動員して考えていると、彼は「ああ、これか?」と自分の背を指して言った。
「もしかして、ビックリさせたか?」
彼の背中に大きく走る傷跡。
小さく目立たない傷跡も多いだろうが、一際目立つ背中の傷。
「元の世界でさ、俺が帝国軍に付けられた傷なんだと思う」
「……大きいな」
「ああ、多分これを受けた時は死にかけたんだと思う……なんか、そういう記憶が残ってるから」
サラリと彼は口にするが、その言葉に俺はどれ程驚愕したか分かっているのだろうか?
だが、彼は自分の痛みだとか、過去の暗い部分は必要以上に感情を込めずに言う。
それが他人に心配をかけさせない為なんだろう、という事はなんとなく理解できるが……。
それをもどかしいと思う人間だって、居るんだ…例えばここに。
無言になる室内。
重苦しいと感じる沈黙ではないが、しかし、心が騒いで居る為に居心地が良いわけでもない。
想い人と共に、湯浴みというのは…普通に考えれば、千載一遇のチャンスで間違いないんだろうが…。
いや、何分この相手はそんな事等気にもかけていないに違いない。
まあ、同性同士だから平気だろうと思うのが、普通か。
「……ん?あれ?髪絡んでる?」
そう疑問の声を上げる彼の隣、確かにその背中で彼の一部分だけ長い髪が絡まっているのが目に付いた。
「俺がやろうか?」
「悪いな、スコール」
そう言って、大きな傷のある背中を俺に向けるフリオニール。
その背中に広がる髪を取る為に、伸ばした指が一瞬彼の首筋を撫でた。
「んぁっ!」
「!!」
驚いて手を離せば、そっと俺の方を振り返り「ごめん…そこ、くすぐったい」と少し赤くなった顔でそう言う相手。
性的な雰囲気を一気に纏う相手を見つめ、顔が熱くなるのを感じた。
だが…言いだした以上が責任がある、怪しまれるわけにもいかない。
腹を括って相手の髪に触れて、絡まった部分を解いていく。
「ん?まだか?」
「…………ああ」
自分の髪を触られる事に慣れていないのか、それとも、俺の手がそんなにくすぐったいのか、小刻みに体を震わせつつそう話す相手に、俺は沸騰寸前だ。
「……解けたぞ」
「ぁっ……ありがとう」
俺の手からするりと離れた髪を見つめ、はぁっと安堵の息を吐く。
彼の背中には、銀髪の髪が絡みついて俺を誘っている様に映る。
振り返った相手の顔が、俺に近づいたかと思うとじっと琥珀が俺を見つめる。
「スコール、まつ毛付いてるぞ…取ってあげるから動かないでくれよ」
そう言って伸ばされる相手の手、それと共に近付く彼の体。
動かないでくれと言われたのに、驚いた俺は盛大に後ろへ後退し……。
「ちょっ!うわぁ!!」
バランスの崩したフリオニールが、俺の胸の中へと倒れ込む。
「あ…ごめん」
俺の胸の中、しな垂れかかる様な形になっている相手が、琥珀の瞳を俺に向けて謝る。
「ぁ……いや…………」
そこで相手に何か、俺が弁明する様な言葉をかけようとした所で、俺の頭は限界を迎えた。
「スコール…大丈夫か?」
「逆上せたんだって?長湯のし過ぎだぜ」
俺を心配そうに覗きこむジタンとバッツに、何か一言でも言い返そうかと思ったものの、出てくる言葉が無いので止めた。
「フリオニールが心配してたぞ…まあ、目の前で倒れられたら仕方ないか」
そうやって勝手に結論出してくれるものの、俺としてはかなり、恥ずかしいので思い出したくない。
なんてタイミング良く倒れられたんだろうな?頭に血が一気に昇った結果なんだろうが。
だが、何て格好のつかない……。
そんな俺の自己嫌悪等知らず、旅人と盗賊は参っている俺を心配そうに眺めていた。
私の脳内の腐ったフィルターを通してしまった結果生まれた、蒸されたスコです。
フリオは水に濡れると、色気の桁が上がると思うんですね。
2010/5/17
朝の用意をしていると、玄関先から「先に行くよ」と声がかかった。
今日は同じ時間から授業のハズなのに、どうして、今日は私よりも早く家を出るのか?
「早いな」
玄関先に立つ彼に向けてそう言う。
「ああ……昨日さ、自転車のタイヤパンクしちゃって…歩いて行かないといけないから、先に行くよ」
「なら、乗って行けばいい」
鞄を閉めて、家の鍵を手に私も立ちあがって玄関へ向かう。
「えっ……乗って?」
「私の自転車の、後ろに」
「え……ぇええ!!」
ビックリする彼に、私は微笑みかける。
「あの、ウォーリアいいよ…俺、歩いていくから」
「それじゃあ時間がかかるだろう?いいから早く乗りなさい」
自転車置き場から愛用の自転車を出して来てまたがると、後ろを指す。
そうすれば、彼は恥ずかしそうに頬を染めつつも、私の後ろへとやってくる。
「しっかり掴まっておけよ」
「分かってるよ」
私の背に感じる彼の手の温もりに、笑みが零れる。
引っ越してきて良かったな、と思う。
なかなか、良い雰囲気の町だ。
「なぁウォーリア……なんか恥ずかしい」
背中の向こうからそう言うフリオニールに、私は苦笑い。
「安心しろ、どうせ仲の良い友人くらいにしか見られていない」
「そうだろうけど……」
だが、恥ずかしいと言いながら彼の腕はしっかり私の背中を掴んで離さない。
危ないからなのだろうが、そんな彼を愛らしく思いながら自転車をこいでいく。
「おはよーッス!!」
そんな私達の後ろから、走って来た少年が挨拶をする。
「おはよう」
「おはよう、ティーダ」
引っ越してきたマンションの隣に住む高校生の少年が、私達二人に向かってほほ笑みかける。
「仲良いッスね、なんか夫婦みたいッスよ」
「なっ!!ふう…」
「フリオニール、暴れるな…危ないだろう」
「暴れて無いから!!」
バランスを崩しかける相手に、私は笑い、その隣で自転車を漕いでいた少年も笑う。
「じゃあ、オレ急いでるんでまた!」
そう言って私達を追い越していく。
近所の商店主等に、挨拶をしていく少年。
「良い所だな」
平和な雰囲気の街並みを眺め、私はそう呟く。
「そうだな」
後ろで呟く彼の同意を聞き、私は嬉しくなってどんどんとペダルを漕いでいく。
自転車の少年と、二人組の学生を見かけた事から派生しました。
しかし、あの二人乗りしていた学生は本当に萌えでした。
2010/5/17
朝、二つの塊を叩き起こして、身支度をさせる。
喧嘩が始まる前に朝食を出し、俺を入れた三人分の弁当を用意。
遅刻は厳禁という俺の時間管理の下、三人揃って家を出る。
「やっぱ、朝は混むな」
すし詰め、とまではいかないが…朝の電車は確かに混む。
少しゆとりがあるのは、朝でも少し早い時間だからだ。
出入り口付近で固まる俺の腕に、ティーダが絡まる。
「まだ眠いッス……」
「夜遅くまで起きてるからだろ?っていうか、重いから離れろよ」
「嫌ッス」
そう言うと、ギュッと俺の腕に更にしがみ付く。
その光景に溜息を吐くと…止まりかけた電車に揺れて体勢を崩す。
「うわっ…」
「おいおい、大丈夫かぁ?」
体勢を崩す俺の腰に、ジェクトの腕が回される。
立て直される俺の体勢の隣、ティーダは崩れてコケかける。
「ちゃんと掴まっておけよ、俺様に」
ニヤニヤと笑うジェクトは、俺の背後に立つと、左手で吊革を掴み右手で俺の腰を掴む。
「ちょ…ジェクト……」
「親父!セクハラは止めるッス!」
再び俺の右腕を取ると、ティーダがジェクトを睨みつける。
「何だよ、羨ましいのか?」
「あの…ジェクト、くすぐったい」
頼むから、俺の肩に顎を乗せて話さないでくれ。
「セクハラは犯罪ッス!!」
「勝手に自分の父親を犯罪者にするなよ!」
「現行犯が何を言ってるんッスか!!」
「嫌がってはないだろうが!!」
……ああ、周囲の人達の視線が痛い。
俺を挟んで親子喧嘩を始める二人に、俺の中でも苛立ちが蓄積し始める。
「二人ともいい加減にしろ!いい加減にしないと夕飯作らないからな」
俺の一言で、二人の言い争う声が止む。
「チッ……分かったよ」
「しょうがないッスね」
「まったく……」
ああ…何で、自分はこんなにも母親の立ち位置にはまっているのか?
偶にそう思うものの、嫌ではないのが不思議だ。
そんな、ある日の日常。
電車で見かけた男子学生三人組を、DFFでパロってみました。
589っぽかったんですが、友人の鶴の一声で10親子×フリオへと変換されました。
2010/5/19
仕事を終え、その場を立ち去ろうとした俺へ向けられる視線。
瞬時に混ざる殺気を感じ、地面を蹴って距離を取る。
自分の獲物であるバスターソードを取り出し、視線の主へ向ける。
「誰だ?」
暗闇へ向けてそう尋ねれば、闇の向こうから闇には似つかわしくない男が現れた。
白い肌に端整な顔立ち、青と銀を基調にした衣服。
片手には、愛用なのだろう片手剣。
銀髪はどこか自分の想い人を連想さえるものの、人によってこんなにも印象が変わるものか…と思った。
冷たい青い瞳が、俺を真っ直ぐに見つめる。
「アンタは?」
そんな事を尋ねても無駄なんだろう、事は分かっている。
いや、無駄なんじゃない、聞かなくても分かっている。
相手の放つ雰囲気は、間違いなく同業者のソレだ。
そして、同業者が誰かに殺気を向ける時というのは、仕事の時以外にあり得ない。
「私は殺し屋依頼人は秩序、十四の十字を身に纏い、これより使命を実行する」
自分へ向けられる死刑宣告、相手は静かに剣を構える。
それを受け、俺はただ冷静にこの場をどう切り抜けるかを思案し始める。
目の前の処刑人から、どうすれば逃げ切れるだろうか?
唐突に浮かんできたワンシーン、いつか書きたい!と思っている殺し屋パロですね……。
WOLの台詞は西尾維新の小説に出てくる、殺し屋の台詞です。
2010/5/22
「バッツ先輩、聞いたッスよ」
昼食時、オレの隣で飯を食べていた先輩にそう切り出すと、「何が?」と首を傾ける相手に、オレは笑って答える。
「何がって…先輩この前、電車で痴漢捕まえたんっしょ?凄いッスよ!」
「ああ!あれな、何だよ誰から聞いたんだよ?」
大した事ないのに、と言いつつもどこか誇らしげに笑う先輩。
良い事をして褒められるのは、やっぱり気分が良い。
社会的に見ても、彼の行動は褒められるべき行動だ。
っていうか、この人がこんなにも正義感のある人だったなんて(残念ながら)思わなかった。
「痴漢は社会の悪ッスよね」
「だよな…男としては最低だな」
人前でって燃えるだろうけどさ…なんて、ちょっと下品な事を笑って言ってしまうので、本当にこの人が捕まえたのか?とか疑ってしまうが、真実、それで救われた女の子が居るんだろう。
「それで、女の子から感謝されたりしたんッスか?」
「感謝はされるだろ…されたんだけどさ……」
オレの質問に、少し言葉を濁す先輩。
うん?何か問題でもあったんだろうか?
「なんッスか?相手が実際は女の子じゃなくて、おばさんだったとか?」
「いや、決してそんな事はないさ…普通にウチのクラスメイトなんだけど……ティーダ、ちょっと」
手招きする相手に従い、先輩の方にちょっと近付けば、オレの耳元にそっと先輩が近寄って。
「被害にあったのが、女の子じゃなかったら……どうする?」
……はい?
被害にあったのが女の子じゃない?という事は、何ですか?
生物の性別は二通りしかないですよね?まさかの中間もあるかもしれないけど、えっ…ねぇ……まさかッスよね?
先輩のクラスに、男女の中間なんて…居ないハズだよな。
…という事は……?
「えっ……男ッスか?」
「そう、しかもお前の大好きなフリオニール先輩な」
その一言で、オレの手の中のジュースの紙パックが握り潰された。
ボタボタと滴り落ちるジュースを見て、「勿体無い」と言う先輩。
だが、オレはそれどころではない。
「ちょっ!!それ、どういう事ッスか!?」
「おお!流石フリオニールの事だと喰いつきが違うな」
「べっ!別にそういうんじゃないッスよ!!」
そう否定するも、先輩はニヤニヤ笑いを浮かべてオレを見る。
「そんな否定しなくてもいいだろ?愛しのフリオ先輩が、悪い虫にイタズラされたのが気に入らないんだろ?」
「だから違うって!!」
真っ赤になって否定するも、彼は疑いとからかいの混ざった目でオレを見つめる。
絶対に、自分の意見なんて変えない気だ。
「まあいいや、とにかく…オレが帰る時さちょっと混んでたわけだよ…そんな中で、ちょっと離れた所でアイツの姿見つけたんだけど、なんか様子がおかしかったから、よーく観察したら見つけちゃったわけだよ」
「見つけちゃって、どうしたんッスか?」
「そのまま言っても冤罪だ!とか言われかねないからさ…携帯開いて、そのおっさんの手の写メ撮ったんだよ」
フラッシュの音がした時は車内の空気が変わったらしいが、それを突き付けられた相手は溜まったものじゃないだろう。
動かぬ証拠が、目の前にある訳だから……。
「それで、無事に御用になったわけ」
「そうッスか…」
「まあ、相手がフリオニールの事を女の子と間違えたのか、男と分かっててやったのかは分かんないけどさ」
いや、どう考えても身長180超えの先輩が、女性に間違われる事は無いと思う……。
「しかし、あの時のフリオの表情はエロかったなぁ」
「はっ…え?」
「ちょっと赤くなってもじもじしちゃってさ、満員電車で恥ずかしいからだろうけど、男だって声あげればいいのに…初心だからさ、何も言い返せない訳。こう、嫌なのに我慢してる姿とか、もうかなり腰に…」
「先輩!!いい加減にするッス!!」
隣に座る先輩に向けてそう叫ぶと、彼はニヤニヤ笑いのまま「ごめん」と謝った。
まったく、変な想像しちまったじゃないッスか!!
心の中でフリオ先輩に謝り、隣に居る想像力をかき乱してくれる先輩を睨む。
彼自身は悪びれた風もなく、よくもまあ、こんな人が正義の味方的に痴漢を捕まえるなんてしくれてたものだ、と思った。
「そうだ、その時のフリオの顔だけのアップの写メもあるけど、欲しい?やるよ」
「いらないッス!!」
拒否するものの、結局送ってこられたメールの表情を見て、それを消去できないオレの、自分の意思の弱さに泣く事になる。
男性でも、痴漢に遭うような方はいるんだとか……。
事実を元にされ、加筆修正を行ったフィクションです!!
2010/5/29
「さてと…これで、お前も一応はこの訓練所を卒業しちまう訳だ」
少し寂しそうにそう言う教官に、俺は、「今までありがとうございました」と、礼を言う。
それを受けて、彼は「それが仕事だからよ」と、ニッコリと笑った。
「それで、ここを出てお前はどこに行くんだ?」
「赴任先ですか?ハンターギルドに登録して、それから仕事先を探そうかと…」
そう言う俺に、「まあ、そうだろうな」と教官は頷く。
「……実は、俺様の住んでる村なんだが、そこの専属ハンターが相棒を探してるんだよ」
「相棒?」
「相棒というより仲間だな…結構腕の立つ奴なんだが、まあ、やっぱり大型モンスターの討伐に行くには、仲間が居た方が心強いだろ?
アイツは近距離専門だから、遠距離武器が扱える相棒が欲しいんだと」
そう言って、教官は俺の背に負っている弓を見る。
これは、もしかして…だが。
「俺なんかで、お役に立てるでしょうか?」
「充分だよ充分、お前は勤勉家だし、才能がある、アイツも気に入ると思うぞ」
満足気に俺にそう言う相手に、俺は心が揺れる。
仕事先が見つかるのなら、それで凄く嬉しいのだが……。
しかし、相手は腕の立つハンターだという。
そんな相手に、新人の俺なんて役に立てる気がしないのだが……。
「まあまあ、お前さんは俺様のお墨付きだ。
とにかく、一先ずは会ってから考えるのもいいだろ?な?」
そう言う教官に押されて、結局俺は頷いてしまった。
「それで…君が、ジェクトの話に聞いていたハンターかな?」
「はい、初めまして」
緊張にガチガチになってしまったまま、俺は相手に頭を下げる。
定規を当てて測れば、きっと直角になるだろう…と予想される角度での礼に、彼はふっと笑う。
「そんなに改まらなくていい、顔をあげなさい」
「はい…」
そっと顔を上げると、白く整った顔立ちのハンターが青い瞳で俺を見つめ返していた。
綺麗な瞳だ……。
「私は、ウォーリア・オブ・ライトというんだ、君は?」
「フリオニールです」
「君は、弓を使うんだったね?」
「はい…そうです」
そう頷くものの、扱えると言ってもそこそこだ…。
ただ、なんとなく…自分には弓が合っているというだけの話。
つい先日、訓練所を出たばかりの新人の腕なんて大した事なんて無い。
正直……そこまで、期待してほしくないのだ。
……と、正直に言うと彼はふと微笑みかけた。
「君は随分と正直者だな」
「そうですか?だって…本当の事、ですし……」
そう言う俺に、彼は更に笑みを深める。
「そうか…それで、君はここに来てくれるのかな?」
「あの……いいなら、ですけれど」
「勿論だ、是非とも来てくれ」
そう言って右手を差し出す彼に、俺はどうしたものか一瞬迷うが…少し照れつつも、彼の手を握った。
「宜しく頼む」
「はい」
初めて握った彼の手は、強く逞しい、暖かい手だった。
滾った結果、本当にやってしまったモンハンパロ。
原作の設定を軽く無視している部分がありますが、気にしない方向でお願いします。
2010/6/13
「今日はありがとうな、ウォーリア」
「いや」
助手席に座り、私に謝礼を言う彼に、ゆるゆると首を振る。
今日は彼の部活の大会だった。
応援に行くと約束し、現地に向かうと、彼は酷く驚いた様な表情で私を見た。
「どうしたんだ?」と聞くと「昨日、急に仕事が入ったから…」と、ビックリした表情で彼は私を見返した。
確かに仕事は入ったが、それは昨日の話だ。
人との約束を破る様な事はしない、そう言えば、彼はふと笑顔を見せてくれた。
「ウォーリアが来てくれたら、俺も凄く力が出せる気がする」
そんな満面の笑顔の彼が、酷く可愛らしかった。
試合の結果は、まさしく…彼の言葉の通りだった。
つまりは、“凄く力が出た”結果、優勝した。
「今日は、私の家に泊まっていかないか?」
「いいの?急に」
「どうせ、君も一人暮らしだろう?私もそうだし、迷惑も何もない」
そう言うと、少し迷ったものの…彼は、しばらくして頷いた。
人通りの少なくなったマンションの前の通りで、少し車を停車する。
「?どうしたんだ?ウォーリア?」
あと少しなのに、と不思議そうに私を見返す彼の方へ、身を乗り出す。
彼の手に私の手を重ね、そのまま、唇も重ねる。
柔らかく甘い、彼の唇の感触を味わい、満足して離れると、真っ赤になった彼が声にならない声を上げる。
それを見て、満足気に笑みを作る私。
「なっ!!…何、するんだよウォーリア!こんな所で!!」
「ん?試合を頑張った君への、ご褒美だ……前払いだけだが」
「はぁ……前払いって?」
「残りは、私の家で」
そう言って笑うと、再び車を出す。
真っ赤になっている彼を、どうやって悦ばせてあげようか…と、心の中で考えながら。
自動車教習用ビデオの安っぽい作りに乾杯、という事で変換してみた馬鹿ップルでした。
WOLの下心しか見えない行動、この後はまあ、フリオは食べられたでしょうね……。
2010/6/18