ブログ小話まとめ

翌朝、既に自由登校となった三年生の多くは自宅でのんびりしたり、バイトに明けくれたりしているのだが。
時間への縛りというのがないから、と言って…時間にルーズに生きるつもりはない。
そう思う俺に対し、弟は既にルーズな生活を送っている。

まあ、仕方ないか。

ふぅ、っと小さく溜息を吐くと、大家さんの家の呼び鈴を鳴らす。
「はい」
「おはようございます、ミンウさん」
「ああ、おはようございます」
二コリと微笑む大家であり、俺達の後見人でもあるミンウさん。

「そうか…もう、高校も卒業なんですね」
平日なのに、学校へまだ行っていない理由を思い出し、一人納得するミンウさん。
「はい、お世話になってます」
「フフフ、そんな事気にしなくていいといつも言ってるでしょう?それより、どうしたんですか?」
そう尋ねられ、俺は持っていた包みを差し出す。

「あの、コレ……バレンタインデーのチョコレートなんですけど」
そう言うと、彼は驚いたように目を見開く。
「君が作ったんですか?」
「えっと…あの、はい……」
どもりながらもそう返答すると、彼はふわりと微笑んだ。

「弟君にでも、ねだられましたか?」
ずばりと言い当てられ、俺の心臓が驚いて跳ねた。
「何で」
「こういうイベントに、君は率先して参加するタイプではないでしょう?兄を愛している弟君なら、君に無理な注文でもしたのかと」
この人は本当に、どこまで人の観察が得意なんだろう?
やはり、大家のような人の生活に密着した事をしていると、そんな風になってくるのか?

「…お口にあうか、分かりませんけれど…」
「君は料理上手ですから、楽しみにさせてもらいますよ」
笑って感謝してくれるミンウさんに、俺も微笑み返す。

「それじゃ俺…これから、シャドウを起こしてこないといけないので」
「彼も朝寝坊さんですね。コレ、ありがとうございます」
そう微笑む彼に、俺を笑顔を返し家へと帰ろうとした俺の背に、「ああ、そうだ」とミンウさんが声をかける。
「体には気を付けて…お兄ちゃんをもっと労わるように、とシャドウ君に伝えておいて下さい」
「……はい?」
「若いからとはいえ、無理をしてはいけませんよ」
そう言って意味ありげな笑顔を作ると、ミンウさんは家へと入ってしまった。

「もしかして……バレてる?」
そんな訳ない…そんな訳ないよな?
しかし、彼の言葉の端から考えられるのは、昨晩の事に関して俺への労わりと、弟への注意にしか聞こえない。

「ここって…そんなに、壁薄いんだっけ?」
そんな疑問を持ちつつ、まだ痛む腰を擦り、俺は自分の家へと向けて歩いた。
とりあえず、あの性欲の魔人を叩き起こしてやろうと、心の決めて……。

バレンタインシリーズ、弟編の後日談、タイトル付けるなら【大家さん編】でしょうか?
何気に彼等のアパートの大家さんがミンウさんです。
両親を亡くしてから、色々と世話を焼いてくれている後見人さん…そして見守ってくれてる人という事で…。
2010/2/2


人混みの中で、ふと佇む男の姿を見つけた。
遠くからでも目立つ銀色の長髪、褐色の肌、間違いなくそれは知り合いの姿。

「こんな所でどうした?」
別にこのまま無視して通り過ぎても良かったのだが、なんとなく、俺はソイツに声をかけた。
「おう、スコール」
やけに上機嫌で俺に挨拶をするバイト先の同僚。
その服飾の凝り方から、さては…と、俺は思考を巡らせる。

「デートか?」
「そういう事」
それはもう満面の笑顔で、嬉しそうに俺にそう返答するシャドウに、俺は小さく溜息。

コイツの彼女自慢はよく知っている。
それはもう、ベタ惚れなのである……。

ただ……コイツの“恋人”は、どうも一般的な出会いで恋愛へと発展していったわけではないだろう…と、俺は思っている。
コイツ自身、どこまでその自覚があるのかは、知らないけれど……。

コイツが彼女自慢をしだす以前、コイツの自慢といえば自分の兄貴だった。
ここまで堂に入ったブラコンも、中々見かけない。
その兄貴自慢がある時から、一切なくなり今度は自分の“嫁”自慢だ……。
言ってる内容は、以前の内容と一切変わっていないのに。
だから、俺は疑っている。


コイツの“恋人”というのは、まさか…とは思うが、コイツの兄貴ではないのか……と。


「待ってるのか?」
「恋人待たせるのは忍びないでしょ?」
「お前がそこまで夢中になる恋人、というのも想像できないな」
「そう?」
当たり前だ。

バイト先で、あれだけ告白され続けそれを全て断り続けていた同僚。
学校でもさぞかしモテるだろう事は、予想できる。
そんな男を、ここまでベタ惚れさせられる相手なんだ。

「お前だって、会えば分かるって!惚れるんじゃないぞ!!」
「はぁ……言われなくても分かってる」
そこまで夢中になれる理由が何か、俺には多分理解できないだろう。
何を大事に思うのかは、人それぞれなのだから……。
コイツにとって大事なものと、俺にとって大事なものは違う。
そこでふと思い出したように、俺はここでは不自然な流れで彼に尋ねる。

「お前の兄貴は、元気か?」

それを聞いたシャドウは、一瞬大きく瞬きをした後、何かを理解したらしくニヤリと笑みを深める。

「俺、お前のそういう勘の冴えてる所は結構好きだぞ」
「そうか」
否定しない、という事は…つまりは、そういう事か。

「軽蔑した?」
ちょっと真面目な顔をしてそう尋ねるシャドウに、俺は首を横に振る。
「いや、恋愛は人の自由だ」
実際、俺は別にコイツを軽蔑してなんていない。
人の恋愛は自由であればいい、相手が誰であろうと、それは同じ事だ。
なら、男だろうが兄弟だろうが…本人が幸せならば、それでいいじゃないか。

「お前のその理解の良さも、俺は好きだよ」
「お前の兄貴と、どっちが好きだ」
「それは、また別次元の話だろ?」
そう言って笑うこの男に、俺は小さく溜息。


まったく、本当にこの男は相変わらず…たった一人だけを愛している。
見た目、言動、性格に似合わず、本当に一途な男だ。


「おっ!来た来た!!」
隣で話していた男の顔が、パッと嬉しそうに輝く。
そして相手へ向けて大きく手を振る。
それに気付いたらしく、相手は向こうから駆けてくる。

風になびく長い銀髪と、褐色の肌。
街行く人間が注目する、整った顔立ちの二人組。

「遅いよ」なんて言いつつも、それを咎めるような顔ではなく、来てくれた事を本当に喜んでいる表情。
そんな嬉しそうな満面の笑みなんて、今まで見たことない。


ああ、コイツは本当に幸せなんだろう。
こんなに愛する人間と出会えて。


「紹介するよスコール、俺の兄貴!!」
走って来た相手を、背後から抱き締めて俺の方へと向き直ると、コイツはそれはそれは自慢げに、自分と全く同じ遺伝子を持つ、愛する半身を紹介した。

双子だけで書こうと思ったけれど、何故かスコール視点に。
本日中にアップできて、本当に良かったです。
2010/2/2


「君は何だ?」
自分の中に居る、もう一人の私に対して問いかける。
赤い姿の私は、微動だにせずに私を見返し…そして、答える。
「お前の中に居る、もう一人の私だ」

「それは分かっている…ただ、君は私とは違う」
「当たり前だ。私と君は、まったくもって正反対だ」
フッと少し馬鹿にしたように笑いかけ、私にそう言う相手に、逆に私は苛立ちを覚える。

私は何よりもこの男が嫌いだ。
私の中に居る、私とは正反対の感情を持つこの男。
全てが私とは正反対であり、私とは違う衝動や感情の下に行動する。

私が守ろうとするモノを、彼は破壊し。
私が好きなモノを、彼は嫌う。

破壊の衝動に駆られたその姿は、私と敵対するあの男を彷彿を思い起こさせる。

「君は、好きな男が居るな」
ニヤリと私へ向けて笑って彼はそう問いかける。
誰の事を言っているのか、私自身の事なのでスグに分かり、溜息を吐く。

「君はフリオニールの事が嫌いなのか?」
そう尋ねると、彼はニヤリと笑みを深めて「いいや」と首を振る。
「とても面白い事だが、私も君と同じように彼の事が好きだ」
「……珍しい事もあるものだな」

君と私は、全くもって正反対だというのに。

「私と君の、あるハズのない共通点だ」
「それが……どうしたというんだ?」
そう尋ねる私に対し、彼はふと表情を消す。

「私は、彼を壊したい」
「…何だと?」
「私は彼を、心の底から愛し抜きたいがそれと同時に彼の全てを破壊したい…精神を崩壊させ、全てを私の物にしたい」
彼は、その内にある破壊願望を私へと曝け出す。

「そんな事はさせない」
そんな彼に首を振り、私はその欲望を拒絶する。
「何故だ?」
「私は彼を愛している、慈しみ守り、大切にしたいと思っている」
そう言う私に対し、もう一人の私は首を横に振る。

「だが、それと同時に…君は彼を自分の物にしたい、という強い欲望を持っている」
「自分の願望に取りつかれていては、何も手に入りはしない…全てを破壊してしまうだけだ」
そう、目の前に居る、もう一人の自分のように。
「それでいいじゃないか」
「いいや、良くない」

そんな寂しすぎる思いは、必要ない。
そんな悲しすぎる感情は、抱いてはいけない。
私は心の中で、自分へ向けてそう呟く。

だが、彼はそんな私を見て笑いかける。

「君は何も分かっていない」
「……何を?」
「君が本当に、彼を慈しみ・守りたいと思うのならば、私はここには存在していない事だろう」


“こんな、破壊を望む己などは…”


「綺麗事だけで、人は生きてはいない」
「ならば…君は、私の中の“悪”の部分だと?」
「その通りだ、君が光を名乗るのならば。君と正反対の私は、さしずめ“闇”と名乗った方がいいのだろう」

光と闇は相反する。
それ故に、共存できる。
全ての人間の中に、その二つは共存している。

そう……私の中にも。

「君は、それで満足なのか?」
全てを破壊する衝動を、その身の内に宿したままで。

「それを問いたいのは私の方だ、君の方こそ満足なのか?」
善と正義の為に、己の感情を犠牲にしていても……。

「私はそれで満足だ」
「私もそれで満足だ」


光と闇は共存する。
しかし、決して相容れない。


一歩も進退を許さぬまま、二つの感情は睨み合う。

フリオニールと違って、WOLの場合は、ノーマルとアナザーは凄く仲が悪そうだと思ってます。
自分の中で、フリオを巡って喧嘩してそうです。
大体は優しく接するか、欲望のままに接するかで揉めてると思われます。
2010/2/4


店先に並ぶ淡いピンクの花。
花というのは生き物だ、植物の移り変わり程、季節感を感じられる事はない。

「桃の花ってさ、本当なら五月くらいが見ごろなんだぞ」
店先の花を手入れしながら、彼はそう言った。
「そうなのか?」
知らなかった。
桃の節句というものだから、てっきりこの季節に咲くものだと思っていたのに……。
桃の花を見てそう考えていた私に、彼は笑いかける。
「まだ梅の方が見ごろだからな、だから、これは特別に栽培したものなんだ」
生けられた切り花の枝を整えて、彼は笑う。
彼が花をとても愛しているのはよく知ってる、その献身的な姿は本当に愛らしい。

季節を愛するというのは、本当に良い事だと思う。
それだけで、日常が美しくなるのだ。
輝かしいんだろう、きっと。
彼にとっては、一日一日が。


「兄貴、腹減った」
奥から出てきた彼の弟は、そう言うと背中から彼に抱きついた。
そして私を睨んで「こんばんは、ウォーリアさん」と挨拶した。
相変わらず、私はあまり好かれていないらしい。
まあ、それは当り前だが。
「まったく…恥ずかしい奴だな。重いから離れろよ」
「嫌だよ、いいじゃん別に」
ぎゅうっと抱きつく彼の姿は、どうも子供っぽい。
そういう誰かに甘える仕草は、確かに私は苦手としている。

「困っているだろう、離してあげなさい」
フリオニールに加勢する私を見て、さらに一度睨み返すと、しぶしぶといったように彼から離れた。
「お客様の前で恥ずかしい」
「客って…友達の間違いじゃないの?」
「どっちだっていいだろ?あっ、そうだ…ウォーリアさんは、夕飯どうするの?」
「これから帰って食べようと思うんだが」
「そっか、もし良かったらウチで食べていかない?」
その誘いに、彼の弟はビックリしたように兄を見る。

「構わないのか?」
「いいよ、どうせ俺達二人しかいないし、一人分くらい対して変わらないしさ」
そんな折角の申し出なのだ、しかも想い人からの。
「それなら、お相伴にあずかろうかな」
「マジで?」
そう口にしたのは弟の方。
フリオニールはその返事に、とても嬉しそうに笑顔で「良かった」と口にした。
「それなら、今日はちらし寿司にしようかな、折角だから…桃の花、テーブルに飾って」
彼はそう言って、花の枝を一本取り上げた。
嬉しそうに口にする彼は、本当に日々を幸せに暮らしていられるんだろう。

すっかり忘れ去ってしまっていた、日常の小さな出来事を思い出させてくれる彼。
そんな彼に従って、私も幸せになれるのだ。
「すなまないな、ありがとう」
「いいんだ」
そうやって笑う彼に、弟は不満げに見ていた。

花屋のフリオとシャドウと、会社員のウォーリアの三角関係(?)。
桃の節句っていうのが、もうどうしても花に関係する事なのでね…。
2010/3/3


「バレンタインデーにチョコいくつ貰った?」
義兄からの急な質問に、洗い物を続けながら少しだけ意識を背後に向ける。
「一つだよ……誰かがウチのポストに入れておいてくれたんだ」

朝、新聞を取りに行ってみたら酷くビックリしたのを覚えてる。
俺の名前へ宛てて、小さな小包が届けられていたんだ。
郵便配達なんてまだ回ってる時間じゃないだろうし、そんな痕跡が認められない以上は、誰かが夜から明け方の内にコッソリ届けに来たんだろう。

少し頬を染めて、嬉しいやら・恥ずかしいやら・照れるやら…色々な想いで胸が一杯だった俺へ向けて、レオハルトは小さく溜息を吐き、そして……。

「それ、俺からのだぞ」
「えっ!!?」
予想だにしない相手の言葉に、俺は洗っていた皿を思いっきり落とした。


「いや、一つも貰えないと可哀想かな…と思って」
洗い物を終えてリビングへと戻って来た俺へ向けて、レオンハルトは苦笑いと一緒に呟く。
「何か、余計惨めなんだけど……」
幸せな淡い思い出を、彼の一言で一気に打ち砕かれた俺は、少し苛立ちすらも覚えてそう返答する。
言わないでいてくれたなら、それは充分に俺にとっては幸せな思い出だったんだ!
なのに、この人は!!

「別にいいだろ?良い夢見れたんだしな。そうそう、お返し寄越せよホワイトデーに」
人の気も知らないで、義兄は呑気にそんな事を言う。
人の幸せな思い出を打ち砕いておきながら、お礼はしっかりと貰う気で居るらしい。
「わざわざ買うのか?」
っていうか、ホワイトデー…って今日が当日だし、今から買いに行けとでも言うんだろうか?
すると、俺の前に座っていたレオンハルトは俺に向けてニッと笑みを深める。

あっ…この顔は、何か企んでる時の顔だ。
「いいよ、ここで貰えるから」
「何?」
すっと相手の顔が近付いた、と思ったら…そのまま流れるように、俺の唇とレオンハルトの唇が重なり合う。

ん……?
俺…今、レオンハルトにキス…されてる?

「!!!!ちょっ!何!?」
触れるだけで離れた相手から、とことん後ずさって距離を置いてからそう尋ねると、レオンハルトは意地の悪い笑顔を見せて「だから、お返しをくれって言ったんだろ?」と、恐ろしい事を言った。

「誰も、あげるとは言ってないぞ!?」
「人から物を貰っておいて、お礼をしないのはよくないだろ?」
いや、そういう意味で言うなら最初から差出人不明な以上それは無効だと思うし、それに加えてお礼を強要して、更には強引に奪っていくのは問題外だと思うのだが…。
顔を真っ赤に染める俺に対し、レオンハルトは涼しい顔をして、何かを取り出すと俺へと差し出した。

「何コレ?」
「中身読んで、考えてみてくれ…先月お前に出し損ねた物だよ」
そう言って最後に優しく微笑むと、レオンハルトは俺の頭を少し撫でてそのまま部屋を出て行ってしまった。

部屋に一人残された俺は、真っ白な封筒に入った「出し忘れた」という“何か”を、ゆっくりと開いたのだった。

ホワイトデーという事で、某・白戸家族のCMをパロディでやってみました。
レオンハルトは絶対に真面目だと思うので、こういうはっちゃけた事はしなさそうですけれど…恋愛に関しては、なんとなくやり手そうなイメージもあるのです。
2010/3/14


「月曜お疲れちゃん!」

疲れて帰って来たら、笑顔で出迎えてくれるルームメイト。
会社員の自分と違い、まだ大学生の彼は私と比べて家に居る時間が長い、その為に家事を仕切ってくれておる。
中々、頼りになる恋人だ。

ダイニングの椅子に身を沈め、ゆっくりと長く息を吐き出す私の前に、今夜の夕食を運んでくる彼。
「ほら、そんな疲れた顔しない」
ポンと私の背中を叩いてそう言う彼。
「済まない」
そんな彼に付かれた笑顔を返せば、ふぅ、と呆れたように溜息を吐く。
そして一度キッチンへ戻ると、冷蔵庫から何かを取り出して私の元へと戻ってくる。

「月曜日は一週間の始り、という事で…そんな疲れた顔はドカンと吹き飛ばさないと!」
笑ってそう言う彼が、私の前にビールの缶とグラスを置く。
プルタブを明けてグラスへ注いでくれる彼の、素晴らしきサービス精神に感謝して、ふと笑顔になってグラスを受け取る。
そういう君の心遣いが、何より私を癒してくれるんだ。

学生時代とか先輩後輩だったのが、そのまま付き合って住む方向にとかになったらいい感じだな…と。
いや、疲れた社会人WOLに対し、癒しをくれるのは学生のフリオかな?と思っただけです。
2010/3/22


「火曜日お疲れちゃん」

「人を家に呼び付けておきながら、自分は接待ってどういう事?」
「黙れ」
私の家の合鍵を渡している部下兼恋人に、「今日は家に来い」…と私は確かに言った。
それが予想に反して帰る時間が伸びた、それを理由に怒られている。

「とりあえず疲れただろ?今週はプレゼンと会議と立て続けにあるし、へバッてる場合じゃないだろ?ここでドカンと疲れを吹き飛ばしておかないと」
そう言って、私の前にビールの缶とグラスを置くと、彼は笑いかけた。
今まで飲みに付き合わされていたんだが、それで疲れが飛ぶわけがないだろうと一蹴してやりたいところだ。
「フン…どうせならワインの一本でも持ってきたらどうだ?」
「こういう時に明けて飲むのにワインは何か勿体ないだろ?」
そういう物だろうか?酒は飲みたい時に飲んでこそ意味があると思うのだが……。

まあ、構わん…疲れを飛ばすのに必要なアルコールというなら、コレで充分だ。
相手がグラスにビールを注ぐのを眺めつつ、まだ長い一週間を思うと溜息が出た。

バレンタイン時の皇帝×フリオの社会人設定。
接待の帰りだけれども、何となく皇帝が飲み足りないんだろうな…とか思ってグラスを差し出すフリオとか、考えてみました。
しかし、書いてみて思ったんですが…皇帝は本当にビールを飲むものなのか?
2010/3/23


「水曜お疲れちゃん」

「お帰りクラウド」
「うん」
玄関で出迎えてくれる恋人に対し、適当に返事をすると彼は呆れたのか小さく溜息。
「お疲れ、みたいだな」
「ああ」

そりゃ、体力的にも気力的にも疲れている。
ポーカーフェイスを気取っていても、疲労が顔に表れているらしい。
ソファに倒れ込むように座る俺を見て、キッチンから「夕飯は?」という声があがる。
「食べてきたからいい」
「そっか」
そう答えた俺の頬に、ピタリと冷たいものが押しあてられ、ビックリして飛び起きる。

「平日も後半分なんだし、疲れてる暇ないだろ?この辺でドカンと、疲れを吹き飛ばさないと」
な?と首を傾ける彼から、ビールの缶を受け取り小さく笑って「そうだな…」と返答する。
「風呂沸かしてあるから、さきそっちの方が良かった?」
「そういう事は、玄関でしてくれ」
できれば、その後にもう一言付け加えて。
彼に笑ってそう言って、プルタブを引き上げた。

WOLさんと同じく、社会人と学生みたいな組み合わせで…年齢的に不備が無いという。
幼馴染で学校が近いからという理由で、クラウドの所に居候してるとかでどうでしょう?(聞くな)
2010/3/24

「木曜お疲れちゃん!」

「あーもう、終わんないし!」
ベタンと床に寝ころんでそう叫ぶと、奥からルームメイトが顔を覗かせる。
「レポート終わらないのか?」
「そう、もう面倒だし、今日はここまで!!」
「いいのか?提出期限とか」
「大丈夫大丈夫」
期限までは確かにまだ時間がある、という事で今日はお終い!お終い!!

そんな俺を見て、フリオニールが溜息を吐く。
「バッツさ、毎回同じ事言って、毎回期限ギリギリで慌てるんじゃないか」

「そんな過去は覚えてません、俺は未来しか見えて無いの」
「そういう物覚え悪いお前には、疲れをドカンと飛ばして、さっさと課題の続きする!」
そう言って、俺の机の上にビールの缶を置いた。

「おー…ついでにつまみもお願い」
笑顔でお願いすると、呆れたような溜息が上から聞こえた。
「はぁ……早く課題しろよ」

全く、年下のクセに…。

成人組の選択肢が限られてきたので、バッツにしてみました、セシルはビールのイメージに合わないのです。
ジェクトは物凄くビールが似合いそうですけれど。
2010/3/25


「金曜お疲れちゃん!」

ようやく終わった仕事に、グウッと大きく伸びをする。
「あぁ…疲れた」
そう愚痴を零す俺を見て、一緒に住んでいる居候の青年はふぅと溜息を吐く。
「ダラしないぞジェクト…ちゃんと座ったらどうなんだよ?」
「いいだろうが別に、家でくらい楽にさせろや」
グッタリとソファに沈み込んで、俺は青年の言葉に反抗する。

社会人は疲れるんだぞ、学生。
そう叫びたい気分だ。

「今日は平日最後なんだし、明日からは休みなんだろ?なら、ここらで今日の内にドカンと疲れを吹き飛ばしておくか?」
ソファに寝ころぶ俺の元へやって来て、手にした缶とグラスをテーブルへと置く。
「お仕事、お疲れ様…てか?」
「そういう事だな」
用意したつまみを並べつつ俺に笑いかける青年に、ゆっくりとソファへと起き上がる。

「美人が晩酌してくれるなら、更に疲れも飛ぶんだがな…」
空のグラスを手に相手にそう訴えかけると、フリオニールは苦笑いして「なら、もっと別の相手探せよ」なんて言いつつも、俺のグラスへとビールを注いだ。

ジェクト×フリオ…ジェクトが普通の会社員とかイメージにはないですね、何かのスポーツの監督とか、そういうのだといいいです。
ティーダは絶賛家出中という事で、フリオは何なんだとか気にしたら負けです。
2010/3/26


「土日も以外とお疲れちゃん!」

偶には買い物に付き合って!!という妹の声に、折角の休みを一日思いっきり棒に振ってしまった。
家族サービスは家長の務め…とは言うが、それでも年頃の女性というのは、同じ人だとしても中々違う生物のように映る。

「今日はマリアとでかけて来たんだろ?どうだった?」
帰って来てソファに座りこむ俺に、別の用ででかけると言っていたフリオニールがキッチンから俺へ尋ねかける。
「マリアは楽しんでたみたいだが、俺は疲れたよ…ああ、あとマリアはレイラの所に泊まってくるそうだ」

その為に、彼女が買った荷物の半分以上は俺が家まで持ち帰る事になった。
……もしかして、その為に呼ばれたんじゃないか?という疑問を抱いてしまうのだが、まあ…当たり前か。
若い女性の好みに対して理解がある方ではない、という事は荷物持ちというのが俺には似合う役なのだ。

「ほら、休みも休めなかったレオンハルトへ、今日の疲れは今日の内にドカンと吹き飛ばしてくれよ」
そう言って夕飯を運んできたフリオニールが、俺へビールの缶を差し出す。
「よく冷やしといたよ、飲むと思って」
「気が利くな…」
疲れた笑顔で笑いかけて、彼に向けて手を伸ばした。

レオン兄さんはレイラとも凄く仲良しだと思うのです、兄妹でデートとか行ってる姿とか可愛いと思います。
女子高生的なノリについていけずに困ってるレオン兄さんとか、激しく萌えます。
2010/3/27

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