「気分はどうですか?火神君」
そうだな、人生で一番最悪だよ。
少年Kの受難
まだクラクラする頭を働かせてなんとか体を起き上がらせる、手や足の指先が痺れて上手く力が入らない。それでもゆっくりと体を起こして周りを見回せば、見た事のない真っ白な部屋がそこにはあった。
イメージとしては病院の部屋といったかんじだった、シンプルでほとんど物がない。でも自分は確か部活終了後に自主練をしてから、家に帰ろうとしていたはずだ。
はずというのも、それから記憶が途切れているのだ。だとしたらその途中で病院に運び込まれたというのなら、まあ納得できるかもしれない。
しかし、俺は事故には巻き込まれていないし、きっとここも病院ではない。
何故なら俺はどこも怪我をしていない。治療後の麻酔で痛みが麻痺しているわけじゃない、この体のどこを見ても怪我の痕はない。
そしてもしここが病院なら、少なくとも患者を全裸にした上に両足に枷を嵌めて、大きく開かせた形でベッドの柵に固定したりしないだろうし。両腕を囚人が付けるような拘束用の太いベルトで束ねられるように後ろ手に縛られているわけがない。腕を支えに腹筋の力だけで起き上がってみて、最初に見えた光景がこれだ。
どう考えても、俺が連れ込まれているこの場所は普通の部屋じゃない。
前にタツヤと見たバイオレンス系の映画を思い出して身震いする。身動きの取れない女に対し、サイコキラーが蛙の解剖実験みたいに体をバラバラにしてしまうという、なんとも血生臭いシーンはそのまま、今から自分の身に降りかかる事のようで思わず嫌な汗が流れる。
マジかよ、こんな所で俺の人生終わるのか?
そう思った時、急にどこかから見られているようなそんな気味の悪さを覚えて、悪寒が走る。
この感覚は知っている、少し前から自分の周りに現れるようになった、正体不明の視線。
そうは言っても自分は男だし、危ない目に遭う事なんてないだろう。精々、他校の行き過ぎた視察の人間か、そうでなければ俺に好意を寄せてくれている女の子でもいるのか、そうからかっていた先輩の言葉を信じて、信じ込むことで、その場をやり過ごしていたけれど。
殺されるような相手に覚えはない。
いや、こっちに覚えは無くても恨みは買っているのかもしれない。または、ただ単純に相手の好みに合ったからなのかもしれない……まあ、サイコキラーに好かれたって全然嬉しくなんてないわけなんだが。
そう思った時、部屋の隅に置かれた椅子に腰かけた少年と目が合った。
意味が分からなくて、一瞬、自分の頭の中が真っ白に塗り潰されたような気がした。
「気が付きましたか?」
「……はっ?あ、ああ」
目が覚めた事についてなのか、それとも自分に気付いてもらえた事を言っているのか分からないけれど、とにかくどっちつかずの返事を返すと、少年は「良かったです」と言って腰を上げると俺のベッドの側にやって来た。
「なあ、お前……」
「僕は黒子テツヤと言います、初めまして火神君」
「はあ、初めまして?」
そう返事してから、ある事に気付く。
コイツ、何で俺の名前知ってるんだよ?
「君の事なら知らない事なんてほとんどないですよ、ずっと観察してましたので」
なんて、まるでこっちの心を見透かしたように平然と答える少年に、そうかと聞き流しかけて、いや待てどう考えてもおかしな部分があっただろうと、どこかで自分の声が静止をかけた。
俺の事を、ずっと観察してた?
「観察って……まさか、お前」
「世間的に言わせれば、ストーカーってやつですね」
思ったよりあっさり認めやがった、ストーカーって自分がそうだって認めないとか聞いたけど、違うのかよ。
いや、コイツが異常なだけなのかもしれない。っていうかどう考えても普通の奴じゃない。
「で、そのストーカー君は俺の観察に飽きて、ついに捕獲に乗り出したってわけかよ」
「凄いですね、正解です」
君、馬鹿なのにこういう勘は冴えてるんですね、なんて関心したように言われて思わず頭に血が上る。
「ふざけんじゃねえ!いいからとっととコレ外せよ、んな事して何になるっていうんだよ!」
「予想通りの反応でビックリですよ。
いいですか。火神君が今信じているかもしれない、警察だとか司法機関なんていうものはね、所詮は人が作り上げたものでしかありません。そういうものは全て権力だとか慣例だとかに縛られています。だからね、想定外の出来事というものに対応できないんですよ。いいえ、しないんです。そういうものに対応しない事で、自分達は平和なんだって装っているんですよ。そうしてね、そうやって見ないフリをしている人達の影で、彼等の目を欺くために仕事をしてくれる人達も沢山いるわけです」
「…………つまり、何だよ?」
認めるのは嫌だが、確かに俺はあまり頭が良くない。少し難しい言葉を使って長々と話をされると、それだけでもう内容が頭に入ってこない。そんな俺を見て、どう思っているのか分からないが、黒子は「では分かり易く説明しましょう」と黒子は言う。
「まず君の身代わりを用意します、顔が分からないような状態で発見された遺体は持ち物や服装から君だと判断され。司法解剖を担当する医師に根回しをして、遺体は君だという報告をしてもらいます。
きっと世間ではとても凄惨な事件として扱われるでしょうね、まあ女の子の方が騒ぎは大きいのでしょうけれども。
それからしばらくして、その犯人が警察に捕まり、自分がしたと自供したとします。そうすれば世間ではその事件は既に終了です。君の知り合い、ご家族にはまだこれから長い裁判という経過を経て事件は解決されていくんでしょうけれども。
でもね、君の身代わりを君だと診断してもらった時点で、誰も君は生きていると考えたりはしませんよ?ましてや、僕の力で攫われてこんな所で監禁されてるなんて考えません」
という計画を立ててみたわけです、と黒子は言う。
「そ、んな事、できるわけねえだろ」
あまりにも現実離れした話を、黒子という少年は表情一つ変えずに話すので、思わずそうなるのではないかと納得しかかった。けれども、どう考えてもおかしい。そんな事できてたまるかよ。
それこそ、ゲームだとか映画だとかの話じゃないんだ、んな事があってたまるか。
そんな俺を見下ろしていた黒子は、ベッドの上に乗り上げると身動きの取れない俺の頬に手で触れる。体を捩って逃げようとしても、そのやけに熱い手から逃げられず、襲い来る吐き気を堪えて睨み返す。
「いいえ残念ながら、僕にはそれができます。
自慢じゃないんですが、僕って体力も腕力も人並み以下なんです。君の観察以外の趣味といえば読書で、普段から運動なんてあまりしませんし、特別に体を鍛えているわけでもありません。
ところで、君の身長は190でしょう?僕より22センチも高いんですよ、悔しいんですけれど大人と子供くらい差がありますよね。君は僕が一人で、君を気絶させて、ここまで運んで来たと思いますか?そんな事できるわけないじゃないですか」
確かに言われてみればその通りだ。
シャツから覗く少年の腕は細く、どう考えても日本人の中では規格外の俺の体を抱えて運べるようなものじゃない。そんな無茶をすればすぐに折れてしまうんじゃないか、と考えてしまう程にこの少年は腕力なんてものとは無縁の存在に見える。
勿論、見た目に反して力の強い奴も居るには居る、けれどもそれだって程度がある。どう考えても190の人間を一人背負ってこの少年が歩けるわけがないし、出来たとしてもかなり目立つ。
「一応言っておきますが、ここまで君を連れてくるのにかなり手間はかかってるんですよ。
君は暴漢に攫われて殺されるというシナリオがあるので、車で近づいて薬品を使って中に連れ込んだんですけど。わざわざある店の防犯カメラにその映像が遠目に映るようにして、誘拐して来たんですからね。
それから、警察でナンバープレートの照合をされると面倒なので、途中でわざわざ車から君を移し替えてもらってここまで運んで来たんですよ。
折角の綺麗な体に傷なんてつけないように、気絶させる時も細心の注意を払ってもらいましたし。薬品だって体に害が及ばないけれど、運んでいる最中に効果が切れて目覚めて怖い思いをしないように、色々と調節したんですよ?
ですから、君が今ここに居る事、それがそのまま僕の力の証明になると思うんですけれども」
「おまえ……何者だよ?」
体から続く震えを抑え込むように、できるだけ低い声で相手にそう尋ねる。
「僕は黒子テツヤです」
それ以上は教えるつもりはないらしい少年を睨みつけ、ずっと気になっていた事を聞く。
「俺を、どうする気だ?」
そう言うと、目の前で黒子はすっと目を細め、初めて口角を上げて俺に笑いかけた。
笑顔だっていうのに、やけに寒々しくて人の感情なんて無いんじゃねえのかって思うくらい、気味の悪い表情だった。
「怖がらないで下さい火神君、そんなに警戒しないで。
僕は君の事が好きです。
一目見たときから、君の事が好きでたまらなくなって。君の事が欲しくて、欲しくて仕方なくなってしまいました。
僕は君を愛しています。
だから君自身を傷つけるつもりは一切ないですし、怖がらせたいわけでも、悲しませたいわけでも、ましてや痛い思いをさせたいわけでもありません。
ただ、僕の事を好きになってほしいだけです」
そう言うと黒子は、薄く笑ったままの唇を動かないように押さえつけた俺の口に重ねた。
「んぅ……ぐっ、ん」
顔を逸らしてなんとか逃げようと試みてみるも、身動きが取れない俺の体は少年の細い腕を振り払う事もできず、ただ唇と舌を受け入れるしかなくて……。
俺の唇を割って入ってきた相手の、薄くやけに巧みに動く舌が口の中で暴れている。絡められる相手の舌は俺を追って、奥へ奥へと侵入してくる。
気持ち悪い。
どうして男にこんな事をされているのか、そもそも、こんな完全に一から十まで犯罪しかされていない状況で、その犯人に好きだと言われて喜ぶ人間がいるわけがない。
体は逃げられないように縛られている、しかし体の中までは縛られていない。
俺の口の中を悠々と犯し続ける少年の舌に歯を立てた。
「んっ!……ふぅ……ハッ!はあ、やっぱり思い通りにはなってくれませんか火神君」
若干涙目になりつつ俺の口の中から舌を抜く、血は流れているものの自分の舌まで噛むかもしれないと躊躇したのが祟ったのか、そんなに深手にはならなかったらしい。
クソッどうせならもっと思いっきり、噛み千切ってやるくらいやれば良かった。
「まったく、君のそういう一筋縄ではいかないような勝気なところも好きですよ火神君。でもね、あんまり僕の事を怒らせない方が君にとっては身のためですよ?
僕は確かに君に対して、怖い思いも痛い思いもさせたくはありません。
しかし、君を躾けるためには、そういう行動も辞さない事はよく覚えておいてください」
そう言うと、黒子は一度俺の体から離れると部屋の隅に置かれていた、キャスター付きの机を引き寄せてきた。金属製のトレーの中身と少年を見比べて、思わずぞっとする。
「それ……何だよ?」
「これですか?安心して下さい、あまり出回ってはいませんが依存症や副作用を始めとした有害な症例は出ていない、とっても安全な薬品です。
君が知らない所では、こういう薬を使って自分好みの恋人を作る趣味の人もいるんですよ」
作る、って何だよ?
わけが分からいまま、金属トレーから薬品の入った注射器を取り出して針のセットをする黒子を見つめる。
「君のために、色んなタイプの薬を厳選して用意してみたんですよ?そうそう、針も体にほとんど痕が残らない物にしたんです、麻薬依存患者が使うような安物じゃないですし、細いのでほとんど痛みも感じませんから安心して下さい。
あと、かなり怖がっていますけれど。これでも僕、薬物投与に関しては知識も技術も身に付けていますから、新人の看護師さんよりもずっと注射するの上手いですよ」
準備が整ったらしい注射器を手に、黒子はそう言う。
コイツの言う事を信じろって?
んなの、無理に決まってんだろ。
「ほら火神君、お口あーんして下さい」
歯科医が小さい子供に言うように声をかけられるも、無視して相手からできるだけ顔を背けるようにして距離を取る。そんな俺を見て黒子は溜息を吐くと「仕方ない子ですね」と言うと、再びベッドの上に乗り上げて俺を無理やり腕で押さえつけて自分の方に向かせると、急に鼻をクリップのようなもので挟まれた。
止められる呼吸に、息苦しくなって薄く口を開こうとしかけた瞬間。
「はっ!ぁあ……」
急に俺の首を締め上げて来た。
耳元でガンガン脈が鳴っているのが聞こえる、段々と締め上げられている首、逃げる術は全部断たれている今の俺にできるのは、ただ体をゆすりなんとか口から息を吸い込む事くらいで。
力が抜けて暴れる事もできなくなり始めた頃、片手でペンチのようなものを使って俺の舌を引きずり出した黒子は、ようやく首から手を離してくれた。
「ふぁっ、はあ、はぁああ」
肺が苦しくなるくらい、何度も酸素を取り入れて涙目になる俺を黒子はどこかうっとりとした表情で見つめていて。
ぞっとした。
コイツ、やっぱりどこかおかしい。
「怯える姿も、泣く姿もとっても可愛いですよ火神君。でもそうだな、僕は君の笑顔が一番好きです。だから早く、僕のためだけに笑う君が欲しいです、火神君」
そう言いながら、トレーからセットし終わった注射器を片手で取ると、ペンチで挟んでいる俺の舌へと当てた。
「初めてですから、一度の投与で効果が出るようにしておきますね。その方が君も分かるでしょう?
火神君、覚えておいて下さいね。僕は素直で可愛い君が好きです。
嘘をついたり、僕に対してあんまりにも反抗的な態度ばかり取っていると……素直ないい子になるお薬を、使う事になりますよ」
「ふぅ、ぁう」
プスリと舌へと針が刺さる感覚があり、目の前で正体不明の薬品が自分の体へと入っていくのを見せつけられ、思わず目を閉じる。
確かに針の痛みは感じない、その代わり無理に舌を挟んで引っ張られる痛みと、じわりじわりと広がる薬品によるものと思われるかゆみなのか、痺れなのか分からないものが広がっていく。
「あと半分ですから、もうちょっと我慢して下さい」
優しく声をかけてくる相手に、なら今すぐ止めてくれと叫ぼうとするが。口をこじ開けられ、舌を無理に引きずり出された今は、どう頑張ってもまともな言葉は出てこない。ただ、早く終われと目の前の悪夢から逃げようと身を悶えさせる。
「はい、終わりました」
注射器を引き抜かれ、無理に出されていた舌を解放されて思いっきり咽かえる。
舌先が痺れて、やけに熱くなっている気がする。
気持ち悪い、俺の体の中にわけの分からない物が駆け回っているようなそんな気がして。吐きそうだ。
「うっがぁ、はぁっはぁあ、げほ」
逆流してきた胃液をせき込みながら吐き出す、喉の奥に引っ掛かっるような苦みと酸の味に涙目になりつつ、荒い呼吸を繰り返していると「大丈夫ですか?」と声をかけながら、吐き出した胃液を拭い取ってくれた。
「そんなに怖がらないで下さい。投与された場所の感度を少々上げるだけの薬ですから」
そうは言うものの、体にどんな変化が起きるか分からない薬を、自分の意思関係なくぶち込まれて、安心も何もあったもんじゃない。
涙目のまま睨みつけると、黒子は呆れたように溜息を吐いてから「そういう目、好きですよ」と言った。
「本当、君の目って深い赤色してて綺麗ですよね。でも火神君、体で覚えた方が君は理解が早いと思いますが、悪い子でいる限り苦しい思いをするのは君ですよ。
僕は君の事大好きなので、ちゃんと可愛くお願いしてくれれば、何だって無理強いするつもりはありませんよ?」
そう言うと、俺の額にそっとキスを贈る。
その仕草は酷く優しいものの、やっぱり俺はそれに対して嫌悪感しか持たない。
「さわんじゃねえよ」
まだ痺れの残る舌で言ったら、やけに幼い発音になってしまった。
「……そういう態度が駄目だって、僕は言ってるつもりなんですけれどもね」
まあいいです、と黒子は言うと荒い息をする俺の唇に舌を這わせてきた。
「やめ、さわんじゃ、ねえって!」
「嫌です、こんなに可愛い君を前に触らずにいられるわけがないでしょう。これからいっぱい、君の事を可愛がってあげるつもりでしたし」
俺の体を滑るように撫でていく黒子の手は段々と下に向かっていく、裸のままの俺は直接触れられない微妙な感覚を受けて、全身を虫が這って歩いて行くような気味悪さに苛まれていた。どんなに嫌だと言っても、優しくしたいと言った相手は止めてくれない。そしてとうとう、腰の下で震えていた俺の性器へと触れた。
「ああ、これが本物の君のペニスですか。こんなに大きくして、震えちゃって、可愛いですね」
クスッと小さく笑うと亀頭から竿、そして袋の部分を順になぞっていく。気持ち悪いはずなのに、体で一番弱い場所への刺激には弱く、起ちあがってしまっていたそこからは先走りの液が溢れ始めた。
「なんで、何で、こんな奴に触られて、気持ちワリイのに、何で……」
「気持ち悪いなんて失礼ですね……でも、その質問には答えてあげましょう。いいですか火神君、生物は命の危険を感じると、自分の子孫を残そうという本能が働くんです。なので、危ない目に遭うと人は強制的に発情するものなんです」
つまり、それだけ君は怯えていたという事ですね。と言いながら黒子は俺を追い詰めるように性器に這わせていた手を、ただなぞりあげるだけから強く扱き上げるものへと変えた。
「ひぃ!うぅん……ぁっ、くぅ……」
「もうパンパンですね、凄く固くて火傷しそうなくらい熱いです。首絞められて苦しかったんですか?それとも、注射されて怖かったんですか?でも、もう大丈夫ですよ。すぐに気持ち良くしてあげますから」
黒子の手は信じられないくらい的確に、俺の感じる場所を責め立ててくる。男に、しかもこんな変態に手コキされて、萎えるどころかどんどん追い詰められている自分が、嫌だ。
「やだ、やだって!もう止めろぉ……ん、ぁあん、くっ」
「気持ちいいんでしょう?ペニスからこんなに我慢汁トロトロ吐き出して、竿には筋が浮いてますし、袋もこんなに膨れて……我慢なんてしなくても、イッていいんですよ」
ほら、イッて下さいよ。等と言いながら、グリグリと亀頭の丁度口の部分を指で強めにしごかれる。
「ひゃぁあ、やめ、も……そこ、駄目だ!だめ、やめて、んぁあ!」
ビクッと全身に力が入って、それから急速に弛緩する。びゅくびゅくとペニスの先が熱く猛り狂っているものの、その他の部分は力が抜けて、ただベッドへと深く沈み込んでいく。
「火神君のイキ顔、とても可愛いですね。それに凄くエロくてそそられます。ペニスから精液吐き出してる格好もいやらしくて、ずっと見ていたくなりますね」
俺の性器に残る精液を全て吐き出させるように、黒子の手が上に上にと擦りあげてくる。それに触発されるように、萎えてしまったはずの性器がまた熱を持ち始めるのを感じて慌てた。
嫌だ、こんな男の手でまたイかされるのは……。
「若いですね火神君も、僕にもっとイかせて欲しいんですか?普段オナニーなんてほとんどしないのに」
そう言いながらまた、性器を扱き出す。
どうして俺のオナニーの事なんて知ってるんだ、というのは勿論思ったけれど、それを知っているからこそ、このペニスの使い方がこんなに上手いのかもしれない、なんて現実逃避をし始めた俺の頭に喝を入れる。
「やだ、離せよ!もう、触んじゃねえって、ば」
「いいんですか止めちゃっても。君、腕使えないのにコレどうするつもりなんです?」
先っぽを指で突かれてそう聞かれ、思わず押し黙ってしまった。
確かに、今この手を止められてしまったら、俺は自分でこの体を収める術を持たない。
「も、外せよコレ」
頭の上で腕を振ってみるものの、黒子は無表情で見下ろしてくるだけで何も言わない。
「泣き顔も可愛いですね、もっと泣かせたくなっちゃいます」
そう言いながら俺の涙を舐め取っていく。
「止めろって、言ってんだろうが!んな事、も止めろって!お前、男だろ?何で俺なんだよ?」
そう叫ぶ俺の目元にキスを贈ると黒子は「愚問ですね」と呟く。
「君が男の子であろうと、女の子であろうと僕は君を好きだったでしょう。運命なんて陳腐な台詞を吐くつもりはないですけれど、君という人を知った時に僕は確かに救われたんです。この世界から、救われた気がしたんです。だから、君の事が欲しくなった。君を他の誰にも渡したくなかった、君がこの生ぬるく不平等な世の中に潰されてしまう前に、そこから救い出したかった」
そう言いながら黒子は再び俺の性器への愛撫を始めた、さっきまでよりもより強く、激しい手つきで擦り上げられる。
「ひっ!ぁあ、ちょっ……強い、強すぎだってんな、の痛い」
「君が誰かに汚されてしまう前に、僕の手で全てを奪い去ってしまいたかった。こんな世の中の事なんて何も見ないで、何も知らないままの、純粋なままの君を、今のままの君を僕の手で作り変えて、剥製人形のように綺麗なままの君を保存して、永久に鑑賞していたい、可愛がってあげたい。できるのならば、僕と愛し合ってほしい」
責め立てていた手が急に俺の性器をぎゅっと掴みあげる、根本を塞き止められてしまったために、吐き出す寸前だった精液が竿の中で熱く渦巻く。
「んあ、止めろ……嫌だ、離して!頼むからその手、外して」
「僕は君と愛し合いたい、君じゃなきゃ意味がないんです。君以外では意味がないんです火神君、世間は君の身代わりで充分に満足するかもしれません。でも、僕は身代わりでは満足できないんです」
君じゃなきゃ駄目なんです。
そう優しく耳元で囁くと、諌めていた手を外して優しい手つきで俺の性器をイかせる。
「ふっ……ぁあん……あっん、ああ……」
二度目だというのに、濃い精液が飛び跳ねるように亀頭から飛び出し、竿を伝い流れていく。腹の上に撒き散らされた白く濁ったそれに指を這わせると、黒子は舐めとっていく。
「はぁ……火神君の精は、こんな味なんですね。やっぱり、ちょっと濃いです。最期にオナニーしたの十日前ですもんね、運動してるからでしょうか?性行為にちょっと淡泊すぎですよ、健康に悪いかもしれないです。でもこれからは毎日、僕が可愛がってあげますからね」
俺の零した精液をすっかり舐めとると黒子は、ふっと微笑んでそう言うと、ベッドから下りてどこからか毛布を持って来た。
「今日は疲れたでしょう?薬で眠らされていたとはいえ、二時間程ですし。精神的にはそれ以上の疲労が溜まっているはずです。ゆっくり休んで下さって結構ですよ、ただし反抗的なのでそれは外してあげられませんけれど」
俺を繋いでいる枷やベルトを差してそう言うと、黒子は毛布を俺の体にかけた。
「何かあったらすぐに呼んで下さい、ここの監視カメラは音声も拾ってくれていますから、用があれば僕の名前を呼んでくれればすぐに来ますし」
では、おやすみなさい。
そう言うと、無理やり横にされた俺の唇に触れるだけのキスを施し、黒子は出て行った。
真っ暗になった天井を見つめて息を吐く。
黒子とかいうあの少年が何者なのかは知らない、だけど、俺の事を嫌なくらいよく調べたんだろう事は分かる。
監視カメラがあると言ってたけれど、天井を見てもどこにもそんなもの見当たらない。きっと隠されているんだろう。
窓は天井近くに横に細く長い物が取り付けられているものの、きっと開閉できる作りではないだろうし、まず部屋の天井までは四メートル以上ある。多分、俺の自慢の跳躍力を使っても窓に手は届かないだろうし、足場になりそうな家具はこれといってない。
そもそも手足がこんな状態じゃ、窓を破って逃げる事もできないし、監視カメラがどこにあるか探す事もできない。
駄目だ、完全に打つ手がない。
本当に黒子は、俺の身代わりを用意して俺が死んだように見せかけるんだろうか?
それで親父や先輩達は、本当に俺が死んだって思うんだろうか?
分かんねえよ。
そもそも身代わりって何だよ、その男、俺の代わりに殺されるって事だろ?何でそんな事ができんだよ。
アイツ何なんだよ。
……なんなんでしょうね?
黒子様が何者なのかは私も知りませんよ……探ったら海外旅行させられてしまうので、ね。
2013年9月22日 pixivより再掲