火神大我は困っていた。
自分の選択肢が、間違っていたんじゃないのかという強い疑念に駆られていた。
それは仕方無い事かもしれない。
目の前にいる恋人がこんな事言い出したら、誰でも過去の自分にコイツとは考え直せ、と言いたくなるだろうと、火神は本気で考えていた。
後悔してからじゃ遅すぎる!
「火神、セックスしようぜ」
夕飯も風呂も済ませて、後は寝るだけといった寛いだ時間。火神の家のリビングにあるソファに、悠々と座っていた青峰は家主に向けてそう告げた。
「お前、何考えてんだよ?」
「何って、あのなあ俺達付き合ってんだろ?付き合ってんなら、セックスくらいして当たり前じゃねえか」
その理論は、少し強引ではあるけれども火神だって理解できる。しかし問題はそこではない。男同士での恋愛というのは、火神自身が長い時間抱え込んでいた悩みではあったが、相手の方が打ち破る形でその障害を乗り越えてきたのだから、断る理由はなくなってしまった。
そんな事をするのに人目を気にしているのではない、ここは火神の家である。
じゃあ何が問題なのか。
「俺達、付き合ってどれくらいだっけ?」
「えー?1on1終わってからだから、二・三時間か?」
そうだ、相手の事は好きだけど世間体を気にし、青峰がどれほど本気なのか測りかねて、相手からの告白から長い時間をかけて悩み抜いたあげく、ようやく恋人同士になろうと決心を決めて返事を返したのは、つい三時間前。
「いくらなんでも、早すぎねえか!?」
「いいじゃねえか別に。お前がずっと悩んでたおかげで、俺がどれくらいお預け喰らってたのか分かってんのか!」
そう言われてしまうと火神も言い返す事ができない、確かに自分の煮え切れない態度に、青峰がここまで付き合ってくれたのは嬉しい。しかし、それはそれ、これはこれだ。
「いくらなんでも手順があるだろ!」
「手順、手順ねえ……じゃあ思い出してみようぜ、俺達は今日何してた?」
「何って。一緒にバスケして、俺の家で風呂入って飯食って……」
「つまりデートだろ?んで、お前が告白の返事くれた時はどうした?」
「えっ、なっ!何を」
火神の顔が真っ赤に染まるのを見て、青峰はニヤリと口角を上げて笑った。
「お前の手を引いて、抱きしめて、キスしてやっただろ?バスケのコートで。最高のデートじゃねえか。ところで、恋人の手順ってやつ的に次の段階は何だ?」
そう問いかけられたら、確かに次は体を繋ぐ事になるだろう。まあ順番は正しいかもしれない。しかし、火神は自分の理性を最大限に生かして、いやいや違うと首を横に振る。
このまま流されてたまるものか、という意思の表れであった。
「あのさあ青峰、俺、男同士のやり方とか知らな……」
「大丈夫だ。俺は知ってるし、お前の家来るまでに必要なもんは用意して来た」
ああ、そう言えば帰りに「ちょっと部活で必要な物ある」とか言って、買い物に行ったよなコイツ。俺は丁度良かったから、スーパーで食料品買って行くってちょっと別れたんだっけ。その間か?その間しかないだろ!
という事は、お前最初からやる気しかねえじゃねえか!
そんな火神の怒りと羞恥心なんていうものは、この男には通用しない。
「あのなあ、付き合ってる奴の家に呼ばれたという事は、そういうお誘いって事だろうが」
「おい、それはどこのどんなルールだ!っていうか、お前はもうちょい理性って言葉を覚え」
「はいはい、照れ隠しはもういいから。そろそろベッドに行こうか火神クン」
ひょいっと自分とほぼ同じ体格の男を担ぎ上げると、青峰は勝手知ったると言わんばかりに、火神の寝室へと歩みを進める。なんとかその腕から逃れようと、火神は暴れてもがくが、青峰から「暴れた分、犯し殺すぞ」と低い声で言われると、恐怖が勝ったのか黙って大人しくなった。
自分の愛用しているベッドに運ばれている間、火神はどうやってこの状況を打開できるか、必死に考えていたが。いよいよ体をマットレスの落とされて、上に伸し掛かられた時には背中を冷たいものが伝った。
「ちょっ!青峰、お前本気かよ!」
「おう、最初から本気だって。でないとゴムとローションなんて買って来るかっての」
そう言ってビニール袋の中身を出されて、いよいよ逃げ道を失ったかと思われたが、ふとある疑問が火神の頭を過った。
「あっ……あのさ、青峰」
「なんだよ?」
「どっちが、女になんの?」
その瞬間に、部屋の中にしばらくの静寂が訪れた。
これはいい質問だったのではないかと火神は思った、男同士の性交なんだから、どちらかは女役をする必要がある。それを決めなければ、まあ先には進めないだろう。
青峰はきっと男役は自分だと最初から決めつけてかかってきている、ここで俺がそれを拒否したらどうだろう、考え直してくれるんじゃないのか?なんて希望が火神の胸の内に灯った時だった。
「あー、何言ってんだよ?」
なんて青峰は笑って、そして驚きの一言を告げた。
「俺、お前の童貞と処女もらうから」
そう言うと早速、火神の服を脱がしにかかる。あまりの出来事に黙り込んでしまっていた火神は、抵抗するのが遅れてしまった。
「はあ?ちょっ、ちょっと待てよ青峰!」
「待たねえ、っていうか問題あるかよ?」
「大有りだろうが!何だよ、しょっ、処女と……童貞、もらうって?」
「そのままの意味だろうが。女役と男役、交代でやろうぜって事」
それは分かっているものの、はいそうですかと流せるような問題ではない。
青峰からすれば、同じ痛みも快楽も共有できるんだからいいだろうという意味だったのだが、火神からすればありがた迷惑な話でしかない。
「そ、そんなのでいいのか?」
「ああ?俺だって本当は男の方がいい、でもお互い気持ちよくないと意味ないだろ?だったら、実際にヤッてみた時にヨカッた方のやればいいだろうが。って事で火神、下脱げ」
既にTシャツを奪い取られたため、必死に自分の衣服を死守しようとズボンを押さえつけていた火神の手をピシャッと叩くと、青峰は自分のシャツを脱ぎズボンもさっと脱いだ。そのあまりにも普通の流れに、コイツには羞恥心は無いのかと疑ってしまうほどだ。
「ほら早く脱げよ、俺だけマッパとか恥ずかしいだろ?」
自分で脱いだ癖にと思いつつも、流石に火神もここまでくると諦めが付いた。どうせ自分の好きになった男は、自分勝手で我儘だ!そう思い直して、こうなれば気がすむまで付き合ってやろうと残りの服を脱いだ。
いざ男の裸体を前に本当に欲情するのか、それは火神にとっては心配の種だったのだ。仮にでも自分は青峰に欲情するのは知ってる、バスケの最中に見せる表情に、どこか恍惚としたものを感じ取った事はある。しかし、相手も同じとは限らないのではないかと心配し続けていたのだ。
「へえ、いい体してんじゃねえか」
「そっ、そんなじろじろ見んなよ」
「見るに決まってんだろ、自分の恋人の裸だぞ?あーにしても、エロいな」
そう言うと青峰は火神の胸から腰にかけてをすっと撫でた、ゾクゾクとしたものが背筋を駆けあがり、ふっと熱っぽい吐息が零れる。それを眺めていた青峰は口の端を持ち上げて笑った。
「おっ、感度イイんじゃね?お前」
そう言うと、長く綺麗な指が火神の体を何度もなぞり上げていく。色んなところを触られて、思わず涙目になると「可愛い」と言われて頬や額に何度もキスされる。その甘ったるい接触にも、火神は敏感に反応した。
目を閉じて弱く震えるその姿を見て、女みてーだなと青峰は笑った。これなら、自分が男役で決まりで良いのではないか?という誘惑が舞い降りてきたものの、最初から決めていたのだ。
(コイツの初めては、絶対に誰にもやらねえ)
火神とのキスがファーストキスではない、というのは後で聞いた。アメリカ帰りなんてそんなもんかと思ったものの、どこかで悔しさは拭いきれなかったのだ。だから、恋人としての接触は、その快感は全て自分が教え込んでやろうと青峰は勝手に決めたのだ。
それが男としての快感でも、女としての快感でも。
(できれば、女役にハマってほしいところだけど……)
しかし、結局はどっちでもいい。火神が受け入れてくれるならそれで構わないと、そう考えられる辺り、自分はどうやらこの男に相当惚れこんでいるらしい。
「ここ濡れてるぞ」
「ひっ!ぅう」
震える火神が青峰の腕にしがみつく、それを見てニヤリと笑うと、火神の中に入れていた指を更に奥へと押し込めた。
ローションを垂らして弄った中は、すでに柔らかく解れてきている。まだ異物感の方が勝るのか、火神の目には薄らと涙の膜が張っているものの、その顔が苦痛のためだけに歪められているわけではないと、青峰は確信していた。
「なあ、あおみねぇ……これ、やだ」
「もうちょっと待てよ、そういやココ良かったよな?」
「ひぃ!ぁああああん」
ぐっと先ほど見つけたしこりを引っかけば、背を仰け反らして火神は甲高い悲鳴を上げる。キュウッと指を食い千切りそうな程の締め付けに、青峰は目を細めて「そろそろいいか」と呟いた。
ぐるっと中を掻き回して出された指に、ハッと息を吐き出すと次に来るだろう衝撃に、火神は身構えた。視線は青峰の中心で剃り立つ大きなペニスに向けられている。
それに気づいた相手は、ふっと息を零して火神を見つめ、その瞼にキスを落した。
「んだよ、コレ欲しいのか?」
「ぁ、ちが……そ、じゃなくて」
「んな焦んなくてもちゃんとやるけど、先にこっちな?」
青峰は取り出したゴムの包を歯を使って破ると、慣れた手つきでヨダレを垂らしていた火神のペニスに被せた。首を傾げる火神の前で、ゴムを被せたモノにローションを垂らすと自分の手にも少し取って、その指を自分のアナルに突き入れた。
「!」
「あー、さっきシャワー浴びた時に、んっ、鳴らしといたけど。大丈夫かな?お前、思ったより、ぁっ……立派だしな」
そう言うと、一通り解し終わったらしい青峰は、妖しく微笑んだまま火神の上に跨った。
「あの、青峰」
「んな怯えんなよ、別に取って喰う訳じゃねえんだし。俺だって、これでも緊張してんだぞ?」
そう言うと、柔らかく触れるだけのキスを交わし青峰はふっと微笑んだ。それに対し火神は、真っ赤な顔で「嘘つけ」と小声で零す。別に青峰は嘘を言ったわけではないのだが、色々と精一杯な相手にしてみたら、余裕の青峰は憎たらしくて仕方ないらしい。
「いいじゃねえかよ、先に男役譲ってやるって言ってんだから。ほら、ここ欲しそうだぜ?」
よく解れた自分の入り口に火神の先端を押し付けて言う青峰に、火神は顔を真っ赤にして震えている。どうやら、恥ずかしくて反論もできないらしい。それを見て、更に相手を煽るように青峰は笑いかける。
「俺も、お前の欲しいんだけどな」
そう言うと、ローションで濡れたそこに火神のモノが飲み込まれた。
「ふぁっ!ぁあん」
「んっ!あ、ちょっ何で、お前のが女みてーな悲鳴あげてんだよ?」
余程気持ち良いのか、火神は赤い頬に潤んだ目で睨み返す。
ゆっくりと腰を推し進める青峰は、それを見ながら自分が火神を犯しているような錯覚を覚えた。感じていると分かれば、内臓を押し広げられる痛みもなんだか甘く愛おしく感じてくる。
「ほーら、全部入ったぜ?ん……どうだよ、俺ん中」
「はぅっ……ん、あ……スゲー熱い」
それはお前の方だよと、中に収めた火神のペニスをキュッと締め付けて青峰が思っていると。ほんのちょっとの刺激でも感じてしまうのか、火神は顔を赤くして体を震わせた。
「お前のデケーな、ちょっと苦しいかも」
「あっ。ごめ、ん」
「いや謝られることじゃねえし?それに、チンコデカい方が気持ちイイらしいじゃん」
試してみようぜ、と青峰は宣言すると動き出す。その刺激に合わせ、火神の目が大きく見開かれた。
「すっげ、中擦られる。ほら……火神も、自分のイイように動けよ」
「でも、青峰……へいき、なのか?」
「ん、平気だってこれくらい。ぁあん、ほら、気持ち良くなれよ……そんで。俺のことも気持ち良くしろよぉ」
熱っぽく囁くと、火神は黙って頷きそっと腰を掴んだ。それに青峰も自分の片手を重ねて、もう一方の手は相手の肩にやってぎゅっと抱きしめる。
ゆっくりと、でも腰を推し進める動きに思わず笑みが零れる。
「ふっ、んん……あぁ、あっ!青峰」
(んな必死になって、そんなに俺は気持ちイイかよ?)
「火神、気持ちイイ?」
「ん、言えね。んなこと」
「教えてくれよ、んんっ!俺は、気持ちイイ、ワケ?」
首を傾げてそう尋ねると、火神はトロンと快楽に溶けかけた顔でこちらを見つめると、ゆっくりと頷いてみせた。それだけで彼の気持ちを汲み取って、そっと額にキスしてやった。
「はぁ……あおみね、俺、イキそ」
「ん?いいぜ、早くイケよ」
そう言って腰の動きを強めると、中でビクビクと火神の雄が脈打つのが感じた。全身を震わせて、快楽に耐えているその表情を青峰は恍惚とした表情で見下ろす。
(エッロ……最高、コイツ)
「ふぁ、青峰……」
「んー?イケたみたいだな」
ズルッと自分のナカから火神のペニスを引き抜いて、ゴムを外してやる。中に入っている精液を見せつけるように揺らしてやると、真っ赤になって「早く捨てろ」と叫ぶ。
「いっぱい出したな、スゲー溜まってるし」
笑う青峰をよそに、火神は真っ赤になって視線を逸らし。しばらく沈黙した後で「ごめん」と呟いた。その意味が分からずに、首を傾げる青峰に「イケなかっただろ」と言う。
「はあ?」
「俺だけイって、お前の事、気持ちよくできなかった」
相変わらず勃起したままの相手のペニスを見つめ、顔を真っ赤にして火神は言う。
「別に気にすんなって、中だけでイケる程慣れてねーだけだし」
「でも気持ち良くなかったって事だろ?」
「んな事ねーよ、良かったって」
そうは言っても相手は納得していない。
どうやら、自分だけが快楽を得た事を申し訳なく思っているらしく、ごめんともう一度呟くと、そっとそれに手を伸ばした。
「ちょっ、火神」
「ごめん、青峰」
そう言うと竿を手で包み込み、そっと亀頭に唇を落した。
それだけの刺激で青峰の欲は大きく揺さぶられた、ついでに理性と本能も。
押し倒してめちゃくちゃにしたい衝動を抑え込み、火神を引きはがすと。そっとベッドに押し倒して優しくキスしてやる。
「大体なあ、次は交代だぞ。分かってんのか?」
「う、ん……交代って」
「だから最初に言っただろ、お前の処女と童貞もらうって。何のために、お前のココ解したんだよ?」
そう言うと、先ほど解した火神のアナルに人差し指を入れると、待ちかねていたかのようにキュッと締め付けてくるのに微笑みかけると、相手は真っ赤になって視線を逸らした。
再びローションを手にたらし、入口を軽く解して欲しがるように締め付け体に中が蠢く、
指を引き抜いてやれば、ヒクンと物欲しそうに収縮するそこに思わず笑みが零れる。
足を大きく広げさせ、いわゆる正常位を取らせると。今度は自分の雄にゴムを付けそっと入口に宛がうと、恐々と見つめる相手と目が合った。
「大丈夫だって、優しくしてやるから」
「うん、痛くねえ?」
「大丈夫だ、すぐ良くなるって」
俺は平気だったしと言うと、火神はまた小さく頷く。それに愛おしさを感じながら、青峰はそっと中に自分の物を押し入れた。
「ひっ!ぃ、うぐ」
「っ、コラ火神。ナカ、力抜け」
そう言うが、火神は涙目でイヤだムリだと繰り返す。先端部を入れただけなのに、ナカの強すぎる締め付けに、思わず顔をしかめてしまった青峰だが。無理に進めて嫌がられては意味がないと、ゆっくりと慣れてくれるのを待つ。
挿入した時の衝撃に体が慣れるよう、時間をおいて、緊張を解していく。
「火神、息詰めるな。ゆっくり吐き出せ、んでおっきく吸い込め。そうだ、ちょっと楽になってきたか?」
「はっ!ぁ、おみね」
「ん?」
どうしたと荒く熱っぽい息をしている火神に聞けば、トロンとした目が青峰を見つめる。
「だいじょぶ、だから、来いよ」
少しは緩くなったとはいえ、まだ辛いのだろう強い締め付けの中で、それでも火神は相手を誘った。無理させたくないという思いを、簡単に揺さぶってくれた相手にニヤリと笑いかけ「そうかよ」と青峰は強い力で、一気に腰を押し入れた。
「っ!ぁああああん、いぁ。あっ!っああ」
「たく、優しくしてやるって言ったのに煽りやがって。ほらちゃんと息しろ、落ち着くまで待ってやるから、な?」
優しく頭を撫でてキスをしてやれば、嬉しそうに舌を絡めてきた。少し目を細めて甘えさせるように、優しくあやしてやっていると。徐々に締め付けも優しくなり、形を確かめるかのようにぴったりと内壁が寄り添って来るのを感じた。
「どうだ?」
「何、が?」
「俺がお前の中に居る感じはどうか、って聞いてんだよ」
意地悪く笑って言う青峰に、火神は真っ赤になって「何言ってんだ!」と叫ぶ。しかし、涙目になって睨みつけてくるその目は、いつものような威勢の良さも強い力も見られない。
「ちなみに、俺は最高だぜ?体は固ぇけど、ナカはスゲー熱くってしかも積極的だよな?嬉しそうに銜え込んで、俺が大スキってめちゃくちゃ絡んでくるぞ」
「うっせ、お前……んな、恥ずかしい事言うんじゃねえよ!」
「んだよ正直じゃねえな、こっちの方が素直そうだな」
「ひっ!やぁ、うご、くなぁ」
ちょっと揺さぶられただけで、火神の体がビクンと大きく震える。ナカを擦られる慣れない感覚に、どうやらついて行けていないようだ。そんな相手を抱きしめて、青峰はゆっくりと優しく探るように腰を動かす。
「んん、ぅあ……んっ!ふぁ、やっぁああん!」
艶っぽい悲鳴を上げてビクンと震える火神を見て、青峰はニヤリと笑みを深める。
「ああ、そういやココ気持ちイイんだったな?」
「やぁちが、そこダメだ!やだやだぁ」
嫌だと言われても感じているのは間違いなく、青峰は強く腰を打ち付ける。
大きく見開き震える目から零れそうになった涙を拭ってやり、その目元に口づけてやると、青峰は笑いかけた。
「いいんだろ、ココ。すげービクビクしてるぞ」
「やぁあ、やだ!そこ、ばっかだめだ、やだ。やぁああん!」
「イヤじゃないだろどう見ても、でも、本当に嫌ならやらねえから。ほら、正直に言え。ココ!」
「ふぁぁん!ぁっああ」
「俺に突かれて気持ちイイか?それとも、痛くて止めて欲しいのか?」
どっちだと尋ねられると、真っ赤な顔ではくはくと口を動かし、必死に呼吸をしようともがく。
「どうなんだ、よっ!」
「あっ、ああ!イイ、気持ちぃよぉ。で、も……ダメだ、そこ変なる」
「へえようやく素直になったな、おい。いいじゃん、変になっちまえ」
容赦なく腰を打ち付けられ、真っ赤になった火神はいやいやをしながらも青峰にしがみ付いた。どんどん与えられる快楽に、既に理性は焼き切れて流されかけているようだ。
「うぁあ、もダメだって青峰、青峰」
「駄目じゃねえって言ってんだろうが、大我」
ビクッと電流でも流れたかのように体が跳ねて、内側がギュッと強くしまった。思わぬ刺激に達してしまいそうになった青峰は、奥歯を噛んでそれに耐えた。
「何だよ?もしかして、名前呼ばれて感じたのか」
「ひっ、ちがう」
「本当かよ、大我?」
「んぁあ、や」
「おーい、ギュウギュウ締め付けてんぞ大我ちゃーん?」
わざと耳元で茶化すように言って、その反応を楽しむ青峰に、何か反論しようと試みるものの、口を開けば艶っぽい悲鳴しか出てこない。必死に押し殺そうとしているが、その意思に反して甘えるような声は止まらない。
「んあ、やだ青峰……も、俺イク」
「はぁ!ちょっ、火神?」
「あっ、ああ!あああああああっ!」
一番奥を突き上げた瞬間、ビクビクと大きく全身を震わせて火神は射精した。白く引き締まった腹の上に、吐き出された精液が散らされ。強くうねるように締め上げられて、思わず青峰も顔を歪めてイッてしまった。
肩で大きく呼吸をしながら、くったりと横たわる相手の中から自分のモノを引き抜くと、青峰は大きく息を吐いた。ゴムの中にはたっぷりと精液が溜まっているものの、自身はまだもっと欲しいと上を向いたままだ。
ゴムを引き抜き口を縛ると恋人の隣に横になって、何度かキスをして意識が戻ってくるのを待つ。青峰は、大事な事を一つ聞かなければいけない。
「おい火神、どっちの方が良かった?」
「はぁ、え?」
「だから、男役と女役、どっちのが気持ちヨクなれたのかって聞いてんの」
あまりにもあけすけに聞いてくるので、ビックリして余韻が吹っ飛びかけた火神は。真っ赤になって「何言ってんだ!」と叫ぶ。
「だから最初に言ったじゃねえか、両方やって気持ち良かった方をお前がすりゃいいだろって。まあ、答えは聞かなくても大体分かるけどな」
腹に散った火神の精液を指で掬い取って、青峰はニヤリと笑う。
「可愛い可愛い大我ちゃんは、俺のでガツガツ中突かれる方が気持ちいいんだろ?という事で、もう一回ヤろうぜ?」
そう言うや早い、青峰は横たわっていた火神の体を持ち上げ、自分の膝の上に乗せた。全身を襲う疲労でろくな抵抗ができなかった火神だったが、青峰がもう一つゴムを取り出したところで、本気で自身の身に危険を覚えた。
「青峰、俺もう無理だ」
「あー?まだまだいけんだろ、っていうかすぐヨクしてやるし?」
「ヤダ!嫌だって、マジもう止めろ!!」
抵抗の声もむなしく、射精の後で力の抜けきった体は簡単に相手のなすがままとなり、再び深々と剃り立った雄を飲み込んでしまった。
先ほどまで入っていただけに、最初よりもすんなりと受け入れてしまった事に驚きつつ、自分の体重によって深々と刺さったその感覚に体は大きく震える。
「ひっ!ぐぅ。奥まで、いってぇ!」
「あースゲー締め付け、やっぱお前の体いいわ。ちょー気持ちイイ」
震える相手を優しく抱き締めて、頬に優しくキスしてから青峰は笑う。
「じゃあ、何も知らない大我ちゃんに、これから気持ちイイ事たーくさん教えてやっから。楽しみに覚悟しとけ?」
その素直で輝かしくはあるが、なんともはた迷惑な笑顔を見つめて火神は思った。
(俺、トンデモない男に捕まっちまった?)
実は、今まで黙っていましたが。
何気に私、青峰受けもいける人です。
あっ、どうでもいいですか?はい、すみません。
いや、いきなりリバとかしたからビックリされたかな?……と。
っていうか、リバなんて書いたの人生初だったんですよ。
成長している気がしないエロ表現を見てて、もうちょっと踏み込んだ事やろうぜ!……という事で、今回はエロっぽさ増し増し(当社比)のつもりでした、はい。
2012年9月15日 pixivより再掲