年齢確認
18歳以上ですか?

 いいえ

夏の一番最後、俺に初めての恋人ができた。
バスケが上手くて、世話好きで、料理ができて、しかも可愛い。
これ以上ないってくらい、完璧な恋人だと思う。
だけど、珠に疵という言葉があるけれど……まず完璧なものなんて、この世にはない。

人生、思い通りにならない方が丁度いい?

「なー青峰」
夕飯、何食べたい?と尋ねる火神はエプロン姿で、緩く口元に笑みを浮かべた穏やかな表情でこちらを見ている。
「ん?米食いたい米」
「米って、もうちょっと具体的に何かあるだろ?」
途端に不機嫌そうな顔になるものの、別に俺が悪いわけじゃないと言い訳する。大体、お前の飯は美味いから、大抵の物ならば出されても完食できる。だから、お前が好きな物作れよって言ったら、頬を染めて「恥ずかしい奴」なんて呟く。
畜生、本当に可愛いよなお前。
そう思っていると、俺の視線に気付いたのか、火神は俺を見つめて何事か考えてから、口を片端だけ持ち上げて俺の頬にキスをしてきた。
「ヤるなら、飯の後な?」
「はあ?」
先に風呂入って来いよ、沸かしといたから。なんて綺麗な笑顔で言ってキッチンに行く火神を見つめ、今の一言は白昼夢か何かか?と疑いそうになった。

俺の恋人、火神大我について知っている事。
バスケが上手い、世話好き、料理をはじめとした家事は万全にこなせる。
頭の作りは俺と似てて馬鹿と呼ばれる、実際に俺も馬鹿だと思ってる。
無意識なのか天然なのか、よく分かんねえ発言をする。
純粋っぽくて、可愛い。
ただこの“ぽい”っていうのが重要だ。

告白して付き合い始めて知ったのだが、火神は純粋であって純粋ではない。

まず、火神はゲイだ。アメリカ時代に目覚めたらしく、日本に来てからは周囲の目があって隠していたらしい。
そして、平均的な男よりもずっと良い体格をしていながら、セックスする際は女役を所望する。これも、アメリカっていう日本人の規格よりもデカい国で仕込まれたというのなら、まあ頷ける事かもしれない。まあ、16までに初体験を……しかも同性での行為を済ませている時点で、あんまり頷いてはいけない気がするが。
そして、あの自由の国の性教育に問題があったのか。それとも、初めて付き合ったらしい恋人に問題があったのかは知らないけれど。火神はとにかく性的行為に対しておおらかだ。
本人曰く「好きな人の傍に居たいのは、当たり前だろ?」との事だが。言葉自体は嬉しいものの、内容はセックスで繋がっていたいという事になってるから困る。
何が困るって、アイツの性欲と性行為における技術の高さだ。
健全な男子高校生である俺も、ビックリするくらいの性欲をアイツはその身に併せ持ってる。正直、ついて行けないくらいの絶倫だ。
それだけでなく、セックスの経験も豊富にあるらしく、高校生なら体験できなかっただろうレベルのセックスをしてくる。キスの仕方から始まり、愛撫やら挿入した後の腰の使い方やら、とにかく全部が気持ちイイ。

お陰で此方は身が持たない。

ただでさえ絶倫の癖に、気持ち良い事には貪欲のため、とにかく俺をヨクしようと躍起になって。終わった後にタチの方が疲弊して動けない状態って、本当に何なんだよ?俺ってこんなに体力ないのか、って自信無くしかけたぞ。
そんな散々な初体験をした俺だったが、その後のアイツとのセックスは初めての時に比べると激しくはない。俺が大体満足したと分かると「もう寝ようか?」と声をかけてくる。男としては、好きな相手に我慢させてるっていうのはなんというか、悔しいので「お前いいのかよ?」と聞くのだが、火神は「これ以上やったら俺、ヤバい」と恥ずかしそうに顔を染めるもんだから、言い返せない。
本人曰く「久しぶりで凄く盛り上がった」らしいので、本気出したらあんな感じになっちまうって事なんだろう……やっぱ恐ろしいな。それを火神自身それを知っているので、少しセーブするくらいが自分には良いといつも言ってる。
救いがあるとすれば、俺との体の相性がこれまでの相手よりも抜群に良いらしく、回数が少なくても相手は満足してくれているという事。そして、気持ち良い事は大好きだが性に奔放というわけではないらしく、恋人は自分が本当に好きな人じゃなきゃ駄目だと思っているらしい事。
まあ、セフレが居たという恐ろしい事実を聞かされてはいるが……その件に関しては「浮気は絶対にしない」という誓いを立てさせたので、守ってはくれるだろう。アイツは嘘を吐かないし、吐いたとしたらすぐにそれと分かる。
というか「日本で男のセフレとかそう見つからねえし。俺はお前にめちゃくちゃ惚れてるから、そんな心配すんなよ」なんて優しい笑顔で言われて、正直、もう俺死ぬかと思った。正直、後半の台詞に入ったところで前半のトンデモ発言はスルーしたけど。

アイツの本当に怖い所は、ここだ。
性に明るい癖に、変に純粋で可愛らしいので、現実のギャップに振り回されてしまうのだ。

「青峰、着替えここ置いておくぞ」
「んーサンキュー」
風呂場の外から声をかけられて、返事を返してみたものの。頭の中で考えてるのは、今夜の展開についてだ。

さっきの発言から察するに、火神はどうやら俺がヤリたいと思って自分を見ていたと勘違いしたらしい。
アイツは一度こういうスイッチが入ると訂正しても止めない。というか、こっちをその気にさせるだけの力を持ってるので、止められない。
俺だって気持ちイイ事は大好きだし、アイツのエロい顔ってめちゃくちゃそそるから、正直嬉しいっちゃ嬉しいんだけど。なんつーか、男としてのプライドが許さない。
アイツを自分好みの体に調教しやがった過去の男が、セックスの度に俺の脳裏に影を落としてきて、離れてくれないのがムカつく。
いい加減に、アイツを解放しやがれってんだ。どこの誰だかは知らないけどな。
「そういや……アイツ、何でその恋人と別れたんだろ?」
およそ、火神が日本に帰る時に縁を切ったとか、そんな所だろうか。流石にそんな事を聞く勇気はない、聞いたら火神は馬鹿正直に全部話してくれそうだけど、話が終わるまで俺の心臓が持つ気がしないし、正直に言うと聞きたくねえ。

風呂から出て居間に行くと、すっかり飯の仕度を整えた火神が俺を見て「皿運んで」と声をかけた。
その言葉に従ってキッチンに入ると、美味そうな匂いを漂わせた料理が大皿に盛られていた。火神の食べる量が人と違うのも、コイツの特長だったな。
更に乗せられた肉に指を伸ばし、一口貰うとそれを見咎めた相手に「おいっ!」と罵声が飛んだ。頬張った肉の塊で口をもごもごさせていると、呆れたような火神の溜息と「そんなに腹減ってたのかよ?」という質問がかえってくる。
「ああ、だから早く飯」
「はいはい」
なんて投げやりに答えるものの、愛用の茶碗にご飯を盛るその顔はなんか幸せそうだ。つくづく思うわ、お前は生まれる性別間違ってるって。
二人で食卓に付いて飯を食っている間も、火神はなんだかんだで世話を焼いてくれる。文句を言ってた割には俺が言った通りに、米に合う料理を考えて作ってくれてるし。肉と野菜のバランスとカロリーまで考えて作ってくれてる。どんなハイスペック嫁だよ、本当に。
「おかわりいるか?」
「いる」
茶碗を手渡すと、嬉しそうに受け取って飯をよそってくれる。自分の分をよそう時に、漫画かよって突っ込んじまいそうなくらい大盛りの飯を持ってくるのにも、もう慣れてしまった。
満腹になるまで飯を食い、鼻歌混じりに皿洗いをする火神をリビングから見つめ。本当に、最近この家に完全に居付いてしまったなあと思う。
「じゃあ俺、風呂入ってくる」
皿洗いも完全に終わったらしく、リビングでテレビを見ていた俺に近寄って来ると、頭を少し撫でてから額にキスする。
「先にベッドで待っとけ」
すぐ行くからと言う相手に「おう」と返事を返すと、凄く嬉しそうな顔で俺を見つめ返して来た。軽い足取りで出て行ったけどよ、返事の時、俺の声震えてなかったよな?
しかし、待っておけと言われて正直にそれに従う必要はないだろうけれど、逃げられたと思うのも癪なので言われた通り寝室に向かう。

大の男が二人寝るのには少し狭いベッドに腰掛けて、小さく溜息を落す。
嫌なわけではない、だけど困っていると言えば困っている。
アイツの性欲、本当にどうにかなんねえのかな?
いや、人の体の問題なんだから別にしょうがないちゃしょうがない、ただ。できるならば、アイツの余裕がないくらいにめちゃくちゃにしてみたいのも本音。
毎度毎度、気が付けばアイツに主導権が傾いてんもんなあ。それがムカつく。
周囲を見回して目に付いたのはベッドサイドに置かれた戸棚。火神の家でセックスする時には、いつもアイツがゴムなりローションなり用意してくれているが、それが仕舞ってあるのがこの棚だ。
いつも一番上の棚にある箱からそういうのに使う品を取り出しているが、その隣にも同じ箱が置いてある。きちんと整理されているのは見て分かるが、あの中身は何なんだろうか?人の部屋を漁るのは良くないとは思うが、ここは勝手知ったる火神の家だ、少し覗いたところで別に怒られる事はないだろう。
エロ本とかAVでも入っていたなら後でからかってやろう、そんな風に思っていたんだが、その考えは箱を空けた瞬間に消し飛んだ。
「……なん、だコレ」
思わず箱の蓋を閉めて、棚から離れようとした時に寝室のドアが空いて風呂上りの火神が入って来た。
「青峰、待たせて悪かった……って、何してんだ?」
なんつーか、かなり不自然な格好で相手と向き合う俺を、火神は訝しげに見つめる。
これって何だ?浮気がバレた男の心情?いや、違うか……俺自身は別に何も悪い事してないし、絶対に問題は火神の方にある。
「悪いここの棚、開けちまった」
「ああ、別にいいけど」
ここは正直に告白するのがいいだろう、そう思って火神に告げると何てことない顔でそう告げる。
「それでさ……ゴムの横に置いてある箱なんだけどよ。中、見ちまった」
「あれか。悪い、ビックリした?」
ちょっと申し訳なさそうにそう言う火神、いや、ハッキリ言うと「ビックリした?」で済む代物じゃなかったぞ。

もう一つの箱に入っていたもの、それはエロ本とかAVの世界でしか見た事のない、所謂『大人のおもちゃ』とかいうやつだった。色んな種類のエグい形の代物が大量に入っていた、というわけでは決してないけれども。突然、目の前に現れるとそれこそ驚くのは間違いない。
というか、そもそも火神はゲイなんだから、エロ本とかの趣向もいわるゆホモになってくるんじゃねえか!むしろ、これはエロ本とかじゃなくて良かったんじゃね……いや、どっちでも一緒か。

「なあ、あれってお前の?」
「何で俺の家に他の奴のバイブ置かなきゃいけないんだよ?そうだぜ、俺の」
確かに質問もおかしかったけど、お前、少しは恥じらいを持てよ。何でそんな平然と言ってのけるんだ?
「お前、一人でする時ああいうの使うわけ?」
そりゃ、ネコがいい訳なんだから何か突っ込みたいとか、そう思ってもしょうがないかもしれないけど……。
「別にいつもじゃないぞ、処理する時は普通の男がするように手でしてるよ。ただ偶に、凄く物足りない時とかに使うくらいで」
最中の事を思い出したのか、恥ずかしそうに頬を染めてちょっと小声で言うものの。いや物足りなくておもちゃに頼るとか、普通はそんな事しないと思うぞ。
そこでふと、ひらめいた。
「なあ、あれでヤッてるとこ見せろよ」
「えっ、お前!何言ってんだよ」
ビックリして真っ赤になってる火神を見て、ニヤリと笑う。コイツの恥じらいや余裕の無い表情っていうのは、ハッキリ言うと珍しいのでこういう機会は逃すべきじゃない。
「いいじゃんか、面白そうだし」
「面白くねえよ!っていうか、青峰はいいのかよ?俺が一人でやってる間とか、退屈しねえの?」
いやいや、俺の目の前でお前がよがってる姿が見れるなら、全然退屈なんかしねえし。むしろ興奮する。
あと、これは秘密だけれど。最初にお前を気持ちよくして、クタクタにしとけば今夜は俺が本気で流れを握れるかもしれない、という美味しいオマケまでついてる。
これは色んな意味で、火神に勝つチャンスだ。
「なあ火神、頼むって」
耳元に低い声で吹き込むと、赤く頬を染めて「分かった」と呟く。
俺が心の底でガッツポーズしてたとか、コイツは絶対に気付いてない。

誘うように服を脱ぎ捨てるのもいいけど、俺は脱がせる方が好きだと言ったら。火神は俺の前で脱ぐ前にどうする?と尋ねるように無言で見つめるようになった。「脱がせて」と言わないのは羞恥心からなんだろうか?
コイツの「恥ずかしい」の基準って、本当によく分かんねえ。そう思いつつ、火神の着ていた衣服を取りさらう。
「なあ青峰、これ自分で解さないと駄目か?」
ローションのボトルを片手にそう尋ねる相手に「やって見せろ」と命令してみる。すると既に衣服を全てはぎ取ってしまった相手は首をすくめて、自分の手にローションを取ってゆっくりと俺の前で足を開く。
俺の言う事に抗わず、従順になっている相手に加虐心が刺激される。やっぱ、俺ってこういう所あるんだなと思い、ゆっくりと自分のナカを弄る相手に笑いかける。
俺はベッドの側に椅子を引いて持ってきて、座ってその様子を眺めてる。勿論、衣服はまだ身に着けている。火神の恨みがましい目が「脱げよ」と訴えかけているけれど、それも無視して目の前の楽しい「遊び」を見つめる。

「なあ青峰、何使うんだ?」
三本目の指を中に入れたところで、火神はそう問いかけた。そういえば、中に入ってたおもちゃは一つじゃなかったんだっけ?どれを使えばいいんだろうか。
とりあえず棚の中から箱を取り出して膝の上に乗せて蓋を取る。
カプセル型の物とか、男のモノを模したやつとか、何か他にも入ってるけど……。
「なあ、お前ってどれが好きなんだよ?」
「ぅん?別に好きとかないって、刺激になれば、それでいいから」
「へえ。つーか、こんなの何処で買ったんだよ?」
「ネット通販ばっか、だぞ。流石にそういう店に入るのは……ちょっと、な」
そう言う相手の手元では、グチュグチュと卑猥な水音が鳴っている、そろそろ物足りないのかしきりに俺に視線を向けては外すを繰り返している。
「なあ、こんなのも使うわけ?」
球体が連なったおもちゃを差し出すと、さっとアイツの頬の赤さが更に増した。
「んな事、いちいち聞くなよ!」
こんな所で恥じらいとか発揮してんなよ、とか思ったけど。涙目で睨みつけるその顔になんかキタから、決めちゃった。
「んじゃ、これ使って見せろよ」
手にしていたおもちゃを手渡すと、しぶしぶと受け取って下を弄っていた指を引き抜いて、ひくつくそこにゴム製と思われる球体を宛がう。
「くっ!ん」
ゆっくりと連なった球体を一個ずつ中に埋めていく、どうやら内側を刺激しているらしく、時折息をつめたり声を押し殺したりしている。
全部が入ったところで詰めていた息を吐いて、呼吸を整えている。だけど、そうしている間にもアイツのモノは固く膨らんでたらりとヨダレを垂らして刺激を待っている。
「なあ、ここ触んなくていいの?」
触らないでおこうと思っていたけれど、その痴態に我慢がしきれなくなってアイツのモノを指先でつっと撫でてやると面白いくらい体が跳ねあがった。かなり敏感になっているらしく「やめろよぉ」と言う声も、なんだか頼りない。
「お前、感じ過ぎじゃね?まだ何もしてないだろ」
「ひっ!や、だからやめろって、言って」
「一人でシテるとこ見せろって言ったのに、お前が進めないからだろ。ほら、早くしないといつまでもイケないぞ?」
手を離してやると刺激がなくなって寂しくなったのか、ゆっくりと中に埋めた物を引き抜いたり、またナカに収めて刺激を求めて貪欲に動かす。
「ナカだけじゃなく、こっちも触れよ」
蜜を零して刺激を欲しがってる場所にまた触れると、火神は顔をいやいやと横に振る。
「ん!だって、すぐイッちゃうだろ」
「イケよ、好きなだけイってみせろよ」
むしろそれが目的なんだから、イってくれた方がこっちは助かる。
空いてる方の手で、自分の雄も扱き出した火神を見つめて俺は満足に口の端を上げる。
「ん、青峰……あおみ、ねぇ!」
俺の名前を叫んで果ててグッタリしてベッドに沈む可愛い相手の額に、優しくキスをしてやって「ほら、続きやれよ」と囁く。

「えっ?」
「一回で許してやるなんて言ってないだろ、まだ他にもこんなに一杯あるし?」
そう言って箱を差してやれば、ビクッと怯えて震える。ヤバいちょっと楽しい、これくらい自分で攻められるようになったら、本当にいいんだけど。
「なあお前のエロい姿、もっと見せてくれよ。大我」
首筋を舐め上げてそう言うと、ゆっくりと頷く相手に満足してナカに埋まってた物をさっと引き抜いてやる。
「ふぁ!や、あおみねぇ……」
「ん?まだまだイケるよな。火神ってエロい事、超大スキだもんな?」
ツンッと尖がった乳首を指で弄ってやると、甲高い声が上がる。なんか、今日の火神はスゲー感じてるっぽい?やっぱりあれか、強気に攻められる方が好きなのか?
放置していた箱から、今度は男のモノを模した物を取り出す。それを手に握らせてやると、そっとひくついてる穴に宛がってやる。
「あう、あおみねぇ」
ナカに埋めるのを手伝ってやったら、さっきみたいに椅子に座って眺めてやろうかと思っていたのに、伸びてきた火神の手に阻まれてしまった。
「どうした?」
「なあ、せめて抱き締めるとか……傍に居てくれよぉ、ただ見られてるの、恥ずかし」
おいおい、止めろよ火神!顔真っ赤にしてそんな事言うなって!
そんな風にお願いされて嫌とは言えない。火神の額にキスを落し、後ろに回るとぎゅっと抱きしめてやる。
「これでいいか?」
「あう、あ……ん、青峰」
前から見れないのはちょっと惜しいけど、まあ上からだって絶景なのは変わらない。
そういや、これって電動のやつだよな?思い出して、スイッチを入れてやったらビクンと腕の中で体が震えた。
「ひゃあぅ、ちょっ動かしちゃ……」
「何だよ、気持ちイイのがいいだろ?一人でしてる時だって、こんなに乱れるわけ?」
「んあ、ちがう……いつもはもっと、こんなじゃな」
そう言われてもお前のいつもとか知らないわけだけど、どうやらこういうプレイに興奮してしまってるらしいって事は分かった。まあ、俺もそうだけど。
「嘘つけよ、こことか自分で弄ったりしてんの?」
「ひっ!ぅう」
乳首を強く摘みあげてやったらいやいやと首を振る、涙混じりの声で「あおみねぇ、意地悪すんなよ」なんて言うもんだから、腰にキテしょうがない。
お前、本当に可愛いわ。
「なあ、このおもちゃと俺のどっちがいい?」
「そんなの、青峰のが……いいに決まってんだろ!ふぁああん!」
ツッコんでたおもちゃを動かしてやると、イイ所に当たったらしく腰を揺らして悦ぶ体。それを恥ずかしいと思っているのか、顔を真っ赤にして睨みつけてくる。
「本当かよ?このおもちゃでも、充分気持ち良さそうだけど?」
「やだ、足りねえ……こんなんじゃ、足りないよぉ」
嫌だと連呼する割に、ナカはいい感じに解れて良さそうに見える。
ああ、もしかして一人だけ乱れているのが嫌なんだろうか?俺も一緒なら恥ずかしい事はなくても、自分一人だけトロトロに解されてんのが我慢ならないとか?だと可愛いんだけどなあ。
「なあ青峰、も本当に、いい加減。お前のくれよ?」
「んー?まだいいだろ、おもちゃに相手してもらいな」
「やだって!お前だって、こんなにしてる癖に、何で?」
腰に当たった俺の猛った熱を差して、火神は問いかける。そりゃできれば俺だって、そろそろ限界だし、突っ込みたいぜ?でも、お前に請われるままにしてやったら後が恐ろしいから、まだやれないんだよ……とは流石に言えない。男のプライドが許さない。
でもそうか、火神ってもしかして焦らされると感じるのかな?
「はあ。俺はどうだっていいだろ?」
「よくない!良くないんだ、青峰……お願いだからちょうだい?」
流石にちょっと可哀相になってきた。火神ってこんな俺の事好きなんだな……体目当てじゃないって信じたいけど。
「お前が欲しいのは、結局俺の体だろ?」
思わず口から出た言葉に、あっしまったと内心思った。
「違う!青峰、信じてくれよぉ……」
ばっとこちらを振り向いて、驚きで目を見開く火神。
やばい、これはヤバい。
「なあ青峰!青峰!何で?俺とセックスすんの、そんな嫌かよ?」
ボロッと大粒の涙と一緒に、その目が落ちてくんじゃね?と思ってしまった。それくらい、目の前で火神は号泣していた。
「そんなに、俺の事、信じらんねえのかよぉ?」
「そうじゃねえよ、火神」
落着けと背中をさすってやる。ナカをまだ虐めていたおもちゃを抜いてやり、ぎゅっと強く抱きしめてやると段々としゃくり上げる声も小さくなってきた。
「悪い、火神。全部、俺の嫉妬」
「嫉妬って、何に?」
「お前がこういう、その……セックスとか上手いから!俺とヤッてんのに、本当は他の奴の事考えてんじゃねえのかとか。お前が好きなのは俺とのセックスなんじゃないかって、んな事ばっか考えちまうんだよ!」
こんなに献身的なのに、ついつい疑ってしまう。
こうやって躾けたのは一体、誰なんだろうかと。
コイツの愛し方は、本当に俺のためのものなんだろうかと。
過去を変える事はできないのは分かってる。驚きはしたけれども、そういう所もひっくるめてお前だって思ってる、でも怖いんだよ。
「俺って、愛されてるよな?」
馬鹿らしい事聞いてんなあとは思う、でもお前の口から聞かないと落ち着かない。
「愛してるつーの、バーカ。お前は世界一イイ男だっつーの」
自信持てと涙目で笑うと、俺の頭をちょっと叩いてきた。
その痛みも笑顔も、破壊力抜群で……本当にお前、もう勘弁してくれよ。

「な、青峰。続きしないのか?」
「する」
即答して一気に服を全部脱ぐと、待っていましたとばかりに火神が熱烈なキスをしてきた。それを受け止めて、激しい求めに答えつつあやしてやっていると……。
気が付いたらベッドに押し倒されて、マウントポジション取られていた。
アレ?なんかこの光景、前に見た事ある気がする。

「お前が俺の事、凄い好きなのは分かったぜ青峰」
ニッコリ笑う火神だが、妖しい笑顔の奥になんだか怒りの炎が見えるのは気のせいか?頼むから、気のせいであってくれ。
「だけどな、ちょっとやりすぎだぞ?」
「あの……火神?」
「俺がお前を愛してるか不安なんだよな?大丈夫だぜ、たっぷり愛してるって教えてやるよ」
ニィッと歯を見せて笑ってるけどな、なあ火神……。

スッゲー目が、据わってるんだけど?

「なあ青峰、抜かずに何発……できるかな?」
「ハッ!……ハハハ。冗談、キツイぞ?」
「冗談じゃ、ねえよ?」
そう言うと、火神は俺の痛いくらいに立ち上がっていたモノを、生のまま自分のナカへ導き入れた。

その夜、俺は思った。
腹上死は最高の死に方だとか言うけど、絶対に嘘だ……って。

翌朝、初めての時と同じく動けない俺に加えて、前日の後処理でグチャグチャになってた火神は、目が覚めてからしばらくはぼーっとしていたものの。やっぱり体に悪いから、と一緒に風呂に入る事にした。
風呂場まで俺を連れて来たのは火神だった。腰の痛みを訴える俺に肩を貸して、自分も辛いだろうに風呂場まで連れて来た。
「体洗うの、手伝ってやるよ」
「いいって自分でできるし」
お前も体怠いんだろ?と火神はこちらの体調を気遣うように言う。
「やらせろ」
しかしそう強い口調で言い返すと、火神はうんと頷いて俺にスポンジを渡した。
背中や腕を洗ってやってる間に、自分はナカに詰まっている俺の精液を掻き出す作業に専念する事にしたようだ。つーか、このまま行ったら零れるからって昨日のおもちゃ突っ込んだ時はかなりビビった。
抜いただけで風呂場の床に白濁のドロッとした液体が零れ出してくる、指をただ突っ込んだだけで、どんどん中から溢れて来るみたいだ。
「やっぱ、ゴム無しはヤバくね?」
大量に出てくる昨夜の名残を見つめ、流石に申し訳なくて言う。
「病気の心配してんなら大丈夫だぜ、ちゃんと検査してるから」
「そうじゃなくて。それ、腹下したりとかしねえの?」
「ん、まあ……平気だよ。処理が面倒だけど。でも、やっぱり気持ちいいだろ?」
それは認める。正直、五回目までは覚えてるけどそれ以上の記憶はない。中出しする度に火神がかっ飛んでくるもんだから、もう本当に死ぬと思った。冗談抜きで。
「お前、誰に対してもああなの?」
「んなわけねえだろ!あんな恥ずかしい事、そうそうできるかよ」
顔真っ赤に染めながら下の口から精液掻き出して言われても、正直そんなに説得力ねえっつうの!
「んな事言って、セフレに中出しさせてたんじゃねえの?」
「止めろって!大体なあ、俺はゴム持ってない奴とはセックスはしねえよ!」
そう反論されてピッタリと動きが止まる。
「お前、部屋にゴム常備してんのってそのせい?」
「日本に帰って来てからはお前が初めてだって!ゴムはまあ、その……一人でする時に使うからで、あの……」
ちょっと言い淀み、ちらりと自分の横に置かれた洗面器に入ったおもちゃを見る。
「そういうおもちゃとか使う時、ゴムとかローション使うから……置いてるだけだ」
「お前……やっぱり結構これ使ってるだろ!」
「使ってねえよ!」
否定してるけど顔が真っ赤だ。うん、やっぱり後ろ弄るの好きなんだろうな。

しばらく二人共赤くなって黙りこみ、自分の作業に没頭していた。
何というか、思い返すと恥ずかしくなってくるのだ。
本当に、俺男としてみっともねえわ。自信無くしそ……。
「中出し許すのは、恋人だけだからな」
「…………えっ?」
「だから!お前だけは、特別だぞ?」
俯いてそう呟いた火神は「足も洗えよ」と俺の前にすっと差し出す。
「あーあ、とんだじゃじゃ馬捕まえちまったなあ」
まあ愛してるけどと言って、受け取った足の甲にキスを贈ると顔を真っ赤に染めて目を逸らした。
やっぱお前、可愛いわ。

そっから狭いけど一緒に湯船に浸かって、ずっと引っ掛かってた恋人とかの話を聞いてみた。
「お前の元彼、よくセフレとか許したよな」
「あっ違うぞ、セフレっつーか……全員バスケ仲間なんだよ。日本人なのに珍しいって俺達なんか有名だったらしくて、で元彼と別れた後に寂しくないのか?って誘ってきた奴と、ヤッた事あるだけ」
「あるだけって……一人じゃないんだよな?」
「うん、といっても片手で足りる人数だぞ?誰も一回きりだし」
それってセフレって言うか?うん、まあ難しいところだろうけど。
てっきり、彼氏がいんのにセフレいんのかと思ってたけど、そうでもなかったらしい。むしろ彼氏は浮気を許さないタイプだった、との事だ。なんとなくその気持ちは俺も分かる。放っておいたら、悪い奴等に捕まってそうだもんなコイツ。
「お前が日本に帰って来るから、分かれたんだと思ってた」
「あっ違うぞ。相手が日本に帰ったのもあるけど、本当は喧嘩別れが正しいかな?」
「待てよ、相手が日本にって……元彼、日本人なのか?」
「うん」
うわー、意外過ぎる。絶対にコイツはアメリカに染められたんだって思ってたのに、まさかの同じ国の人間かよ。どんなヤリ手だったのか気になる、絶対に会いたくねえけど。
「なあ、ソイツって俺に似てんの?」
そう尋ねると、火神はちょっと俺の方を見てからフッと噴き出して「全然似てねえ」と言った。
「全然、似てねえの?」
「うん、むしろ正反対かもな」
全く意味が分かんねえ、お前の好みって何なんだよ?
「色々あんだよ、俺にも」
そう言った顔がなんかどっか寂しそうで、思わず言葉に詰まる。それを見た火神はニッコリと笑うと、俺の鼻先にキスをした。
「安心しろって、お前は世界一イイ男だぜ?」
「そうかよ……」
こんな事で照れて目も合わせられない男が、火神の中では世界一イイ男らしい。

オマケ

いつものストバスコートに行くと、見知らぬ男が居た。

そいつ以外に人影はない。火神と待ち合わせしていたんだが、まだ来ていないのは見て分かる。どうしようかと思ったら、綺麗にシュートを決めた相手がこちらを振り返って笑いかけてきた。 「やあ、青峰君……だね?」
始めましてと言うそいつは、よく考えれば見覚えがあった。
「お前、紫原のとこの」
「氷室だよ、氷室辰也。君は桐皇の青峰君だろ?話しは聞いてるよ、敦と……タイガから」
タイガという呼び方に、思わず反応する。
コイツ、火神と知り合いかよ……しかも名前呼びって。いや、単純にこの男の癖かもしれない、赤司だってそうだし。今、紫原の事も下の名前で呼んでたしな。
でも絶対に違う、そう直感が告げている。

コイツ、絶対に嫌な奴だ……と。

「時間があるなら少し相手してくれないかな?そうそう、タイガならまだもうちょっと来ないと思うよ」
「何で知ってんだよ?」
思わず低い声が出る、どう考えても不機嫌さが出てるけど構わないだろう。
「さっき電話したからさ、補習がまだ終わらないんだって」
そう言うと、ゴール下に転がっていたボールを取りに行く。
「ビックリさせてやろうと思って、コッチに来るって秘密にしてたんだ。案の定、凄くビックリしてたよ、言ってくれたら迎えに行ったのにってちょっと怒ってたかな?そういう時のタイガが可愛いから、わざと怒らせたりするんだけど」
フフッと笑うそのキザったらしい顔が、何だか無償にイラつく。
どこか大人というか、余裕のある態度は俺には到底ないもので。兼ね備えた雰囲気も相まって、そう年も変わらないはずなのにかなり年上に感じてしまう。
「補習があるのと、約束があるから会えないって言ってたんだけどね。どうしても俺が今日会いたいって言ったから、ここの事を教えてくれたんだ」
「アンタ、火神と仲良いのか?」
「タイガは俺の可愛い弟だよ?手のかかる、カワイイ可愛い弟」
嘘吐けよお兄ちゃん、アンタのその顔、弟に向けるもんじゃねえぞ?
これはもしかしなくても、そうなんだろうな。
外れてくれたらいいけど、予想通りだとしたらマズイな。
本気でヤバい。

「タイガは君と待ち合わせがあるから駄目だって言って、聞かなかったんだ。俺と君を会わせたくなかったんだろうね。でも、俺が桐皇の青峰に会ってみたいって言ったから教えてくれた。そうそう、君には連絡しないでってお願いしておいたんだ。もし言ったら、タイガの恥ずかしい話をしてあげようか?って言ったら、しぶしぶ了承してくれたよ」
顔は笑っている、でも目は笑ってない。
コイツは俺の事を、完全に敵だと認識しているらしい。それは、俺だって一緒だっつうの。
「アンタが、火神の元恋人か?」
元の部分に重点を置いて尋ねると、相手は余裕を持った笑みで俺を見つめ返す。
「そうだよ。君は世界で一番イイ男らしいね、青峰大輝」
それはもう余裕ぶっこいて妖しく微笑むイケメンの首元。嫌でも目に付いた。
火神が今も大事そうに下げている、誰からもらったか知らないあのシルバーリングと同じ物がな。
そして俺は思っていた。
コイツは、マジでヤバい。

生涯かけて絶対に会いたくなかった奴に、俺……会っちまった。

あとがき
火神君に元彼がいれば、絶対にこの人しか居ないと思うんですよ。
正直に言うと、ウチのヘタレ峰君じゃ氷室兄さんにはバスケ以外で勝てません。
全く勝てません。
だって、スペックが違いすぎるもん。
頑張れ、青峰君。
2012年9月10日 pixivより再掲
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