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20歳以上ですか?

 いいえ

馬脚を露わす

 ローランという男を評価するなら、清廉潔白とか明朗快活とかいう言葉がたぶん該当するんだろう。根明でありその場のノリでかなり強引に物事を進めていくようで、それなりに考えて動いてることも多い。
 そしてフランス人がそうかのか、騎士の教育上そうだったのかは不明だが、色んな局面においてびっくりするぐらい紳士だし真面目だ。
 なんでそんなことが言えるかといえば、紆余曲折あってあいつとつき合うことになったからだ、半ば情熱に押し切られるような形で頷いたところはあったものの、結果として非の打ちどころがねえ男なのは認める。
 いやまったく欠点がないってわけじゃないけど、たまに全裸になろうとするだけで、魑魅魍魎がはびこるこのカルデアにおいて許容こそされてはいないものの、ある種のタガが外れた事象として受け入れられ始めている。
 そんな服さえ着ていれば完璧な男に、今から恋人同士でイイコトをしようとする段階で、今日こそは一つクレームを入れようと心に決めていた。

「あのさローラン、ちょっと待ってくれ」
 何度かキスを交わしてベッドまで案内され、優しい手つきで横に案内され首筋やら頬にキスを受けてる最中に待ったをかけられ、見下ろしてくるローランの顔色は見る間に悪くなっていく。
「あー、もしかして気分じゃなかった?」
「違うって、なんていうかこの体勢が、ちょっとな」
 いやだってわけじゃない、お互いに向かい合ういわゆる正常位なら、こいつの綺麗な顔だって見れるし、こちらの姿もうまく隠せないので恥ずかしいといえばそうなんだけど、問題はそこじゃない。
「言い難いんだけどさ、えっと……あのな、その、重いんだよおまえ」
 体重をかけないように極力は気をつけてくれてるんだろうけど、どうしても体が密着する機会が増えると伸しかかってくるんだ、百キロ近い男の肉体が。いや自慢の体なのは認めるし羨ましいと感じるほどに恵まれてる、だからしょぼんとした顔をするな。
「俺そんな、押し潰してたか?」
「普通の体格の奴なら気にならないんでしょうけど、身長の割にウエイトが高いせいか見た目以上に重いっていうか」
 そんなあと涙混じりにつぶやく相手に、だから今日はちょっと変えてみませんと提案してみる。
「後ろからはいやだぞ」
 おまえの顔が見えないと心配になると言うので、どのみち心配になったあんたが顔を寄せるのに合わせて、こっちに重心が偏るんだったら変わらないだろと指摘する。  じゃあどうするんだとすっかり気落ちしてる相手の頭を撫でてやり、とりあえず下から抜け出し、ぐずるローランを仰向けに寝かせてその上にまたがる形で座れば、今にもこぼれ落ちそうだった涙が止まった。
「どうだ、これなら文句ないか?」
 寝転んだ相手の胸に手をつき涙に濡れた頬にそっと唇を寄せてやれば、そろりと震える手で俺の頭に手を伸ばしてくるので、求められるままにキスに応じてやれば、普段とは反対に見下ろす視点にある相手がへへっと照れたように笑う。
 なんだよ現金な奴だなと笑えば、仕方ないだろとちょっと顔を赤らめてつぶやく。
「この距離でマンドリカルドから触れてもらえると、すごく嬉しくて」
「なんだよ、これからもっといいこと、するだろ?」
 萎えたんならやめるぞとつけ加えると、体に置いたままだった両手を握りこまれ、やりますと期待した視線を向けられるので、そうかよと呆れた溜息を吐く。
「どうしてほしい?」
 あんま期待されても上手くないかもしれないぞと先に釘を刺したうえで、持ちあがってきてるローラン自身に手をかけそっと優しく触れてみると、急激に熱を持って大きく育っていく、こいつ普段どうしてたかなと思い出しつつも手を動かしていると、おまえもと下敷きにした彼の手が俺のに触れてくる。
「あっ! ちょっと、んんっ、今日はいいって」
「遠慮するなよ、それとも他のとこのがよかった?」
 ついっと流されて体へと伸びてきた手に触れられ、思わず腰が引けるので逃げないでくれよと苦々しく返されるので、ムッとしながらも優しく掴んできた手に従い元の位置に座り直すと、緩やかに弧を描いていた口の端が更に持ちあがる。
 がっちりと腰を掴まれてしまうと片手であっても逃げられなくなってしまう、マウントポジションを取ってるのはこっちなのに、こいつの力どうなってるんだよ本当に。
「大人しくしてろ、んっ! ちょっとやめっ、手つきやらしいな」
「そりゃ、エッチなことしてるから?」
 やめろ生々しくなるとこぼしつつ、手を動かしていく俺に対して悪戯するように大きな手に体を撫でられる、胸元や腰のラインに触れてどこがいいと聞いてくる相手に、いい加減にしろと涙目で睨みつけると、いやだって一方的なのはよくないと口をへの字に曲げて腰から下、尻の近くまで降りてくると割れ目に沿わせるかたちで尻を撫でてくる。
「なら後ろ、準備してくれよ」
「色気ないな」
 可愛げを求めるな、目の前にあるのはどう見ても悲しいほどに男の体だぞ、またそういうこと言うと口を曲げてつぶやくので、早く挿れたくないのかと相手の急所の先端に軽く爪を立ててみる。
「ちょっバカ、そういうのやめろって!」
「いいだろ、たまには」
 普段は優しい騎士さまの手に任せているけど、たまにはこっちが主導権を握るのも悪くないな、まあ逃げ場がないのは同じだし不安を虚勢で取り繕ってるだけにすぎないけど、だから下手に長引かせて体力切れになる前に本番にいかないと、まずいだろうな。
 ローションをまぶした指がゆっくりと尻の間を移動して、穴の入り口を軽く押して解していく、慎重なこいつのことだから今日も丁寧に準備を進めてくれるだろう、むしろ体を挟んで目視ができない分だけ進みは遅く感じる。
「んっ、早くしないと、二人とも辛いと思うけど?」
 しょうがないだろ怖いんだよと言うローランには焦りの色が浮かんでいる、感覚的には責め立てられてるわけだもんな、でも指一本だけでほぼほぼ進んでいかないと俺も困るんだけど。
 しょうがないかと片手を後ろに伸ばし、自分の中をくすぐるように撫でる彼の手に触れるとビクッと面白いくらいに震えが走ったのを感じ取る。
「足りないんなら、手伝うけど?」
「いや、手伝うっておまえ」
 頭に血が昇ってるのがわかるくらい真っ赤に染まった顔を見て、ふはっと軽く息を吐くといや笑うところじゃないだろと、慌てて呼吸を整えようとする相手の手に添えた指を絡め、ちょっと失礼しますよと水気を分けてもらっていると、あのちょっと待ってくれと震える声で告げられるものの、とりあえず今は無視し、腹を括って男の指を咥えこんでいる穴に自分のを差し入れてみる。
「んんっ、ふぁっ、くぅう」
「ちょっおまえ、バカ!」
 流石にいきなり二本は辛いだろと行ってくる相手に、焦ったいんだってと言い添えるとだからってこんなことするなよと、首筋まで赤く染めてやめさせようとしてくる。
「だって」
「あのさあ、なにか俺のこと試してる?」
 今日はやけに意地悪だぞ、そんなに理性を揺らす真似をされても困るとやけに弱々しい声でつぶやくので、ごめんなと返す。
「おまえに主導権ずっと渡してたから、なんか翻弄できてる気がして、気分よくなっちゃって」
 謝るからと息を切らしつつ返すと、そう言いながら中で指を絡めてくるなと苦々しい声で告げられた。
 いいだろ別におまえも我慢してるの見えてるんだから、早くしたいんだろと指摘すれば、そうだけど頼むから待ってくれと懇願に近い言葉を投げられる。
「なんというかさ心配になってくるだろ、こんな積極的なことされると。普段の行為になにか、不満でもあるのかなって」
「だとして、あんたにそこまで遠慮すると思うか?」
 別に抱かれる側だってことに不満はない、正直なところ男を抱くイメージが沸かなかったから、あんたがそうしたいんならと任せてた部分は大きいし。慣れてきたからこそ気になってたことを口にしただけ、本当にただ気分転換くらいでの提案だったんだけど、思いがけずちょっと上になるのが楽しくて。
「こういうとこ見ると、なんだかんだで王族だなって思う」
「はあ?」
 今更なにをと聞けば、なんというか我儘な王子というか、傍若無人な王さまというか、なんか違うと首をひねってからそう毒を秘めた女王さまだと言うので、そんなにこき使われたいんなら今からでも馬にしてやろうかと聞けば、冗談だからやめてくれと震える声で返される。
「自分で言ったくせに」
「おまえにその自覚がないのが怖いってこと!」
 やっぱりおまえマンドリカルドだなって改めて思ったと、しみじみ語る相手になんだそれと呆れの溜息を吐き、それじゃあんたは今まで誰を抱いてるつもりだったんですかと、中を弄ってくる指に自分の人差し指で爪を立てれば、ほらそうやってイジメてくると指摘される。
「初めてのときは、もっと初心で可愛かったのに」
「だから、んんっ俺に、可愛げを求めるな、ってば」
 むしろ初夜に関しては思い出させるな恥ずかしいから、そう言いながら中を広げる指を動かすと腹側を指の腹が掠めた瞬間に、ビリッとした刺激が走る。
「んぁっ」
 ここ擦られたら気持ちいいとこかと、怖いもの見たさでもう一度優しく触れてみようとした瞬間、ここ好きだよなと同じく中を弄っていた相手に強く押される。
「ふぁ、んぁあっ! おまえ」
 想定してた以上の快感に体が揺れるのを見て、散々煽られたし意趣返しってやつだと意地悪く笑って告げられ、まさかと思った瞬間に明確に狙いをつけて同じ箇所を責め立ててくる。
「あっ、ちょっやめ、こらローラン待って、やだぁっ!」
 グリグリと強く擦られて、逃げる指の代わりに二本目と三本目を合わせて中を弄ってくるので、力なくその腕に添えることしかできず、快楽で揺れる体を支えるためだろう上半身を起こすと、片手を背に回し抱き寄せられた。
 二人分の触れ合った肌の熱で溶けていきそうな体を預けて、与えられる快楽と下準備されていく体が発してくる反応をなんとかやり過ごそうとする。
「マンドリカルド」
 呼びかけられて顔をあげると、ごめんさっきのことはやっぱり訂正するといい男に戻ったローランが告げる。
「おまえはやっぱり可愛い」
「んっ、それは……あんたの思い通りに、なってるときは、ってこと?」
 やけに非難じみた声になってしまったものの、そうじゃなくってと恥ずかしそうに顔を染めたローランが、なんだかんだ言って俺に身を預けてくれるのは嬉しいと口にする。
「んはっ、あぁっう、なんだよそれ」
 青く澄んだ瞳の中に情欲と愛情の混じった熱を灯し、視線を逸らしたところ目尻や頬または額へとキスを落としてくるので、こっちにはしないのかと唇を差してやると、またもや頬を染めてから唇に噛みつくようにキスされる、肉厚な舌を迎えれいて上下ともに中を弄られていく。

「そろそろ、いいんじゃないか?」
 まだちょっと早くないかと止めてくるものの、流石にもう互いに我慢が効かないだろというのが俺の意見、あんたに比べれば頑丈さは足りないだろうけど、それなりに丈夫ではあるんだし。
「無理させたくないんだよ」
「んっ、大丈夫だって」
 ダメだと相手は引かない、いつもそうだ。受け入れる側は辛いだろうって気を遣って、自分本位にならないようにという配慮と、くすぐったいほど大切にされているという自覚はある、とはいえ男同士だからこそ溜まった欲を開放したい気持ちは強い。
 時間をかけられるほどに熱は体内で巡って辛い、残念ながら可愛く待っていられるほどに禁欲的なわけでもねえし、なによりそういう気分にさせたのも行為に慣れさせたのもおまえだ、責任取れってこと。
「なあローラン、いいだろ?」
 そばにある相手の頬を両手で包むように触れて囁けば、ぐっと息を飲みこみおまえ本当、そういうところだぞと真っ赤になったが手を止めてゆっくりと引き抜いてくれるので、ありがとうと鼻先にキスしてやると、念を押しておくけど無理はするなよとつけ加えられる。
「そんなに信用できないか?」
「おまえは無理してでも、やるときはやるタイプだ」
「いくらなんでも、体が裂けるような真似はしねえよ」
 だけどイイかどうかは保証できないぞ、流石に男のために腰振ったことはないんでとつけ加えると、あるって言われたら俺が泣くからやめてくれとつぶやく。
「そんなことで泣くな」
「いやだって、大事なことだろ」
 ならもっと真っ当な人に惚れろよ俺じゃなくってさと言えば、なんでこんなときにそんな酷いこと言うんだよと傷ついた顔をする。
「いや、酷いか?」
「酷いじゃないか、まるで自分じゃなくってもいいみたいな」
「それは本当だろ」
 あんたが熱を分け合うのは俺じゃなくってもいい、もっと釣り合う相手はいくらでもいるだろう。こいつはいい男だから、可愛くて高貴なご婦人がそばにいるほうが正しいんだろうなって思うよ。
「なんで、そうやって寂しいことを簡単に口にするんだ」
 信じてくれてないのか俺がきみのこと好きだって、どれほど心から愛してるのか、簡単に泣いてしまう相手の頬に触れて、そうは言ってないと否定する。
「でも」
「いやだったら別れてるっつーか、そもそも最初からつき合ってねえっていうか」
 まあ少なくともこういうことは許さなかったよ、そうだろと言いながら腰を浮かせてまだ熱を保ったまんまの相手のを掴むと、しっかりと支えて尻へと導いてやると、うっと声を詰まらせて顔を赤くする。
「愛してなかったら、流石に体はやらねえっすよ」
「ああっそう、か……えっ待って、それは。なぁっ、ちょっと待て、なあ!」
 無視して行為を進めるために腰を落とす、じわりと先端から割り開かれた熱が内部を進んでいく、だるさと快楽を欲する体は重力に従おうとするものの、急激な刺激はまだ怖くてゆっくりと飲みこもうと進める。
「んっ、くぅ……ふぅ、はっ」
「マンドリカルド、あの」
「黙ってろ!」
 目の前にあった体を押してベッドに横倒しにした後で、伸ばされかけてた手を握ると遠慮がちに握り返してくるので、それでいいと無言で頷き行為を再開する。
 それなりの大きさがあるので時間はかかるのは仕方ないけど、思ったより圧迫感がすごいなと少し後悔するものの、やると言った以上はちゃんと最後までしないとなと腰を押し進める。
 なんとか最後まで飲みこんで乗りあげた体の上で詰めていた息を吐くと、よっぽど長湯でもしたのかってくらい赤く染まった相手の顔を正面から見下ろし、ははっと軽く笑った。
「ど、どうした?」
「いや、情けねえ顔してんな、って」
「誰のせいだと思ってるんだ?」
 急にあんなこと言われて、落ち着いてられると思うかと震える口調で返されるので、じゃあもう言わなくっていいのかと聞けば、そうとは言ってないと首を横に振る。 「極端なんだよ、やってることが、なんかもう心臓に悪い」
「あー悪かったって、許してくれよ」
 怒ってるんじゃないんだよ、ちょっと幸せの許容量が超えてるというかどうしたらいいんだよと、涙目のまんま格好のつかない顔をしてるので、おかしくって喉を鳴らして笑う。
「笑うなってば、カッコ悪いのはわかってるから、そんな見るなよ!」
「可愛いなって思って、おまえだっていつも俺のこと見て笑ってるくせに」
「可愛いのはおまえのほうだから、っていうかなんなんだよ今日は」
 なんかイキイキしてないか、そんな顔を持ち合わせてたのに驚いたとムッとした口調でつぶやくので、知ってると思うけど俺も男だからさ、たまには恋人を泣かせてみたいと思うこともあるらしい。
「あんたの好みじゃなかった?」
「いや、好きです」
 じゃあいいんじゃないか、そろそろ続けてもいいよなと腰を軽く動かしてやると、あっ待ってくれとすぐ静止の声が入るものの、内部の熱は脈打って喜んでるのがわかって、軽くしか動いてないのになと嬉しくなってくる。
「んっ、たぶんいけそうだし、あっ、もうちょっと早く、してみるな?」
「えっ」
 なにをと言うより先に繋いだままだった手に力をこめ、脚に力を入れて思いっきり浮かしてから中を穿つように突き下ろす、自分のイイ場所を先端が押し潰され、んぁっと軽く声をあげてしまうものの、それ以上に余裕のない顔をしてるローランを見ていると、もっとよくしてやりたいと思ってしまう。
「ふぅ、んぁ……あっ、んんっ!」
「マンドリカルド、無理してない?」
「大丈夫だ、ってば……ふぁ、んん、この心配性が」
 何度も言ってるけどあんたほどの頑丈さはないけど、これでもサーヴァントだしそれ以前に男だし、体は鍛えてあるし体力も人並みかそれ以上にあるから平気だって、そう言ってもローランは気遣ってくれる。
 自分の基準に合わせたら大事な人を傷つける、どうせそう思ってるんだろうなって。だから俺から手を伸ばしてやらないと、こいつはずっと優しい騎士さまの顔を向けてくるんだろうなって、あったかい優しい手は嫌いじゃないが遠慮されてるのは腹が立つ。
 打ちつけるように腰を振ってやると、顔を染めたままの相手の目がしっかりと自分を捉えて離さない、気恥ずかしさがないわけではないけど、それ以上にこいつの前で乱れてみせている今、不思議な熱と快楽でハイな気分になっていて降りてこれそうにない。
「ははっ、んぁ、もうちょっと早く、する?」
「いや、このままで、いいから」
 そうじゃあこういうのはどうだと前後に腰を揺らしてやったら、生唾を飲む音が聞こえそうなくらい喉が揺れたので、あっいいんだなと判断して続けることにした。 「なあマンドリカルド、ちょっと俺もう」
 我慢できないかもしれないと正直に進言するので、別にいいぞとその鼻先まで近づいて軽く触れるだけのキスをする。
「いいって、おまえ」
「出していいって、言ってるだろ」
 ほらこの辺とかいいんじゃないかと腰を深くまで押しつけ、グリグリとえぐるように動いてやれば、やめろそんなと静止の声が続くもすぐに息を詰めて、腹の中で熱が爆ぜるのを感じた。
「んっ、くぅう……んっ」
 ローランのイキ顔を見下ろし、よかったちゃんと気持ちよくできたなと安心しつつ、まだ快楽の甘さで浮かんだまんま降りてきてない体を持て余していたものの、しばらくして力の抜けた相手の体から手が離れたと思ったら、すぐに背に回され真上に倒れこむように抱きすくめられた。
「んぁあ、ちょっ、あんっ、まだ中入ってるのに」
 一回出した割にまだデカイのが腹の中で擦れるので文句をつけると、そんなこと聞いてなかったらしい相手は強い力で無言で抱き締めてくるので、待てどうしたと首を傾げるものの泣きそうな顔を向けられた。
「ごめんな、おまえばっかりさせて」
 なにを謝ってるんだと思ったら、だってイケてないんだろと指摘されて、なんだそんなことかと思い直す。
「いいんだよ、俺は」
「よくない、片方だけが満たされるのは、よくないだろ」
 なんか俺の性浴処理につき合わせたみたいになると眉を下げてつぶやく相手に、だからそれでいいんだってと改めて言ってやる。
「ローランのこと、気持ちよくしてみたかったから」
 最初からそのつもりだった、これでいいんだ。
 今に関しては自分が悪い顔して笑ってる自覚はあった、だって目の前にある相手がキョトンとした表情をした後で卒倒しそうなほど顔を赤く染めて言葉もなく震え出したから、よほど想定外だったんだろうなって。
「あの、いつだって、気持ちいいぞ?」
「でなかったら困る。その、なんていうかな、されるがままってのは、なんか気に食わなかっただけ」
 もういいって言うなら二度としないけど、どうするとたずねれば、しばらく視線をさまよわせていたものの、おまえが無理してるわけじゃないんなら、気分が乗ったときに事前にちゃんとやりたいって教えてくれよと小声になりつつ答えるので、自己申告制って難しいなと思いつつもわかったと答える。
「ところで……続きしていいんだな?」
 そう聞きながら片腕だけで上半身を起こしてくるので、合わせて再び深くまで咥えこむはめにな理、うっと声を詰まらせるものの容赦なく腰を掴まれ動かし始める。 「ちょっとローラン、んぁっ急に、はぁ、そこダメだって」
「いやあ楽しそうだったし、今日はこのまましようぜ」
 ローランに馬乗りになったこの姿勢のまま続行を希望するというわけで、背中に冷や汗が伝い落ちていくと同時に、欲を吐き出せてないから相手より余裕がない今はまずいと思った。
「気持ちよくしてくれた分、俺もお返ししないとだろ?」
「それは、ひぅっ! あ、待って本当に、ゆっくり」
 近くにある青い瞳に吸いこまれるように近づき、柔らかく食むように唇を奪われていく、涙で滲んだその顔に欲の色をはっきり映し取ったので、まあ予想通りかと諦めて与えてくれる快楽を受け止める。
 ちょっと期待しなかったわけじゃない、素晴らしい人間たらんとするこいつを、ついに負かすことができるんじゃないかって。

「痩せたほうがいいか?」
 情事のあとに広がる気だるく甘い空気の中、すっかり後片づけを終えて腕枕なんぞしてくれる相手が逡巡した末に吐き出した言葉に、あれは真に受けなくっていいぞと少し痛む喉で答える。
「いやだって気にするだろ」
 恋人を押し潰したくないと言う相手に、そんな簡単に潰されたりしないぞと返答するものの、納得いってないらしいので大丈夫だって、今だって壊れてないだろと指摘してやればううっと声を詰まらせるのに成功した。
「やり過ぎたのはわかってるんだ、やっぱりあの、怒ってるよな?」
「いや、聖騎士さまも男だなって思った」
 めちゃくちゃ清く正しくおつき合いされるから、ちょっと心配だったんだよな、義務のような形で向き合ってるわけじゃないかって。
「それかおまえの目いかれてんのかと」
 こんな筋肉で筋張った男を花のように丁寧に扱わなくってもいいのに、そうつぶやけば手荒なほうが好みってわけでもないんだろ、傷つけるのは好きじゃないとむすっとした声で返される。
「俺は大切にしたいと思う人を、一番大事に扱いたいだけだ」
「わかってる」
 でもな優しいだけじゃ不安になるんだよ、わがままだって言われたらそれまでだろうけど、あんたほど聖人君子ってわけでもないから、たまには奥に隠してる熱の求めるままに貪られるのも悪くない。
「あっ本当にたまにだぞ、毎回は流石に体がもたない」
「わかった」
 そう言いながら目を逸らしたので、次回も同じくらい激しく求めるつもりだったのかと聞けば、いいって言われたら調子に乗ってしまうだろと情けない声でつぶやくので、しょうがねえ野郎だな本当にと溜息を吐く。
 服さえ着てりゃいい男なのに残念だな色々と、そう指摘したらせめて一途だと言ってくれよと不満ですと顔にありありと現れるが、いや悪趣味だろお互いと熱い息をこぼしてつぶやく。
「線の細いお姫さまがお相手じゃないのが、残念だなって思う程度には、いい男なのに」
「またそんなことを」
「本当のことだし」
 愛してるって言ってくれる唇は、自信がないのは俺も同じなんだぞと少し真剣な声でささやく。
「無理に迫ったって自覚はあるんだこれでも、だからきみが離れていくのを見たくなくって、殊更に優しくするように気をつけたんだけど」
「余計なお世話だって、いやなら流石に断ってる」
 言っておくけど自分は大したことねえとは思ってるけど、格安で売り飛ばして構わないとまでは考えてない。受け入れた時点で憎からず想ってはいたんだと答えると、少し頬を染めてそうだなと頷くのがちょっとムカついたので、唇を寄せてやればためらいつつも受け入れてくれる。
 唇が離れて舌先から唾液が伝い落ちるのを眺め、俺って結構おまえに愛されてるんだよなと改め口にする相手の鼻先を摘んでやる。なんだよ愛情を確認したいだけなのにと涙目で訴えかけてくるので、あんたと違って平然と口にできるタイプじゃねえんで、ちょっとは察してくださいと淡々と返す。
「まあうん、今回のでちょっといや、とてもわかった気がする」
「そうっすか」
 だけどたまにで本当にたまにでいいから、言葉もほしいと思うのはダメかと、消え入りそうな声でたずねてくるので、頑張ってみますと語尾が震えつつもなんとか答えた。

あとがき
本当にロラマンの騎乗位を書きたいって書き出したんですが、ローランを翻弄するマンドリカルドを書くのが楽しくなっちゃったやつです。
でもマンドリカルドくんなんだかんだ王さまですし、対ローランにおいては容赦も遠慮もしないと思うんです。
2022年7月21日
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