年齢確認
20歳以上ですか?

 いいえ

雨降って地固まる

 突然ですが、閉じこめられました。
 真っ白な部屋にローランと二人で。

「いや、導入が雑でしょ」
 そんな乱雑な理由でも閉じこめられてしまう程度には、この手のトラップっていうのは一般的に広く認知されているらしい、そしてレイシフト事故で閉じこめられると。
「とりあえず、マスターとのパスは繋がってますね」
「そうだな、じゃあここからどう脱出するかだが」
 全力で宝具をぶつけて壁を破壊するかと提案する相手に、あんまり無意味に魔力消費しないほうがいいと思いますよと指摘する、パスこそ繋がっているもののマスターと離された今は、あんまり派手に動くより相手の出方を見たほうがいい。
「なんかあそこ書いてあるな」
 いやな予感がするなと思いながら指さされた方向に目を向ければ、白い部屋に電子モニターが設置されていて、そこになにかデカデカと文字が書かれているものの、正直目を塞ぎたい内容だった。
「セックスしないと出られない部屋」
「なんでだよ」
 野郎二人でなんつう馬鹿げた注文をつけてくるんだ、この部屋を用意した誰かは戦力の分散を測っているのかもしれないが、この条件を無効にすることはできないのか。
「ふむ、そうか」
 急激に脱ぎ出すローランに、おまえ嘘だろと流石にドン引きする。
「条件はともかく、俺たちに危害を加える気がなく、こちらが性行為をすれば開くというんなら、ここは従うのも手じゃないか?」
 魔力供給にもなるしと恥ずかしげもなく話す相手は、どんどん服を脱ぎ捨てていき、止める間もなく全裸になった。惜しげもなく晒される伝説に謳われる騎士の裸体、俺にとっては結構なトラウマに近い光景なんだし、せめて下着だけでも残してくれてもいいんじゃないか。
「なんでだよ、全裸は最高なのに?」
「普通は人前でほいほい全裸にならないんで」
 そうして俺に迫り来る全裸男を前に、ちょっと待てこれ本気にして実行に移すつもりなのかとたずね返す。
「それで脱出できるんなら」
「絶対にいやだ」
 あんたと俺、どんな関係なのかわかりきってるでしょ。
 かつての敵であり生前は殺さんがためにしつこいほどに追いかけ回した、相手のことを嫌える理由はあろうとも、反対の行為は早々できるもんでもない、それはあんただって同じなんじゃないのか。
「おまえに禍根がないんなら、俺のほうはそこまで」
 命を狙われるわけでもなく、デュランダルを狙われる心配もないんなら、俺としてはまあ、そこまでしがらみもないっていうか、昔のことだと水に流したいんだが。言葉切れ悪くそう話す相手に、そこはいいっすけどと俺は一歩後退する。
「ヤル気なのが解せないっつーか、その、あんた俺を抱く気だろ?」
「そうだな、そうなるのかな」
「いやです」
 絶対にいやだ、そこは流石に譲れないでしょ。つうか当たり前のように俺を抱くことを決めただけでも自分の身を切る気がないのわかってんだよ、そんな相手に好き勝手されるのはごめんだ。
「ちょっと待てくれ、別におまえのことを考えなかったわけじゃないぞ?」
 この肉体の硬さと筋力の量については知ってるだろ、ただ内蔵の造りがどうなってるのかは正直なところ俺にもわからん、急所を掴むことを思えば、下手なことして傷つけるわけにもいかないだろ。
「あと普通に手が出た場合、俺は殴られても頑丈だから大丈夫だけど、俺が殴った場合は目も当てられない」
「まず殴られるようなことすんじゃねえよ」
 しかも言いわけとして納得できる内容なのが余計に腹立つ、ふざけるのは全裸だけで勘弁してくれ。
「だがどうする、本当に脱出できるなら」
 マスターの状況もわからない以上、互いに足止めを食らっている場合でもないだろ、それもわかる、自分たちが引き剥がされた以上、もしかしたらマスターは敵のいるただ中に一人かもしれないんだ、早く辿り着くためなら障壁を超えるために腹を括る必要があるのは確かだ、手をこまねいている場合でもない。
「ああマジか」
 腹の底からの諦めに似た声があがった、相手は完全に腹括ってるんだからこっちが了承すれば事は済むもんな。

「言っとくけど、面白くなくっても怒るなよ」
「まあ状況からして、しょうがないとは思うけど」
 多少は盛りあがったほうがいいんじゃないかと言う相手に、いやもう俺は絶対になにもしないんでそのつもりでと言い返し、用意されていたベッドに上にあがる。
「あ、なんもしないっていうのは行為に対してなんで、普通に痛かったら抵抗はするっすよ」
 急所を掴んでるのはこっちなんで、下手なことするんじゃないぞと威嚇の意味もこめて返すと、わかった丁重に扱おうと疎ましいほどの笑顔で返される。
「絶対に痛くはしないと約束するから、無理だと思ったらそう言ってくれ」
「そうっすか」
 同じようにベッドに乗りあげてきた相手が余裕ありそうなので、もうなにもかも目を背けるために両腕を顔の前で覆うと、協力する気力もないので後は勝手にしろと身を投げ出す。
「あー、とりあえず服は脱がないか?」
「下だけ使えればいいんなら、勝手にしてくれ」
 そう言った瞬間、ピロンとモニターから軽快な音が響き、観察しているのだろう何者かからメッセージが追加された。
「全員、服は脱ぐように」
 指示に従わない場合は条件を満たしても解錠はされないと続いたので、手近に用意した木刀を全力投球した、ありったけの力で投擲したのに特にダメージは与えられたようには見えず、逆に中出しされるまで終われませんと追加の条件を与えられてしまった。
「ふざけんじゃねえぞ」
「マンドリカルド、あんまり煽らないほうがいいんじゃないか」
 これ以上の無理難題をふっかけられる前に落ち着けと、よりによって全裸の男になだめられる俺の気持ちも考えてくれよ。
 しかしサーヴァントの全力で投げた武器で傷一つできてないあたり、魔力での攻撃は完全に防がれてるのかもしれない。キャスターであれば仕組みをどうこう調べることができたかもしれないけど、そんな技能を持たない者同士である以上、下手に反抗して魔力が枯渇していくのを避けるにはもう、指示に従うしかないか。
 瞬間に沸いた怒りも冷めていき溜息混じりにもう一度ベッドに横になると服を霊子変換してしまう。不満そうな顔するローランに、なんすかと聞けばいや情緒ないなと思ってとつぶやくので、もう片づけるのも面倒だしいいでしょと返す。
「というか男二人で情緒もなんもないだろ、とりあえずスルことだけやってさっさと終わらせるぞ」
 当初の宣言どおりになにもしないことに徹底することにした俺の姿に、仕方ないよなと溜息を吐き、とりあえず前戯とかいるか聞かれて、準備だけしてさっさと突っこんでくれないっすかとダルい声で返す。
「事務的だな」
「そうせざるえないっしょ」
 こんなことで可愛げを求められても困るっつうか、後で色々と困るというか、今後すっごい顔を合わせづらくならないか。そういう変な空気を引きずるのがいやっつうか、もう正直なところ心の感情を切っておかないと恥ずかしくて死ねる。
「あんたも災難だなとは思うんすよ、同じ顔見知りのライダーなら、まだアストルフォとかのほうがマシだったでしょ、なのに俺だし。だったらもう互いに後味悪くしないことしか考えてないんで」
 性欲処理ってことで早いとこ終わらせろよと言うと、それじゃあ悪いが失礼するぞと宣言すると、ベッドの脇に置いてあったらしいローションのボトルを手にして指にまとわせていき、まず一本なと人差し指をゆっくり使われるべきじゃない場所へ挿れてくる。
「んっ、ぐぅう」
「痛いか?」
「痛いってほどじゃない、けど。触らせる場所じゃないだろ」
 なんていうか不快感が強い、まあそりゃそうなんだけど。
「続けて大丈夫そうか?」
「いや、やるしかないし」
 あんま確認しててもしょうがないんで、進めてくださいよ。そんなすぐ傷つくほど繊細でもないんで、心配されると変にダメージ負うから。
「わかった、本当に無理はするなよ?」
 受け入れる側のほうが負担がデカイのはわかってるから、と心配してくれる相手に、そうだな無理そうだったら言うから、ちょっとした悲鳴で止まるのはやめてくれと返して、その顔を見なくて済むように両腕を顔の前で交差して目を閉じる。
 拷問されるわけじゃないんだから、そう言い聞かせながら与えられる刺激に耐える。こっちを気遣ってくれてるのか、少しでもうめき声をあげようものならこっちをうかがうように手を止めるから、大丈夫だって唸るように続きを促すしかない。
 そりゃ女性と勝手は違うだろうけど、ここまで丁寧だと逆に居心地が悪い。内部の感触を確かめるように掻き回してくる指はまだ一本だろう、この調子じゃどれくらい時間がかかるかわからない。なにせ自分の落ち度で三回もしなきゃいけないのに、脱出までに体より精神がもつか心配になってきた。
 ローションのおかげで滑りはよくなったのか、まだ一本しかない指を器用に動かして中を解していく、他人よりの刺激だからなにが起きるかわからないのが一番厄介だ。とにかくゆっくり息をして、早く終われと祈るしかない。
「増やしても大丈夫か?」
「ん」
 いいから進めろと投げやりに返すと、苦しくなったら言えよと心配そうに声をかけてくる。あんなにヤル気だったからてっきり好きに進めるものだと思ってたけど、思ってたより俺の反応が冷たいから萎えたのか、それは困る。もうちょっと反応してやったほうがいいのか、と言ってもな演技するにしてもどんな人が好みかわかんないし、そもそも俺がしたら余計に萎えるんじゃないかって心配が。
「うあっ!」
 中指の先が腹側にあるなにかに触れた瞬間、体に走った刺激にそれまで淡々と噛み殺してた声が漏れる、驚いただけだから気にするなと返すものの、たぶん今のとこだと思うんだよなと相手は興味深そうに触れた箇所を指で追いかけて押してくる。
「ふっ、んくぅ、んっ」
「男でも気持ちよくなれるらしいんだよな」
 知ってるよ、いらねえ知識だけど聖杯からの知識で流れこんできてるから、前立腺とか言うんだろ、慣らす必要があるから初めてで感じられる人は少ないとか、なんとか。
 そこを執拗に責めてくるのはあんまりだろ、確かに性の根本なんだけどさそれを無理にくすぐられても反応できるものじゃない、というか触るな、無理に刺激を与えられても気持ちよくないから。
 そう叫んでやりたいんだけど、触れられるたびに息が止まるほどに体が震えるので言うタイミングを逃している。

「なあ、マンドリカルド」
 ちょっとだけ顔見せてくれないかと手を止めてたずねる相手に、少しだけ腕の合間に隙間を作って相手のほうを見つめ、なんだよとあがった息を整えながら声をかけると、いや顔が見えないと無理させすぎてるかわからないと、困ったように眉をさげて言われる。
「声まで我慢されると余計に」
「俺の喘ぎ声とか聞いて、楽しいっすか?」
 萎えるだけなら無音のがマシかなって、いや我慢できるほど噛み殺し終わってたわけじゃないだろうけど、そう切り返すと気持ちよかったのかと首をかしげられるので、無理に性感を揺さぶられるかんじで、正直そこまでいいってわけでもなかったと、途切れがちになりつつもそう伝えれば、よかった話してくれて正直ずっと心配で、おまえやっぱり泣いてるしさと指摘される。
「泣いてるか俺」
「ほぼ泣いてるだろ」
 指を抜かれてそんなに辛いなら今からでもやめておくかと声をかけられ、ここで止められても困ると震える声で返す。
「しかしなあ、あまりにも強姦してるってかんじが強くて」
「実際ほぼそんなもんでしょうが。なんすか、強すぎるんだよ指の力が、んなとこ開発されてるわけでもないんで、すぐに気持ちよくなれるわけないだろ」
 無理やり性感の根元を潰される思いしてるんだこっちは、どちらかと言うと痛みに近いんだよ、それにあんたのを挿れるためにやってるんだから、俺の快感より解すほうを優先しろ。
「終わるまでずっと我慢してるのか?」
 快感引き出されたほうが困るんだよ、男として色々と終わりそうだし。これ以上、変な空気に当てられるのも勘弁してほしい。
「あんまり自分勝手すぎるのもな」
「じゃあどうする」
 うーんとしばし考えこんでいた相手が、なにもしないっていう意思は固いんだろと確認を取ったうえで近づいて来られるので、なんすかと後退すればいやなにもしなくていいんだけど、体勢は変えたいと申し出られる。
「はあ? あ、ちょっと」
 軽々と持ちあげられて膝の上に乗けられると、これでどうだとたずねられる。
「いや、どうだもなにも」
 向き合ってするのはちょっと居心地が悪いと返すと、それならこっちだなと後ろから抱きつかれ、すっぽりと体が収まってしまうので体格差を思い知らされる。
「俺はいいと思うんだけどな、顔は見えないけど互いの体温は感じられて」
「まあ好きにしたらいいっすけど」
 こいつ体温高いな筋肉量の違いってやつかと思いつつ、抱き締められた相手に背中を預けると、右肩のほうに顔を寄せて来てこの距離なら顔が見えなくても、流石にいやがってないかわかるだろと嬉しそうに言うので、くすぐったいから喋んないでくれと小声で返す。
 それじゃあ続けるぞと告げて、再び挿し入れられる指の圧迫感に思わず息を飲むものの、ゆっくりでも確実に広がったそこはすんなりと飲みこんでしまった、ちゃんと息は続けろよと空いてる手で頭を撫でられるので、そういうのいいからさと返すけれど緊張と不安の絡まった糸が解れ、身を任せていいかと安心できたのは黙っておく。

 早いとこ準備をしろと言っただけあって、作業じみた手つきで中を広げるために指を動かしている、早く終われと祈りながら目を閉じていたのだが、腹側を優しく指の腹で撫でられた瞬間にビクリと体が跳ねた。
 痛かったかと聞いてくる声に首を横に振って答えるものの、まだ小刻みに震えている体を両手で抱き締め中の刺激に耐えていると、もしかしてだけどこのくらいの力だと気持ちいいのかとたずねながら、また同じ場所を撫であげられる。
「んっ」
「うん、よさそうだな」
 そう言いながら確かめるように撫で回されて、腹の奥からぎゅっと熱がこみあげてくる、漏れ出る息を噛み砕きなんとか耐えようとするものの、後ろからは我慢しなくってもいいんだぞと明るい声が投げられる。
「おまえも反応してるし」
 空いてる手で急に反応しかけていた箇所を握りこまれ、自分より大きな手で擦りあげられるので、ちょっと待って俺はいいからと言う。
「でもそのままって苦しいだろ」
「いやだ、って。本当に、こんなとこで体力使ってたら、もたないから」
「そうか」
 手を離してくれて再び抱き直すと、痛くはないんだよなと念押しで確認され改めてうなずくと、それじゃあもう一本挿れても平気そうかとたずねられるので、いいから進めてくれとささやく声で返すとわかったと言って指を増やされる。
 三本の指で優しく内壁を撫でるように広げていく、異物感はあってもすでにかなり準備をしてくれていたから痛みのようなものはないに近いんだけど。
「まだ、かかる?」
「もう少しな」
 だってこれだぞと背中に押し当てられた熱量に思わず息を詰めてしまった、これ受け入れて大丈夫なやつなのかと心配が灯るので、とにかくできるだけ痛くないように解すからもう少し我慢してくれと優しい声でなだめられ、耳の裏に軽く唇を寄せられる。
「そういうのは、いいから」
「俺がしたいんだよ。情を向けずに体を求めるのは、あんまり性分に合わないんだ」
 すっごく拒絶されるもんだからちょっと傷ついたんだぞと寂しそうな声でつぶやくので、一方的なのには変わりないだろいいのかと指摘したら、受け入れてくれるだけでもありがたいだろ。
「一方的なのはいつもだしな」
「それいつもだとまずいんじゃ、んっ、くぅ」
 撫でる指先から甘い刺激を受けて言葉が止まる、わざとなのか偶然なのかわからないけど、後ろから抱き締める相手の腕に抗議の意味もこめて爪を立てるも、大したダメージにはならなかったらしい。
「本当のことだし」
 そう言いながら中を優しく撫でてくる相手に、そこばっかするのやめろと抗議するとようやく撫でるのをやめて、再び解すことに集中してくれたものの、後ろから抱き締めてくる相手の唇から逃げることはできず、首筋や肩口に何度も優しく触れられ、じわじわと熱っぽくあがる体温に頭が揺れてくる。
 ゆっくりと呼吸をするように意識しつつ、暴いてくる指に身を任せている合間にもローランは繰り返しキスをしてくるので、くすぐったいからいい加減にしてくれと文句をつけると、口にはしないから許してくれと懇願するように返される。
「そんなにキスするの、好きなのか?」
「ああ、愛を与えているってかんじがしないか」
 どうだろ、確かに好きな相手にすることだし、愛情がなけれなしたくはないだろうけど、そんな大事なもの俺なんかにくれていいのか、いくら減るものでなかったとしても与えるだけで、おまえ満たされるのか? 全部好きでやってるからと背後からでもわかる眩しい声に、溜息を吐く。
「あの、間違ってたら悪いんだけど、我慢するためじゃないか?」
「なにを?」
「俺に、早く挿れたいと思ってるけど、まだまずいかなって我慢してて、それで気を紛らわせてんのかな、って」
 同時に止まる動きにやっぱりそうなんだと息を吐くと、こんなにしっかり準備してくれてるんだから、そろそろ大丈夫だと思うけどと促してみても、約束した以上は痛いことはしないと取り合ってくれない。
「そんなこと言ってたら、いつまでも終わんないんだけど」
 一片の痛みもなしに終わるなんて思ってないし、先延ばしにされすぎても俺自身がもつかわからない、どうしたもんかな。

「ローラン」
 どうしたと声をかける相手の腕を外して、向き合うように体勢を入れ替えると、心を落ち着けるために静かに息を吸う。
「俺がいいって言ってるんだ、ありがたく抱けよ」
 青く済んだ目を見開き驚いたように固まるローランに、これもしかしなくっても間違えたなと顔が引きつるのをかんじる。しょうがないだろ可愛い誘い文句が出てこなかったんだ、いやそれにしたってもうちょっと気の利いたセリフなかったのかよ。
 そんなふうに頭の中で場を収める言葉を探している間に、中に埋めていた指を引き抜かれ空洞になった内部が引くついたのが自分でもわかる、赤くなった俺の耳元に口を寄せると正面からがいいんだけど、いやじゃないかと熱っぽい声でたずねてきた。
「いいけど」
 顔を逸らしながらなんとかそう答えると、じゃあありがたくと体を抱きかかえられて再びベッドに横にされた、正面から見下ろしてくるローランの顔は赤く、やっぱり限界に近かったんだなと思い至る、我慢をしてでも気遣ってくれてたのはこいつなりの優しさなんだろうけど、煽った以上は俺の責任だし文句は言わないようにしよう。 「痛かったらちゃんと言ってくれよ」
「ん」
 ぶっきらぼうな返事だったろうに、可愛がるように額へキスを落とすと頭を撫で、大きな手で腰を掴まれた。
 いくぞという声と共に挿入される熱の大きさに、ひっと喉が上擦った音を立てるものの、痛みはさほどないけどゆっくりと動く相手の質量はさっきまでの比じゃなく、それでもぽっかりと空いた体は受け入れ飲みこもうと蠢き絡みついていく。
「やっぱりまだ痛かったんだな」
 ごめんと謝る相手の輪郭がぼやけるので目を擦ろうとしたけど、その手を取られ広く厚い自分の背に持っていき、いくらでも爪立てていいからなと涙を舐め取られる、その柔らかい刺激が心地よくって詰まらせていた息を吐くと、頬を擦り寄せてもっと触れてくれとねだってみると、緩く笑みをこぼした相手が頬にキスしてくれた。
 侵入してくる熱量に耐えむかつ震える指で背にしがみむかつ、痛みに少し顔を歪めたから一瞬手を離そうとしたのを押し留め、いくらでも爪を立てて構わないと笑う。
「おまえのほうが痛いだろ、俺のことなんて気にするな」
 むしろ必要とされているようで嬉しいとまで言い切るので、ならばとしがみつく指に力をこめる。そのままでいいから、あと少し我慢してくれよと声をかけて頭を撫でてくれる手に甘えて、もう少しだという言葉を信じて内部を焼く熱を受け入れる、体は逃げ出したいともがくのに、意思はそれを押さえこみ真逆の反応をずっと繰り返す、頭と体とが別の生き物になったような恐ろしさが背を伝う。
 くっついた腕と指の隙間に汗が滲むほど時間をかけ、内蔵を擦る圧迫感がかなり上まで登ってきた、先端が指でも触れなかった場所を割り開いていくのに耐えて、ついに先端が内部の行き止まりに触れたときローランが大きく息を吐いて動きを止めたのを見た。
「あっぅ、全部入った?」
「うん、よく頑張ったな」
 苦しくないかと聞いてくる声には心配が滲み出ていて、大丈夫だと言い切るだけの余裕が俺にはない。暴れそうになる体を抑えこみ、なんとか息を整えようと浅く呼吸を繰り返す。
「ゆっくりで大丈夫だから」
「ん」
 燃えるように熱い体を持て余して、汗で滑る背中に手を回したままゆっくり息を吐く。体の内側から他人の熱と鼓動を感じるので、どう足掻いても落ち着くことなんてできないんだけど、徐々に中が相手のに馴染んで形がはっきりしてきて、自分のことながらよく入ったもんだなと感心してしまう。
「ちょっと落ち着いたか?」
「ん、そうだな」
 動かないのかとたずねると、無理はさせたくないとまた頭を撫でてくれる。
「ローラン、ここまできて、遠慮しなくっても」
「でも最初に約束したしな」
 律儀にも最初に宣言した痛くしないという言葉を、まだ貫き通すつもりだったらしい相手の頬に手を添え引き寄せつつ、重い頭を少し起こして何度も慰めてくれた唇に自分のを重ねる。

「ほら、俺も約束破ったし、あんたも好きにっ!」
 離したばかりの口を塞がれて舌が絡む、口の中で響く水音と動き出した相手の熱量に体が引っ張られて、溺れそうになるのを慌ててしがみついて耐える。
「んっふぅ……んんっ!」
「はあっ、あんまり理性を揺さぶることは、やめてくれ」
 加減ができなくなって困るのはおまえだろと、熱っぽい青い目に諌められるので、だから好きにしろって何度も言ったろと言い返そうとしたものの、中を激しく擦る感覚に神経を焼かれて言葉は出てこなかった。
「んくっ……ふぁあっ!」
 腹側を強めに押しあげられて体が跳ねる、先端で強めに擦りあげられると内側から走る刺激で目の奥で光りが散る。
「これ気持ちいいんだな」
「言うな、ああっ!」
 一度は落ち着けた呼吸が乱れ、自分の喉からあがる悲鳴も噛み殺せないまんま、相手にただ縋りつくだけになった上半身に対して、下半身は力も入らず与えられる刺激によって内側から爛れていくような。
「なあ、気持ちいい?」
 感じやすいとこをすり潰しながら聞くな、言葉にならない快楽で頭が真っ白になってるんだよ、問いかける視線から逃げるように顔を背けると目尻に溜まった涙を舐め取られ、頬や耳にキスを落としてくる。
「マンドリカルド」
「いい、気持ちいいから!」
「そっかよかった」
 安心したように笑うので、再び相手の顔を引っ掴んで噛みつくようにキスをしてやると、ビックリしたように目を見開いて固まるので、おまえはどうなんだよと途切れがちに聞いてみる。
「俺か?」
「はぁ、だってあんたがイカないと、んっ……終われないんだぞ、ちゃんと俺、よくできてるのか?」
「もちろん」
 このまま体ごと溶けそうなくらい気持ちいい、手放したくなくなるなんて真面目な顔で言われるとこっちのほうが照れる、こいつ信じられないな。正面から見る笑顔が眩しくって目を閉じると、なにを勘違いしたのか半分空いたままだった口に深めのキスを落としてくる。
 口の中を厚い舌で撫でられる、その合間にも中の律動は止まらずどんどん自分が追い詰められているのを感じる、俺が気持ちよくなってる場合じゃないんだけど、快楽に流されてる俺を見てるローランはやけに嬉しそうで、趣味悪いなこいつとか頭の端に残った冷静な声がつぶやく。
「もうちょっと、頑張ってくれよ?」
「ん」
 背に回してた腕に力をこめると、そのまましっかり掴んで置いてくれよと額にキスしてから、それまでより強めに打ちつけられる、反射的に逃げようとした体を押し留めるように片手で腰を掴むと、更に奥へ入りこむように突きあげてくる。
 逃げ場のない強い快楽に唇を噛んで耐えようとしたのを見咎められ、これはダメだと言いながら閉じられないようにキスで塞がれる。
 掻き乱されている、目の前にある眩しい男の手で、俺の中身も体もなにもかも暴かれているんだけど、あったかくて嫌いじゃないと思ってしまった。
「あっ、ああ……んっあ、あっ!」  ビクンと一際大きく震えた直後、体の奥から感じたことのない大量の魔力が注がれる感覚が広がり、ああイッたんだなと知る。快楽と熱に浮かされてふわふわした意識の中で、縋っていた相手の背から腕が滑り落ちていく。
 荒い息を吐く相手を見上げれば、俺に向いたまま青い瞳にまだ欲の火が揺れているのを感じ取って、頭の端でまずいと声がした。
「あのさ、終わったん、だよな?」
「そうなんだが」
 そのとおりなんだったらここから退いてくれないか、そして真剣な顔で向き合うのもやめろ。早く逃げようと上半身を浮かせるより先に肩を掴んで再び沈められてしまった。
「謝っておく、ごめん」
「それは、なにに対する謝罪っすか?」
「うん、ありったけ魔力はくれてやるから、もう少しつき合ってくれないか?」
 ふざけるなと叫ぶのが先だったか、相手がもう一度動き出したのが先だったのか、一つだけはっきりしていたのは、脱出する条件を満たしても動ける状態が保証されないことだった。

「欲求不満すぎねえっすか」
「いや、自分でもビックリした」
 溜まりきった疲労と大量の魔力という吊り合わない状況を、なんとか慣らそうとしている俺の隣で、本当に悪かったと思っているとローランは頭をさげる。これでもセーブしようと頑張ったんだ本当だぞと続けるので、何回ヤッたか覚えてるかと棘のある声で聞き返すと、目を逸らして四回くらいかとつぶやく。
「六回だよ、馬鹿」
 腰の感覚が死んでるんだがどうしたらいいんだろう、自分の体を見れば鬱血痕やら腰を掴まれてできた指の跡とか、見るも無惨な状態が目に入るのでベッドのシーツを剥いで包まっている。
 忌々しいモニターには「解錠条件達成」の文字が表示されているため、たぶん部屋のドアは開いたんだろう、俺の体が整い次第ここを脱出できるわけだけど、まだしばらく時間かかりそうだ。なんでだよ脱出のために仕方ないってだけだったのに。
「おまえのせいだからな」
「確かにそうだ」
 いっそ責任取って俺が担いで移動するかと聞かれて、俺の名誉にかけてやめてくれと苦い声で返す。こいつの場合、冗談のつもりで言ってるとは思えないし。
 とりあえずこの部屋を監視してた相手をみつけて頭に宝具をぶちこもう、悲しいことに魔力は充分すぎるほどあるし。
 ところで、これだけ魔力注いでくれたけどこいつ自身は平気なんだろうか、様子をうかがうように隣を見れば俺の視線に気づいたのか、顔を向けられて。
「んっ……んあっ、ちょっと」
「どうした?」
 なんで今キスしたと聞けば、待ってるのかと思ってと素直に問いに答えてくれるので、違うって否定するのも面倒になってしまって、違ったのかと慌てる相手にいやと顔を逸らして返すと、やっぱり違うんじゃないかと困ったように叫ばれる。
「俺に熱い視線をくれてるなって思ったのに」
「あんた勘違いもほどほどにしろよ」
 まだ熱に当てられてるな、あんなことの後だからまだ微妙に空気が甘ったるいのは否定しないけども。
「もうちょっと横になるんで、三十分くらいしたら起こしてくれ」
「わかった」

 レイシフトでよくある転移先の事故で閉じこめられていたものの、なんとか脱出が叶ってはぐれたみんなを探していたところ、三百メートル先からでも誰かわかるくらい大きな声で名前を呼び、大きく手を振ってくれるセイバーを発見した。
「ローラン、無事だった?」
「ああ、なんとかな」
 きみも無事でよかったと朗らかな笑顔で返す相手は、もうすぐマンドリカルドも来ると思うぞとつけ加える。
「え、二人が一緒だったの?」
「そうなんだ」
 あいつは今、あそこで敵の魔術師を叩きのめしてると指差す先には、確かに宝具で敵をめった打ちにする頼れるライダーの姿があった、珍しいなあんなに血気盛んなマンドリカルドって。
「なにかあった?」
「あーうん、ちょっと色々と」
 閉じこめられたりして、二人でなんとか協力して脱出してきたってかんじかなと説明する相手に、怪我とかしてないとたずねれば、俺は大丈夫だがあいつはしばらくそっとしておいてやってくれと言う。
「二人なにかあった?」
 どうしてと聞き返すローランの表情から、隠しきれない嬉しさの色を感じたからなんだけど、指摘されたほうはまあ細かいことは抜きにすると、ちょっと距離を近づけられたってかんじがして俺として、それは喜ばしいことだっただけだと言う。
「まあ喧嘩したとかじゃないなら」
「いやめちゃくちゃに怒られたけどな、それはそれ、これはこれ」
 結果は良い方に転んだからよしってことでと笑うローランに、きみがそう言うんなら深追いはしないけどねと返す。
「なんだろう、あんまり良い予感がしないんだけど」
「大丈夫だって、なんていうんだっけ、そう!」

雨降って地固まる
「それ意味知ってる?」by マスター

あとがき
ローランが及び腰になるところで、逆にぐいぐい来るマンドリカルドはいると思う。
脱出のために仕方なくいたしたけど、この後、責任は取らないといけないとローランに迫られて反対に及び腰になるところまでがセットではないかな、と。
2022年6月16日 pixivより再掲
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