蕩けていく、堕ちていく、混ざり合う
ローランとの相性は、まあ悪くないんだろうと思う。最初のころこそ触れ合うだけで固まったりとか色々あったけど、根気よく時間をかけて慣したおかげか、顔を赤く染めることはあっても、固まるなんてことは少なくなった。
丁寧だし優しいし、多少しつこいのと甘ったるい言葉を吐くことに対しても、まあ文化の違いかと思う程度だけど、少し気になることがあって。
「なあ俺の体って、気持ちいいのか?」
「それ、今聞くのか?」
きみの中に入ったばかりなんだけどと、少し息を切らして言う相手に、タイミングが悪かったのはわかるけど、なんか気になってさと視線を逸らして返す。
「普通に考えて男相手とか手間だし、楽しくないんじゃないかって」
「恋人との触れ合いに、面倒とかはないというか」
無理強いするつもりはないんだから、いやならそう言ってくれていいんだぞ、と焦ったような声で言うので、そうじゃないと首を緩く振る。別に受け入れるのが辛いとかそんな話じゃなくって、むしろ逆というかなんというか。
「おまえはいつも、気持ちよくしてくれるけど、俺はちゃんとできてんのかなって」
相手と比べれば細身だけど、平均的な男性サーヴァントの体だ、触ってて柔らかいところもないし、見た目に楽しい場所もそんなにないだろう、手間をかけて開いたところで快楽にあまり繋がらないんじゃないか。
「そんなこと言わないでくれよ」
「だって事実だろ」
幸運なのか不運なのか、比べられる相手がいなかったから誤魔化せてるだけで、実際のとこあんまりよくないんじゃないかなって、たまに考えてしまって。
「きみのほうこそ、どうなんだ」
大きな手で頭を撫でてくる相手を見返せば、俺と違って生前いい人はいたんだろう、過去の相手と比べて自分は暴く側だ、比較にならないほど乱暴なんじゃないか、と不安気に揺れる瞳で問い返される。
「おまえは優しいし、素直だから」
相手の立場を考えて望まれるように行動を取るタイプじゃない、素のまんまの反応が返ってくる。だからこうして触れ合いたいと手を伸ばしてくれるのは嬉しい、できるだけ応えてやりたいとも思う、でも本当にいいのかなって。
「俺ばっかり、いい思いしてるような気がして」
そう言った直後に、中に入っていた相手が強めに中を突きあげてきた。突然のことに体が追いつかず、喉から甲高い悲鳴があがるのを珍しく人の悪い顔で見下ろしてくる。
「ちょっ、ローラン?」
「俺のことを受け入れてくれたのはきみが初めてだが、こうして触れ合ってるとわかるんだ、少しずつだけど俺に馴染んできていること」
きみ自身は気づいてなさそうだけど、回数を重ねるごとに受け入れるのが上手になってる。もちろん慣れてきているんだろうけどさ、肌を合わせるほどに隙間なくピッタリ収まるようで、とても居心地がいい。
「その顔で変態臭いこと言うな」
「だって事実だし」
ほらと軽く揺さぶられると、刺激に合わせて中を締めつけてしまう。そこやめろって反論しても、だって気持ちいいんだろと緩く抜き差しされると、自分でも中が蠢いているのがわかって思わず顔が熱くなる。
「いいんだろ?」
「んっ、そりゃ動かれたら、誰だって、なんか反応する」
「でも気持ちいいって感じるのは、マンドリカルドが受け入れてくれてるからだろ?」
それだけでも嬉しいのに、与えた刺激が連動して快感に繋がっているんなら、これ以上の喜びはない。
「繋がったあとに腹を撫でると、形が張り出してるのわかるからさ、苦しくないのかなって思ってたんだけど」
おまえがよく腹を撫でてくるのって、そういうことかよ。おまえのがいくら大きいっていっても、中に入ってる形がわかるわけないだろと反論したところ、いやだって本当に動いてるのわかるんだってと、俺の手を取ってへその少し下へと持ってこられる。
「触ってみたらよくわかるだろ、ここにあるなって」
「ちょっ、やめろ、んんっ、変なこと言うな」
そりゃ確かに入ってはいるけど想像させるな、恥ずかしくて余計に中をキツく締めちゃうから。ぎゅっと強く目を閉じてやり過ごそうとするも、奥を擦るように強めに突かれて、ひっと短い悲鳴がこぼれる。
「動くとわかりやすいんじゃないか、おまえ腹が薄いから、伝わってくるだろ?」
「やめ、ぅんっ! 待って、やめて」
確かに手で触れた自分の体内でなにかが蠢いているのが、しっかりと伝わってくる。内側で暴れようとしてるモノと、手の下にある膨れた部分が同時に動いているんだから、そりゃこれはローランのだろうけど。
「痛くない?」
「大丈夫だけど、これはやめ、外せ」
腹に手を押さえつける形で止められていたので、どう足掻いても中からくる振動を受け止めてしまう、内と外からくる刺激を否が応にも感じ取ってしまうのに、グリグリと擦りつけるように打ちつけてくる。
普段はしない意地悪な動きに、涙目になりつつやめてほしいと訴えかければ、動くのをやめて手を離してくれた。
「やりすぎた、ごめん」
泣かないでくれと頬を優しく拭っていくので、おまえが泣かせてるんだろうがと睨みつければ、だからごめんってと悪いと思ってなさそうなトーンの謝罪を受け取る。
「なんで、ちょっと嬉しそう、なんだよ」
「きみが感じてるのを見てると、開発してるというか、開拓してるというか、そんな気分になってきて」
「変態っぽいから、やめろ」
ローランからそんな言葉聞きたくねえと言えば、でも当てはまる言葉がそれだからさと、困ったように笑う。
「聖騎士サマに、いらねえこと吹きこんだのは、誰だ」
「男同士だと、そんな話もするだろ」
あんまり行儀はよくないだろうけど、興味がないわけじゃない、相手がいる以上はと続けるので、変なことだけは身につけてくるなよと注意したら、いやがることはしないって約束するからと言う。
「でも開発して楽しいんだろ」
「それは、否定し辛い」
大事な人が自分の好みになっていく、その過程を見るのがこんな楽しいとは思わなかった。
「それ以上は言うな、悪趣味だぞっ、んぃっ!」
「うん、言わないから、そろそろ続きしていいか?」
こんな話で中断してしまったけど、絶賛イイコトしてる最中なわけで、軽い刺激だけじゃ生殺しなのは確かにそう。
「ローラン」
「ん? なんだ」
見下ろす男に手を差し出して、指が絡むように握るいわゆる恋人繋ぎだ。女性のような柔らかさはもちろんない、相手のほうが大きくて指も太く、無骨な剣士の手そのものだけど、触れ合っていると安心する温かさがある。
そんな感情を抱いてはいけないのかもしれないけど、今は目を閉じて相手にすがることにする。
「一緒によくなろうな」
「あっ、んぁ!」
繋いだ手を引き寄せられて、ぎゅっと強く抱き締められるとより深く繋がる。痛くはないけれど、奥をくすぐる快感が強くなって内側がじわじわと焼かれるような、そんな刺激に悲鳴か嬌声かわからない声が喉から溢れ出てくる。
抱き締めてくれる相手がなにを思ってるのかは知らない、けど動きから大事にされてるのは感じ取れる、少なくとも緩い刺激で責め立てて我慢を強いる気はないのはわかるけど、だからこそ快楽を引き出そうとする動きが、ダイレクトに体の内側を焼いていく。
「ローラン、あっ、うぅ」
「うん?」
辛いそれとも痛いと聞かれて、どちらでもないと首を振って、握っていた手に力をこめて、もっと近くに来てほしいと声をかける。
「おまえなあ」
わざとやってるなら、あまりにタチが悪いぞと呆れたようにつぶやくと、空いてる手で腰を掴んで引き寄せられる。
「あぁっ!」
「これ以上ないくらい、近くにいるだろ?」
他に割って入る隙間なんてないくらいすぐそばにいるだろ、それでもまだ足りないってなったら、どうしたらいいんだよ。
どうしたらいいかなんて、俺もわからない。だけどもっと近づけそうだなって思ったんだ、これ以上の奥はないって言われても、まだ入れる余地がありそうだから。
すぐそばにある相手の顔に近づいてキスをする、驚いたように見開かれた青い目がすぐに滲むので、長く見続けてはいけないなと瞳を閉じて、より深くなるように舌を差し入れる。
熱っぽい息と分厚い舌から染み出す涎ごと絡め取って、もっと奥まで全部を飲み干すほど、じゅっと音を立てて吸いあげてやれば、どんどん俺の中へ沈んでいく。そんな相手を見返して、軽く笑い返す。
「なあ、ローラン」
俺の中、気持ちいい?
声はなかったけど喉が鳴る、綺麗な青い目から理性が完全なに溶解するのを見て、そこで俺の記憶は途絶えた。
2023-06-10 Twitterより再掲