Ace of Spades
18歳以上ですか?

 いいえ

女王さまの願うまま!

「あの、ダメ、かな?」
「ダメではありませんが」
「イヤなら、無理には……言わないよ」
 そういうわけではなく、とやんわり断ってる声が聞こえるけど、絶対に拒絶する気はないよね。あの人、いっつもそうだし。
「ケインさんの好きにして、いいからさ」
「そうですか、それはそれは、魅力的なお誘いですね」
 そう話す声が聞こえて直後に静かになる、これはダメなやつだ、無言のままドアを開けてちょっとと声をかける。ベッドに乗り上がったキセルがビクリと大きく肩を震わせ、怯えた顔で起きあがろうとしているけど、それを避けるように背中に回ってたケインさんの腕が防ぐ。シャツの前がだらしなく開いてたのが一瞬見えたから、脱がそうとしていたのか。まったく、僕じゃなかったらどうする気だったんだろう、ドアの鍵を閉めて二人の元へ急ぎ足で歩み寄る。
「あ、あの。カトラリーくん?」
 シャツの前をぎゅっと握り締めて弁明しようとする相手を差し置いて、戻ってくるまで待つ気なんてなかったでしょ、と余裕そうな紳士に聞く。
「すみませんね、火がつくと止められないもので」
 押し倒されて降参ですと目を向けてくる相手に、白けた視線を向ける。よく言うよ、もう少し待たせることくらいできるでしょ。のしかかってるキセルを剥がしてこちらに引き寄せると、逆らうことなく両腕が弱々しく回される。許しを乞うようにごめんねと涙目で訴えてくるから、頭を撫でてあげるともっとと擦り寄ってくる。
「今日は僕からって約束だったのに」
「え、あっ……そうだったの?」
 そうだよと返すと、ごめんなさいとおでこにキスしてくれる。キセルは可愛いけど、許すつもりはないよ。腹を立ててる相手は、平然とこっちを見て微笑んでるんだから。
「いつものことでしょう」
「そういうとこ腹立つ」
 どっちが先って決めていたのは僕たち二人のほうだから、拒否しなきゃいけなかったのはこの状況を心底楽しんでそうな男のほう。いっそ追い出してしまおうか、なんて考えるんだけど俺が悪いからと顔を赤くしてぼそぼそ呟く相手に、わかったよと返してしまう。
「それで、好きにしていいの?」
「あっ……その……聞いてた?」
 聞こえてたよ、悪いかなと思ってたけど。まあ別に、僕らにならいいんでしょ。
「というわけで、ケインさんそこ交代」
「私のベッドなんですけど」
 文句を言いつつも退いてくれるので、横になって相手を呼ぶと恐る恐る僕の上に乗り上がってくる。ケインさんとどういうことしようとしてたのさと聞くと、顔を赤く染めて言い淀むもんだから、同じことしてよとお願いする。
「好きにしていいんでしょ、ならさ」
「う、うん……わかった」
 それじゃあと両肩に手を置くとゆっくり唇を重ねてくる。壊れ物みたいに触れてくる割に、しっかりと舌を絡めてくるんだから、本当に好きだよねと呆れも通り越して関心しちゃうよ。息を飲み干すほどに深く絡めてくる相手に応えて、あやすように頭を撫でると擦り寄せてくる。
「それで、これは自分で脱ごうとしたの?」
 だらしなく前をくつろげたシャツに指をかけると、えっとと困ったようにケインさんのほうを見る。面白そうにその様子を眺めていた相手は、椅子の上から私は特になにもしてませんよとにこやかに返してくる。
「見え見えの嘘つかないでよ、流してしまえばこっちのものとか考えてたんじゃないの」
「随分な言われようですが、あくまで魅力的なお誘いに乗っただけなので」
 どうだかわかったもんじゃないよと、返す僕に。俺が悪いから、喧嘩はやめてと涙声でささやきかけてくる。
「もう、いいけどさ。それでどうしようとしてたわけ?」
 ほら続きしてよとせっつくと、うっと声を詰まらせてから脱ぎかけのシャツに手をかけて、ボタンを全部外して脱ぎ去るとベッドの下に落とす。僕のシャツにも手をかけるけどあまりにも動きが緩慢だから、焦ったくなって手伝ってあげる。
 二人で肌を合わせると彼の熱っぽさが伝わってくる。普段は人目を避けるように合わせてくれない目も、少しずつとろけてきてて逸らされることなく、むしろ覗きこんでくる。
「カトラリーくん?」
「我慢できないんでしょ、早く欲しいって顔に出てる」
「えっ、あう……」
 ごめんねと謝るけど、言葉と裏腹に熱っぽさは隠してない。まだ羞恥の残った赤い顔で見つめちゃってさ、期待されてるなと一目でわかる。なら応えてあげなくちゃダメでしょ。口元に指を差し出すと言うまでもなく口をつけて舐め始める。たっぷり唾液を絡めていい具合に濡れた頃に引き剥がして、空いた口を唇で塞ぎつつ奥の蕾に指先で触れてみる。少し久々だったけど、それほど拒絶されずにすんなりと指を一本咥えこんだ。
「自分でほぐしてきたの?」
「う、うん。そのほうが、あっ!んん……あの、面倒じゃない、でしょ」
 これ以上、手をかけさせたくないからって言うけど、別にそんな面倒じゃないし。こうして指で解していくの僕、嫌いじゃないんだよね。
「それは同じく」
「ケインさんには聞いてない」
「大人しく待ってるんですから、少しくらい相手してくださいよ」
 抜け駆けしようとしたくせにどの口が言うんだか。庇おうと口を開けかけたキセルを黙らせるため感じやすいとこ強めに擦りあげると、甲高い悲鳴をあげ、向き合って抱き締められていた腕に力がこめられる。
「これから抱くんだし、僕のことだけ見ててよ」
「あっ……んん、あっ!わかった、わかったから、そこ、ひっ!」
 もう一度わざと強めに擦り上げると、歓喜に震え強く締めつけてくる。相変わらず感じやすい体。人のこととやかく言えないでしょうって外野から投げかけられても、取り合うことなく進めていく。
「キセル、早く気持ちよくなりたいでしょ?」
「うん、ん。なりたい」
 して欲しいって拙く伝えてくるのが可愛くて、だよねと笑い混じりに返す。意地悪だなんて声もあがるけど、それは知らない。本人は気持ち良さそうにトロンってこっち見てるんだし、なにより嫌がってないしね。
「か、とらりーくん、あっ!それ」
「うん。気持ちいいよね、ここ好きだもんね?」
「はっ……ん、あぁっ!もっと」
 もっとしてなんておねだりしなくても、すぐにしてあげるんだけど。
「まだ焦らすんですか?」
「ケインさんに言われたくないんだけど」
 そう思うよねとキセルに問いかけるけど、感じ入ってて特に聞いてない。まあいいんだけどね、指の動きに合わせて腰揺らしながら感じてる顔、なかなかそそるし。無視されてますけどとからかい気味に返されても、別に気にしない。 「あ、あの……カトラリーくん、あぅ、あのねぇ。もっと、その……気持ちいいの欲しい、な」
 ダメと涙目で首を傾げる相手の耳元に、いいよと返してあげる。後ろを解してた指を引き抜いて、割れ目に沿うように張り詰めてる自分のモノを当てる、今にも挿れてほしそうに見られるけど、流石にそれはね。
「ほらキセル。挿れてほしいんなら、これつけて」
 ゴムの袋を渡すと、うんと小さく頷き僕の上からいったん退がる。空けた袋の中身を口に咥えてから僕のモノに手を添えて支えると、先端から根元までを一息に飲み込んだ。
「んっ!……んん、ふっ」
 喉まで届きそうなくらい深くまで飲みこむと同時に、口に咥えられていたゴムに自分のモノが全部覆われているのを確認する。えづいて何度も失敗してたのに、涙目で精一杯なのは相変わらずだけど、すごく上達してる。
「そうそう、ちゃんとできてるよ」
 頭を撫でていい子って声をかけると、嬉しそうに目を細めて舌を使って愛撫してくれる。
「あまり変なことを、教えないでほしいんですけど」
「それケインさんに言われたくない」
 自分だってあることないこと教えこんでるくせに、どう考えても人のこととやかく言えないと思うんだけど。キセルに意見を求めようにも、フェラに夢中で聞いてなさそうだね。
「挿れてほしくないの?」
「ふぁっ!ん、ほしい」
 顔をあげる相手を手招いて、僕の上にまたがるように言うと恥ずかしそうにしつつも、両腕を背に回して向き合う形で落ち着いた。
「カトラリーくん、あの、ちゃんとしたよ?」
「うん、よくできました」
 だからと言い淀む相手に、わかってるよと頭を撫でて好きにしなよと声をかける。ぞくりと背筋を震わせ、準備を整え終えたモノ同士を合わせると、さっきと同じように手を添えてゆっくりと腰を下ろしていく。
「んん、あっ……ふぁ」
「うわっ、あっついねキセルの中、それに狭い」
 久々だもんなあと呟くと、キュッと中で締めつけられる。まだ全部入ってないのにおねだりしなくてもいいでしょと言うと、恥ずかしいのかまた締まった。
「そんな律儀におねだりしなくても、ちゃんと全部、あげるって!」
「ひぃっ!あっ……ああぁ!」
 腰掴んで一気に押しこんだら、こぼれ落ちるんじゃないかってくらい目を見開いて感じ入る。抱きしめる腕の力も締めつけもすごいし、軽くイッてる?
 落ち着かせようと何度かキスしてると、涙を溜めた目がこちらを見返してきた。どうかしたとたずねるともっとと舌足らずに返されるので、唇に口付けて背中に回した腕を引き寄せて更に密着する。僕に乗り上げてるの気にして、体重かけないようにってしてるけど、これくらいで潰れるほどヤワじゃないしね。
「ほらもっと、近くにおいでよ」
「んんっ、待って……そこ。深いとこ、当たって」
 腰を引き寄せて更に深く繋がると、あっと甲高い声をあげて耐えようとする。でも許さない、もっと奥のほうが気持ちいいの知ってるもん。可哀想なくらい赤く染まって、涙目のまま震えてる相手を抱き締めて、感じやすいとこに当たるように押しつける。
「あっ!うぅ……んっ!ぁあ」
「気持ちいい。もっと、奥まで入りたいくらい」
「そんな、無理」
 これ以上は入らないと頭を振る相手に、キセルならいけるでしょと耳元に声を落とす。声にすら敏感に感じ入る相手を微笑んで、本当はそうして欲しいんでしょと言いつつ下から突き上げてみる。あっと声をあげて中が締まった。
「ほら、キセルの中は欲しいって言ってるでしょ?」
「あぅう、あっ!あんっ」
 緩い突き上げを繰り返して、徐々に感じるとこを責め立てる。もっとって舌足らずにおねだりを始めるまで、優しく責め続けているとあまり泣かせないでくださいと声をかけられる。それもあんたが言うなよって思うんだけど、あえて声には出さずに目の前の可愛い人だけに構い続ける。
「あっ!ふ、んんっあっ!カトラリーく、……ふあ、いい!きもちいぃ」
「そっかあ。僕も、気持ちいいよ」
 自分から腰が揺れてるの、気づいてなさそうだね。弱い所はここだって自分から教えてるようなものなのに。それも可愛いんだけどさ。
「ほら、ここ好きでしょ」
「ひぅ!あ、好きだよ、それ、いい、けど」
 いいけどなにとたずねると、ひっと喉を鳴らして拒否するように首を振る。ほら教えてよと深く穿つと、声にならない悲鳴をあげて僕に縋りついてくる。すっかりとろけた目の端にできるだけ優しく唇で触れ、どうなのと小声で再びたずねる。
「はぁあ……うっ、んん。あの、いいけど、俺。あっ……ダメに、なっちゃう」
「知ってる」
 ダメになるようにしてんだから、存分に狂っちゃえばいいのに。突き上げるのに合わせて、自分から腰擦り寄せて感じ入って、まだ正気だって思ってるんだから始末に終えない。
「いつも言ってるじゃん、僕たちの前で遠慮なんかいらないって、さ」
「でも……こんな、あっ!俺の、ワガママに、二人とも、付き合ってもらって、うぁあ!」
 まあ確かに、言ってしまえばキセルが求めたから、こうして付き合ってるわけで。そこだけ切り取ってしまうと無理矢理に抱いてもらってるって、認識になっちゃうんだろうけど。そんなことないから。
「好きじゃない奴のことなんか、抱いたりしないから。だから、遠慮なくダメになっちゃって」
 ほらっといいとこばっかり責め立てると、腹の奥によく響く声でよがる。そうやってなにも考えずに、ただ快感に身を任せてしまえばいい。キセルの抱えてるものだって、とっくに腹くくって向き合っていく決意くらいできてるんだ。でなきゃ、もう一人なんて許してない。
 まあ、僕のほうが後からだし、二人からすれば邪魔なのはこっちかもしれないけどさ、気持ちで負けてるわけないよ。
 好きじゃなかったら、こんな狂乱じみたことしてない。
「ああっ!ひゃあ、あんっ!あっあああああぁ」
「んっ、くぅ」
 背中を大きく反らせてイク、そのとろけた顔を近くで眺めつつ、うねるように絡みつく熱い肉を奥まで突き上げて僕も達する。
 しばらく脱力したようにただ抱き合って、互いにキスを繰り返してく。吐息が触れ合う距離で柔らかく微笑むと、気持ちよかった?とたずねてきた。
「うん、いつも気持ちいいよ」
「そう……よかった」
 力の抜けた体を起こして、ゆっくりと僕のを中から引き抜いていく。擦りあげられる感覚にすら耐えているようで、時折甘い声が混じってた。
 全部抜き終わった頃、キセルを後ろから抱き締めて自分のほうへ引き寄せるケインさんに、もう交代するの?と声をかけた。
「充分、楽しまれたかと思いまして」
「まあ一回目はね。連続でさせるとバテるよ」
「休憩も兼ねて、私もそろそろ触れ合いたいなと」
 ダメですかと弱った声で迫れば、キセルが断らないって知っててやってるよね。タチ悪い。でも約束通り、そんなに大きな邪魔はされずに楽しませてもらったし、ここはいったん空け渡さなきゃね。
 ベッドから降りる僕の腕を待ってと、弱々しい力で引き寄せられる。
「カトラリーくん、ありがとうね」
 気持ちいいよ、大好きだよって真っ直ぐ伝えられると、少し恥ずかしさが優ってくる。いつもそうだ、終わった後に確認するよう彼はそう口にする。見捨てられないようにって、必死に繋ぎ止めるみたいにさ。

 くすぐったそうに笑うキセルに、甘えるように抱きついてるケインさん。脚やら背中やらを撫でて、何度もキスを繰り返す。普通の恋人同士のように戯れに撫でられ続けている、そんな二人を眺めて水を一口飲むと、いつも思うけど飽きたりしないのと声をかける。
「んっ……俺は、こういうのも好きだよ?」
 ふにゃっと笑う彼に水を差し出すと、お礼を言って受け取って中身を少し傾けて飲みくだす。ありがとうねと笑って返される空のグラスを受け取る、でも刺激足りないでしょ。
「そんな、ことは……んあっ!」
「足りてないんでしょ」
 耳を甘噛みしてたずねると、そんなことないよと赤くなって弱々しい声で呟く。
「カトラリーくんのおかげで、落ち着いたし……ケインさんの、好きにしてくれたら」
 いいかなと小声で下がり気味に口にした瞬間、あっと甘い悲鳴があがる。ケインさんに乳首吸われてあいてるほうは指で摘みあげられてる。
「あっ、あの。そんな、強くしな、ひっぁあ!」
「それなら、あんまり私のこと置き去りにしないでくださいね」
 いいですかと声をかけてる間も変わらず胸揉まれてるし、放置しないから優しくしてと言うと、頭を撫でて頰にキスする。
「相変わらず感じやすいですね」
「え、そっかな」
「可愛いですよ」
 ふふふって穏やかに笑ってるけど、キセル本人に素質があるとはいえこの人が徐々に開発していってるんだよね。特に胸とか耳とか首筋とか、あと。
「そうなの?」
「別に開発してるわけでは、ただキセルさんが気持ちよくなってるところを見るのが好きなだけです。優しくされるの、お好きですもんね」
 僕が優しくないとでも言いたいの、苛立ち気味に返すのをそんなことないよとキセルは困ったように返すけど。
「でも意地悪ですよね?」
「意地悪って、いうか……強引というか。あっ、でもそういうの結構、んんっ!」
 都合が悪そうだからってわざと口塞いだな、そういうとこは彼のほうがよほど意地が悪いと思うんだけど、どうなんだろ。触れ合っている指は優しいんだろうけど、よく焦らして楽しんでるし、理性ぐずぐずに溶かしてから色々とやらせてるじゃん。
 気をつけなよって注意してるんだけど、問題は彼そういうの好きなんだよね。
 キスしてる間も胸を責められて感じ入ってる、くすぐったそうな甘えた声あげてさ、開発されてんの気にしてないよね。とろんって目が嬉しそうに細められて、腕を背に回して抱き締めてるし。
「そろそろこっちも、触れ合いましょうか」
 グチっと音を立てて中に指を挿れられて、あっと甘える声があがる。すぐにでも入りそうですねと指で弄られている間も、あのと声をかけてそれとなく急かしてるんだけど、気づいてないふりして、ゆっくりと中を弄り回される。勿論、そんなことしなくってもさっき僕が抱いたんだから充分だと思うんだけど、今のままだとやめるわけないよね。
「キセル、ちゃんとおねだりしてあげなよ」
「えっ……えっと」
「僕にしたみたいに、おねだりしてほしいんじゃない?」
 真っ赤になってるキセルの頰を撫であげると、恥ずかしそうに涙を貯めつつこちらを見上げる。さっきまでの熱はどうしたのかと問いたいくらいなんだけど、溢れそうなくらい我慢してたのも僕が抱いたから、少し落ち着いたんだろうね。とはいえここで彼が止まるわけないし、そんなふうに見つめられたって、僕にはどうすることもできないし。
「ほら、ケインさんにどうしてほしいかちゃんと言いなって」
 耳元で囁きかけるように呟くと、どうなんですかと無言のまま笑顔で相手が見つめてくる。こういう時のケインさんの笑顔って怖いんだよね。気圧されるように、しばらく迷った末に声をかけるのを見守る。
「あの、ケインさん……俺、ケインさんが欲しい、です」
「私でよければいくらでも差し上げますよ、それで、具体的には」
「あう……その、ケインさんので、俺の中……いっぱいにして、それから」
 もうこれ以上は言いたくないと嫌がる相手に、助け舟を出すべくそれくらいにしといたらと言う。
「あんまりにも意地悪するなら、僕が今すぐ抱いてあげるし」
「それは譲りませんよ。たっぷり慣らしましたし、お望みどおり今いっぱいにしてあげますね」
 つけてあげるよというキセルの申し出を断って自分でゴムをつけて、正常位のままゆっくりと中に納めていく。刺激に耐えるようにシーツを握り締めて、時折小さく声をあげつつ、もどかしそうに腰が揺れてる。
 僕とケインさんだと抱きかたが違うからね、本当はもっと激しくされるのが好みのキセルにとっては、今もまだ焦れったいままなんじゃないかな、なんて。
「さて、全部入りましたね」
 お腹を撫でて言うケインさんに、んっと小さく頷いてキスをねだる。それに応えてあげながらゆっくりと動き出した相手に、びくんと肩を跳ねあげてもっとと縋りついていく。ここがいいんだって甘えるように、擦り寄るけれどもゆっくり責め立てられるのは変わらない。
「ここお好きですよね」
 ゆっくりなんだけど、感じるところはねちっこく責めるんだよね。もっと気持ちよくなりたいんだろうに、全然もの足りなさそうに甘えた声をあげてるキセルの理性が溶けるの待ってるんだ。 「そんな遠回しにしなくても」
「嫌がることはしたくないですし、それに」
 わかってるよ、焦らしてる時の顔が好きなんでしょ。確かにめちゃくちゃ可愛いんだけどさ、一回テンション落ち着かせたのは自分なのに、そこからまた溶かすって性格悪いなあ。
「あぁっ!うっ……ケインさん、あの、あっ、もっと」
「ここですか?」
 ぐっと奥をえぐられたらしくて、びくんとまた大きく震える。唇を噛み締めている相手にどうなんですとたずね、なんども激しく頷くのを見て微笑む。そうここですよねと、ゆっくりしたストロークで奥を穿つ、涙目からゆっくり溢れて落ちていくのを、楽しそうに見下ろしている。
 キセル、目を閉じずにちゃんと見たほうがいいよ。この人、どんだけ人の悪い笑顔できるのかさ。僕より明らかに意地悪な男を、ちゃんと見たほうがいいよ。
「んっ……あぁ、はぁん!あっ、ぅう。ケインさ、もっと」
 シーツから手を離して背中に回して引き寄せる、縋りついてもらえたことで幾分か気分がよくなったのか求められるまま、強く打ちつけていく。
「ひゃぁあ、あっ!あ、うぅん、ひっ!」
「ここを、もっとですよね?」
 そうたずねて、悲鳴しかあげられないキセルが頷くのを見て、更に打ちつけを激しくしていく。甘い泣き声にそれでも嫌悪が混ざらないのをいいことに脚に手をかけて、肩に抱え上げるとより深く繋がって抱き潰すように動いていく。
「はぁああ!あっ、それ、ダメ!あっ、あぁ」
「ダメですか?やめましょうか」
 焦らすように動きを止めて引き抜いていくのに、待ってと声をかけて縋りついて止める。
「ダメなのでは?」
「あっ、ちが……あの、気持ちいい、いいんだ、けど」
「けど、なんでしょう?」
 はぁっと大きく息を吐いて、とろんとした目でまだ言い淀んでいるので焦らすように中を突いて、あっと悲鳴をあげさせる。
「嫌ならちゃんとおっしゃってくださらないと」
「ちが、んんっ!あっ、気持ちいいから!も、離したく、なくなっちゃう、から」
「別に私はそれでもよいのですが」
 僕はよくないなあと視線を投げる、邪魔するのもなんだし声にはしないけどさ、まあ聞いちゃいないと思うけど。
「あぁ……それ、もっとして」
 案外早く堕ちたな、まあ元から溜まってたのはみんな同じだし。ちょっと刺激されたら我慢できないよね。甘えた声で鳴き続ける相手を責め立てて喜んでいる男を見ると、ちょうど目があった。嬉しそうに細めて笑う顔の悪どさに呆れてため息を吐く。
「まだ足りないですか?」
「あっ、あん、んっああ!ケインさん、もっと!」
 もっと欲しいと縋る相手にキスをする、くぐもった深い息が交わされる間、冷えてきた体に上着をひっかける。さっきまでの熱が嘘みたいだ。体の奥にはまだ重く居座ってるんだけど、手の中にないといないみたいだ。あんまりキセルの邪魔はしたくないけど、もっと触れていたいな。
「ひぃん!あっ、ああああああ!」
 引きつった甘い悲鳴と共に痙攣する体、ピンと伸びる足先を眺めてああイッたなと確認する。気持ちよさそうに深い息を吐く暇もなく、まだ突き上げられて喉が仰け反る。
「ちょっと休ませてあげなよ」
「私まだイってないので」
「だからって……」
 無茶させたくないのでとか言ってたの誰だよ、と思うものの。感じ入ってるのは見てわかる、止めても無駄ってこともわかってる。
「ああっ!ケインさん、ケインさん、あっ」
 舌足らずに名前を呼ばれなんでしょうと柔らかく笑う。自分を求めてくれていることがそんなに嬉しい?無理くりにでも縋りつかせてるだけなんだけど、人のことはもちろん言えないから、黙ったまま普段は見せない満たされたような顔を見える男と、とろけてなにもわかってないだろう相手を眺める。
「本当に、可愛い人ですね」
 うん、それには同意するよ。

 ぐったりと横になる相手にキスをする、深くはなく慰めるように優しく触れるだけだ。そうすれば、ふっと笑って僕に手を伸ばしてくる。
「次は、カトラリーくん?」
「まだいけんの?」
 聞くまでもないことだけど、求められることは嬉しいからどうしてもたずねてしまう。小さく頷く相手に、もう少し落ち着いてからねと頭を撫でて返す。
「誰かが無茶させるからさ」
「気持よかったですよね?」
 質問に対してうまく答えられないキセルに、嫌だって言っても問題ないからさと返すと、そういうわけじゃないよと小声で返ってくる。
「二人とも、よくしてくれるから」
 なんだかもったいないくらいだと、いつものようにネガティブが始まるから口を塞いでやると、熱い舌が甘えるように絡んでくる。応えてあげてる間に、さっきまで散々楽しんでいた相手の手が伸びてくるので、払い落とすとむっと頰を膨らませる。
「そんなこと、されなくてもいいじゃないですか」
「長いんだよ一回が」
 待ちくだびれたって言うと、それ俺のせいじゃないとキセルから声がかけられる。
「違うから」
「そうですよ。あなたはお気に召すまま、求めてくださって構いません」
 でもと言い淀むキセルに左右から抱き締めて、泣き出したりしないように二人がかりでキスをしてなだめると、くすぐったいと恥ずかしそうに微笑む。
「それで、続きはどちらがお望みですか?」
「僕の番だってば」
「ま、まあその、喧嘩しないで、ね?仲良くして」
 間に挟まれて困ったように言う相手に、わかってるよと返す。この状態で仲良くっていうのが、そもそもおかしいんだろうけどさ。でもまあ、僕もケインさんもこれでいい、だから問題ない。
 どう思われようと、僕らがキセルを愛してて、彼がそれを求めてくれる。その事実は変えようがないんだから。とやかく口出しされる理由もない、そもそも他人にどう思われるかなんて関係ないよ。
「それで、次はどうしたい?」
「是非とも聞かせてほしいですね」
 ならと僕らの手をとる。もっと二人のことを感じていたい、恥ずかしそうにそう口にする相手に再びキスをすれば、ヘヘっと照れたように笑う。
 そんな遠慮しないで、もっと我儘に求めればいいのに。
 この関係を始めた時に決めたじゃないか、きみが僕らの女王さまだって。

あとがき
三人の関係の成り立ちについて考えてたら、一話では到底収まらないと気づいてしまいまして。
また折を見て、追い追いアップできたらいいなあと考えてます。
多分、あと二話くらいは必要なのではないかと……全部の完成を待つと、それなりに時間を取ってしまうので、完成したところからアップしていきます。
2019年5月3日 pixivより再掲
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